就活生にとって勝負の夏が終わろうとしている。2023年3月卒卒業予定の大卒求人倍率は1.58倍で、7月時点での大学生就職内定率は83.3%となっている。
【写真】この記事の写真を見る(2枚) 現在の大学生の就活スケジュールは一般的に「3月会社説明会6月選考開始」となっているが、昔と違い採用試験のオンライン化やインターンシップを導入する企業が増えるなど、採用手法やスケジュールは大きく様変わりしている。 ただ、そんな中でも変わらないのが「面接」だ。圧迫面接やセクハラなど毎年のように問題になる話題ではあるが、そんなヤバい面接の体験談を聞いてみた。

『じゃあ、スベらない話をしてください』といきなりムチャブリ ヤバい面接と言えば特に逸話が多いのがマスコミ業界。かつては若者の人気を集めていたものの、現在は時代の波に乗り遅れて業績も志望する若者の数も右肩下がり。それでも昔から続いた体質は簡単には変わらないようだ。10年以上前に中堅出版社の面接を受けた女性(35歳)が、コンプラ意識などまったくなかった当時の面接の様子をこう語る。iStock.com「この出版社はスキャンダル系やギャンブル系の雑誌を作っていました。面接にはスキャンダル系雑誌の編集長が同席していたんですが、いきなり『あなたはこれまで万引きしたことがありますか?』と質問されて面喰いました。万引きなんてしたことは無かったし、もしやったことがあっても正直には言いませんよね。当然、『ありません』と答えましたが、編集長はなぜか執拗にこの質問を続けてきた。『え~嘘でしょ。誰でも1回くらいはしてるよね。ここはそういうの喋ってもらっていいから』と引っ張られ、どう答えたらいいか分からず戸惑いました。 他にも『じゃあ、スベらない話をしてください』といきなりムチャブリされたり、『あなたの好きな芸能人、嫌いな芸能人を教えてください』『では、好きなAV女優を教えてください』なんて質問もありました」 もともと編集や記者志望だったこともあって、彼女自身は「面白い面接だなあ」と特別気にもしていなかったそうで、無事、面接をクリアして入社している。数年後、面接官を担当していた編集長に当時のことを聞いてみたところ、「僕も忘れてません。あの頃はなぜか面接でも何かトガったことを聞かなければと思い込んでおりました。お恥ずかしい限りで……」と小さくなっていたという。業務にかこつけたプライベートに関する質問でセクハラ 同じく以前に小さいデザイン事務所のクリエイティブ職として採用試験を受けた34歳の女性は露骨なセクハラ面接を経験したという。「面接では会社の社長のほかに、なぜか取引先の担当者も同席していたんです。なんでも、私が入社した場合はその取引先の仕事を主に手伝うことになるから、とのこと。業界が未経験だったので、そんなこともあるのかと最初は特に気にも留めませんでした。 最初は前職をやめた理由など普通の会話をしていたのですが、面接が進むにつれて、途中から取引先の人からの質問が増えてきました。それも『彼氏はいるの?』『この仕事は結構不規則だから、彼氏とかに理解がないと困るんだよね』『24歳とか若くてかわいいし、仕事もとれるんじゃないかな』といった、業務にかこつけたプライベートに関する質問や、容姿についての言及が増えてきたんです。 内心では『は?』と思いましたが、その業種を募集している企業が少なく未経験者の私が業界に入るにはそこしかない、と思いこんでいたので、愛想笑いしながらプライベートな質問にも答えましたよ。今だったら間違いなく『その話、関係ないですよね』とか言えると思うけど、当時の自分では無理でしたね。 この会社に採用されて働き始めましたけど、一通り仕事を覚えて業界の人脈もできたので、すぐ同業他社に転職しました。今はまったく付き合いはありません」『そうなの~』『すごいねえ~』ニヤニヤして気持ち悪い面接官 今やネットに押されて斜陽のテレビ業界も、かつては学生に人気が高かった。特に昭和の価値観が横行していて面接が厳しいと言われた地方局での思い出を話してくれたのは28歳の男性だ。「地方テレビ局の集団面接を受けたことがあります。面接自体は一般的なものでしたが、一緒になった面接者の中に女子アナ志望の子がいて、かなり浮いてましたね。彼女は地元出身ではなく、とにかく女子アナになるためあちこちの地方局を受けていたそうです。 今どきの面接には珍しくキャピキャピというかコビコビというか。自己紹介では『今日はこの面接のために前乗りしたんです~。