文部科学省は、2021年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」を発表した。それによると、小中学校、高校、特別支援学校の「いじめ」の認知件数は61万5351件で、前年度を上回った。
【画像】「いじめ認知件数」が多いのはどこの都道府県か?「児童生徒1000人あたりの認知件数」は全国平均で47.7件。都道府県(政令指定都市を除く)の認知件数の差は最大で9.9倍で、地域によって格差が大きいことが明らかになった。各自治体の教育委員会に話を聞いてみると、各自治体での対応が統一されておらず、単純化できない実態も見えてきた。
iStock.com新潟市は全国平均の5倍の認知数 いじめの認知件数を都道府県別に並べると、最多の東京都(6万569件)をはじめ、人口が多い地域が目立つ。逆に最小は福井県(1420件)、富山県(1539件)、愛媛県(1782件)となっている。 そこで割合を示す「児童生徒1000人あたりの認知件数」を比べてみると、最多は新潟市で232.2だった。単純計算で約4人に1人はいじめに関わっていることになる。「全国平均の5倍の認知数になっています。認知件数が上がる工夫としては、『いじめアンケート』は年3回以上しています。小学校は低学年、中学年、高学年用に内容を変えて、低学年用には、わかりやすい表現にして、ルビを使っています。また、該当箇所に『◯』をつける形なので、周囲の子に気が付かれないように配慮しています。昨年までは教職員用に『初期対応ハンドブック』を配布していましたが、現在はネットで配信をしており、一般市民も閲覧できます」(新潟市) 実は「認知率が低い」からといって、必ずしも「いじめが少ない」とは言えない。なぜなら、いじめの発生そのものを確認できないためだ。一方、「認知率が高い」ということは、小さいいじめであっても、把握していることを意味する。さまざまな方法を使って、いじめを認知する努力をしているのだろう。 そもそも、文科省は、いじめの定義を広く扱う方針を示している。従前は「けんかを除く」との記述があった。しかし、「いじめの防止のための基本方針」の改訂(17年3月14日)では、けんかやふざけ合いでも児童生徒の感じる被害性に着目して、いじめに該当するか否かを判断する、としている。この方針が浸透していれば、認知率が他の自治体より高くなることが考えられる。 次いで仙台市(152.3)。2014年に市内の中学生が自殺した問題を受けて、市は原則として全中学校に「いじめ対策専任教諭」を配置した。この教諭は授業を行うものの、クラスの担任を持たず、いじめ対策に専念する。また、小学校には非常勤の「いじめ対策支援員」も置いている。保護者にアンケートを取っているのは山形県のみ「いじめの認知件数が多いのは今年に限ったことではありません。いじめは軽微なものを含めて積極的に認知していくことにしています。いじめの認知のきっかけで多いのは、アンケートです。年1回、市として一斉に行なっています。その際、家庭で回答することになるのですが、親子で相談をしながら家庭で回答することになります。こうしたことで、子どもたちが訴えやすくなっているのではないでしょうか」(仙台市) いじめの認知や解消について、一つの手段として挙げられているのは、仙台市のような「いじめ対策専任教諭」だ。いじめ防止対策推進法成立の要因になった、いじめ自殺があった大津市でも配置された。岐阜市でも「いじめ対策監」が置かれている。 山形県(126.4)は、都道府県別で見た時には最多の認知率となっている。「2020年度も認知率は多かったのですが、県のいじめ防止の基本方針が改定された17年度から年2回以上、児童生徒だけでなく、保護者へのアンケートも行なっています。できるだけいじめを早期発見することに努めています。アンケートは県で様式を作成しています。アンケートの結果、いじめの大小に関わらず、児童生徒と面談をして、解決に努めています。把握している範囲では、県で様式を決め、かつ、保護者にアンケートを取っているのは本県のみです」(山形県)全国の約350校の学校で「スクールサイン」を採用 都道府県別で2番目に認知率が多いのは新潟県(97.4)だ。「本県はいじめの認知件数が多く、2020年度も都道府県別で4番目でした。これはいじめを積極的に認知している方針が県全体に浸透してきたと言えます。県立学校には年2回、『いじめ対策総点検』を実施しています。各学校のいじめの認知、組織で対応するための体制をチェックしています。また、公立小中学校に対しては年1回、生徒指導の自己点検を行なっています。また、21年度から教職員向けのいじめのチェック項目を答えてもらうことにしており、その正答率を県教委として把握しています。その結果について指導体制を分析し、市町村教委に伝えています」(新潟県)「いじめ見逃しゼロ」をスローガンに掲げる大分県(88.2)は、都道府県別では3番目だ。「いじめの認知件数は、発生件数ではない。そのため、小さないじめも見逃さず、安易に『生徒間トラブル』としないように心がけています。『いじめアンケート』は学期に1回以上、行なっています。県教委はそのアンケート案を例示していますが、学校によっては内容を実情に合わせて変えています。24時間SOSダイヤルはどの自治体もしていると思いますが、それに加えて、県立学校では、『スクールサイン』という匿名の通報システムを活用しています」(大分県)「スクールサイン」とは、民間企業が運営するネットいじめ対策「スクールガーディアン」のサービスの一つ。いつでもどこからでも匿名でいじめの目撃情報を通報できるシステム。メッセージアプリやSNSなどから投稿できる。全国の公立・私立の学校を含めて300校以上で採用されている。都道府県レベルでは山形県、熊本県でも導入している。また、別の企業でも匿名通報・報告アプリを整備しており、自治体がそのサービスを活用しているところもある。調査では「いじめ解消率」についても公表 一方で、認知件数がもっとも少ないのは愛媛県(12.8)だ。「たしかに昨年よりは多く、やや増加しています。