【大久保 一彦】【いまだ低評価の嵐】ジャングリア沖縄《口コミ大量削除》に巻き込まれた真相

まもなく開業から1ヵ月を迎える沖縄のテーマパーク「ジャングリア沖縄」の口コミをめぐって、「意図的に口コミを削除しているのではないか」といった話題が挙がりました。
これをきっかけに、Googleマップとその口コミの信頼度が落ち気味ではないか、と言われるようになっております。
もうかなり前になりますが、2020年1月、『深刻な「グルメサイト離れ」のウラでグーグルマップに食通が集うワケ』と題した記事を執筆いたしました。この時は、「食べログ」などのグルメサイトの信憑性が薄れ、代わりにGoogleマップに支持が集まる動きを取り上げました。
あれから5年経過し、多くの企業や店舗がGoogleマップの重要性を確信。ここ1~2年は、各社、MEO対策(地図検索で自社のビジネス情報の順位を上げるなどしてプレゼンスを高めてアピールし、来店につなげる施策)を推し進めています。
筆者はこの数年、ヤラセやインフルエンサー派遣に頼らず、お客さまの来店経験を通じて、良好な口コミを獲得し、健全にGoogleマップや食べログ、旅行サイトでの高得点化を目指す、戦略的な店舗運営のサポートをして参りました。
今回は、ジャングリア沖縄の《口コミ大量削除騒動》に端を発した、Googleマップの口コミに対する不信感が高まっている理由と、今後の消費者の店探しはどうなるのか、筆者の視点を加えて、見ていきたいと思います。
2025年7月25日に沖縄県国頭郡今帰仁村に開業したジャングリア沖縄は、テレビCMを投入して大々的にオープンしました。
運営会社は2018年6月に設立された株式会社ジャパンエンターテイメントで、沖縄から日本の観光産業を変革することを目指しており、ジャングリア沖縄はその一環として位置付けられています。
また、同社は、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)をマーケティング戦略で黒字化に導いたと言われる森岡毅氏率いる株式会社刀が立ち上げたことでも知られています。
そういった背景から、世間の大きな期待と注目の下、オープンを果たしたジャングリア沖縄は、開業後から来場客が殺到。大型施設ゆえ、当然のごとく、Googleマップへの口コミ数も、かつてない異常なペースで増加しました。
開業翌日となる7月26日、土曜日の深夜にはすでに口コミ数は約400件にのぼり、評価点数は「2点台前半」と、かなり厳しい評価となっていたようです。
Googleマップの口コミ評価が2点台前半になるというのはどういうことか。
これは星1つの評価でレビュー投稿した人が相当数いることを指します。おそらく、事前に期待していた分の反動からくる失望や不満が顕在化して、このような結果になったと予想できます。
筆者も店舗の評価アップのお手伝いをしている関係で、担当先が星1つの口コミ投稿だらけになって炎上した経験もあります。というのも、ある程度星1つの口コミが蓄積されると、そこから累進的に星1つの口コミがどんどん投稿され、最終的に炎上してしまうわけです。受けて側からすれば“集団リンチ”を受けている気分にすらなります。
基本的に、星1つのレビュー投稿を避けるポイントは、お客さまの不満や失望の要因を顕在化させないことです。しかし、ジャングリア沖縄の場合、開業直後ですから、すぐに軌道修正はできません。よって、じっくりと現場の安定を図りつつ、状況の鎮静化を待つしかなかったと思います。
問題となったのはこの後です。Xを中心にSNSで騒がれるようなおかしな事態が起きました。
『沖縄タイムス』や『47NEWS』など各メディアによれば、〈7月28日時点で、ジャングリア沖縄のGoogleマップの口コミ数が、約13件にまで減少した〉と報じられたのです。この口コミ数の急減について、「ジャングリア沖縄側が意図的に削除したのでは」とSNS界隈がざわつきました。
まずは、この点を検証したいと思います。
最近、SNSが大切だと言うことを耳にして、飲食店などがInstagramの公式アカウントを始めることがあると思います。あるいは知人に頼んでGoogleマップへの口コミ投稿を依頼することもあるでしょう。
ところが、Instagramの公式アカウントを開設していきなり、全従業員で気合いを入れて何軒も投稿すると「シャドウバン」と言って、運営から通知されずに、投稿やアカウントが他のユーザーから見えにくくなる現象が発生することがあります。
また、知人に依頼してGoogleマップへの口コミを投稿したとしても、同じ時期に似たような投稿を何度も重ねると、自動スパム検知システムが作動して、自動的に削除されると言われています。
他にも、口コミサイトの点数反映では、スパム的なレビューの大量投稿に対する防御策として、あらかじめルール――たとえば48時間以内に似たようなレビューが複数アカウントから100件入ったら当該レビューを削除する――をアルゴリズムとしてプログラミングしてあります。
筆者は、この“アルゴリズム”が時としてユーザーの「不信感」を生じさせる現象の根幹にあるようには思います。いずれにせよ、運営者側はある程度のことを想定しながら、問題があったら、その都度修正するしかないように思います。
その上で、今回のジャングリア沖縄はどうだったのでしょうか。
ジャングリア沖縄については、運営側の想定以上に一気に口コミが投稿されてしまいました。しかも、失望や期待を大きく下回り、かつ「大雨で非常に辛い思いをした」というレビューなども含めて、大部分の口コミは感情的な怒りや不満を示す、似通ったものばかりとなりました。
その結果、〈Googleの削除アルゴリズムの事項に触れるような同じ内容の投稿が大量にあった〉とAIが判断し、おおよそ48時間後に自動的に口コミが削除されたという可能性が高いです。
ゆえに、ジャングリア沖縄もしくはGoogleが「意図的に」削除を行った、という可能性はかぎりなく低いと結論づけます。
Googleマップが普及してからこれまで、ジャングリア沖縄クラスの施設の新規開業がなく、経験することのなかった現象が起こってしまったと筆者は考えており、これだけではGoogleへの信頼を毀損するものではないと思います。
ただ、行き過ぎたMEO対策ゆえに、Googleマップの口コミを操作しているのではないか、と陰で囁かれている会社や店舗も少なくありませんし、その結果、口コミの信頼を毀損する可能性も否定できません。
【後編記事】『《ジャングリア沖縄》騒動で注目「グーグルマップの口コミ」は信頼できるのか』では、その問題に触れていきたいと思います。
【つづきを読む】《ジャングリア沖縄》騒動で注目「グーグルマップの口コミ」は信頼できるのか