楽しみすぎてしおりまで作っちゃいました~』と手書きの旅行のしおりを見せていたんです。私は内心、『よくやるわ~。女子アナ志望は、なんでもありだな』と横目で見ていましたけど、面接官のおじさんたちが『そうなの~』『すごいねえ~』とニヤニヤしてたのは気持ち悪かったですね。 私はその局には落ちたので、その後、彼女が受かったかどうかは知りませんが、今のところどこかの女子アナとして名前を聞いたことはないですね」採用試験で出されたテストが小学生レベル 今年就職したばかりの23歳女性は、就職のために大学在学中から準備を進めていたというが、自分も含めてマスコミを志望する学生の質の低下を実感していたそうだ。「大学時代、マスコミ志望者が集まる『マスコミ研究室』という団体があって、そこに入るには入学直後に集団面接を受けなければなりませんでした。試験官は朝日新聞や共同通信、NHKといった大手メディア上がりの元記者などのマスコミ関係者で、ほとんどは60~70歳代の大ベテランばかり。 ちょうど『忖度』という言葉が流行った頃で、『目をつむって、“忖度”と漢字で書いてみてください』と言われたのですが、私を含めて同じ試験を受けたメンバーはほぼ全員、大学に入学したてのバカ学生だったので書けなかった。 それでもなぜか結果は全員合格でした。どうやら昨今はメディア志望の学生じたいが少なくなっていたため、こんなバカ学生を受け入れざるを得なくなっていたそうです。なんだか面接官をしてくれた元一流記者の皆さんに申し訳ない気持ちになりました」 大学時にやったアルバイトの面接での体験談を語ってくれたのは25歳の女性。「明治時代の文豪にゆかりのある由緒ある旅館のアルバイトに応募したことがあります。謎だったのがその採用試験で、目の前に出されたテスト用紙には、『東京都の区の名前を5つ書け』『日本一長い川は?』といった小学生レベルの質問ばかり。正直、馬鹿にされている感満載でした。 無事採用されたのですが、どうしてあんな試験をやったのかを聞いたところ、『書こうという前向きな姿勢があればOKだった』とのこと。なんとそのテストは採点すらしていないそうです。そんな適当すぎる面接だったからなのか、バイトはロクな人材が集まらなかったようで、時間を守るといった最低限の常識すらなかったりで、入って数週間で何人も辞めていましたね」『じゃあ、マスクを取ってもらえる?』ミエミエな容姿確認 コロナ禍になって以降、気になるやり取りも増えたようだ。続いては音楽業界の面接を受けた24歳の女性の体験だ。「普段着で来るように指定されたので、オフィスカジュアル的な落ち着いた普段着を着ていきました。すると面接では『それが普段着?』と何度も執拗に聞かれました。『本当? 普段はもっと短いスカートをはいてるんじゃないの』『今日は落ち着いてるけど、もっと派手な格好とかもするの?』といった感じです。 一番嫌だったのは、面接の途中で『じゃあ、マスクを取ってもらえる?』と要求されたこと。一応は、『つけたままじゃ、表情も分からないからさ』といった言い訳めいたことを言ってましたが、容姿を確認しようとしているのがミエミエでした。コロナ禍の真っ最中でしたから、余計に気になりました。合格したからいいんですけどね(笑)」特に服装の指定はなかったので、無難なパンツスーツで行ったら… 現在はテレビ関連の制作会社に勤務する26歳の女性は、新卒の際、面接に行った舞台照明会社の面接が謎すぎたと話す。「当時66歳の社長と二人っきりで面接することになったのですが、会議室のテーブルの上に、他の志望者の履歴書が無造作に並べられていました。狭い会議室だったし、こちらからも丸見えで、内心では『おいおい、個人情報は』と思ったけど、当然口にはしませんでした。 特に服装の指定はなかったので無難なパンツスーツで行ったところ、冗談ぽく『スーツで来たんだ。どうせならスカート穿いてこいよ』と言われたり、『ウチは休みないよ』『ブラックだよ』とか言われました。嫌だとは思いましたが、このくらいなら想定の範囲内。面接じたいは45分くらいで、あとは事前に提出していた作文の内容について話を聞かれたりしました。面接に来なかった志望者に電話を掛けさせる社長 それでひと通り面接をした後、最後に社長がテーブルに並べられた他の志望者の履歴書を指さして、『実はさ、うちに応募してきてる人の中で、1人連絡がとれない人がいるんだ。僕の携帯じゃ繋がらないから君の携帯からかけてほしい』と言ってきたんです。私の面接中ですよ。