しかし、認知件数は、他県と比較しての数値を評価の対象にしていません。県としては、どの学校でも起こりうるとして積極的にいじめを認知するように学校に指導しています。子どもや保護者向けのいじめアンケートの内容や回数は、学校の裁量に任せています」(愛媛県) さいたま市(13.1)は、政令指定都市別で最少になった。「もちろん、見逃しているいじめがあるのは否定できません。ただし、『いじめ撲滅強化月間』を設けるなど、市としてはいじめの未然防止に努めています。また、アンケートは学期の頭に行なうなど、年3回は必ず行なっています。学校によっては月毎にアンケートを実施しています。それ以外にも長期休暇の前には、いじめ限定ではないが、学校生活上の悩みを聞く機会を設けています」(さいたま市) 同調査では「解消率」についても公表している。いじめが「解消している状態」というのは、(1)いじめが止んでいる状態が相当の期間(少なくとも3ヶ月を目安とする)継続していること、(2)被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと――の要件が満たされていることを指す。解消率がもっとも低いの政令指定都市は… 解消率が都道府県と政令指定都市あわせて高いのは北九州市(97.2%)。「いじめの認知件数が減少しました。コロナ禍で、他の自治体と比べて、オンライン授業を多く行いました。そのため、直接的に人との関わりが減ったために、児童生徒間のトラブルも減少したと思われます。少なくとも、学校では学期ごとのアンケートをしています。 また、教育委員会としては9月に、全市一斉のアンケートと全員面談をしています。これは、アンケートで気になる児童生徒だけでなく、全員の面談をすることで、特定の子に何かがあると悟られないメリットがあります。このアンケートと面談は、10年近くしています。いじめ防止対策推進法ができたというのは大きいです」(北九州市) 一方、解消率がもっとも低いのは名古屋市(55.4%)だ。「いじめの行為が3ヶ月止んでいることで『解消』になりますが、その時点で本人や保護者に苦痛を感じていないかを確認しています。加害児童生徒から謝罪があったり、指導がなされた後も確認するように学校に指導をしています。 ただし、簡単に解消せずに、慎重に判断しています。その後も経過を見ることも大切です。他の自治体と比べずに、絶対評価で判断すると、それらのことを学校に周知し、積極的に対応をしていきます。解消率は年々下がっていますが、学校によっても実態が違い、ケース・バイ・ケースで判断しなければなりません」(名古屋市) ついで低いのは千葉市(60.0%)だ。「場合によっては、3ヶ月よりも長い期間、より丁寧に子どもの様子を見ているということで、解消率の数値が上がっていません。もちろん、本人および保護者にも心身の苦痛があるかどうかを確認して、解消の判断をしています。なるべく解消に向けて、事実確認をして、再発防止していきます。管理職が若返っていますので、いじめの定義など管理職が知らないといけないことについて、研修に力を入れています」(千葉市)北海道のいじめ解消率が高い背景 都道府県別でいうと、「解消率」最多は北海道(95.3%)だった。「いじめの積極的な認知は、いじめ対応での重要な第一歩。認知率は他の自治体と比べるとやや低いが、全教職員が法令による定義を再確認することや、認知件数がない場合は、児童生徒や保護者に公表し、検証をあおぐことをしています。道としてのアンケートを年2回、そのほか、各学校で独自のアンケートを行なっています。 解消率が高いことは、いじめの早期発見・早期対応ができていると受け止めています。解消率が高い背景としては、小中学校で指定する『中1ギャップ問題未然防止プログラム』をし、居場所づくり・絆づくり・環境づくりを進めています。また、高校でおこなっている『高校生ステップアッププログラム授業』を行い、人間関係を形成する力、コミュニケーション能力の育成もしています。さらには、校内研修でいじめに対する教職員の指導力向上を図っています」(北海道) ちなみに、「中1ギャップ」という用語には定義はない。小6から中1にかけていじめや不登校が急増するように見えていることから、一部で使われることがある。いじめに関係する児童生徒の増加 都道府県単位での「解消率」最小は静岡県(65.3%)となった。「文科省も言っているように、いじめの認知=学校が丁寧に子どもに関わった証の数字としています。今後もいじめの認知を伸ばしていこうと思っています。いじめの解消の捉え方としては、加害児童生徒が謝罪をして、解消というわけではなく、いじめられた子の気持ちや考え方にそって、見守っています。 県としては、相当期間というところを目安である『3ヶ月』にとらわれないようにしています。いじめも複雑化し、いじめに関係する児童生徒も増えています。発見しにくいいじめも増えています。結果として、解消率が上がっていません。粘り強く対応をしています」(静岡県)本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て判断 文科省の発表は、「1000人あたりの重大事態発生件数」についても明らかにしている。重大事態というのは、いじめ防止対策推進法に規定されているもの。「第1号重大事態」は、生命、心身または財産に重大な被害があると認められるもの。自殺や自殺未遂、自傷行為、金品を奪われるものがこれに当たる。「第2号重大事態」は、相当期間欠席しているもので、不登校がこれに当たる。 都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。認知率が高いところでは独自の取り組みが 自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県) 認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。 しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。(渋井 哲也)
