東洋大学卒業ではなく「除籍」だった。学歴詐称疑惑を指摘されている静岡県伊東市の田久保真紀市長について、伊東市民に話を聞いた。
【映像】謝罪会見でピンクジャケットを着用して炎上(実際の映像)
伊東市は連日メディアでその名を報道され、地元を愛する市民は迷惑している様子だ。「ちょっと長いよね、早く終わらせたい」「程度が低すぎて、恥ずかしくて話せない」「ちょっとしたことで騒ぎすぎ。ちょっと異常」といった声が寄せられた。
発端は伊東市の市議会議員全員に郵送された差出人不明の文書だ。内容は「東洋大学卒ってなんだ!彼女は中退どころか私は除籍であったと記憶している。議会に真実の追及を求める!」というもの。
市議会の追及を受けて、田久保氏は東洋大学を除籍されていたことは認めたものの、同時に卒業証書も受け取っていたと主張。二転三転する明瞭さを欠く説明がさらに問題を大きくさせ、市長を辞職したうえで出直し選挙への出馬を表明した。
謝罪会見でピンクのジャケットを着用したことでさらに炎上。色彩専門家の南涼子氏は「ピンクは一言で言うと厳しい色ではない。ちゃんと心から謝っているという感じよりは、むしろ甘く考えているなどのイメージにつながってくる。やはり反感を買ってしまう。一番謝罪会見にあってはならない要素を持った色」と指摘。
「ピンクは、『ドリーム』『夢見がち』。『バラ色の人生』『バラ色の未来』という言葉があるが、成功、サクセスストーリーを象徴しているので、もしかしたらそういった願いとか思いも込めていたのかもしれない」と、ピンクを選んだ心理を推察した。
しかし追及はこれで終わりではなかった。市議会は百条委員会の設置を決定し、辞職勧告決議も全会一致で可決した。
非難され続け、辞職にまで追いやられる田久保氏について、「この騒動の本質は、地方政治にありがちな“市長対市議会”のエグい勢力争い」と指摘するのは元衆議院議員の宮崎謙介氏だ。
2025年5月に新市長に当選した田久保氏は、バイク便ライダー・会社員などを経て2010年から故郷の伊東市でカフェを経営。メガソーラー建設計画反対運動に参加し、2019年に伊東市議選で初当選。2023年市議選で最下位ながら再選し、2期目途中で市長選に出馬。3選を目指す現職との一騎打ちだった。
選挙では自民、公明、観光、建設業界から支援を受けた小野達也前市長に対し、組織を持たない田久保氏は主にSNSで選挙戦を展開。田久保氏が訴えたのは「ハコモノ行政」の否定だった。
伊東市民からは「市長が間違えたとかいろいろ言ってるが、もう正直言って私なんかどうでもいいと思っている。学歴とか。ハコモノ行政で建設業界との繋がりがけっこう強いんじゃないかなと思う。伊東は小さい町だからそういうつながりが強いと思う。そのこと(学歴詐称疑惑)だけであれだけ非難されて、辞職にまで追い込まれたというのも、残念な気もする」といった声が聞かれた。
伊東市では事業予算42億円をかけた新しい図書館の建設が進められており、この新図書館の建設を巡る是非が問われたのが5月におこなわれた市長選の争点でもあった。前市長は以前の市長選で新しい図書館建設を公約として掲げて当選しており、業者の入札なども行い、10月に着工することになっていた。
田久保氏は図書館の必要性は認めつつ「維持費が毎年2億7000万円もかかるのは高すぎる」と、分館なども視野に計画の見直しを訴えた。
伊東市民は「彼女が別に『東洋大学云々』とか、そんなことで。結局これだけ不景気のときに…。ここに図書館とか文化サロンとか、ちょっとお茶を飲むところも作るという話なんだけど、いまはそんなことじゃなくて、伊東がゴーストタウン化していて。熱海の齊藤(栄)市長みたいにガンガンやっている人もいれば、(前市長は)6年間何もしなかったから、とにかくまだやることがあるんじゃないか」と、図書館の建設より街の再建が先ではないかと訴えた。
伊東市は市民が認めるほどシャッター通りが加速。ほかの自治体同様に高齢化が進み、税収入が減るなか、新たな公共施設の維持は実質、市民の負担を増やすことになる。田久保氏の訴えは市民の共感を集め、図書館建設を推進する前市長を押さえ勝利。田久保氏が14,684票、小野氏が12,902票と、その差1,782票と僅差だった。
田久保氏は2025年5月29日の就任初日に「私の意思として(図書館建設)中止と指示を出したので、建設の余地はありません。もう建設することはないと考えていただいて結構です」と意思を表明していた。
市長の学歴詐称疑惑が発覚したのは、当選からわずか1か月後のことだった。市議会では新市長支持派は極少数。当選後は市長を支える立場の副市長も退任するなど、田久保氏は当選当初から孤立無援状態だった。
これと並行して、伊東市議会は6月27日に田久保氏が出した図書館建設中止の補正予算案を否決。さらに7月7日には全会一致で辞職勧告決議案と百条委員会の設置を可決した。
前市長の支持議員が大半を占める市議会。その計画を止めることで当選した基盤のない市長。これが宮崎氏の言う「エグい勢力争い」の真相なのか。
「『公共施設を建てる』それをよしたい(止めたい)っていう市民が田久保さんに投票したんだろうけれども、こういう結果になって何も言えない。市長になって1期目で何が変わるかって言ったら、そんなに大きく期待はできないと思う。黙って静かに4年間やらせてあげたらいいものが見えてくるかなぐらいの、それぐらいの期待だったと思う」(伊東市民)
さらに、伊東市の街の居酒屋でも、この話題で連日持ち切りだ。常連客からは「一事が万事で、そういう嘘をつく方に市政は任せられない」「本当やめてもらったほうがいい。また同じ嘘をつくから」といった声があった。
(『ABEMA的ニュースショー』より)