自民党の高市早苗・総裁について新聞やテレビの報道ぶりには “高市ぎらい”とも呼ぶべき実態が伺える。就任直後の世論調査では「期待する」という声が大半だったことを考えると世論とのズレが浮き上がる。その背景には一体何があるのか。【前後編の前編】
【写真】「公明離脱で追い詰められる自民」を書き立てる大新聞
「私の責任です。不徳の致すところだ」
10月14日に開かれた自民党の両院議員総会、高市早苗・新総裁は公明党の連立離脱についてそう謝罪した。
新聞・テレビの大メディアは”それ見たことか”とばかりに高市氏の窮地を報じている。
〈自民に広がる下野の危機感 連立も選挙も…止まない「公明頼み」の声〉(10月14日付朝日新聞デジタル)
〈「視界不良」の首相指名 高市氏選出の確証なし 石破氏続投論も〉(10月14日付毎日新聞デジタル版)
だが、共同通信が自民党総裁選直後(10月4~6日)に行なった世論調査では、高市氏に「期待する」という回答が68%にのぼり、女性首相の誕生についても「望ましい」と「どちらかといえば望ましい」を合わせて86.5%に達している。”高市効果”で自民党の政党支持率は前月比10ポイント以上も急上昇した。
当然ながら、権力を批判的に監視するのはメディアの役割だが、世論の現状認識を誤った批判を展開しているように見えるところに今の危うさがある。評論家で国際政治学者の藤井厳喜氏が指摘する。
「米国の状況と似たところがあると思います。グローバリズムに親和性のある大メディアは、ナショナリズムを煽るトランプ大統領をこぞって批判する。日本の新聞・テレビも、ナショナリズム的に映る安倍晋三氏に批判的でしたし、その流れを汲む高市氏を嫌忌するところがあるのでしょう」
たしかに、総裁選の高市氏勝利を見通せなかった日本の大メディアと、昨年の大統領選で”トランプ圧勝”を予見できなかった米国メディアの姿は符合する。
高市総裁の取材待機中、「支持率下げてやる」「支持率下げる写真しか出さねえぞ」とつぶやきながら待ち構えていた時事通信のカメラマンの言葉が中継カメラに拾われて大炎上した騒動からも、メディアの”高市ぎらい”が垣間見える。
SNSやネットではそうした報道姿勢が批判を浴びており、その流れのなかで「叩けば叩くほど高市支持が強まる現象」まで見られる。
自民党の反高市派からは、公明の連立離脱に数々の批判が上がった。
村上誠一郎・総務大臣は旧安倍派幹部を重用した高市氏の人事を「(公明党への)平手打ちにあたる」と表現し、野田聖子・元総務会長はSNSに「今回の自民党のトップみたいな人たちは、常に自公でやってきてもアンチの発言が多かった」と投稿。ところが、いずれもネットで大炎上し、かえって高市擁護論が強まる結果となっている。
ちょうど今年夏の参院選の際、大メディアや既成政党が「日本人ファースト」を掲げて支持を伸ばす参政党批判のキャンペーンを張ったものの、むしろ参政党の票が増えた現象に似ている。
大新聞も高市批判のキャンペーンを張った。
高市氏が総裁選勝利後の第一声で、「馬車馬のように働いていただきます。私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます」と発言すると、朝日新聞は連日、「古い日本の価値観を引きずったような発言で、非常に残念だ」など識者のコメントを報じて批判を続けた。
しかし、批判が広がっているようには見えない。
「高市さんはワーク・ライフ・バランスについて言ったのではなく、自民党議員全員で一所懸命がんばろうという宣言でしょう。新聞は言葉尻を捉えて高市批判を高めたかったのかもしれないが、発言の意図と全く噛み合っていないから批判がカラ回りして共感を呼ばない」(前出・藤井氏)
(後編に続く)
※週刊ポスト2025年10月31日号