「児童生徒1000人あたりの認知件数」は全国平均で47.7件。都道府県(政令指定都市を除く)の認知件数の差は最大で9.9倍で、地域によって格差が大きいことが明らかになった。各自治体の教育委員会に話を聞いてみると、各自治体での対応が統一されておらず、単純化できない実態も見えてきた。
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いじめの認知件数を都道府県別に並べると、最多の東京都(6万569件)をはじめ、人口が多い地域が目立つ。逆に最小は福井県(1420件)、富山県(1539件)、愛媛県(1782件)となっている。
そこで割合を示す「児童生徒1000人あたりの認知件数」を比べてみると、最多は新潟市で232.2だった。単純計算で約4人に1人はいじめに関わっていることになる。
「全国平均の5倍の認知数になっています。認知件数が上がる工夫としては、『いじめアンケート』は年3回以上しています。小学校は低学年、中学年、高学年用に内容を変えて、低学年用には、わかりやすい表現にして、ルビを使っています。また、該当箇所に『◯』をつける形なので、周囲の子に気が付かれないように配慮しています。昨年までは教職員用に『初期対応ハンドブック』を配布していましたが、現在はネットで配信をしており、一般市民も閲覧できます」(新潟市)
実は「認知率が低い」からといって、必ずしも「いじめが少ない」とは言えない。なぜなら、いじめの発生そのものを確認できないためだ。一方、「認知率が高い」ということは、小さいいじめであっても、把握していることを意味する。さまざまな方法を使って、いじめを認知する努力をしているのだろう。
そもそも、文科省は、いじめの定義を広く扱う方針を示している。従前は「けんかを除く」との記述があった。しかし、「いじめの防止のための基本方針」の改訂(17年3月14日)では、けんかやふざけ合いでも児童生徒の感じる被害性に着目して、いじめに該当するか否かを判断する、としている。この方針が浸透していれば、認知率が他の自治体より高くなることが考えられる。
次いで仙台市(152.3)。2014年に市内の中学生が自殺した問題を受けて、市は原則として全中学校に「いじめ対策専任教諭」を配置した。この教諭は授業を行うものの、クラスの担任を持たず、いじめ対策に専念する。また、小学校には非常勤の「いじめ対策支援員」も置いている。
保護者にアンケートを取っているのは山形県のみ「いじめの認知件数が多いのは今年に限ったことではありません。いじめは軽微なものを含めて積極的に認知していくことにしています。いじめの認知のきっかけで多いのは、アンケートです。年1回、市として一斉に行なっています。その際、家庭で回答することになるのですが、親子で相談をしながら家庭で回答することになります。こうしたことで、子どもたちが訴えやすくなっているのではないでしょうか」(仙台市) いじめの認知や解消について、一つの手段として挙げられているのは、仙台市のような「いじめ対策専任教諭」だ。いじめ防止対策推進法成立の要因になった、いじめ自殺があった大津市でも配置された。岐阜市でも「いじめ対策監」が置かれている。 山形県(126.4)は、都道府県別で見た時には最多の認知率となっている。「2020年度も認知率は多かったのですが、県のいじめ防止の基本方針が改定された17年度から年2回以上、児童生徒だけでなく、保護者へのアンケートも行なっています。できるだけいじめを早期発見することに努めています。アンケートは県で様式を作成しています。アンケートの結果、いじめの大小に関わらず、児童生徒と面談をして、解決に努めています。把握している範囲では、県で様式を決め、かつ、保護者にアンケートを取っているのは本県のみです」(山形県)全国の約350校の学校で「スクールサイン」を採用 都道府県別で2番目に認知率が多いのは新潟県(97.4)だ。「本県はいじめの認知件数が多く、2020年度も都道府県別で4番目でした。これはいじめを積極的に認知している方針が県全体に浸透してきたと言えます。県立学校には年2回、『いじめ対策総点検』を実施しています。各学校のいじめの認知、組織で対応するための体制をチェックしています。また、公立小中学校に対しては年1回、生徒指導の自己点検を行なっています。また、21年度から教職員向けのいじめのチェック項目を答えてもらうことにしており、その正答率を県教委として把握しています。その結果について指導体制を分析し、市町村教委に伝えています」(新潟県)「いじめ見逃しゼロ」をスローガンに掲げる大分県(88.2)は、都道府県別では3番目だ。「いじめの認知件数は、発生件数ではない。そのため、小さないじめも見逃さず、安易に『生徒間トラブル』としないように心がけています。『いじめアンケート』は学期に1回以上、行なっています。県教委はそのアンケート案を例示していますが、学校によっては内容を実情に合わせて変えています。24時間SOSダイヤルはどの自治体もしていると思いますが、それに加えて、県立学校では、『スクールサイン』という匿名の通報システムを活用しています」(大分県)「スクールサイン」とは、民間企業が運営するネットいじめ対策「スクールガーディアン」のサービスの一つ。いつでもどこからでも匿名でいじめの目撃情報を通報できるシステム。メッセージアプリやSNSなどから投稿できる。全国の公立・私立の学校を含めて300校以上で採用されている。都道府県レベルでは山形県、熊本県でも導入している。また、別の企業でも匿名通報・報告アプリを整備しており、自治体がそのサービスを活用しているところもある。調査では「いじめ解消率」についても公表 一方で、認知件数がもっとも少ないのは愛媛県(12.8)だ。「たしかに昨年よりは多く、やや増加しています。しかし、認知件数は、他県と比較しての数値を評価の対象にしていません。県としては、どの学校でも起こりうるとして積極的にいじめを認知するように学校に指導しています。子どもや保護者向けのいじめアンケートの内容や回数は、学校の裁量に任せています」(愛媛県) さいたま市(13.1)は、政令指定都市別で最少になった。