兵庫県神戸市垂水区の踏切で1月9日、女性2人が電車にはねられ死亡した。踏切のすぐ外側には車道を渡るための横断歩道があり、地元メディアは、2人が誤って踏切内の遮断機の内側で歩道の信号待ちをしていた可能性もあると報じた。
これに対してネット上では「この踏切は慣れた人でも渡るのが怖い」などの声が集まっているが、実際どんな踏切なのか。記者が現場を訪れると、想像を超えた危険性が見えてきた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
報道によると、事故は1月9日午後3時50分ごろ、神戸市垂水区を通る山陽電鉄の西舞子駅-大蔵谷駅間の踏切で起きた。
毎日放送は以下のように報じている。
<運転士によりますと、接触した際、女性2人は南側を向き横並びで遮断機の内側で立っていたということです。踏切の南側には横断歩道があったということで、警察は亡くなった女性2人が誤って踏切内で信号待ちをしていた可能性もあるとみて、2人の身元の確認を急ぐとともに、事故が起きた当時の状況を調べています>
2人が踏切内で信号待ちをしていた可能性ーー。もし仮にそれが本当だとしたら、なぜそうならざるを得なかったのだろうか。
たまたま兵庫に滞在していた記者が気になり、実際に現場を訪れてみた。
事故が起きた踏切は、国道2号線に沿って山陽電鉄とJR神戸線が並ぶ形で走る場所にあり、それぞれ上下線があるため、計4つの線路が並んでいる。
北側から踏切に入って4つの線路を通り過ぎると、すぐ目の前に国道2号線が走っており、信号付きの横断歩道を渡った先に「スターバックスコーヒー神戸西舞子店」がある。
事故現場に着いてすぐに感じたのは、踏切と車道の間のスペース、つまり信号を待つ空間がとても狭いことだった。遮断機が背中の後ろスレスレに降りてくると同時に、目の前では車が次々と走り去る。
肩幅の2倍ほどの広さしかなく、踏切から車道にかけて斜面になっている。自転車は横に向けなければ収まらない状況だ。
地域住民によると、学生などが自転車に乗って踏切を渡る時には、3台ほどが同時にその狭いスペースで信号待ちすることもあり、自転車の前後が車道や遮断機の内側にはみ出すこともあるという。
さらに、横断歩道の信号は押しボタン式のため、踏切を渡ってすぐにボタンを押さなければならない。
神戸新聞によると「現場付近で中国籍のパスポートが見つかった」といい、もし亡くなった2人が外国人で初めて現場を訪れていたとしたら、ボタンを押さないと信号が変わらないことも知らなかった可能性がある。
記者が特に驚いたのが「音」だ。
仮に踏切の中に立っていても、電車が近づいてくれば走行音で気づくのではないかと考える人がいるかもしれない。記者もそう思っていた。
しかし現場を訪れると、思いのほか近づいてくる電車の音が静かなことがわかった。確かに踏切の上を通る時は「ガタンゴトン」と大きな音がするのだが、その直前までは想像していたほどの騒音がなかった。
そのうえ、近くの車道をトラックやバイクがひっきりなしに通り過ぎ、車の走行音も聞こえる状況のため、イヤホンで音楽を聞いたり電話したりしていれば、音だけで電車が近づいていることに気づくのはかなり難しいと感じた。
警報機が鳴りはじめて遮断機が降りるまでは15秒ほどしかなく、小走りで踏切を渡っていく人たちの姿が目立った。
踏切を渡っている途中に警報機が鳴りはじめた時のことを考えると、車椅子の利用者や高齢者がこの踏切を利用するのは命の危険がありそうだ。
「キケン小学生はこのふみきりをわたってはいけません」
踏切の北側にはこんな注意を呼びかける看板が立っていた。
今回の事故のニュースについて、近くに住む女性は「やっとやなぁという感じ。子どもだけで通るのは危ないし、待つ場所が狭いので、いつかは事故が起こるかなと思っていたので、やっぱりなって」と話した。
この踏切を使わない回り道には10~15分ほど余計に時間がかかるといい、「みんな通る道なので、もっと広くすればいいのになと思います」と語った。
別の男性も「遮断機が降りると待つところがなくなって、目の前には車も通るので、事故はありえる」と述べた。