「スシロー」運営会社の純利益が激減 水留浩一社長がハマった“落とし穴”とは

11月4日、回転ずし大手「スシロー」の運営会社「フード&ライフカンパニーズ」は、今年9月期連結決算について、純利益は前年比72.6%減の36億円だったと発表した。円安による食材の高騰に加え、寿司ネタの在庫がないのにキャンペーンを続けた「おとり広告」などの不祥事が相次いだからというが、原因は他にも……。
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【写真】実際にスシローが公開して問題となった「おとり広告」の画像 スシローを展開する「フード&ライフカンパニーズ」の2021年9月期決算は、過去最高となる229億100万円の営業利益を計上した。前年度比89.9%の増益だった。純利益は131億8500万円(104.2%増)。その要因は、売上原価率が前年度より1.5ポイント下がって45.9%になったことが挙げられるが、さらに大きな要因となったのは、111億1900万円を計上したその他の収益。その他の収益のほとんどは、コロナ禍での時短要請協力金の約110億円だ。コロナで増益になった形である。

スシロー「フード&ライフカンパニーズ」は昨年、2022年9月期の純利益を120億円と予想していた。それが36億円に。なぜこれほど落ち込んだのか。「プロ経営者である水留浩一社長が攻めの経営を行って、落とし穴にハマッたという感じですね」 と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏。措置命令 水留氏はヨーロッパ最大の経営戦略コンサルティング会社「ローランド・ベルガー」日本法人の代表を務めた後、経営破綻後の日本航空で副社長として再建に貢献した。2015年に「フード&ライフカンパニーズ」の社長に就任。2009年に上場廃止となっていた同社を再上場させ、株価を5倍にした。「スシローは、昨年7月以降、毎月の売上が前年比マイナスになっていました。ところが今年の4月が前年比105%、5月が107%と回復してきたので、ここで勝負に出たのでしょう。6月、ウニやイクラなどの高級ネタを目玉商品としてキャンペーンを行いました。ところが十分なネタを用意していなかったので、品切れとなりクレームが多数寄せられた。消費者庁から『おとり広告』の疑いがあるとして措置命令が出されました」 措置命令とは、消費者が誤解するような不当表示をした業者に、不当表示の撤回と再発防止を命じる行政処分のことだ。命令に違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金刑が科せられる。こんな命令が出たら、新たなキャンペーンは控えるものだが。「翌7月には、それでも生ビール半額キャンペーンを打ち出したのです。これも高級ネタと同様、品切れが相次いでクレームがでました」 これに追い打ちをかけたのが、9月に起きたマグロ疑惑である。「メバチマグロを使っていますとPRしたところ、マグロの巻物にはあっさりしたキハダマグロが使われていました。メバチを使ったのは握りだけだったので、誤解を生んでしまったのです。1度ならず、3度も不祥事を起こすなんて、大きな瑕疵があった見るべきでしょう。危機管理がなってなかったですね」 加えて10月には、5月に発表していた値上げを予定通り実施。100円が110円になったため、10月の既存店の売上は前年比81.5%と大きく落ち込んでしまったのだ。230億円も増えた一般管理費「水留社長は、急回復、急成長といった攻めの経営は得意ですが、売上が落ち込んだ時に行う守りの経営に弱いようですね。業績が下降した場合、人件費や家賃、交際費などの一般管理費を減らすか、仕入れを減らさなければいけません」 スシローの先日発表された決算報告書を見ると、仕入れは前年と変わっていなかった。「ところが一般管理費が昨年の1150億円から今年は1380億円と230億円も増えているのです。業績がマイナストレンドの時に、一般管理費を230億円も増やすなんて普通は考えられません。これでは放漫経営と言われても仕方がありませんね」 スシローの店舗は直営だが、年々店舗数を増やし、昨年7月に国内ですしチェーントップとなる600店に到達した。今年もさらに増加しており、9月末で644店になっている。人件費は嵩む一方である。攻めの経営は続きそうだ。「3度起こした騒動は、時間とともに忘れられるでしょう。スシローの店に行けばわかりますが、夕食の時間帯はすごく混みます。特に週末の夕方は行列ができて1時間待ちも珍しくありません。そこで空いた午後は値引きをしてお客を入れるようにすれば、売上はかなり伸びますよ。今後、業績回復の余地は十分あると思います」デイリー新潮編集部
