【全2回(前編/後編)の前編】
参院選での躍進後も勢いは止まらず、目下、世論調査では自民党に次ぐ支持を集める参政党。それにしても、この新興政党の勢力拡大には、不可解なところも多い。しかし、取材を進めて判明したのは、かの党とマルチ商法の驚くべき共通点の多さだった。
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【レア写真】「とにかくモテていた」 神谷宗幣代表の「卒アル写真」
神谷宗幣代表(47)率いる参政党がいくら参院選で14議席を獲得しようと、この党に対して、いわく言い難い違和感を覚えている向きは多いはずである。
英BBCなど西欧のメディアは彼らの政策をして“極右勢力”と呼ぶ。そうした点が引っかかるという方もいるだろう。
だが、政策以前の次元で見てみると、また別の様相を呈してくるのだ。
「神谷さんは党勢拡大のために、マルチ商法の手法を取り入れたと思います」
そう打ち明けるのは、参政党関係者である。
「2020年の結党当初は、とにかく党員がいないので、党員の勧誘が急務でした。当時、神谷さんはよくこんなことを言っていた。人を勧誘するとき、参政党を前面に押し出すのではなく、“ビジネスの話を聞きにきませんか?”“仕事のスキルアップについて勉強会をしませんか?”との誘い文句を入口にしよう、と。その上で、実際のイベントでは“自分でお金を稼げる人を増やしたい。そのためには政治や教育が大切だ”として、参政党に興味を持ってもらう。ビジネスから政治へ、という順番については、神谷さんはこだわっていましたね」(同)
なるほど、巧妙である。首尾よく入党させた後にも、実に象徴的なシステムが設けられていた。
「かつては“ランク制度”がありました。これは勧誘した党員数に応じて、バッジと特典が得られるというものでした」(同)
具体的には、
「10人紹介すると、ブロンズ党員として銅のバッジがもらえます。30人だと、銀のバッジ、100人だと金のバッジです。同時に、支部長になるための申請の権利や、議員に立候補する権利などもランクに応じて付与された。イベントで大々的に表彰されている人もいましたね。しかし、この制度はネットで批判されてすぐに廃止されました」(同)
ネットワークビジネスのイメージそのものといえるこの制度について、
「提案したのは僕ですね」
そう述懐するのは、参政党の創設メンバーの一人でYouTuberのKAZUYA氏である。
「たくさん人を連れてきた人には何か特典をプレゼントしたらいいのでは、と提案したのを覚えています。具体的な内容はみんなで考えて決めました。どうやって党員を増やしていくか、出てきたアイデアはなんでもやっていく時期でした。言われてみるとたしかにマルチっぽいと思います」
さる元参政党員は、マルチ関係者の党員から迷惑を被った実体験を明かす。
「結党の頃から、ネットワークビジネスに関わっている党員は結構いました。党関係のイベントに参加し、そこで出会った人たちと食事などすると、SNSの友達になることが多い。すると後日、友達になった人が自身のセミナーを告知していたり、直接セミナーに勧誘されたりすることがあった。私も党員から声をかけられて、新宿のルノアールで、毎月最低5万円を積み立てる投資について説明されました」
ちなみに、党員の間では隠語が使われていたとか。
「党員としても、世間から冷たい目で見られている自覚はありました。だから、飲み屋などで党員同士で話すときは周囲に参政党だとバレないように、党のことを“ダイダイ”と呼んでいます。イメージカラーのオレンジ色のことです」(同)
つぶさに調べると、ネットワークビジネスで知られる商品や、マルチ関係者と親密に納まる写真を、SNSに投稿する地方党員は数多く見受けられる。
カルト問題に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏によれば、
「参政党には〈ジョージタウン大学日米リーダーシッププログラム修了〉とされている幹部がいます。これはマルチ商法で知られるアムウェイがジョージタウン大学と提携して作ったプログラムです」
神谷代表が立ち上げたイシキカイカク株式会社のサイトでは、
「過去に科学的に怪しげな健康食品や1万円前後するシャンプーなど、マルチ界隈が好むような商品が売られていました。神谷代表は“業者から持ち込まれたものを代理店のような形で売っていただけ”という旨の言い方をしていた。事実でしょうが、結局神谷さんのところに寄ってくるのはそういうジャンルの人だという証明だと思います」(同)
後編【「カルト宗教でも用いられる勧誘手法」 参政党にはなぜマルチ商法関係者が集まるのか 「隠語を使って会話も」】では、参政党にマルチ関係者が集まる理由について、より詳しく報じる。
「週刊新潮」2025年8月7日号 掲載