「心疾患(高血圧性を除く)」は、日本人の死因第2位を占める病気です。心臓病のリスクを下げるにはどうすればよいのでしょうか? 今日からできる対策として、本稿では「心臓が健やかな人の生活習慣」を見ていきましょう。“心疾患・心臓リハビリ”の専門医・大堀克己医師が解説します。
心臓が健やかな人には特徴的な生活習慣があります。実際に心臓病は先天性や遺伝性のものを除けば、多くが不健康な生活習慣の積み重ねに起因しています。ということは心臓が健やかな人は良い生活習慣を身につけているということであり、心臓が悪い人は、生活習慣を改めればある程度心臓を強くすることが可能だ、ということです。
私がこれまでたくさんの患者を診察してきたなかで、心臓が健やかな人に共通していると思われる生活習慣があります。
心臓が健やかな人は毎日約30分、速めの速度で歩いている人が多いです。歩数の目安としては4500歩です。
心臓が健やかな人は、体内時計のリズムに素直に従っています。そのため朝はスッキリと目覚めて活動的に動き、夜は自然と眠りに落ち、良質な睡眠をたっぷりと取っています。
実際、こうした「朝型」の生活が健康に良いことは研究によって明らかにされており、寝る時間が遅く、朝なかなか起きられない「夜型」タイプの人は、「朝型」タイプの人に比べて肥満や代謝系の異常、循環器系の疾患が多く見られることが、これまでの研究により分かっています。さらに近年、アメリカの研究により、「夜型」は「朝型」の人に比べて糖尿病など慢性疾患の患者が多く、死亡リスクも10%高いことが分かりました。
健康な人の多くは毎回の食事に気を配り、ゆっくり食べて腹八分目で食事を終えています。暴飲暴食は高カロリーや塩分過多になりやすく、生活習慣病や心臓病の発症につながります。
健やかな心臓をもつ人はそもそも塩分が強過ぎる食事を好まないか、あるいは、意識的に塩分を減らして、塩分のコントロールを行っています。例えば、塩の代わりにハーブや薬味を積極的に取り入れたり出汁を効かせたりして、塩が少なくても満足がいく味を作ります。ハーブや薬味は有害な毒素を排出するなどの役割も担っており、一石二鳥です。
心臓が健やかな人だけでなく、健康でいきいきとしている高齢者の多くは趣味をもっています。趣味に打ち込むことで生きがいややりがいが生まれ、ストレスの発散につながります。
ストレスは心拍数や血圧を上げ、心臓にとって大きな負担となります。心臓が健やかな人は、嫌なことがあってもすぐに忘れる能力に長たけており、ストレスを引きずりません。
ニコニコと笑顔を絶やさない人の周りには、同じように明るい人が集まってきて、互いに良い影響を与えながらいきいきとした毎日を過ごします。
病気のことや家族のことなど、悩みがあったときに相談できる友人がいることは、「悩んでいるのは一人じゃない」という心強さを感じさせ、気持ちをポジティブにしてくれます。心臓が健やかな人は悩みがあっても一人で抱えず、誰かに相談することで、無意識に重荷を下ろしています。
心臓が健やかな人は明るく笑顔が絶えない性格の場合が多いため、友人も多く、人間関係も良好です。
家の中が冷え切ってギスギスしていると、交感神経が活発になり、血圧や心拍数が上がり、心臓に負担を掛けてしまいます。心臓が健やかな人はたいてい、夫婦仲や家族の仲が良く、家庭がリラックスできる場所となり、神経を休ませています。
「自分の生活習慣と正反対だ」と思った場合でも、焦ることはありません。小さなことを毎日コツコツと継続すると、それは、やがて習慣になっていきます。
健やかな心臓を作るには、まさに「継続は力なり」です。家族の協力も得て、家族みんなで健康な習慣を身につけていけばよいと思います。
大堀 克己
社会医療法人北海道循環器病院 理事長