「サウナブーム」がいわれて久しい。人気の施設ともなれば混みあうことがしょっちゅうで、時にはサウナ室の前に全裸の入場待ちの列ができる光景も……。これでは、理想的とされる“サウナ→水風呂→外気浴”のルーティーンも乱されてしまう。週4でサウナに通うマーケティングアナリストの渡辺広明氏が、対処法を探った。
***
【写真】混雑、水風呂、外気浴…条件がそろったサウナの「答え」は 東京都の中野区にある松本湯は、都内屈指のサウナ銭湯として知られる。昨年8月にリニューアルが行われフィンランド製のストーブが導入されたほか、定期的にミストが噴射される「オートロウリュ」の設備や、冷水と「ぬるめ」の2種類の水風呂が用意されている、サウナ好きにはたまらない施設である。銭湯であるため、入浴料は1回1000円とリーズナブルな点も見逃せない。

「熱」が一向に冷めないサウナブーム 唯一の欠点は「混雑」だ。休日はもちろんのこと、平日でもときに入場制限がかかる。9月の平日夜には女湯が規制されていたというから、“オジサンが入るもの”という従来のイメージを覆したサウナ人気のほどがうかがえる。「私もいちど訪問しました。店員さんの目が行き届いており、浴室は清潔。水風呂は150cmの深さがあり(※女湯は135cm)、銭湯サウナにありがちな“サウナは乾燥してカラカラ&水風呂はぬるい水道水”という問題点が完璧にクリアされていました。ただ、とても混んでいたのがネック。値段の安さから若者たちで浴室内が溢れていたところへ、高校生とおぼしきサウナーが6名入ってきた。完全に“ととのう”前に出てしまいました。また近くにいったら行きたいですが、混まない時間帯をねらいたいですね」 と語る渡辺氏。若者にも浸透するサウナブームの熱量を感じさせるエピソードだが、できれば混雑は避けたいもの。どういったサウナであれば快適に過ごせるのか。増える「貸し切り」利用のサウナ 渡辺氏が続ける。「私は普段、入浴回数券を使って自宅のちかくの銭湯に行っています。箱買いしたオロナミンCをポカリスエットで割った『オロポ』(※サウナ好きの間ではおなじみの飲み物)を水筒につめて通う、いわゆる“ホームサウナ”ですね。けっして有名な施設ではなく、サウナも水風呂もそこそこなのでいつも空いています。こういった自分だけのサウナを見つけるのがいちばん。とはいえ、家の近所にこうした施設がある方は少ないでしょう。わざわざ行くほどのサウナではないので、半分接待を兼ねた機会や、休日にサウナ好きの友人を誘って……という時にも使いにくいです。こういう連れだって行く客が増えたからサウナが混むんだ、という意見はさておき」 コロナ禍で増えたサウナの特徴のひとつに「ソロサウナ」がある。最大でも2人での利用を前提とした、個室式のサウナである。「店自体のスペースが小さいので立地がよく、駅前など通いやすいのがいいですよね。ただ、ソロサウナは、店舗の小ささゆえに水風呂がなく、冷水シャワーだけの店が多い。やっぱり水風呂がなきゃというユーザーは敬遠していますね。そのためか、最近は水風呂需要にもこたえられる『貸し切りプライベートサウナ』もできています」 たとえば、今年8月には銀座八丁目に「KUDOCHI」がオープンした。スタンダード、プレミアムVIP、プラチナVIPの計6室があり、全室に水風呂を完備。VIP室では熱波師によるアウフグースも体験できる。値段設定は、同伴者1名まで利用可能な90分6000円から、同伴5名までOKの120分26000円まで、いくつかのコースが用意されている(ほかナイト5時間パックあり)。さすがに銭湯サウナより値は張るものの、同行者でワリカンすれば、手が届かない値段ではない。なにより混雑のない快適なサウナライフのための投資と思えば、一考の余地ありかもしれない。「仕事を頑張った時に、自分へのご褒美で友人たちと麻布十番のLedian Spa(レディアンスパ)を利用します。スタンダードルーム3名120分19800円から。サウナは熱いですし水風呂も冷たくてなかなかいいですよ。受付をすませれば、他のお客さんと鉢あわずにサウナ室に行けるので、麻布という土地柄、芸能人も多そう。ただひとつ、外気浴が欠点ですかね。外気浴をするために外に出ると、目の前が雑居ビルやマンションなんですよ。そのため水着着用がマストですし、なんだか落ち着かなくて」 先の「KUDOCHI」にも、外気浴のスペースがなかった。水風呂の問題をクリアしてもまた別の課題が浮上してしまった……。「サウナカー」に見る可能性 ソロサウナからプライベートサウナという展開をみせるサウナ・シーンで、「サウナカー」というまたあらたな試みが注目を集めている。 読んで字のごとく、サウナを搭載した車で河原や湖畔へ行き、そこでサウナを楽しむスタイルだ。