【河西 秀哉】悠仁さまの妻を襲う「激しすぎるプレッシャー」とは…いま天皇・皇室に迫る「存亡の危機」と、「男系男子の皇位継承」が抱える重大問題

現在、皇位継承資格をもつ次世代の皇族は秋篠宮家の悠仁親王のみ。10年後、20年後、そして50年後に、天皇と皇室はどのような姿になっているのだろうか? 戦後80年の節目となったこの夏、皇室制度・皇位継承の専門家に連続インタビューを行った。
河西秀哉(かわにし・ひでや)/1977年生まれ。名古屋大学准教授。専門は日本近現代史・象徴天皇制。著書に『皇室とメディア』『「象徴天皇」の戦後史』他
いま、皇室は存続の危機にあります。このまま手を打たなければ、皇位継承権をもつ男性皇族は将来的には悠仁さまだけとなり、そこから先は運任せ、という状況になってしまうからです。
小室圭さんと眞子さんの結婚をめぐっては、報道の過熱と激しいバッシングがありました。まず、あれを見て、今後わが子を皇族と結婚させてもよいと考える親がどれほどいるでしょうか。そのうえ、悠仁さまの妻となる女性は「必ず男児を産まなければいけない」という激しいプレッシャーにもさらされるのです。
さらに言えば、たとえ悠仁さまが男児に恵まれたとしても、愛子さまや佳子さまがご結婚されて皇籍を離脱すれば、皇族の人数は減ってゆきます。被災地訪問や戦没者慰霊などの公務も、大幅なダウンサイジングを免れません。
戦後、天皇や皇族は公務を通じて国民とふれあうことにより、広く支持されてきた面があります。しかし、そうした活動が十分にできなくなったとき、天皇や皇室の存在意義に疑問を抱くようになる国民が増えないともかぎりません。いずれにしても、待っているのは「茨の道」でしょう。
私自身は、女性天皇・女系天皇を認め、愛子さまや佳子さまにもなるべく皇室に残っていただいたほうがよい、という立場です。それが皇室の存続に最も資すると考えるからですが、政府与党、とりわけ自民党保守派のような「男系男子による皇位継承」にこだわる立場には、問題が多いということも理由です。
特に、先の国会で自民党が出した「女性皇族には結婚後も皇室に残っていただく一方、その夫と子は皇族にしない」という提案には、大きなリスクがあると考えます。
ひとつは、皇族と一般国民が同じ家に共存するという、不自然な家族のありかたを強いることになる点。そしてもうひとつは、皇族の肉親が、政治に関与する道が開かれてしまうという点です。
たとえば、もし愛子さまや佳子さまの夫となった人やお子さんが「私は一般国民なので、衆院選に出る」と言い出せばどうなるのか。あるいは自分では出馬せずとも、「わが家はこの政党を支持しているから、皆も投票してほしい」などと発言したらどうなるのか。皇族ではない人から選挙権・被選挙権を奪うわけにはいきませんから、大問題になります。
昨今では、国民が皇室への意見を、批判も含めてネット上で自由に表明できるようになっています。それ自体は悪いことではないものの、対する皇族方は自らの意見を自由に表明できるわけではありません。もちろん、皇室の威光を借りる者が現れないようにそうしているわけですが、一方で、皇室の側から積極的に発信をしなければ国民の支持を得づらい時代になっているのも事実です。このバランスをとるのは、今後ますます難しくなってゆくでしょう。
皇族方も、生身の人間です。今後は女性天皇や女系天皇が国民に受け入れられて、皇族もなるべく一般国民に近い姿になってゆき、もっと自由に生きられる時代が来るといいと個人的には思います。
最近は一部で、むしろ保守的な皇室像を支持する動きも活発になっているようです。しかし皇室が硬直化し、一般的な常識とのズレが大きくなれば、最終的には支持を失うことにもなりかねません。皇室制度も、世の中の要請に応じてフレキシブルに変わることが求められるのです。
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「週刊現代」2025年09月01日号より
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