「もちろん、見逃しているいじめがあるのは否定できません。ただし、『いじめ撲滅強化月間』を設けるなど、市としてはいじめの未然防止に努めています。また、アンケートは学期の頭に行なうなど、年3回は必ず行なっています。学校によっては月毎にアンケートを実施しています。それ以外にも長期休暇の前には、いじめ限定ではないが、学校生活上の悩みを聞く機会を設けています」(さいたま市) 同調査では「解消率」についても公表している。いじめが「解消している状態」というのは、(1)いじめが止んでいる状態が相当の期間(少なくとも3ヶ月を目安とする)継続していること、(2)被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと――の要件が満たされていることを指す。解消率がもっとも低いの政令指定都市は… 解消率が都道府県と政令指定都市あわせて高いのは北九州市(97.2%)。「いじめの認知件数が減少しました。コロナ禍で、他の自治体と比べて、オンライン授業を多く行いました。そのため、直接的に人との関わりが減ったために、児童生徒間のトラブルも減少したと思われます。少なくとも、学校では学期ごとのアンケートをしています。 また、教育委員会としては9月に、全市一斉のアンケートと全員面談をしています。これは、アンケートで気になる児童生徒だけでなく、全員の面談をすることで、特定の子に何かがあると悟られないメリットがあります。このアンケートと面談は、10年近くしています。いじめ防止対策推進法ができたというのは大きいです」(北九州市) 一方、解消率がもっとも低いのは名古屋市(55.4%)だ。「いじめの行為が3ヶ月止んでいることで『解消』になりますが、その時点で本人や保護者に苦痛を感じていないかを確認しています。加害児童生徒から謝罪があったり、指導がなされた後も確認するように学校に指導をしています。 ただし、簡単に解消せずに、慎重に判断しています。その後も経過を見ることも大切です。他の自治体と比べずに、絶対評価で判断すると、それらのことを学校に周知し、積極的に対応をしていきます。解消率は年々下がっていますが、学校によっても実態が違い、ケース・バイ・ケースで判断しなければなりません」(名古屋市) ついで低いのは千葉市(60.0%)だ。「場合によっては、3ヶ月よりも長い期間、より丁寧に子どもの様子を見ているということで、解消率の数値が上がっていません。もちろん、本人および保護者にも心身の苦痛があるかどうかを確認して、解消の判断をしています。なるべく解消に向けて、事実確認をして、再発防止していきます。管理職が若返っていますので、いじめの定義など管理職が知らないといけないことについて、研修に力を入れています」(千葉市)北海道のいじめ解消率が高い背景 都道府県別でいうと、「解消率」最多は北海道(95.3%)だった。「いじめの積極的な認知は、いじめ対応での重要な第一歩。認知率は他の自治体と比べるとやや低いが、全教職員が法令による定義を再確認することや、認知件数がない場合は、児童生徒や保護者に公表し、検証をあおぐことをしています。道としてのアンケートを年2回、そのほか、各学校で独自のアンケートを行なっています。 解消率が高いことは、いじめの早期発見・早期対応ができていると受け止めています。解消率が高い背景としては、小中学校で指定する『中1ギャップ問題未然防止プログラム』をし、居場所づくり・絆づくり・環境づくりを進めています。また、高校でおこなっている『高校生ステップアッププログラム授業』を行い、人間関係を形成する力、コミュニケーション能力の育成もしています。さらには、校内研修でいじめに対する教職員の指導力向上を図っています」(北海道) ちなみに、「中1ギャップ」という用語には定義はない。小6から中1にかけていじめや不登校が急増するように見えていることから、一部で使われることがある。いじめに関係する児童生徒の増加 都道府県単位での「解消率」最小は静岡県(65.3%)となった。「文科省も言っているように、いじめの認知=学校が丁寧に子どもに関わった証の数字としています。今後もいじめの認知を伸ばしていこうと思っています。いじめの解消の捉え方としては、加害児童生徒が謝罪をして、解消というわけではなく、いじめられた子の気持ちや考え方にそって、見守っています。 県としては、相当期間というところを目安である『3ヶ月』にとらわれないようにしています。いじめも複雑化し、いじめに関係する児童生徒も増えています。発見しにくいいじめも増えています。結果として、解消率が上がっていません。粘り強く対応をしています」(静岡県)本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て判断 文科省の発表は、「1000人あたりの重大事態発生件数」についても明らかにしている。重大事態というのは、いじめ防止対策推進法に規定されているもの。「第1号重大事態」は、生命、心身または財産に重大な被害があると認められるもの。自殺や自殺未遂、自傷行為、金品を奪われるものがこれに当たる。「第2号重大事態」は、相当期間欠席しているもので、不登校がこれに当たる。 都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。認知率が高いところでは独自の取り組みが 自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県) 認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。 しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。(渋井 哲也)
「いじめの認知件数が多いのは今年に限ったことではありません。いじめは軽微なものを含めて積極的に認知していくことにしています。いじめの認知のきっかけで多いのは、アンケートです。年1回、市として一斉に行なっています。その際、家庭で回答することになるのですが、親子で相談をしながら家庭で回答することになります。こうしたことで、子どもたちが訴えやすくなっているのではないでしょうか」(仙台市)