スシローを展開する「フード&ライフカンパニーズ」の2021年9月期決算は、過去最高となる229億100万円の営業利益を計上した。前年度比89.9%の増益だった。純利益は131億8500万円(104.2%増)。その要因は、売上原価率が前年度より1.5ポイント下がって45.9%になったことが挙げられるが、さらに大きな要因となったのは、111億1900万円を計上したその他の収益。その他の収益のほとんどは、コロナ禍での時短要請協力金の約110億円だ。コロナで増益になった形である。
「フード&ライフカンパニーズ」は昨年、2022年9月期の純利益を120億円と予想していた。それが36億円に。なぜこれほど落ち込んだのか。
「プロ経営者である水留浩一社長が攻めの経営を行って、落とし穴にハマッたという感じですね」
と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏。
水留氏はヨーロッパ最大の経営戦略コンサルティング会社「ローランド・ベルガー」日本法人の代表を務めた後、経営破綻後の日本航空で副社長として再建に貢献した。2015年に「フード&ライフカンパニーズ」の社長に就任。2009年に上場廃止となっていた同社を再上場させ、株価を5倍にした。
「スシローは、昨年7月以降、毎月の売上が前年比マイナスになっていました。ところが今年の4月が前年比105%、5月が107%と回復してきたので、ここで勝負に出たのでしょう。6月、ウニやイクラなどの高級ネタを目玉商品としてキャンペーンを行いました。ところが十分なネタを用意していなかったので、品切れとなりクレームが多数寄せられた。消費者庁から『おとり広告』の疑いがあるとして措置命令が出されました」
措置命令とは、消費者が誤解するような不当表示をした業者に、不当表示の撤回と再発防止を命じる行政処分のことだ。命令に違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金刑が科せられる。こんな命令が出たら、新たなキャンペーンは控えるものだが。
「翌7月には、それでも生ビール半額キャンペーンを打ち出したのです。これも高級ネタと同様、品切れが相次いでクレームがでました」
これに追い打ちをかけたのが、9月に起きたマグロ疑惑である。
「メバチマグロを使っていますとPRしたところ、マグロの巻物にはあっさりしたキハダマグロが使われていました。メバチを使ったのは握りだけだったので、誤解を生んでしまったのです。1度ならず、3度も不祥事を起こすなんて、大きな瑕疵があった見るべきでしょう。危機管理がなってなかったですね」
加えて10月には、5月に発表していた値上げを予定通り実施。100円が110円になったため、10月の既存店の売上は前年比81.5%と大きく落ち込んでしまったのだ。
「水留社長は、急回復、急成長といった攻めの経営は得意ですが、売上が落ち込んだ時に行う守りの経営に弱いようですね。業績が下降した場合、人件費や家賃、交際費などの一般管理費を減らすか、仕入れを減らさなければいけません」
スシローの先日発表された決算報告書を見ると、仕入れは前年と変わっていなかった。
「ところが一般管理費が昨年の1150億円から今年は1380億円と230億円も増えているのです。業績がマイナストレンドの時に、一般管理費を230億円も増やすなんて普通は考えられません。これでは放漫経営と言われても仕方がありませんね」
スシローの店舗は直営だが、年々店舗数を増やし、昨年7月に国内ですしチェーントップとなる600店に到達した。今年もさらに増加しており、9月末で644店になっている。人件費は嵩む一方である。攻めの経営は続きそうだ。
「3度起こした騒動は、時間とともに忘れられるでしょう。スシローの店に行けばわかりますが、夕食の時間帯はすごく混みます。特に週末の夕方は行列ができて1時間待ちも珍しくありません。そこで空いた午後は値引きをしてお客を入れるようにすれば、売上はかなり伸びますよ。今後、業績回復の余地は十分あると思います」
デイリー新潮編集部