「王将」社長射殺9年 「やっとここまで」現社長ら全容解明に期待

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有名中華料理チェーン「餃子の王将」を全国展開する大企業のトップが住宅街で銃撃されて死亡するという、社会を揺るがせた事件は発生から約9年で大きく動いた。直接的な証拠が乏しく、捜査は難航しているとされてきた。王将関係者や現場周辺の住人からは事件の全容解明を望む声が上がった。
【写真】王将社長射殺 現場で手を合わせる人も 「やっとここまで来たのかという思いだ」。王将フードサービスの渡辺直人社長は28日午前10時半ごろ、事件現場となった京都市山科区の本社ビルの前で約10分間、報道陣の取材に応じた。京都府警が逮捕状を取ったことをニュースで知り、出張先の東京から急きょ戻って来たという。

「9年間、なかなか進展しなかったが、きっと解決すると願い、捜査を見守ってきた。解決に向けて取り組んでほしい」と京都府警の捜査に期待を寄せた。 本社ビル前には早朝から、約30人の報道陣が駆け付けた。社員らは硬い表情のまま問いかけには応じず、足早に社屋に入っていく姿が目立った。 殺害された大東隆行さん(当時72歳)は、当時社長だったが本社ビルの周辺を早朝に掃除するのが日課だった。愛想も良く、地域の人からも慕われていたという。 事件当時、4発の銃声を聞いたという近くに住む女性(85)は「9年は長かったですね」と驚いた様子。気さくにあいさつする大東さんの姿を今でも覚えており「あんなにいい方がなぜ、とずっと思っていた。解決につながれば社長さんも浮かばれるだろう」と真相解明を願った。 近所の70代女性も「毎年12月になると、今年も捕まらなかったかと落胆していた。ようやく、という気持ちです」と胸をなで下ろした。「ニュースを見て、優しい大東さんの顔を思い出した。警察は解決に向けてがんばってほしい」と語った。 王将フードサービスは高い知名度を誇って拡大を続ける一方、資金トラブルも絶えなかった。創業家との関係が深い企業グループとの不適切な取引で、約200億円が流出していたことが判明。大東さんが射殺されたのは、これを問題視する社内報告書がまとまった、わずか1カ月後だった。 同社は2016年3月、弁護士らで作る第三者委員会による調査結果を発表。調査報告書などによると、1995~2005年ごろ、王将やその子会社「キングランド」は、この企業グループとの間で「経済合理性の明らかでない」貸し付けや不動産取引が14件、繰り返されていた。取引は創業者の親族が主導し、総額は約260億円に上っていた。 2000年4月に社長に就任した大東さんは、企業グループとの債権回収の交渉を、創業者の親族に任せていた。しかし経営危機に直面し、03年7月ごろからは自身が直接、交渉に乗り出し、14件については06年9月までに清算を終え、経営危機も脱した。しかし、東証1部上場を目指す過程で、大株主だった創業家との折衝が必要になり、大東さんは企業グループとの関係を解消しきれなかったという。 これらの内容は、同社が東証移行を前に設置した再発防止委員会が13年11月にまとめた報告書に記されたが、公表はされなかった。 第三者委は同社について「反社会的勢力との関係は認められない」とする一方、流出した約200億円のうち約170億円は未回収だと指摘していた。【洪香、戸田紗友莉】
「やっとここまで来たのかという思いだ」。王将フードサービスの渡辺直人社長は28日午前10時半ごろ、事件現場となった京都市山科区の本社ビルの前で約10分間、報道陣の取材に応じた。京都府警が逮捕状を取ったことをニュースで知り、出張先の東京から急きょ戻って来たという。
「9年間、なかなか進展しなかったが、きっと解決すると願い、捜査を見守ってきた。解決に向けて取り組んでほしい」と京都府警の捜査に期待を寄せた。
本社ビル前には早朝から、約30人の報道陣が駆け付けた。社員らは硬い表情のまま問いかけには応じず、足早に社屋に入っていく姿が目立った。
殺害された大東隆行さん(当時72歳)は、当時社長だったが本社ビルの周辺を早朝に掃除するのが日課だった。愛想も良く、地域の人からも慕われていたという。
事件当時、4発の銃声を聞いたという近くに住む女性(85)は「9年は長かったですね」と驚いた様子。気さくにあいさつする大東さんの姿を今でも覚えており「あんなにいい方がなぜ、とずっと思っていた。解決につながれば社長さんも浮かばれるだろう」と真相解明を願った。
近所の70代女性も「毎年12月になると、今年も捕まらなかったかと落胆していた。ようやく、という気持ちです」と胸をなで下ろした。「ニュースを見て、優しい大東さんの顔を思い出した。警察は解決に向けてがんばってほしい」と語った。
王将フードサービスは高い知名度を誇って拡大を続ける一方、資金トラブルも絶えなかった。創業家との関係が深い企業グループとの不適切な取引で、約200億円が流出していたことが判明。大東さんが射殺されたのは、これを問題視する社内報告書がまとまった、わずか1カ月後だった。
同社は2016年3月、弁護士らで作る第三者委員会による調査結果を発表。調査報告書などによると、1995~2005年ごろ、王将やその子会社「キングランド」は、この企業グループとの間で「経済合理性の明らかでない」貸し付けや不動産取引が14件、繰り返されていた。取引は創業者の親族が主導し、総額は約260億円に上っていた。
2000年4月に社長に就任した大東さんは、企業グループとの債権回収の交渉を、創業者の親族に任せていた。しかし経営危機に直面し、03年7月ごろからは自身が直接、交渉に乗り出し、14件については06年9月までに清算を終え、経営危機も脱した。しかし、東証1部上場を目指す過程で、大株主だった創業家との折衝が必要になり、大東さんは企業グループとの関係を解消しきれなかったという。
これらの内容は、同社が東証移行を前に設置した再発防止委員会が13年11月にまとめた報告書に記されたが、公表はされなかった。
第三者委は同社について「反社会的勢力との関係は認められない」とする一方、流出した約200億円のうち約170億円は未回収だと指摘していた。【洪香、戸田紗友莉】

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