いじめの認知や解消について、一つの手段として挙げられているのは、仙台市のような「いじめ対策専任教諭」だ。いじめ防止対策推進法成立の要因になった、いじめ自殺があった大津市でも配置された。岐阜市でも「いじめ対策監」が置かれている。
山形県(126.4)は、都道府県別で見た時には最多の認知率となっている。
「2020年度も認知率は多かったのですが、県のいじめ防止の基本方針が改定された17年度から年2回以上、児童生徒だけでなく、保護者へのアンケートも行なっています。できるだけいじめを早期発見することに努めています。アンケートは県で様式を作成しています。アンケートの結果、いじめの大小に関わらず、児童生徒と面談をして、解決に努めています。把握している範囲では、県で様式を決め、かつ、保護者にアンケートを取っているのは本県のみです」(山形県)
都道府県別で2番目に認知率が多いのは新潟県(97.4)だ。
「本県はいじめの認知件数が多く、2020年度も都道府県別で4番目でした。これはいじめを積極的に認知している方針が県全体に浸透してきたと言えます。県立学校には年2回、『いじめ対策総点検』を実施しています。各学校のいじめの認知、組織で対応するための体制をチェックしています。また、公立小中学校に対しては年1回、生徒指導の自己点検を行なっています。また、21年度から教職員向けのいじめのチェック項目を答えてもらうことにしており、その正答率を県教委として把握しています。その結果について指導体制を分析し、市町村教委に伝えています」(新潟県)
「いじめ見逃しゼロ」をスローガンに掲げる大分県(88.2)は、都道府県別では3番目だ。「いじめの認知件数は、発生件数ではない。そのため、小さないじめも見逃さず、安易に『生徒間トラブル』としないように心がけています。『いじめアンケート』は学期に1回以上、行なっています。県教委はそのアンケート案を例示していますが、学校によっては内容を実情に合わせて変えています。24時間SOSダイヤルはどの自治体もしていると思いますが、それに加えて、県立学校では、『スクールサイン』という匿名の通報システムを活用しています」(大分県)「スクールサイン」とは、民間企業が運営するネットいじめ対策「スクールガーディアン」のサービスの一つ。いつでもどこからでも匿名でいじめの目撃情報を通報できるシステム。メッセージアプリやSNSなどから投稿できる。全国の公立・私立の学校を含めて300校以上で採用されている。都道府県レベルでは山形県、熊本県でも導入している。また、別の企業でも匿名通報・報告アプリを整備しており、自治体がそのサービスを活用しているところもある。調査では「いじめ解消率」についても公表 一方で、認知件数がもっとも少ないのは愛媛県(12.8)だ。「たしかに昨年よりは多く、やや増加しています。しかし、認知件数は、他県と比較しての数値を評価の対象にしていません。県としては、どの学校でも起こりうるとして積極的にいじめを認知するように学校に指導しています。子どもや保護者向けのいじめアンケートの内容や回数は、学校の裁量に任せています」(愛媛県) さいたま市(13.1)は、政令指定都市別で最少になった。「もちろん、見逃しているいじめがあるのは否定できません。ただし、『いじめ撲滅強化月間』を設けるなど、市としてはいじめの未然防止に努めています。また、アンケートは学期の頭に行なうなど、年3回は必ず行なっています。学校によっては月毎にアンケートを実施しています。それ以外にも長期休暇の前には、いじめ限定ではないが、学校生活上の悩みを聞く機会を設けています」(さいたま市) 同調査では「解消率」についても公表している。いじめが「解消している状態」というのは、(1)いじめが止んでいる状態が相当の期間(少なくとも3ヶ月を目安とする)継続していること、(2)被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと――の要件が満たされていることを指す。解消率がもっとも低いの政令指定都市は… 解消率が都道府県と政令指定都市あわせて高いのは北九州市(97.2%)。「いじめの認知件数が減少しました。コロナ禍で、他の自治体と比べて、オンライン授業を多く行いました。そのため、直接的に人との関わりが減ったために、児童生徒間のトラブルも減少したと思われます。少なくとも、学校では学期ごとのアンケートをしています。 また、教育委員会としては9月に、全市一斉のアンケートと全員面談をしています。これは、アンケートで気になる児童生徒だけでなく、全員の面談をすることで、特定の子に何かがあると悟られないメリットがあります。このアンケートと面談は、10年近くしています。いじめ防止対策推進法ができたというのは大きいです」(北九州市) 一方、解消率がもっとも低いのは名古屋市(55.4%)だ。「いじめの行為が3ヶ月止んでいることで『解消』になりますが、その時点で本人や保護者に苦痛を感じていないかを確認しています。加害児童生徒から謝罪があったり、指導がなされた後も確認するように学校に指導をしています。 ただし、簡単に解消せずに、慎重に判断しています。その後も経過を見ることも大切です。他の自治体と比べずに、絶対評価で判断すると、それらのことを学校に周知し、積極的に対応をしていきます。解消率は年々下がっていますが、学校によっても実態が違い、ケース・バイ・ケースで判断しなければなりません」(名古屋市) ついで低いのは千葉市(60.0%)だ。「場合によっては、3ヶ月よりも長い期間、より丁寧に子どもの様子を見ているということで、解消率の数値が上がっていません。もちろん、本人および保護者にも心身の苦痛があるかどうかを確認して、解消の判断をしています。なるべく解消に向けて、事実確認をして、再発防止していきます。管理職が若返っていますので、いじめの定義など管理職が知らないといけないことについて、研修に力を入れています」(千葉市)北海道のいじめ解消率が高い背景 都道府県別でいうと、「解消率」最多は北海道(95.3%)だった。