愛らしい仕草で人に近づき…触れたら危険!「致死率27%のマダニ感染症が拡大」キュートな悪魔の正体

数匹のリスが木の上をかけずり回っている。地面に降りると落ちていた木の実のようなモノをモグモグ。なかには行きかう人を恐れる様子もなく、愛らしい仕草で近づくリスもいた――。
記者が訪れたのは、神奈川県横浜市にある私鉄駅からほど近い一般の公園だ。休日のため、幼い子どもを連れた家族が目立つ。そんな誰もが利用できる公園で可愛い姿を見せていたのが複数のタイワンリス。台湾に起源を持つ「特定外来生物」だ。
「もともと動物園や家庭でペットとして飼われていたタイワンリスが逃げ出し、神奈川県を中心に’80年代から徐々に増え始めたようです。現在では東京都や大阪府、静岡県、岐阜県などでタイワンリスが確認されている。神奈川県だけで約10万匹が生息していると推定されます。
体長は、ふさふさしたしっぽを含めると40僂曚匹任后Gに3回ほど出産し、1回で2匹ほど生むぐらい繁殖力が高い。日本には天敵のタカや大型のヘビが少ないため、生息範囲が拡大したのでしょう。民家の軒先などに巣を作り、人を恐れないのも特徴の一つです」(全国紙社会部記者)
愛くるしい外見の一方、タイワンリスは「キュートな悪魔」とも呼ばれる。果物などの農作物が食べられ電線がかじられるなど、多数の被害が報告されているのだ。
被害は人間にも及びかねない。8月10日時点で過去最多の135人の感染者が出ている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の拡大だ。SFTSはマダニによって媒介され、感染すると高熱や腹痛を発症。重症化すると出血が止まらなくなり、致死率は実に27%にのぼるといわれる。元東京大学医科学研究所特任教授で医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が解説する。
「以前は西日本を中心に広まっていましたが、最近では東日本にも感染者が出ています。マダニが寄生する野生動物が、温暖化などの影響で生息圏を移動させているのが要因でしょう。今年は北海道でも感染者が確認されています」
その危険なマダニの「運び屋」となっていると考えられるのがタイワンリスだ。タイワンリスにはノミなども寄生している。上氏が続ける。
「マダニは他の動物にも寄生しますが、とくにタイワンリスは人間の生活圏内に生息し私たちを恐れません。『可愛い』と安易になでたりするとSFTSに感染する恐れがある。SFTSは空気や飛沫では感染しないと考えられています。野生動物に接触しないことが対策の基本です」
触れたら危険! 近づいてくるキュートなリスがいても、エサを与えるなどの接触は禁物のようだ。