刑法の性犯罪規定の見直しに向け、法制審議会(法相の諮問機関)は17日の総会で改正要綱を決定し、斎藤法相に答申した。
性犯罪の処罰対象の明確化を図ったほか、わいせつ目的で子どもを手なずけて懐柔する行為を罰する罪や、性的部位や下着などの盗撮を処罰する撮影罪の新設も盛り込んだ。法務省は今国会に改正法案を提出する。
■◆時効延長も
要綱は、強制性交罪や強制わいせつ罪などの成立要件として、現在の「暴行・脅迫」だけでなく、「虐待」「経済的・社会的地位の利用」など計8種類の行為や状況などを例示。これらにより、「同意しない意思」を抱いたり、表明したり、全うしたりするのが困難な状態になった被害者と性交などに及んだ場合は、処罰できるとした。
性犯罪では、暴行や脅迫がなくても、恐怖や驚きで体の動かない「フリーズ」状態になって被害に遭うことがあるなどとして、被害者側が見直しを求めていた。法改正が実現すれば、厳格な処罰がしやすくなる。
要綱は、精神的ショックで被害を申告しにくいといった性犯罪の実態を踏まえ、公訴時効を各罪で5年延長することも提示した。幼少期だと被害を認識するまでに時間がかかるケースもあることから、被害時に18歳未満だった場合、18歳になるまでの期間を時効に加算するとした。
■◆不起訴でも画像廃棄
また、子どもがSNSなどで大人に誘い出されて性被害に遭うケースが後を絶たないため、子どもを手なずける行為に対応する罪も新たに規定。性交やわいせつ目的で、16歳未満に対して、うそを言ったり、脅したりするなどして面会を求めれば処罰できるとした。
撮影罪の新設には、現在は都道府県ごとの迷惑防止条例で禁じられている盗撮行為を法律で規定し、統一的に運用する狙いもある。
これまでは、高速で飛ぶ飛行機内で盗撮が行われた場合、犯行現場がどの自治体の上空だったかの特定が難しく、条例では摘発に支障が出ていた。撮影罪なら、こうしたケースへの対処が容易になるとみられる。
要綱は、検察が捜査の過程で押収した性的画像を、不起訴などでも廃棄・消去する仕組みの導入にも言及。現在は、児童買春・児童ポルノ禁止法違反やリベンジポルノ被害防止法に基づいて画像を押収しても、有罪認定された犯罪事実に関する画像以外は、容疑者側の要請に応じて返却せざるをえないため、改善を望む声が上がっていた。