静岡のオーケストラの公演で、開演1時間前に突然スプリンクラーが作動し、楽器や楽譜が水浸しになりました。被害は、数億円に上るとみられます。
■「滝のような水」数億円被害
天井から、まるで雨のように降り注ぐ、大量の水。本来であれば、先月24日、この場所ではオーケストラによる演奏会が行われるはずでした。
室内にもかかわらず、楽器を守るためにいくつもの傘があります。舞台は水浸しになり、反射して、まるで鏡のようになってしまっています。楽譜は、水がしみ込んで見るも無残な姿になっています。
13日、静岡を拠点とするオーケストラ「シンフォニエッタ 静岡」が行った会見。
中原朋哉さん:「滝のような水が降ってくる」
信じられない出来事は先月24日、裾野市民文化センターの大ホールで行われるはずだった演奏会直前に起きました。
開演を1時間前に控えた午後1時ごろ、突如、天井のスプリンクラーが作動。舞台に設置されていた楽器や楽譜があっという間に水浸しに。弦楽器の弦の一部が錆びたり、木管楽器に水が染み込んだりして、甚大な被害が出ました。
オーケストラと演奏家にとって、命とも言える楽器や楽譜。その被害総額は、数億円規模に及ぶといいます。
濡れたことでカビてしまい、破棄したものもある楽譜が百数十万円分。オーケストラが所有するティンパニなどの楽器の修理には、1000万円ほどかかるとのことです。
演奏家が個人で所有している楽器のなかには、高額なものもあると言います。
中原さん:「2000万円とか3000万円という楽器を持ってる人は多分いるでしょうね。ローンを組んでたり、親から借りたり。長い時間かけて払ってきて、やっと払い終わったのにとか」
プロが使う楽器は買い替えたり、修理をしたりしても、全く同じ音色を取り戻すことは難しいそうです。
さらに、出演者を含む60人のうち半数がずぶ濡れになり、楽器を避難させる際に5人が転倒、けがをしたとのことです。
トラブルから2週間以上経って、会見を開いた理由は…。
中原さん:「裾野市なり、指定管理者から具体的に何も示されない。その後の対応も、何もないので、黙っていると泣き寝入りになるんじゃないか」
今回、トラブルが起きた建物は裾野市の所有物ですが、運営・管理は民間の企業が行っています。
■責任は?市釈明「異常ない」
突如として作動し、高額な楽器に降り注いだスプリンクラーの水。裾野市によると、スプリンクラーは手動式で、自動で動くことはなく、定期的な点検も行っていたといいます。
裾野市・勝又明彦教育部長:「(点検は)年に2回行っていたということです。直近ですと、今年の5月に。市としては、スプリンクラーの機器に異常や故障はなかったと、報告を受けているので。そうなると、人為的要因も考えられるので、警察に相談させてもらっている状況」
しかし、オーケストラ側は、市の対応に疑問を感じています。
中原さん:「(トラブル当日に)徹底的にばらして、調べたんだったらいいけれど、スプリンクラーの点検をしている業者が来て、調べたけれど『原因がない』。『原因がないから、事故じゃない』って断言するところが分からない。まず、原因究明をもっとするべき。その日のうちに『問題なし』というのは疑問」
裾野市も、市が所有する1300万円のピアノが浸水するなど、設備の修理に多額の費用がかかるとみられています。
誤作動による事故なのか、それとも市が言うように第三者の犯行による事件なのか。数億円にも及ぶオーケストラの被害への損害賠償は、誰が責任を負うことになるのでしょうか。