仕方なく、言われる通りに私の携帯から電話をかけましたよ。もう『この面接なに?』という戸惑いより、『困ったなあ、電話をかけられる相手の人も困るんじゃない?』としか思いませんでしたね。 結局、相手は電話に出なかったのですが、社長は追い打ちをかけるように『君か、今電話が繋がらない人のうちの1人は研修中に落とすから』と言ってきた。この募集では同時期に受けた人が6人いて、基本的には全員が採用される前提で、面接の後に研修を受けることになっていたのですが、突然そんなことを言われても、何が何やらですよ。 社長は最後に、テーブルの上の履歴書を指さして、『あ、それ隅っこにまとめて片付けといてくれる』と指示してきたのにはさすがに驚きました。結果的には6人全員が受かっていましたが、あの面接はいったい何だったのか今でも謎です」(清談社)
現在の大学生の就活スケジュールは一般的に「3月会社説明会6月選考開始」となっているが、昔と違い採用試験のオンライン化やインターンシップを導入する企業が増えるなど、採用手法やスケジュールは大きく様変わりしている。
ただ、そんな中でも変わらないのが「面接」だ。圧迫面接やセクハラなど毎年のように問題になる話題ではあるが、そんなヤバい面接の体験談を聞いてみた。
ヤバい面接と言えば特に逸話が多いのがマスコミ業界。かつては若者の人気を集めていたものの、現在は時代の波に乗り遅れて業績も志望する若者の数も右肩下がり。それでも昔から続いた体質は簡単には変わらないようだ。10年以上前に中堅出版社の面接を受けた女性(35歳)が、コンプラ意識などまったくなかった当時の面接の様子をこう語る。
iStock.com
「この出版社はスキャンダル系やギャンブル系の雑誌を作っていました。面接にはスキャンダル系雑誌の編集長が同席していたんですが、いきなり『あなたはこれまで万引きしたことがありますか?』と質問されて面喰いました。万引きなんてしたことは無かったし、もしやったことがあっても正直には言いませんよね。当然、『ありません』と答えましたが、編集長はなぜか執拗にこの質問を続けてきた。『え~嘘でしょ。誰でも1回くらいはしてるよね。ここはそういうの喋ってもらっていいから』と引っ張られ、どう答えたらいいか分からず戸惑いました。
他にも『じゃあ、スベらない話をしてください』といきなりムチャブリされたり、『あなたの好きな芸能人、嫌いな芸能人を教えてください』『では、好きなAV女優を教えてください』なんて質問もありました」
もともと編集や記者志望だったこともあって、彼女自身は「面白い面接だなあ」と特別気にもしていなかったそうで、無事、面接をクリアして入社している。数年後、面接官を担当していた編集長に当時のことを聞いてみたところ、「僕も忘れてません。あの頃はなぜか面接でも何かトガったことを聞かなければと思い込んでおりました。お恥ずかしい限りで……」と小さくなっていたという。
同じく以前に小さいデザイン事務所のクリエイティブ職として採用試験を受けた34歳の女性は露骨なセクハラ面接を経験したという。
「面接では会社の社長のほかに、なぜか取引先の担当者も同席していたんです。なんでも、私が入社した場合はその取引先の仕事を主に手伝うことになるから、とのこと。業界が未経験だったので、そんなこともあるのかと最初は特に気にも留めませんでした。
最初は前職をやめた理由など普通の会話をしていたのですが、面接が進むにつれて、途中から取引先の人からの質問が増えてきました。それも『彼氏はいるの?』『この仕事は結構不規則だから、彼氏とかに理解がないと困るんだよね』『24歳とか若くてかわいいし、仕事もとれるんじゃないかな』といった、業務にかこつけたプライベートに関する質問や、容姿についての言及が増えてきたんです。
内心では『は?』と思いましたが、その業種を募集している企業が少なく未経験者の私が業界に入るにはそこしかない、と思いこんでいたので、愛想笑いしながらプライベートな質問にも答えましたよ。今だったら間違いなく『その話、関係ないですよね』とか言えると思うけど、当時の自分では無理でしたね。
この会社に採用されて働き始めましたけど、一通り仕事を覚えて業界の人脈もできたので、すぐ同業他社に転職しました。今はまったく付き合いはありません」
今やネットに押されて斜陽のテレビ業界も、かつては学生に人気が高かった。特に昭和の価値観が横行していて面接が厳しいと言われた地方局での思い出を話してくれたのは28歳の男性だ。
