千葉県庁や習志野市役所などで男性用トイレにサニタリーボックス(汚物入れ)を設置する動きが広がっている。
前立腺がんなどの病気や加齢に伴い、尿漏れパッドを使用する男性に配慮した取り組みだ。商業施設でも同様の動きが進んでいるが、必要な場所への設置はまだ不十分との指摘が上がっている。(猪塚さやか)
県の各庁舎では7月から、1階の男性用トイレ計12か所にサニタリーボックスを設置した。これまでは、女性用トイレや多目的トイレに限定されてきた。現時点では、来庁者が多い1階のみに設置されているが、利用状況を見て、2階以上に広げることも検討する。
県内の自治体では、習志野市が4月、市庁舎の1、2階などのトイレ計12か所で設置を始め、松戸市も試験的に市庁舎の本館と新館の1階トイレに置いている。千葉市は、来年6月に開庁する新庁舎の男性トイレ全てに設置する方針だ。
こうした動きの背景には、使用済みパッドを捨てられず、不便を感じてきたがん患者らが声を上げ、男性の尿漏れ問題が認知され始めたことがある。トイレの環境改善などに取り組む一般社団法人「日本トイレ協会」による2月のアンケート調査では、パッドなどを使用する男性の7割弱が、サニタリーボックスがなくて困った経験があると回答した。
サニタリーボックスの設置から月日がたち、その効果を感じている商業施設もある。
京成八千代台駅(八千代市)近くの商業施設「ユアエルム八千代台店」は、3年ほど前から施設内の全ての個室トイレに金属製の蓋付きボックスを置いている。パッドの利用者だけでなく、育児中の男性からも「おむつを捨てる場所がない」という声を受けた対応という。設置後は「困っている」との声は減ったといい、担当者は「快適にトイレを利用してもらえるようになった結果」と話す。
ただ、サニタリーボックスの設置はまだ不十分で、尿漏れパッドやおむつを使っていることを周囲に話すことに抵抗がある男性は少なくない。日本トイレ協会の担当者は「匿名のアンケートなどで利用者の要望を把握することが大切で、施設管理者には、必要な場所への整備を進めてほしい」と訴えている。