陸上自衛隊「日野基本射撃場」(岐阜市)で起きた発砲事件で、死傷した3人の自衛官は、殺人容疑で送検された自衛官候補生の男(18)を射撃場以外で直接指導する担当ではなかったことが、陸自への取材でわかった。
ただ、2発の銃弾を受けた自衛官もおり、岐阜県警と自衛隊の警務隊は、男が強固な殺意を持って発砲したとみて捜査している。
陸自によると、男は4月に入隊し、第35普通科連隊(名古屋市守山区)の教育隊で自衛官になるための教育・訓練を受けていた。勤務態度については「問題なし」と評価されていた。
一方、死亡した菊松安親1曹(52)と負傷した原悠介3曹(25)は同連隊の新隊員教育隊の本部に所属。訓練計画の検討や備品の手配を担当しており、男と日常的に接する立場ではなかった。
死亡した八代航佑3曹(25)は同隊で4~6人の自衛官候補生のグループを指導していたが、男が所属していたのとは別のグループを受け持っていた。
男と3人との間には、射撃場以外の接点は確認されていないが、男は高い殺傷能力を持つ小銃を3人に向けて撃っており、菊松1曹は胸に2発の弾を受けていた。捜査関係者は「殺意があったことは明らかだ」と指摘する。
一方、陸自トップの森下泰臣・陸幕長は15日の定例記者会見で、今回の事件を受けて全国の部隊で中止していた射撃訓練について、隊員の心情や健康状態を確実に把握することなどを条件に、順次再開する方針を示した。