「いじめの積極的な認知は、いじめ対応での重要な第一歩。認知率は他の自治体と比べるとやや低いが、全教職員が法令による定義を再確認することや、認知件数がない場合は、児童生徒や保護者に公表し、検証をあおぐことをしています。道としてのアンケートを年2回、そのほか、各学校で独自のアンケートを行なっています。 解消率が高いことは、いじめの早期発見・早期対応ができていると受け止めています。解消率が高い背景としては、小中学校で指定する『中1ギャップ問題未然防止プログラム』をし、居場所づくり・絆づくり・環境づくりを進めています。また、高校でおこなっている『高校生ステップアッププログラム授業』を行い、人間関係を形成する力、コミュニケーション能力の育成もしています。さらには、校内研修でいじめに対する教職員の指導力向上を図っています」(北海道) ちなみに、「中1ギャップ」という用語には定義はない。小6から中1にかけていじめや不登校が急増するように見えていることから、一部で使われることがある。いじめに関係する児童生徒の増加 都道府県単位での「解消率」最小は静岡県(65.3%)となった。「文科省も言っているように、いじめの認知=学校が丁寧に子どもに関わった証の数字としています。今後もいじめの認知を伸ばしていこうと思っています。いじめの解消の捉え方としては、加害児童生徒が謝罪をして、解消というわけではなく、いじめられた子の気持ちや考え方にそって、見守っています。 県としては、相当期間というところを目安である『3ヶ月』にとらわれないようにしています。いじめも複雑化し、いじめに関係する児童生徒も増えています。発見しにくいいじめも増えています。結果として、解消率が上がっていません。粘り強く対応をしています」(静岡県)本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て判断 文科省の発表は、「1000人あたりの重大事態発生件数」についても明らかにしている。重大事態というのは、いじめ防止対策推進法に規定されているもの。「第1号重大事態」は、生命、心身または財産に重大な被害があると認められるもの。自殺や自殺未遂、自傷行為、金品を奪われるものがこれに当たる。「第2号重大事態」は、相当期間欠席しているもので、不登校がこれに当たる。 都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。認知率が高いところでは独自の取り組みが 自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県) 認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。 しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。(渋井 哲也)
「いじめ見逃しゼロ」をスローガンに掲げる大分県(88.2)は、都道府県別では3番目だ。
「いじめの認知件数は、発生件数ではない。そのため、小さないじめも見逃さず、安易に『生徒間トラブル』としないように心がけています。『いじめアンケート』は学期に1回以上、行なっています。県教委はそのアンケート案を例示していますが、学校によっては内容を実情に合わせて変えています。24時間SOSダイヤルはどの自治体もしていると思いますが、それに加えて、県立学校では、『スクールサイン』という匿名の通報システムを活用しています」(大分県)
「スクールサイン」とは、民間企業が運営するネットいじめ対策「スクールガーディアン」のサービスの一つ。いつでもどこからでも匿名でいじめの目撃情報を通報できるシステム。メッセージアプリやSNSなどから投稿できる。全国の公立・私立の学校を含めて300校以上で採用されている。都道府県レベルでは山形県、熊本県でも導入している。また、別の企業でも匿名通報・報告アプリを整備しており、自治体がそのサービスを活用しているところもある。
一方で、認知件数がもっとも少ないのは愛媛県(12.8)だ。
「たしかに昨年よりは多く、やや増加しています。しかし、認知件数は、他県と比較しての数値を評価の対象にしていません。県としては、どの学校でも起こりうるとして積極的にいじめを認知するように学校に指導しています。子どもや保護者向けのいじめアンケートの内容や回数は、学校の裁量に任せています」(愛媛県)
さいたま市(13.1)は、政令指定都市別で最少になった。
「もちろん、見逃しているいじめがあるのは否定できません。ただし、『いじめ撲滅強化月間』を設けるなど、市としてはいじめの未然防止に努めています。また、アンケートは学期の頭に行なうなど、年3回は必ず行なっています。学校によっては月毎にアンケートを実施しています。それ以外にも長期休暇の前には、いじめ限定ではないが、学校生活上の悩みを聞く機会を設けています」(さいたま市)
同調査では「解消率」についても公表している。いじめが「解消している状態」というのは、(1)いじめが止んでいる状態が相当の期間(少なくとも3ヶ月を目安とする)継続していること、(2)被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと――の要件が満たされていることを指す。
