「おかしい…」岸田首相を救った漁師 語った容疑者確保の一部始終

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約200人もの聴衆の中で、斜め前にいた男性の動きが気になった。何かを放り投げたと思ったら、さらに手元を動かしていた。「おかしい」。無我夢中でとっさに飛びかかっていた。地面に組み伏せた男性は最後まで抵抗せず、言葉を発することはなかった。
容疑者ヘッドロック 「漁港のおっちゃん」に称賛 この男性は、威力業務妨害容疑で現行犯逮捕された木村隆二容疑者(24)だった。和歌山市で岸田文雄首相に向けて爆発物が投げつけられた事件。木村容疑者を現場で取り押さえた漁師の男性(54)が16日、報道各社の取材に事件の一部始終を語った。

底引き網の漁師として働く男性は15日午前、岸田首相が衆院補選の候補者の応援演説に訪れると聞き、雑賀崎(さいかざき)漁港を訪れていた。会場は屋根付きの作業スペース。午前11時20分ごろに現地に到着した岸田首相は地元の海産物を試食して記念撮影に応じ、演台近くに移動していった。とっさに飛びかかり、自然と首に手を… 「もうすぐ始まるな。写真を撮ろう」。男性は集まった約200人の聴衆の中で、岸田首相がいる前方へと進んだ。すると、左前にいた木村容疑者が何かを前方に投げたのが見えた。黒っぽかった。再び容疑者に目をやると、まだ手を動かしている。「おかしい」。とっさに飛びかかった。自然と容疑者の首に手を回し、手にあったものを一心不乱に払いのけた。 小学校時代に柔道の経験があった男性。駆け付けてきた警察官らと、木村容疑者を地面に押さえ付けた。もみ合ったのは数十秒から1分ぐらいとの記憶だ。ただ、次から次へと人が覆いかぶさってきた。「ドン」。突然背後から爆発音がして恐怖が走ったが、緊迫した時間は無我夢中のまま過ぎていった。 気がつくと、男性は地面で肘をすりむき、ズボンも破けていた。後で知ったが、木村容疑者はナイフも持っていた。抵抗することなく、無言だった木村容疑者。警察官ら数人に体ごと持ち上げられるなどして、パトカーに乗せられていった。 男性が思い出していたのは約9カ月前、奈良市で演説中の安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件だった。「こんな田舎町なのに同じような事件が起こり、ショックが大きい。容疑者が手に持っていたものは分からなかったが、爆発していたらと考えると、命が危なかった」と振り返った。 15日夕方、自身の携帯電話が鳴った。「本当にありがとうございます」。相手は岸田首相だった。「けががなくて良かったですね」と応じた。家族らから「よくあんなことができたね」とたたえられたという男性。日に焼けた顔を照れくさそうに少し緩ませた。【加藤敦久】
この男性は、威力業務妨害容疑で現行犯逮捕された木村隆二容疑者(24)だった。和歌山市で岸田文雄首相に向けて爆発物が投げつけられた事件。木村容疑者を現場で取り押さえた漁師の男性(54)が16日、報道各社の取材に事件の一部始終を語った。
底引き網の漁師として働く男性は15日午前、岸田首相が衆院補選の候補者の応援演説に訪れると聞き、雑賀崎(さいかざき)漁港を訪れていた。会場は屋根付きの作業スペース。午前11時20分ごろに現地に到着した岸田首相は地元の海産物を試食して記念撮影に応じ、演台近くに移動していった。
とっさに飛びかかり、自然と首に手を…
「もうすぐ始まるな。写真を撮ろう」。男性は集まった約200人の聴衆の中で、岸田首相がいる前方へと進んだ。すると、左前にいた木村容疑者が何かを前方に投げたのが見えた。黒っぽかった。再び容疑者に目をやると、まだ手を動かしている。「おかしい」。とっさに飛びかかった。自然と容疑者の首に手を回し、手にあったものを一心不乱に払いのけた。
小学校時代に柔道の経験があった男性。駆け付けてきた警察官らと、木村容疑者を地面に押さえ付けた。もみ合ったのは数十秒から1分ぐらいとの記憶だ。ただ、次から次へと人が覆いかぶさってきた。「ドン」。突然背後から爆発音がして恐怖が走ったが、緊迫した時間は無我夢中のまま過ぎていった。
気がつくと、男性は地面で肘をすりむき、ズボンも破けていた。後で知ったが、木村容疑者はナイフも持っていた。抵抗することなく、無言だった木村容疑者。警察官ら数人に体ごと持ち上げられるなどして、パトカーに乗せられていった。
男性が思い出していたのは約9カ月前、奈良市で演説中の安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件だった。「こんな田舎町なのに同じような事件が起こり、ショックが大きい。容疑者が手に持っていたものは分からなかったが、爆発していたらと考えると、命が危なかった」と振り返った。
15日夕方、自身の携帯電話が鳴った。「本当にありがとうございます」。相手は岸田首相だった。「けががなくて良かったですね」と応じた。家族らから「よくあんなことができたね」とたたえられたという男性。日に焼けた顔を照れくさそうに少し緩ませた。【加藤敦久】

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