東京オリンピック・パラリンピックを巡る談合事件で、テスト大会の入札が行われる約2年前の2016年に広告大手「電通」(東京都港区)がテスト大会と本大会の運営について検討した社内資料を、東京地検特捜部が押収していることが関係者への取材で判明した。大会組織委員会に社内人材を送り込み、各社と調整して入札の形骸化を図ることを示唆する内容だったという。特捜部は、電通が組織委とともに談合を主導したことを裏付ける証拠とみている模様だ。
【フローチャート】五輪談合はこういう構図 関係者によると、資料は当時組織委に出向していた社員が作成し、社内報告用に使われた。内容は、予定されているテスト大会と本大会の運営関連業務が競争入札になる可能性があるとした上で、上層部では電通と組織委が、現場では企業同士が連携して対応に当たるとの趣旨が記されていたという。また、電通の利益を最大化するため、適切な人材を組織委に送り込むといった記載もあった。 電通からは実際に、テスト大会を担当した組織委大会運営局に複数の社員が出向していた。電通幹部は特捜部の任意聴取に「社内資料は現場の一社員が作ったもので、組織決定したものではない」と反論しているという。 一方、組織委は当初、自ら数万人のアルバイトを雇用して競技会場を運営する方針だったが、コストが膨大になる恐れがある上、国際オリンピック委員会(IOC)から運営能力に懸念が示された。このため、17年、国際的なスポーツイベントの経験が豊富な電通に経費削減や効率的な運営方法の検討を依頼。電通は同年秋に組織委に提案書を出し、電通の対策チームが組織委を支える体制が決まったという。電通側のテスト大会の担当者は、特捜部に独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕された元スポーツ事業局長の逸見(へんみ)晃治容疑者(55)だった。 電通側は同じ頃、組織委との打ち合わせの中で、実績がある会社にテスト大会の運営を随意契約で業務委託する方法を提案。組織委の上層部はこの時点で随契を正式採用しなかったが、大会運営局元次長の森泰夫容疑者(55)=同法違反容疑で逮捕=が電通の対策チームとともに、随契を前提に各社の実績や応札希望を一覧表にまとめていったとされる。 これに対して、組織委内部では財務省や東京都から出向した幹部から入札にすべきだという声が上がり、事業者の公募まで約1カ月に迫った18年3月にテスト大会の計画立案業務のみ競争入札を実施することが決まった。入札までに時間がなかったことから、元次長らは元々は随契を前提にした一覧表を続けて活用し、落札予定者を割り振った疑いが持たれている。元次長は特捜部に「五輪を成功させるためだった」と電通側とのやり取りを認め、逸見元局長も談合に当たるとの認識を示しているという。 ある落札企業の関係者は「随意契約の流れが、突然入札に切り替わった。組織委の上層部も適正な入札は期待できないとうすうす分かっていたはずだ」と述べた。また、電通は14日、第三者委員会を速やかに設置し、原因の究明を進めると発表した。電通ライブは容疑内容から除外 特捜部と公正取引委員会が22年11月に家宅捜索した落札企業8社のうち、電通子会社のイベント会社「電通ライブ」(千代田区)が独禁法違反の容疑内容から除外されていることが関係者への取材で判明した。談合の疑いがあるのは、電通▽博報堂(港区)▽ADKホールディングス(同)▽東急エージェンシー(同)の広告4社と、セレスポ(豊島区)▽フジクリエイティブコーポレーション(FCC、江東区)▽セイムトゥー(千代田区)のイベント3社の計7社。 特捜部は今月8日、電通に加え、容疑を否認しているとされるセレスポとFCCの担当者も逮捕している。残る4社の担当者は容疑を認めているとみられ、在宅で捜査が進められている模様だ。【二村祐士朗、井口慎太郎、松尾知典、北村秀徳】
関係者によると、資料は当時組織委に出向していた社員が作成し、社内報告用に使われた。内容は、予定されているテスト大会と本大会の運営関連業務が競争入札になる可能性があるとした上で、上層部では電通と組織委が、現場では企業同士が連携して対応に当たるとの趣旨が記されていたという。また、電通の利益を最大化するため、適切な人材を組織委に送り込むといった記載もあった。
電通からは実際に、テスト大会を担当した組織委大会運営局に複数の社員が出向していた。電通幹部は特捜部の任意聴取に「社内資料は現場の一社員が作ったもので、組織決定したものではない」と反論しているという。
一方、組織委は当初、自ら数万人のアルバイトを雇用して競技会場を運営する方針だったが、コストが膨大になる恐れがある上、国際オリンピック委員会(IOC)から運営能力に懸念が示された。このため、17年、国際的なスポーツイベントの経験が豊富な電通に経費削減や効率的な運営方法の検討を依頼。電通は同年秋に組織委に提案書を出し、電通の対策チームが組織委を支える体制が決まったという。電通側のテスト大会の担当者は、特捜部に独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕された元スポーツ事業局長の逸見(へんみ)晃治容疑者(55)だった。
電通側は同じ頃、組織委との打ち合わせの中で、実績がある会社にテスト大会の運営を随意契約で業務委託する方法を提案。組織委の上層部はこの時点で随契を正式採用しなかったが、大会運営局元次長の森泰夫容疑者(55)=同法違反容疑で逮捕=が電通の対策チームとともに、随契を前提に各社の実績や応札希望を一覧表にまとめていったとされる。
これに対して、組織委内部では財務省や東京都から出向した幹部から入札にすべきだという声が上がり、事業者の公募まで約1カ月に迫った18年3月にテスト大会の計画立案業務のみ競争入札を実施することが決まった。入札までに時間がなかったことから、元次長らは元々は随契を前提にした一覧表を続けて活用し、落札予定者を割り振った疑いが持たれている。元次長は特捜部に「五輪を成功させるためだった」と電通側とのやり取りを認め、逸見元局長も談合に当たるとの認識を示しているという。
ある落札企業の関係者は「随意契約の流れが、突然入札に切り替わった。組織委の上層部も適正な入札は期待できないとうすうす分かっていたはずだ」と述べた。また、電通は14日、第三者委員会を速やかに設置し、原因の究明を進めると発表した。
電通ライブは容疑内容から除外
特捜部と公正取引委員会が22年11月に家宅捜索した落札企業8社のうち、電通子会社のイベント会社「電通ライブ」(千代田区)が独禁法違反の容疑内容から除外されていることが関係者への取材で判明した。談合の疑いがあるのは、電通▽博報堂(港区)▽ADKホールディングス(同)▽東急エージェンシー(同)の広告4社と、セレスポ(豊島区)▽フジクリエイティブコーポレーション(FCC、江東区)▽セイムトゥー(千代田区)のイベント3社の計7社。
特捜部は今月8日、電通に加え、容疑を否認しているとされるセレスポとFCCの担当者も逮捕している。残る4社の担当者は容疑を認めているとみられ、在宅で捜査が進められている模様だ。【二村祐士朗、井口慎太郎、松尾知典、北村秀徳】