現地の川や湖が天然の水風呂で、屋外であるために外気浴の問題についてはいわずもがな。サウナカーを提供するサービスはいくつかあるが、今回は、この秋から本格的に事業を開始した「ザ・サウナカー」(ダイヤモンドグループ株式会社)の体験会を渡辺氏が取材した。 軽トラックの荷台に、ストーブを備えた木張りのサウナ室を搭載したのが「ザ・サウナカー」の設備である。同行するスタッフが薪をくべはじめ、10分もすればリア部分の煙突から煙がのぼりはじめ準備完了。室内の定員は4人だが、入れ替わりで利用すれば人数の制限はない。 温度計がなかったため正確な数字は不明ながら、サウナ室の温度は渡辺氏の体感で「80度後半といったところでしょうか」。セルフもロウリュもOKで、調子にのって水をかければ中に居られないほどアツアツになる。完全に温まったところで車を降りて、川へとダイブ。今回は、流れを泳ぐ小魚とともに、青空の下で水風呂を満喫することができた。しっかりと身体が冷えたら、河原に置かれたキャンプ椅子へと身体を沈める。 運営元の小田隆雄代表は、ザ・サウナカーをはじめた理由を次のように語る。「もともとサウナも自然も好きで、川の近くでサウナに入りたい』という気持ちがありました。『テントサウナ』というものはすでにあったのですが、意外と組み立てが面倒なんですよね。その点、サウナカーは現地まで乗りつけてしまえばいい。室内が布ではなく木張りというのも、テントサウナと差別化できる点ですね」 製作にかかった費用は、車代をのぞき150万円ほど。ゆくゆくは200台まで量産する予定のほか、サウナカーを造るキットの販売なども考えているという。「いやあ、なかなかいいんじゃないでしょうか。サウナ、水風呂、外気浴すべての条件が揃っていますよ。今度は個人的に利用したい」 とサウナカーにご満悦の渡辺氏。ザ・サウナカーでは、汐留発・返却で8名まで乗車できる送迎車が同行する7時間110000円のプランと、送迎なし5時間66000円のプランが用意されている。先述のとおり利用人数に制限はないので、頭数を揃えればそれだけお得になる。「仲間をあつめてBBQとサウナ、なんてシチュエーションにぴったりです。ただ、サウナカーで遊ぶなら、あんまり寒くならない今くらいの時期が限度なのでは。本格的な冬になると、水風呂代わりに川に入るにもキツくなってきます。まあ、本場フィンランドは凍った湖に飛び込むなんて話も聞きますし、逆にそこまでの“サウナ愛好家”たちであつまることができれば面白そうですけれど」 ようやく答えを見つけたかと思いきや、こんどは「季節」の問題が……「サウナ混みすぎ問題」は根深い。デイリー新潮編集部
東京都の中野区にある松本湯は、都内屈指のサウナ銭湯として知られる。昨年8月にリニューアルが行われフィンランド製のストーブが導入されたほか、定期的にミストが噴射される「オートロウリュ」の設備や、冷水と「ぬるめ」の2種類の水風呂が用意されている、サウナ好きにはたまらない施設である。銭湯であるため、入浴料は1回1000円とリーズナブルな点も見逃せない。
唯一の欠点は「混雑」だ。休日はもちろんのこと、平日でもときに入場制限がかかる。9月の平日夜には女湯が規制されていたというから、“オジサンが入るもの”という従来のイメージを覆したサウナ人気のほどがうかがえる。
「私もいちど訪問しました。店員さんの目が行き届いており、浴室は清潔。水風呂は150cmの深さがあり(※女湯は135cm)、銭湯サウナにありがちな“サウナは乾燥してカラカラ&水風呂はぬるい水道水”という問題点が完璧にクリアされていました。ただ、とても混んでいたのがネック。値段の安さから若者たちで浴室内が溢れていたところへ、高校生とおぼしきサウナーが6名入ってきた。完全に“ととのう”前に出てしまいました。また近くにいったら行きたいですが、混まない時間帯をねらいたいですね」
と語る渡辺氏。若者にも浸透するサウナブームの熱量を感じさせるエピソードだが、できれば混雑は避けたいもの。どういったサウナであれば快適に過ごせるのか。
渡辺氏が続ける。
「私は普段、入浴回数券を使って自宅のちかくの銭湯に行っています。箱買いしたオロナミンCをポカリスエットで割った『オロポ』(※サウナ好きの間ではおなじみの飲み物)を水筒につめて通う、いわゆる“ホームサウナ”ですね。けっして有名な施設ではなく、サウナも水風呂もそこそこなのでいつも空いています。こういった自分だけのサウナを見つけるのがいちばん。とはいえ、家の近所にこうした施設がある方は少ないでしょう。わざわざ行くほどのサウナではないので、半分接待を兼ねた機会や、休日にサウナ好きの友人を誘って……という時にも使いにくいです。こういう連れだって行く客が増えたからサウナが混むんだ、という意見はさておき」
