1月6日朝のことだった。「現代ビジネス」記者が、金沢市内のホテルのロビーでカメラをテーブルにおいて朝刊を読んでいたところ、「マスコミの人ですか?」と男性3人組が声をかけてきた。
「今から被災地の現場に行こうと準備しています」
と語る彼らの手には、ウェアラブルカメラやスマートフォンがある。
「何をしに行くのか?」と尋ねると、
「ユーチューバーなので、現場からライブ配信したり、動画をアップしてチャンネル登録を増やしたい」
というのだ。大地震をネタにYouTubeで配信して、ひと山当てようという魂胆だというのだから驚くばかりだ。
(c)現代ビジネス
だが、3人の恰好は見るからに軽装だ。うち一人はサンダル履きで、水や食料なども持っている形跡はない。
その点を記者が指摘すると、
「現地では買えないのですかね」「避難所に行けば、水とかもらえるのではないでしょうか」
という始末だ。
だが「現代ビジネス」が取材していた時期は、輪島市の中心ではようやく自衛隊が物資搬入を避難所などに開始したばかりだ。地震があってから1月3日までは、住民がほぼ自力で水、食料、暖房に必要な燃料などを調達しなければならない厳しい状況だった。
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輪島市の郊外では、今も道路が寸断され物資も届かず、孤立している集落も数多い。「現代ビジネス」記者の車のところに来て、
「うちの集落が孤立、携帯電話もつながらないので役所に伝えてほしい。徒歩で携帯電話がつながるところまで行こうとも思ったが、高齢者が多いこと、ガソリンも残り僅かで、道路もあちこち陥没、落石して危ないので、耐えていた」
と訴える被災者もいた。
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また、輪島市の中心では窃盗などの被害も出ていると聞いた。
「外国人らしき男性が鉄など、金属を目当てにきてがれきの中から金目になるものを盗んでいるようなところも見た。怖くて声をかけられず、後で通りかかった警官に事情を話した」(地元の商店主)
被災地では治安の悪化も叫ばれている。
そうした現状を、ホテルで出会ったユーチューバーの3人組に伝えると、こう反論した。
「地震系ユーチューバーってのがもう存在するのですよ。孤立している集落を撮影すると、さらにいいかもしれない。アクセスがアップするような気がする。僕らにとってはチャンスなので行ってみますよ」
まったく自重する様子はない。記者にも彼らを止める権利もない以上、こう説明した。
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「金沢市内では水、食料は買えるので他人を頼ってはいけない。自分のことは自分で責任をもって、被災者に迷惑をかけないように。避難所で水を求めるなんてことは絶対にやってはいけない。
現地は寒いので、防寒着などたくさん持参しないとダメだ。幹線道路も脇道もあちこち陥没しており、悪路もあり輪島まで片道5時間は最低かかる。雪の可能性があるのでスノータイヤは必ず必要だし、運転技能も求められる。
君たちのような軽装では無理で、できれば中止すべきだ。外から行って被災、遭難するなんてことになったら大変だ」
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だが、彼らはこう口々に語った。
「まあ、なんか水とか食べるもの、買っていきますよ。運転は免許とってもう1年とちょっとなので、大丈夫ですよ」
「ユーチューバーたちは先を競って、被災地に入ろうとしている。人気ユーチューバーがそうそうに現地に入って、再生回数を稼いでいる。100万回とか再生されているユーチューバーもいますからね。お金をかけて石川県までやってきたので、早くいかないと、再生回数がアップしない」
まったく聞く耳を持たないのだ。彼らが乗っていた車を見ると、ごく普通の軽乗用車でスノータイヤでもなさそうで、チェーンもないという。その後、3人組が口にしていたSNSやYouTubeチャンネルをチェックしてみたが、地震関連の動画は今のところ、アップされていない。3人組が現地で迷惑をかけていないことを祈るばかりだ。