解消率がもっとも低いの政令指定都市は… 解消率が都道府県と政令指定都市あわせて高いのは北九州市(97.2%)。「いじめの認知件数が減少しました。コロナ禍で、他の自治体と比べて、オンライン授業を多く行いました。そのため、直接的に人との関わりが減ったために、児童生徒間のトラブルも減少したと思われます。少なくとも、学校では学期ごとのアンケートをしています。 また、教育委員会としては9月に、全市一斉のアンケートと全員面談をしています。これは、アンケートで気になる児童生徒だけでなく、全員の面談をすることで、特定の子に何かがあると悟られないメリットがあります。このアンケートと面談は、10年近くしています。いじめ防止対策推進法ができたというのは大きいです」(北九州市) 一方、解消率がもっとも低いのは名古屋市(55.4%)だ。「いじめの行為が3ヶ月止んでいることで『解消』になりますが、その時点で本人や保護者に苦痛を感じていないかを確認しています。加害児童生徒から謝罪があったり、指導がなされた後も確認するように学校に指導をしています。 ただし、簡単に解消せずに、慎重に判断しています。その後も経過を見ることも大切です。他の自治体と比べずに、絶対評価で判断すると、それらのことを学校に周知し、積極的に対応をしていきます。解消率は年々下がっていますが、学校によっても実態が違い、ケース・バイ・ケースで判断しなければなりません」(名古屋市) ついで低いのは千葉市(60.0%)だ。「場合によっては、3ヶ月よりも長い期間、より丁寧に子どもの様子を見ているということで、解消率の数値が上がっていません。もちろん、本人および保護者にも心身の苦痛があるかどうかを確認して、解消の判断をしています。なるべく解消に向けて、事実確認をして、再発防止していきます。管理職が若返っていますので、いじめの定義など管理職が知らないといけないことについて、研修に力を入れています」(千葉市)北海道のいじめ解消率が高い背景 都道府県別でいうと、「解消率」最多は北海道(95.3%)だった。「いじめの積極的な認知は、いじめ対応での重要な第一歩。認知率は他の自治体と比べるとやや低いが、全教職員が法令による定義を再確認することや、認知件数がない場合は、児童生徒や保護者に公表し、検証をあおぐことをしています。道としてのアンケートを年2回、そのほか、各学校で独自のアンケートを行なっています。 解消率が高いことは、いじめの早期発見・早期対応ができていると受け止めています。解消率が高い背景としては、小中学校で指定する『中1ギャップ問題未然防止プログラム』をし、居場所づくり・絆づくり・環境づくりを進めています。また、高校でおこなっている『高校生ステップアッププログラム授業』を行い、人間関係を形成する力、コミュニケーション能力の育成もしています。さらには、校内研修でいじめに対する教職員の指導力向上を図っています」(北海道) ちなみに、「中1ギャップ」という用語には定義はない。小6から中1にかけていじめや不登校が急増するように見えていることから、一部で使われることがある。いじめに関係する児童生徒の増加 都道府県単位での「解消率」最小は静岡県(65.3%)となった。「文科省も言っているように、いじめの認知=学校が丁寧に子どもに関わった証の数字としています。今後もいじめの認知を伸ばしていこうと思っています。いじめの解消の捉え方としては、加害児童生徒が謝罪をして、解消というわけではなく、いじめられた子の気持ちや考え方にそって、見守っています。 県としては、相当期間というところを目安である『3ヶ月』にとらわれないようにしています。いじめも複雑化し、いじめに関係する児童生徒も増えています。発見しにくいいじめも増えています。結果として、解消率が上がっていません。粘り強く対応をしています」(静岡県)本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て判断 文科省の発表は、「1000人あたりの重大事態発生件数」についても明らかにしている。重大事態というのは、いじめ防止対策推進法に規定されているもの。「第1号重大事態」は、生命、心身または財産に重大な被害があると認められるもの。自殺や自殺未遂、自傷行為、金品を奪われるものがこれに当たる。「第2号重大事態」は、相当期間欠席しているもので、不登校がこれに当たる。 都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。認知率が高いところでは独自の取り組みが 自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県) 認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。 しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。(渋井 哲也)
解消率が都道府県と政令指定都市あわせて高いのは北九州市(97.2%)。
「いじめの認知件数が減少しました。コロナ禍で、他の自治体と比べて、オンライン授業を多く行いました。そのため、直接的に人との関わりが減ったために、児童生徒間のトラブルも減少したと思われます。少なくとも、学校では学期ごとのアンケートをしています。
また、教育委員会としては9月に、全市一斉のアンケートと全員面談をしています。これは、アンケートで気になる児童生徒だけでなく、全員の面談をすることで、特定の子に何かがあると悟られないメリットがあります。このアンケートと面談は、10年近くしています。いじめ防止対策推進法ができたというのは大きいです」(北九州市)
一方、解消率がもっとも低いのは名古屋市(55.4%)だ。
「いじめの行為が3ヶ月止んでいることで『解消』になりますが、その時点で本人や保護者に苦痛を感じていないかを確認しています。加害児童生徒から謝罪があったり、指導がなされた後も確認するように学校に指導をしています。
ただし、簡単に解消せずに、慎重に判断しています。その後も経過を見ることも大切です。他の自治体と比べずに、絶対評価で判断すると、それらのことを学校に周知し、積極的に対応をしていきます。解消率は年々下がっていますが、学校によっても実態が違い、ケース・バイ・ケースで判断しなければなりません」(名古屋市)
ついで低いのは千葉市(60.0%)だ。
「場合によっては、3ヶ月よりも長い期間、より丁寧に子どもの様子を見ているということで、解消率の数値が上がっていません。もちろん、本人および保護者にも心身の苦痛があるかどうかを確認して、解消の判断をしています。なるべく解消に向けて、事実確認をして、再発防止していきます。管理職が若返っていますので、いじめの定義など管理職が知らないといけないことについて、研修に力を入れています」(千葉市)
