「編集体制に異常が…」 石破退陣や特捜部捜査で“誤報”連発の「読売新聞」に何が起きているのか

日本維新の会の池下卓衆院議員(50)が東京地検特捜部の捜査対象であると誤報した読売新聞。この前代未聞の出来事の背景には一体何があったのか。「検証記事」では明かされなかった“内幕”と“社内事情”に迫る――。
※本稿は「週刊新潮」2025年9月11日号の特集記事【無関係の維新議員を1面トップで容疑者扱い…大誤報だけではない読売新聞「山口寿一社長」の罪と罰】から再編集したものです。
日本維新の会の池下卓衆院議員(50)は8月27日午前5時半頃、地元である大阪府高槻市内の自宅のベッドで目を覚ました。傍らにあるスマホを確認すると、地元事務所の秘書からのLINEで、その日の読売新聞朝刊1面の写真が送られてきていた。
〈公設秘書給与 不正受給か 維新衆院議員 東京地検捜査〉
そんな大見出しが躍る記事に添えられているのは、まさしく自分の写真だった。
池下議員本人が振り返る。
「前日夜に読売の記者さんから電話があり、公設秘書に勤務実態がなかったのでは、とか、東京地検特捜部から事情聴取されたのでは、などと聞かれて明確に否定したのに“一体何が起こってるんだ?”と。まずは、身近な人に“これは誤報で事実無根だ”と知らせないといけない、と思った。怒りで頭が熱くなり、“SNSに書いたろうか”とも思ったんですけど、一旦深呼吸して落ち着こう、と」
その後、池下議員の元には「読売のウェブ版の記事が削除された」「日本維新の会の石井章参院議員の事務所に東京地検特捜部が家宅捜索に入ったことが報じられている」といった情報が相次いで寄せられた。
「それで“やっぱり誤報やね”と安心して、高槻の事務所の前で各社の記者さんに“事実誤認です”という話をしました」(同)
同日夕刻には、読売新聞東京本社の竹原興編集局次長らが高槻の事務所を訪れ、池下議員に謝罪した。
「謝罪の際、僕の名前を『タケシタ』と言い間違えた。即座に“名前間違ってますよ”とツッコミを入れましたが、名前を間違っている時点で真摯な謝罪とは思えませんよね」(同)
読売が「検証記事」を掲載したのはそれから3日が経過した8月30日のこと。
〈誤報 記者思い込み原因 東京地検捜査巡り 編集役員ら処分〉
1面に載ったその記事によると、処分対象となった役員は前木理一郎専務取締役編集担当と滝鼻太郎執行役員編集局長の二人。処分は9月5日付で、それぞれ役員報酬・給与を2カ月30%返上、との内容だ。その他、小林篤子社会部長は罰俸となり、更迭。誤報が掲載された当日の編集責任者だった編集局デスクは譴責(けんせき)、社会部デスク、司法記者クラブキャップ、担当記者はいずれも出勤停止7日となった。
「日々の紙面の編集責任者は数人いる編集局次長が持ち回りで担当しており、処分対象となった『編集局デスク』とはその一人。どのネタを1面にもってくるのか、などを最終判断するのが役割となります。一方、社会部記者から上がってくる個々のネタの最終責任者が社会部長。今回は記事が誤りだったわけですから、社会部長が更迭という厳しい処分となったのは当然と言えます」(読売OB)
同日の紙面中ほどの13面では、担当記者に「思い込み」が生じ、そのまま1面に掲載されるまでの経緯が検証されている。
それによると、担当記者が“政界の事情に詳しい関係者”から「東京地検特捜部が政界捜査に動いている」との情報を得たのは8月中旬。別の関係者からは、秘書給与詐欺の疑いで捜査対象となっているのは日本維新の会の国会議員で、“過去の疑惑がヒント”との示唆を受けたという。それ故、公設秘書が市議を兼任している問題を23年に取り沙汰されたことのある池下議員に目星を付けたのだ。その後の取材で、担当記者は池下議員に間違いないと思い込んだ。しかし、この記者以外の複数の記者が「裏付け」取材に走るも、捜査対象者が池下議員であるという確証は得られず。掲載直前には、池下議員本人や秘書が記者に対して疑惑を否定。複数の関係者から「誤報になるかもしれない」とすら言われていたにもかかわらず、掲載まで突っ走ってしまった、というのである。
有料版の記事【誤報連発「読売新聞」で今何が起こっているのか 「検証記事」では明かされなかった“誤報の内幕”と知られざる“編集軽視人事”とは】では、「検証記事」で明かされていない今回の誤報の内幕に加え、直前に起きていた「石破首相退陣」の誤報の詳細、そしてそれらの背景にある驚くべき“編集軽視人事”の実態などについて、詳しく報じている。
デイリー新潮編集部