統一地方選前半戦では、全国で日本維新の会の躍進が目立った。北海道でも道議選で初の議席を獲得し、札幌市議選では公認した新人6人のうち5人が当選。これまで「大阪の政党」というイメージが強かったが、遠く離れた北の大地でも“維新旋風”が吹いた。維新が支持を広げた理由は何か。政治思想に詳しい北海道大大学院経済学研究院の橋本努教授(55)に聞いた。【聞き手・真貝恒平】
維新、完勝で突破 「地方議員600人超」高まる士気 ――維新の政党としての魅力は。

◆橋下徹氏が地域政党・大阪維新の会を結党した2010年当時、既成の権力に立ち向かう反エリート主義を打ち出しました。代表的なのが公務員制度改革。政治、行政、既得権のなれ合いで続いてきた古い政治を壊すという主張が無党派層の支持を集めました。橋下氏が引退しても党の勢力が衰えなかったのは、公約がしっかりしていたことが大きな理由だと思います。 ――公約ではどんな新しさがあるのでしょう。 ◆維新が議席数を伸ばした要因として公約の面白さがあります。例えば、財政を立て直す成長戦略として、資産を持っている人から税を徴収し、経済と格差の問題を両方解決するといった考え。維新は消費税、法人税、所得税の3税を減税する「フロー大減税」を掲げる一方、株式などのストック課税に取り組む「フローからストックへ」というビジョンも打ち出しました。 保守と革新は今、経済政策がほぼ一致しており、差別化が難しくなっています。有権者が注目しているのは、これまで論戦となった憲法や安全保障ではなく、子育て支援など積極的な社会投資です。維新を語る上でキーワードとなるのは「投資」。どの党も教育無償化を公約に掲げていますが、維新は子どもの塾代助成といったユニークさもあり、未来世代に投資する子育て支援の手厚さが感じられます。 ――維新は道議会や札幌市議会で議席を獲得しました。 ◆支持者は公約よりも人物本位で投票しているのではないかという見方もありますが、人物本位でこれだけ伸びるわけがなく、やはり政策理念が北海道でも受け入れられたと思います。維新が大阪で掲げた地方自治の理念は、札幌市のようなサービス業など第3次産業に携わる人々が多い地方の都市部で支持され始めたのでしょう。 ――維新の躍進は今後も続くのでしょうか。 ◆維新は他の既成政党と違い、圧力団体がいません。だからこそ、斬新なアイデアを打ち出し、無党派層から支持されてきたのですが、その半面、固定した支持層がいない分、勢力を拡大するためには常に新しい政策を打ち出していかなければなりません。このハードルを乗り越えられるかが勢力拡大のカギになると思います。橋本努(はしもと・つとむ)氏 1967年東京生まれ。横浜国立大卒業後、東京大で博士号取得。2011年から現職。専門は経済社会学、社会哲学。著書に「帝国の条件」(弘文堂)など。
――維新の政党としての魅力は。
◆橋下徹氏が地域政党・大阪維新の会を結党した2010年当時、既成の権力に立ち向かう反エリート主義を打ち出しました。代表的なのが公務員制度改革。政治、行政、既得権のなれ合いで続いてきた古い政治を壊すという主張が無党派層の支持を集めました。橋下氏が引退しても党の勢力が衰えなかったのは、公約がしっかりしていたことが大きな理由だと思います。
――公約ではどんな新しさがあるのでしょう。
◆維新が議席数を伸ばした要因として公約の面白さがあります。例えば、財政を立て直す成長戦略として、資産を持っている人から税を徴収し、経済と格差の問題を両方解決するといった考え。維新は消費税、法人税、所得税の3税を減税する「フロー大減税」を掲げる一方、株式などのストック課税に取り組む「フローからストックへ」というビジョンも打ち出しました。
保守と革新は今、経済政策がほぼ一致しており、差別化が難しくなっています。有権者が注目しているのは、これまで論戦となった憲法や安全保障ではなく、子育て支援など積極的な社会投資です。維新を語る上でキーワードとなるのは「投資」。どの党も教育無償化を公約に掲げていますが、維新は子どもの塾代助成といったユニークさもあり、未来世代に投資する子育て支援の手厚さが感じられます。
――維新は道議会や札幌市議会で議席を獲得しました。
◆支持者は公約よりも人物本位で投票しているのではないかという見方もありますが、人物本位でこれだけ伸びるわけがなく、やはり政策理念が北海道でも受け入れられたと思います。維新が大阪で掲げた地方自治の理念は、札幌市のようなサービス業など第3次産業に携わる人々が多い地方の都市部で支持され始めたのでしょう。
――維新の躍進は今後も続くのでしょうか。
◆維新は他の既成政党と違い、圧力団体がいません。だからこそ、斬新なアイデアを打ち出し、無党派層から支持されてきたのですが、その半面、固定した支持層がいない分、勢力を拡大するためには常に新しい政策を打ち出していかなければなりません。このハードルを乗り越えられるかが勢力拡大のカギになると思います。
橋本努(はしもと・つとむ)氏
1967年東京生まれ。横浜国立大卒業後、東京大で博士号取得。2011年から現職。専門は経済社会学、社会哲学。著書に「帝国の条件」(弘文堂)など。