東京・歌舞伎町で、「ぼったくり」の苦情が相次いでいるバーの経営者が逮捕された。この店では、女性従業員が、身分を隠して、マッチングアプリで知り合った男性を、店に誘い込み、法外な飲食代を請求していたという。
発端は一本の110番通報だった。今年5月23日、22歳の男性から、「マッチングアプリで知り合った女性と行ったお店で、およそ33万円を請求された」との相談が寄せられたのだ。現場は、歌舞伎町のバー「Bar R」だった。
駆けつけた警察官が、相手の女性から話を聴いたところ、「店に雇われて、男性客を連れていくことをやっていた」と自供したとのこと。女性は、自らが従業員であることを隠して、マッチングアプリで知り合った男性を店に誘い込んでいたというのだ。
マッチングアプリを使った、悪質な客引き行為とも言える。被害者の男性にとってみれば、デートのつもりで、歌舞伎町のバーに行ったところ、信じられない高額の飲食代を請求されたことになる。警視庁新宿署は、昨今、急増している、マッチングアプリを悪用した「ぼったくり」として内偵捜査を開始した。
法外な飲食代を請求される「ぼったくり」だが、そもそも、その定義は難しい。例えば、「1時間4000円です」と言われてキャバクラ店に入ったものの、明確な料金説明などがないまま、ウィスキーやワインなどを注文した挙句、会計の際に18万円を請求されたとする。
ウィスキーやワインは別料金だっため、法外な請求をされた訳だが、この場合、明確な料金説明などがないため、東京都のぼったくり防止条例に抵触する恐れがある。ただ、客が酒に酔っていることに乗じて、説明や料金表示をごまかすケースは後を絶たないのだ。
特に、歌舞伎町でのぼったくり被害は社会問題化し、2015年には、わずか4カ月間で1000件を超える110番通報が寄せられる事態となった。この段階になって、警視庁も、店と客との「トラブル」ではなく、ぼったくりを”事件”として、積極的に扱うようになったのだった。
その後、「ぼったくり」自体が下火になっていたのだが、昨今、目立ち始めたのが、マッチングアプリを悪用した手口だった。「Bar R」は、飲み放題5000円で、おつまみ代、チャージ料、サービス料を入れても1万4000円~5000円程度。
しかし、女性が注文する「抹茶ハイ」が、法外な値段となっていたのだ。中身は、アルコールが入っていない、単なる抹茶。ただ、女性は、抹茶ハイを頼めば頼むほど、手当てが増える仕組みになっていたそうだ。
男性客にとっても、デート相手の女性が注文する抹茶ハイが、そんなに高額だとは思わないだろう。内偵捜査を進めていた新宿署では、9月18日、「Bar R」の女性従業員が、「みさき」と名乗り、歌舞伎町のマクドナルドの前で、男性と待ち合わせをしているのを確認した。
その後、2人は店に向かい、”接待行為”が行われたため、捜査員が、従業員の男性5人と女性1人を現行犯逮捕した。容疑は、無許可で接待営業をしていた風営法違反だった。なお、この男性は、会計前だっため、ぼったくりの被害には遭っていないという。
その後、取り調べに対して、女性従業員が、「マッチングアプリで知り合った男性に、従業員であることを隠して、男性客を店に連れて行って一緒にお酒を飲んだりして接待しました」と供述。
さらに「飲み放題以外の高額な飲み物を頼んで、最終的に男性客に高額な料金を払わせていた」と「ぼったくり」についても認めたという。このため新宿署は、今月5日、「Bar R」の経営者・得地一輝容疑者(26)を逮捕した。
なお、現行犯逮捕された女性従業員は、報酬として、男性客が払った額の10~15%を受け取っていて、月に50~70万円を稼いでいたという。逮捕された他の男5人は、マッチングアプリで、男性客を集める役割だったそうだ。
なお、従業員同士のやり取りは、闇バイト事件などで使われる、通信アプリ「テレグラム」が使われていたため、すでに履歴は消えていたという。「ぼったくりバー」が、ここまでやるとは・・・。「Bar R」をめぐっては、去年から、高額請求に関する通報が、およそ30件寄せられていたとのこと。
調べに対して得地容疑者は、「今は何も話したくありません」などと黙秘しているというが、捜査関係者によると、一カ月に800万円以上を売り上げていた可能性があるという。新宿署が、経営実態などを調べている。