「地方テレビ局の集団面接を受けたことがあります。面接自体は一般的なものでしたが、一緒になった面接者の中に女子アナ志望の子がいて、かなり浮いてましたね。彼女は地元出身ではなく、とにかく女子アナになるためあちこちの地方局を受けていたそうです。
今どきの面接には珍しくキャピキャピというかコビコビというか。自己紹介では『今日はこの面接のために前乗りしたんです~。楽しみすぎてしおりまで作っちゃいました~』と手書きの旅行のしおりを見せていたんです。私は内心、『よくやるわ~。女子アナ志望は、なんでもありだな』と横目で見ていましたけど、面接官のおじさんたちが『そうなの~』『すごいねえ~』とニヤニヤしてたのは気持ち悪かったですね。
私はその局には落ちたので、その後、彼女が受かったかどうかは知りませんが、今のところどこかの女子アナとして名前を聞いたことはないですね」
今年就職したばかりの23歳女性は、就職のために大学在学中から準備を進めていたというが、自分も含めてマスコミを志望する学生の質の低下を実感していたそうだ。
「大学時代、マスコミ志望者が集まる『マスコミ研究室』という団体があって、そこに入るには入学直後に集団面接を受けなければなりませんでした。試験官は朝日新聞や共同通信、NHKといった大手メディア上がりの元記者などのマスコミ関係者で、ほとんどは60~70歳代の大ベテランばかり。
ちょうど『忖度』という言葉が流行った頃で、『目をつむって、“忖度”と漢字で書いてみてください』と言われたのですが、私を含めて同じ試験を受けたメンバーはほぼ全員、大学に入学したてのバカ学生だったので書けなかった。
それでもなぜか結果は全員合格でした。どうやら昨今はメディア志望の学生じたいが少なくなっていたため、こんなバカ学生を受け入れざるを得なくなっていたそうです。なんだか面接官をしてくれた元一流記者の皆さんに申し訳ない気持ちになりました」
大学時にやったアルバイトの面接での体験談を語ってくれたのは25歳の女性。
「明治時代の文豪にゆかりのある由緒ある旅館のアルバイトに応募したことがあります。謎だったのがその採用試験で、目の前に出されたテスト用紙には、『東京都の区の名前を5つ書け』『日本一長い川は?』といった小学生レベルの質問ばかり。正直、馬鹿にされている感満載でした。
無事採用されたのですが、どうしてあんな試験をやったのかを聞いたところ、『書こうという前向きな姿勢があればOKだった』とのこと。なんとそのテストは採点すらしていないそうです。そんな適当すぎる面接だったからなのか、バイトはロクな人材が集まらなかったようで、時間を守るといった最低限の常識すらなかったりで、入って数週間で何人も辞めていましたね」『じゃあ、マスクを取ってもらえる?』ミエミエな容姿確認 コロナ禍になって以降、気になるやり取りも増えたようだ。続いては音楽業界の面接を受けた24歳の女性の体験だ。「普段着で来るように指定されたので、オフィスカジュアル的な落ち着いた普段着を着ていきました。すると面接では『それが普段着?』と何度も執拗に聞かれました。『本当? 普段はもっと短いスカートをはいてるんじゃないの』『今日は落ち着いてるけど、もっと派手な格好とかもするの?』といった感じです。 一番嫌だったのは、面接の途中で『じゃあ、マスクを取ってもらえる?』と要求されたこと。一応は、『つけたままじゃ、表情も分からないからさ』といった言い訳めいたことを言ってましたが、容姿を確認しようとしているのがミエミエでした。コロナ禍の真っ最中でしたから、余計に気になりました。合格したからいいんですけどね(笑)」特に服装の指定はなかったので、無難なパンツスーツで行ったら… 現在はテレビ関連の制作会社に勤務する26歳の女性は、新卒の際、面接に行った舞台照明会社の面接が謎すぎたと話す。「当時66歳の社長と二人っきりで面接することになったのですが、会議室のテーブルの上に、他の志望者の履歴書が無造作に並べられていました。狭い会議室だったし、こちらからも丸見えで、内心では『おいおい、個人情報は』と思ったけど、当然口にはしませんでした。 特に服装の指定はなかったので無難なパンツスーツで行ったところ、冗談ぽく『スーツで来たんだ。どうせならスカート穿いてこいよ』と言われたり、『ウチは休みないよ』『ブラックだよ』とか言われました。嫌だとは思いましたが、このくらいなら想定の範囲内。