都道府県別でいうと、「解消率」最多は北海道(95.3%)だった。
「いじめの積極的な認知は、いじめ対応での重要な第一歩。認知率は他の自治体と比べるとやや低いが、全教職員が法令による定義を再確認することや、認知件数がない場合は、児童生徒や保護者に公表し、検証をあおぐことをしています。道としてのアンケートを年2回、そのほか、各学校で独自のアンケートを行なっています。
解消率が高いことは、いじめの早期発見・早期対応ができていると受け止めています。解消率が高い背景としては、小中学校で指定する『中1ギャップ問題未然防止プログラム』をし、居場所づくり・絆づくり・環境づくりを進めています。また、高校でおこなっている『高校生ステップアッププログラム授業』を行い、人間関係を形成する力、コミュニケーション能力の育成もしています。さらには、校内研修でいじめに対する教職員の指導力向上を図っています」(北海道)
ちなみに、「中1ギャップ」という用語には定義はない。小6から中1にかけていじめや不登校が急増するように見えていることから、一部で使われることがある。いじめに関係する児童生徒の増加 都道府県単位での「解消率」最小は静岡県(65.3%)となった。「文科省も言っているように、いじめの認知=学校が丁寧に子どもに関わった証の数字としています。今後もいじめの認知を伸ばしていこうと思っています。いじめの解消の捉え方としては、加害児童生徒が謝罪をして、解消というわけではなく、いじめられた子の気持ちや考え方にそって、見守っています。 県としては、相当期間というところを目安である『3ヶ月』にとらわれないようにしています。いじめも複雑化し、いじめに関係する児童生徒も増えています。発見しにくいいじめも増えています。結果として、解消率が上がっていません。粘り強く対応をしています」(静岡県)本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て判断 文科省の発表は、「1000人あたりの重大事態発生件数」についても明らかにしている。重大事態というのは、いじめ防止対策推進法に規定されているもの。「第1号重大事態」は、生命、心身または財産に重大な被害があると認められるもの。自殺や自殺未遂、自傷行為、金品を奪われるものがこれに当たる。「第2号重大事態」は、相当期間欠席しているもので、不登校がこれに当たる。 都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。認知率が高いところでは独自の取り組みが 自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県) 認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。 しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。(渋井 哲也)
ちなみに、「中1ギャップ」という用語には定義はない。小6から中1にかけていじめや不登校が急増するように見えていることから、一部で使われることがある。
都道府県単位での「解消率」最小は静岡県(65.3%)となった。
「文科省も言っているように、いじめの認知=学校が丁寧に子どもに関わった証の数字としています。今後もいじめの認知を伸ばしていこうと思っています。いじめの解消の捉え方としては、加害児童生徒が謝罪をして、解消というわけではなく、いじめられた子の気持ちや考え方にそって、見守っています。
県としては、相当期間というところを目安である『3ヶ月』にとらわれないようにしています。いじめも複雑化し、いじめに関係する児童生徒も増えています。発見しにくいいじめも増えています。結果として、解消率が上がっていません。粘り強く対応をしています」(静岡県)
文科省の発表は、「1000人あたりの重大事態発生件数」についても明らかにしている。重大事態というのは、いじめ防止対策推進法に規定されているもの。「第1号重大事態」は、生命、心身または財産に重大な被害があると認められるもの。自殺や自殺未遂、自傷行為、金品を奪われるものがこれに当たる。「第2号重大事態」は、相当期間欠席しているもので、不登校がこれに当たる。
都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。認知率が高いところでは独自の取り組みが 自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県) 認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。 しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。(渋井 哲也)
都道府県別で最多は高知県(0.32件)。次いで、島根県(0.27件)、岩手県(0.17件)、岡山県と熊本県(0.12件)、沖縄県(0.11件)の順だ。
「本人がわからないところでなされたインターネットでの悪口などの場合、本人が苦痛を感じていなくても、客観的に見て、いじめかどうかをとらえるようにしています。重大事態の法の定義について、いじめの定義と同じように、しっかり周知しています。
自殺などの取り返しのつかない状態になる前に、いじめの疑いの状態から重大事態として捉えるように指導しています。また、いじめによって不登校の場合でも、不登校が長引かないように対応してもらうことが大切です。そのため、重大事態を積極的に捉えようとしています」(高知県)
認知率や解消率、重大事態の発生件数などを数値化すれば、自治体間の格差がはっきりする。各都道府県や政令指定都市の教育委員会の話を聞いてみると、認知率が高いところでは独自の取り組みがなされている。
しかし、「認知」の方法や「解消」の捉え方の差があることから、数値にとらわれ過ぎてしまうと、いじめの実態がむしろ見えにくくなる。その意味では、同一自治体の中でどのように変化してきたのか、きちんとみていく必要がある。
(渋井 哲也)