コロナ禍で増えたサウナの特徴のひとつに「ソロサウナ」がある。最大でも2人での利用を前提とした、個室式のサウナである。
「店自体のスペースが小さいので立地がよく、駅前など通いやすいのがいいですよね。ただ、ソロサウナは、店舗の小ささゆえに水風呂がなく、冷水シャワーだけの店が多い。やっぱり水風呂がなきゃというユーザーは敬遠していますね。そのためか、最近は水風呂需要にもこたえられる『貸し切りプライベートサウナ』もできています」
たとえば、今年8月には銀座八丁目に「KUDOCHI」がオープンした。スタンダード、プレミアムVIP、プラチナVIPの計6室があり、全室に水風呂を完備。VIP室では熱波師によるアウフグースも体験できる。値段設定は、同伴者1名まで利用可能な90分6000円から、同伴5名までOKの120分26000円まで、いくつかのコースが用意されている(ほかナイト5時間パックあり)。さすがに銭湯サウナより値は張るものの、同行者でワリカンすれば、手が届かない値段ではない。なにより混雑のない快適なサウナライフのための投資と思えば、一考の余地ありかもしれない。
「仕事を頑張った時に、自分へのご褒美で友人たちと麻布十番のLedian Spa(レディアンスパ)を利用します。スタンダードルーム3名120分19800円から。サウナは熱いですし水風呂も冷たくてなかなかいいですよ。受付をすませれば、他のお客さんと鉢あわずにサウナ室に行けるので、麻布という土地柄、芸能人も多そう。ただひとつ、外気浴が欠点ですかね。外気浴をするために外に出ると、目の前が雑居ビルやマンションなんですよ。そのため水着着用がマストですし、なんだか落ち着かなくて」
先の「KUDOCHI」にも、外気浴のスペースがなかった。水風呂の問題をクリアしてもまた別の課題が浮上してしまった……。
ソロサウナからプライベートサウナという展開をみせるサウナ・シーンで、「サウナカー」というまたあらたな試みが注目を集めている。
読んで字のごとく、サウナを搭載した車で河原や湖畔へ行き、そこでサウナを楽しむスタイルだ。現地の川や湖が天然の水風呂で、屋外であるために外気浴の問題についてはいわずもがな。サウナカーを提供するサービスはいくつかあるが、今回は、この秋から本格的に事業を開始した「ザ・サウナカー」(ダイヤモンドグループ株式会社)の体験会を渡辺氏が取材した。
軽トラックの荷台に、ストーブを備えた木張りのサウナ室を搭載したのが「ザ・サウナカー」の設備である。同行するスタッフが薪をくべはじめ、10分もすればリア部分の煙突から煙がのぼりはじめ準備完了。室内の定員は4人だが、入れ替わりで利用すれば人数の制限はない。
温度計がなかったため正確な数字は不明ながら、サウナ室の温度は渡辺氏の体感で「80度後半といったところでしょうか」。セルフもロウリュもOKで、調子にのって水をかければ中に居られないほどアツアツになる。完全に温まったところで車を降りて、川へとダイブ。今回は、流れを泳ぐ小魚とともに、青空の下で水風呂を満喫することができた。しっかりと身体が冷えたら、河原に置かれたキャンプ椅子へと身体を沈める。
運営元の小田隆雄代表は、ザ・サウナカーをはじめた理由を次のように語る。
「もともとサウナも自然も好きで、川の近くでサウナに入りたい』という気持ちがありました。『テントサウナ』というものはすでにあったのですが、意外と組み立てが面倒なんですよね。その点、サウナカーは現地まで乗りつけてしまえばいい。室内が布ではなく木張りというのも、テントサウナと差別化できる点ですね」
製作にかかった費用は、車代をのぞき150万円ほど。ゆくゆくは200台まで量産する予定のほか、サウナカーを造るキットの販売なども考えているという。
「いやあ、なかなかいいんじゃないでしょうか。サウナ、水風呂、外気浴すべての条件が揃っていますよ。今度は個人的に利用したい」
とサウナカーにご満悦の渡辺氏。ザ・サウナカーでは、汐留発・返却で8名まで乗車できる送迎車が同行する7時間110000円のプランと、送迎なし5時間66000円のプランが用意されている。先述のとおり利用人数に制限はないので、頭数を揃えればそれだけお得になる。
「仲間をあつめてBBQとサウナ、なんてシチュエーションにぴったりです。ただ、サウナカーで遊ぶなら、あんまり寒くならない今くらいの時期が限度なのでは。本格的な冬になると、水風呂代わりに川に入るにもキツくなってきます。まあ、本場フィンランドは凍った湖に飛び込むなんて話も聞きますし、逆にそこまでの“サウナ愛好家”たちであつまることができれば面白そうですけれど」
ようやく答えを見つけたかと思いきや、こんどは「季節」の問題が……「サウナ混みすぎ問題」は根深い。
デイリー新潮編集部