連休明け初日の出勤は、多くの人にとって面倒でつらいものだろう。しかし、連休中の過ごし方を変えることで、このつらさを軽くできるかもしれないという。その具体的な方法を、認知行動療法を専門とする臨床心理士の中島美鈴さん(中島心理相談所代表)に教えてもらった。
連休明けの仕事や学校は、多くの人が「行きたくないな~」と感じるはずです。ゴールデンウィークや年末年始のような大型連休明けならなおさらでしょう。なぜ連休明けは、つらいのでしょうか。この理由は「モード」の切り替えに多大なエネルギーを必要とするためです。
皆さん、日常の中で「仕事モード」や「休みモード」などのモードを切り替えて生活していますよね。普段は日々、同じリズムでモードを切り替えていて、それが自分のルーティンに組み込まれています。ですから、通常は朝起きれば、深く考えることなく出勤できるはず。
ですが、連休に入るとそのリズムが崩れてしまいます。休みモードに慣れて、仕事モードへの切り替えに多くのエネルギーが求められるのです。車も、アイドリング中ならすぐに発進できますが、完全に停止するともう一度エンジンをかけなければならない。そしてグッと加速する時に多くのガソリンを費やしますよね。それと同じ仕組みです。
このような「よっこらしょ」と重い腰を上げる時のエネルギーを、心理学では「活性化エネルギー」と呼びます。連休の間は数日間、この活性化エネルギーを使わなくなってしまうため、連休明けがつらいのです。
このような連休明けのつらさは、強く感じる人とそれほどでもない人がいるのも事実です。その違いは、脳にあります。
そもそも前述の活性化エネルギーは、脳の仕組みでいうとドーパミンの分泌と深く関わります。ドーパミンは、やる気の源である神経伝達物質。このドーパミンの濃度が、もともと低い人がいるのです。例えば、朝起きるのが不得意で、脳がぼんやりしがちで、授業中など、うつらうつらと眠ってしまうといった人。
そういう人は、モードを切り替える「よっこらしょ」が、どうしてもつらい。ドーパミンの濃度が低いのに、無理やりアクセルを踏んでやる気を出さないといけないためです。
とはいえ、ドーパミンの濃度が高ければいい、というわけではありません。ドーパミンの濃度が非常に高くて出過ぎる人、例えば、旅行に行ったらめいっぱい予定を入れるし、連休最終日だろうと、日付が変わるまで予定を入れてしまうタイプ。これは、20代の頃の私自身なのですが…こうした人も過活動すぎて疲れ果ててしまうため、連休明けがつらくなりがちです。
実は、上記のどちらにも思い当たるという人が、ADHDのある人にすごく多いのです。ドーパミンの濃度は低いのですが、興味のあることや新しいもの、非日常的なものに対しては、過剰にドーパミンが出て、過集中する。結果として、連休明けがつらいと感じることが多くなるでしょう。
連休明けのつらさにはドーパミンが深く関わっている。だからこそ、そのつらさを予防するには、ドーパミンを味方につける行動が大切です。
例えば、連休明けに出勤した際にデスクの上が綺麗になっているだけでも違います。あとは、連休明け初日のための美味しいおやつを用意しておいたり、連休中に、通勤用の新しい服などを買って初日に着ようと決めたりするとテンションが上がりますよね。新しい靴下をおろすのでもいい。それだけで全く気分が違います。このようにして、ドーパミンを分泌しやすくなる仕掛けを用意しておきましょう。
連休明けのためにコーヒーチケットを買っておくのもおすすめです。コーヒーを飲めば、ドーパミンの濃度が低い人でもカフェインの効果で脳がクリアになるので、やる気の出ない初日にぴったりでしょう。仕事に行く前に店に寄ってテイクアウトしようと考えると、なんだかテンションが上がりませんか。
加えて、自分で仕事量をコントロールできるなら、連休明けの初日は大した仕事を入れないのも一案です。「出勤さえすれば合格!」程度の状態にして、自分をだましながら連休明けを乗り切りましょう。
連休中は、「本当にやりたいこと」をするのが大事です。例えば、スマホを触るだけで一日が終わってしまった場合、それは本当にやりたいことだったのでしょうか。
中には、こうした人もいます。洗濯や掃除など、たまった家事を終わらせるまでは遊びに出掛けてはいけない、と考えてしまう。でも結局、手をつけられず夕方まで布団の上でスマホを触っていた。結果として、有意義に過ごせず自己嫌悪してしまうケースです。
本当にやりたいことを実行するには、先に予約するのがベストです。やるべき家事を終わらせてからヨガに行こうではなく、先にヨガのクラスや美容室、友達との約束など、やりたいことを先に決める。そこへ着ていく服がなければ仕方なく洗濯するはず。その程度でいいのではないでしょうか。
連休中に、どうしても仕事が気になってしまうという人は「短時間だけ」と決めて、リハビリ感覚でメールの返信をしたり、to doリストを書いたりしてもいいでしょう。心理学でも、不安や恐怖の感情は避ければ避けるほど増大するとわかっています。恐れているものはさっさと見て、悩む時間を5分だけとって、あとは終わりにする。これも一案です。
また、本音を言うならば、連休中も夜更かしせず、睡眠を確保してほしいなと思います。8時間は寝るのが理想的です。でも、みなさん夜もなかなかスマホから離れられませんよね。
そんな時は、ホットアイマスクを活用してみましょう。
ホットアイマスクは、一度開封すると一定時間、温かさが持続します。せっかく開けたら、使わないともったいないので、強制的に目を閉じて、目を温められる。すると、ほぼ皆さん眠りにつきますね。私自身もホットアイマスクは、箱買いして常備しています。
連休中の過ごし方に気をつけても、連休明けのご褒美を用意しても、それでもつらい気持ちが改善しない場合は注意が必要です。
特に夜、眠れなくなってきた時は、すぐにSOSを発信してください。お酒に頼らないと寝付けない、早朝4時、5時に目が覚めてしまうなどの状態が3日程度続いたら、うつの前兆だと考えてほしいのです。まずは職場の上司や同僚に相談してみましょう。助けてほしい、と伝えてください。
一般的には、落ち込んだ気持ちが3週間続く場合にうつ病を疑いますが、パチンコやお酒などで気持ちをごまかすケースも多いので、一概には言えません。ですから、やはり睡眠時間がいつもの半分程度になる日が3日続いた場合、あと1、2日だけ様子を見てそれでも改善しなければ専門医療機関に頼りましょう。精神科の受診はちょっとハードルが高いのなら心療内科、もしくは内科でも大丈夫。ぜひ、ためらわずに相談してください。
中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士。公認心理師。心理学博士(九州大学)。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。
構成=高木さおり