面接じたいは45分くらいで、あとは事前に提出していた作文の内容について話を聞かれたりしました。面接に来なかった志望者に電話を掛けさせる社長 それでひと通り面接をした後、最後に社長がテーブルに並べられた他の志望者の履歴書を指さして、『実はさ、うちに応募してきてる人の中で、1人連絡がとれない人がいるんだ。僕の携帯じゃ繋がらないから君の携帯からかけてほしい』と言ってきたんです。私の面接中ですよ。仕方なく、言われる通りに私の携帯から電話をかけましたよ。もう『この面接なに?』という戸惑いより、『困ったなあ、電話をかけられる相手の人も困るんじゃない?』としか思いませんでしたね。 結局、相手は電話に出なかったのですが、社長は追い打ちをかけるように『君か、今電話が繋がらない人のうちの1人は研修中に落とすから』と言ってきた。この募集では同時期に受けた人が6人いて、基本的には全員が採用される前提で、面接の後に研修を受けることになっていたのですが、突然そんなことを言われても、何が何やらですよ。 社長は最後に、テーブルの上の履歴書を指さして、『あ、それ隅っこにまとめて片付けといてくれる』と指示してきたのにはさすがに驚きました。結果的には6人全員が受かっていましたが、あの面接はいったい何だったのか今でも謎です」(清談社)
無事採用されたのですが、どうしてあんな試験をやったのかを聞いたところ、『書こうという前向きな姿勢があればOKだった』とのこと。なんとそのテストは採点すらしていないそうです。そんな適当すぎる面接だったからなのか、バイトはロクな人材が集まらなかったようで、時間を守るといった最低限の常識すらなかったりで、入って数週間で何人も辞めていましたね」
コロナ禍になって以降、気になるやり取りも増えたようだ。続いては音楽業界の面接を受けた24歳の女性の体験だ。
「普段着で来るように指定されたので、オフィスカジュアル的な落ち着いた普段着を着ていきました。すると面接では『それが普段着?』と何度も執拗に聞かれました。『本当? 普段はもっと短いスカートをはいてるんじゃないの』『今日は落ち着いてるけど、もっと派手な格好とかもするの?』といった感じです。
一番嫌だったのは、面接の途中で『じゃあ、マスクを取ってもらえる?』と要求されたこと。一応は、『つけたままじゃ、表情も分からないからさ』といった言い訳めいたことを言ってましたが、容姿を確認しようとしているのがミエミエでした。コロナ禍の真っ最中でしたから、余計に気になりました。合格したからいいんですけどね(笑)」
現在はテレビ関連の制作会社に勤務する26歳の女性は、新卒の際、面接に行った舞台照明会社の面接が謎すぎたと話す。
「当時66歳の社長と二人っきりで面接することになったのですが、会議室のテーブルの上に、他の志望者の履歴書が無造作に並べられていました。狭い会議室だったし、こちらからも丸見えで、内心では『おいおい、個人情報は』と思ったけど、当然口にはしませんでした。
特に服装の指定はなかったので無難なパンツスーツで行ったところ、冗談ぽく『スーツで来たんだ。どうせならスカート穿いてこいよ』と言われたり、『ウチは休みないよ』『ブラックだよ』とか言われました。嫌だとは思いましたが、このくらいなら想定の範囲内。面接じたいは45分くらいで、あとは事前に提出していた作文の内容について話を聞かれたりしました。
それでひと通り面接をした後、最後に社長がテーブルに並べられた他の志望者の履歴書を指さして、『実はさ、うちに応募してきてる人の中で、1人連絡がとれない人がいるんだ。僕の携帯じゃ繋がらないから君の携帯からかけてほしい』と言ってきたんです。私の面接中ですよ。仕方なく、言われる通りに私の携帯から電話をかけましたよ。もう『この面接なに?』という戸惑いより、『困ったなあ、電話をかけられる相手の人も困るんじゃない?』としか思いませんでしたね。
結局、相手は電話に出なかったのですが、社長は追い打ちをかけるように『君か、今電話が繋がらない人のうちの1人は研修中に落とすから』と言ってきた。この募集では同時期に受けた人が6人いて、基本的には全員が採用される前提で、面接の後に研修を受けることになっていたのですが、突然そんなことを言われても、何が何やらですよ。
社長は最後に、テーブルの上の履歴書を指さして、『あ、それ隅っこにまとめて片付けといてくれる』と指示してきたのにはさすがに驚きました。結果的には6人全員が受かっていましたが、あの面接はいったい何だったのか今でも謎です」
(清談社)