健康保険証をマイナンバーカードと一体化させた「マイナ保険証」へ移行させる政府の方針を巡り、疑問や懸念の声が止まらない。
全国労働組合総連合(全労連)が「一体誰のためにこんなことを進めようとしているのでしょうか?」と反対署名を呼びかけると、わずか1日で7万筆が集まった。日本弁護士連合会(日弁連)も「速やかな見直しを求める」と抗議する事態になっている。
河野太郎デジタル相は2022年10月13日の記者会見で、マイナンバーカードの普及を推進すべく24年秋に現行の保険証を廃止し、「マイナ保険証」に切り替えると発表した。政府のマイナンバーカードの考えはこれまで「できるだけ多くの皆様に申請いただきたい」と”お願いベース”だったが、事実上の義務化となる。
この方針はSNSで激しい議論を巻き起こした。全労連は同日、反対の署名活動をウェブで始めると、14日夕までに約7万5000筆が集まった。
全労連は「多くの国民がこのようなことを求めている、という話は聞いたことがありません。一体誰のためにこんなことを進めようとしているのでしょうか?」と皮肉り、マイナンバーカードへの不安から取得が進まないことに政府が業を煮やし、強硬策に踏み切ったのではと勘ぐる。
マイナンバーカードの普及率は、9月末で49.0%。政府は22年末までに「ほぼ全国民に行き渡ることを目指す」としている。
賛同者からは「今のこの国では絶対持ちたくない。全く信用できない」「国会で、きちんと議論して国民の不安に応えるべき」と、政権への不信感がうかがえる。
日弁連も9月27日、「マイナンバーカードの取得を事実上強制しようとするものにほかならない」と反対声明を出し、番号法の申請主義(任意取得の原則)に反するなどとして「速やかな見直し」を求めていた。
政府が8月26日~9月2日に実施した調査では、マイナ保険証を申し込まない理由として「健康保険証として利用することにメリット・必要性を感じないから(29.0%)」「手続が面倒だから(19.4%)」「手続がわからないから(15.1%)」「情報流出が怖いから」などが挙げられた。
一方、申し込んだ人のきっかけは「マイナポイントがもらえるから(88.0%)」「利用している病院・薬局で健康保険証として利用できるから(15.8%)」「健康保険証利用にメリットを感じたから(12.8%)」が多かった。
国民の不安は政府にも届いているようだ。河野大臣は14日の会見で、「昨日からさまざまなご懸念をお寄せいただいています」と言及し、「一つ一つクリアして実施していきたい」と理解を得ながら推進する考えを示した。
「面倒くさい行政手続きから国民の皆様を開放する」と意義を強調し、「セキュリティや、あるいは機微な個人情報はマイナンバーカードには載っていないといったわかりやすい広報をしっかりやりながら進めたい」と丁寧な説明で不安の払しょくに努めるとする。
マイナ保険証に関する意見は、デジタル庁のウェブサイトで受け付けている。