故人の残した品を整理する「遺品整理」。それは単なる片付けではなく、衣類や家具はもちろん、思い出の写真や手紙など、故人の人生そのものに触れる、特別な時間です。近年、この“最後の片付け”を支える遺品整理業者への依頼は急増中。そこで今回はグループ合計で18万件の実績をもつ「遺品整理プロスタッフ」の代表取締役社長・石田毅さんに遺品整理のリアルを伺いました。
遺品整理とは、亡くなった方の遺品の整理や片付け、処分することを指します。通常の片付けサービスと異なるのが、“故人”のものを取り扱うという点。ときには、提携しているお寺で供養を行い、お焚き上げをすることもあります。
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「遺品整理は単にものを『片付ける』作業ではありません。故人が、生前に使っていた衣服や家具のほかにも、写真や手紙などの思い出品、そして貴重品など、1つ1つを丁寧に仕分け、ご遺族の気持ちに寄り添いながら進めていく。それが私たち専門業者の仕事だと考えています」(石田さん、以下同)
業者に遺品整理を依頼する際のおおまかな流れは以下の通りです。
(1) 問い合わせ(電話やメールなど)
(2) 見積もり
(3) 作業(仕分け、片付け、搬出など)
(4) 支払い
「ご供養を希望される品々については、後日お焚き上げを行います。作業期間は、ご依頼の内容によって異なりますが、1日で完了する場合が多いですね」
遺品整理にかかる費用は、回収量や部屋の広さ、作業時間・人数で変わります。そのため、業者に依頼する前に「見積もり」を取るのが重要です。見積もり時は、どんな些細な気になることでもしっかりと業者に聞くことが、のちのトラブル回避と安心につながります。
<たとえば…(※)>
・間取り:1R/作業:2時間で4名/回収量:3トントラック1台分
→7万4500円(家電の買取金額5000円を値引き)
・間取り:2LDK+庭回り/作業:7時間で6名/回収量:2トントラック4台分
→27万5100円
・間取り:4DK/作業:6時間で6名/回収量:2トントラック3台分
→20万円
「見積もりがいちばんですが、もしだいたいの相場だけでも知りたい場合は、業者のHPにある『片付け事例』など似たようなケースを参考にすると、なんとなくの費用総額のイメージがわきやすいかなと思います」
※ 金額は「遺品整理プロスタッフ」HP内の事例を記載
依頼は、故人の家族や親族のほかにも、故人と縁があった方や、建物の管理人など多岐にわたります。そして、近年増えているのが「孤独死」に関するものなのだそう。
今回教えてくれたのは60代女性からの依頼。長年疎遠だった実母が孤独死したことを、警察からの連絡で初めて知ったというケースです。
「依頼者さまが実際に現場に到着すると、床にはコンビニ弁当の空き容器が散乱し、カーペットには蛆虫がわき、耐え難い異臭が充満していたそうです。あまりの凄惨さに、腰を抜かしてしまったとおっしゃっていました」
孤独死の場合、こうした想像を絶する現場も少なくありません。また、強烈なにおいの原因の1つが「排尿」の問題です。
「じつはトイレ以外の場所で排泄してしまう方も珍しくはありません。今回のケースでは、お母さまが高齢で足腰を悪くしたことが原因と考えられます。症状が悪化するにつれてトイレが間に合わなくなり、最初は尿パッド、次にペット用尿シート、そして新聞紙へと移行していったのではないでしょうか」
依頼者は、母親の強い自尊心を知っていたからこそ、変わり果てた部屋の様子に大きなショックを受けていたといいます。しかし、石田社長は「なんでも自分でできる人だった」からこそ助けを求められず心を閉ざしてしまったのではないかと推察。
「おそらくですが、子どもに排泄の世話をかけたくない、惨めな姿を見せたくない、困っていてもだれかにSOSを出すことをためらってしまう…そんな思いを抱えていたのではないでしょうか。そう考えてしまう気持ちも少し理解できますよね」
遺品整理の作業は1日もかからず終了し、この日回収したゴミは2トントラック2台分。突然のことに衝撃を受けていた依頼者も、遺品整理を通して気持ちの整理がつき、最後は感謝を述べていたそうです。
今回のケースのように、亡くなって初めて家族の状況を知ることは多く、「孤独死」という現代社会の抱える課題を浮き彫りにしています。だれにも頼ることができず、ひっそりと亡くなる…。
だからこそ、遺品整理は単なる片付けではなく、「家族」として最後のお別れをするための大切な時間であるのだと石田社長は教えてくれました。