佐賀県鳥栖市の住宅で3月、両親を殺害したとして、殺人罪に問われた元大学生の長男(19)に対する裁判員裁判が7日、佐賀地裁であり、検察側は「犯行は危険かつ執拗(しつよう)で極めて悪質」として懲役28年を求刑した。弁護側は「父親からの虐待が原因で起こった事件だ」とし、家裁に移送して保護処分とするよう求めた。判決は15日。
長男「父親へ申し訳ない」母にも「恩をあだで」 起訴状によると、長男は3月9日、鳥栖市の実家で50代の父親の胸や首、40代の母親の胸や背中をそれぞれナイフで刺すなどし、失血死させたとされる。

検察側は争点となっている、母親への殺意について、殺傷力の高いナイフで体の中心部を7カ所刺している点から殺意があったと主張。「社会に与えた衝撃や悪影響は大きく、保護処分は許容しがたい」と指摘し、学校の成績などを父親から厳しくしかられ、殺意を抱いた経緯についても「酌むべき点はあるが、犯行動機自体は身勝手で、酌量には限度がある」とした。 弁護側は、母親への殺意について「父親を殺すことに集中し、母のことを考える余裕がなかった」と語った長男の供述は信用できると主張。「母親を殺す動機はなく、死んでもかまわないと考えていたとも考えにくい」と述べた。 その上で「事件は父親の虐待がなければ起きていない」と指摘。被害者が身内で、遺族はできるだけ軽い処分を求めている点に触れ、「保護処分が許容される事情がある」と訴えた。家裁に移送しない場合は「懲役5年が相当」と主張した。 長男は審理の最後に「父親を殺害したことは、他に道が見つからず後悔している。母親にも申し訳なく、息が詰まるようだ。償いの道を考え続けたい」と述べた。【五十嵐隆浩】
起訴状によると、長男は3月9日、鳥栖市の実家で50代の父親の胸や首、40代の母親の胸や背中をそれぞれナイフで刺すなどし、失血死させたとされる。
検察側は争点となっている、母親への殺意について、殺傷力の高いナイフで体の中心部を7カ所刺している点から殺意があったと主張。「社会に与えた衝撃や悪影響は大きく、保護処分は許容しがたい」と指摘し、学校の成績などを父親から厳しくしかられ、殺意を抱いた経緯についても「酌むべき点はあるが、犯行動機自体は身勝手で、酌量には限度がある」とした。
弁護側は、母親への殺意について「父親を殺すことに集中し、母のことを考える余裕がなかった」と語った長男の供述は信用できると主張。「母親を殺す動機はなく、死んでもかまわないと考えていたとも考えにくい」と述べた。
その上で「事件は父親の虐待がなければ起きていない」と指摘。被害者が身内で、遺族はできるだけ軽い処分を求めている点に触れ、「保護処分が許容される事情がある」と訴えた。家裁に移送しない場合は「懲役5年が相当」と主張した。
長男は審理の最後に「父親を殺害したことは、他に道が見つからず後悔している。母親にも申し訳なく、息が詰まるようだ。償いの道を考え続けたい」と述べた。【五十嵐隆浩】