博多駅前ストーカー女性刺殺 被告が待ち伏せは否定 地裁初公判

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福岡市博多区のJR博多駅近くの路上で2023年1月、福岡県那珂川市の会社員、川野美樹さん(当時38歳)が殺害された事件で、殺人罪やストーカー規制法違反に問われた元交際相手の無職、寺内進被告(32)は17日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)で開かれた裁判員裁判の初公判で殺人罪について「刺したことは間違いない」と起訴内容を認めた。一方、同法違反については「待ち伏せしたことは違います」と述べ、無罪を主張した。
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検察側の冒頭陳述などによると、寺内被告は22年4月に勤務先のバーの系列店でアルバイトをしていた川野さんと知り合い、交際を開始。川野さんが同年10月に交際の解消を求めると、つきまとい行為をするようになり、県警は22年11月、川野さんの携帯電話や勤務先に繰り返し電話をかけたなどとして、寺内被告にストーカー規制法に基づく緊急禁止命令を出したと経緯を説明した。
検察側は、寺内被告が禁止命令を受ける直前、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で川野さんに「警察に何言うた。何年かかってでも恨んだるから覚えとれや。舐(な)めてると後悔すんぞ」などとメッセージを送ったことも明らかにした。被害申告に立腹した寺内被告は川野さんに謝罪させたいと考え、「返答次第では殺すかもしれないとも思い始めた」と指摘。事件当日は博多駅近くで川野さんを待ち伏せして謝罪を求めたが、拒絶されて激高し、包丁で少なくとも18回刺したとし「悪質性は極めて高く、動機に酌量すべき事情はない」とした。
一方、弁護側は冒頭陳述で、寺内被告は待ち伏せしたわけではなく、川野さんと現場で偶然会ったと主張。川野さんに「警察を呼ぶ」と言われて相手にされず、気付くと被告は護身用の包丁を手にし、目の前に川野さんが倒れていたと説明。「(被告には)当時、恋愛感情などはなかった。偶然が重なって起きた事件」とし、ストーカー規制法違反は成立しないと主張した。
この日は同法違反についての被告人質問もあった。ストーカーだと相談されたことをどう思ったかと弁護側から問われた寺内被告は「ショックだった。イラつきもあったが、日にちがたつにつれて収まったと思う」などと述べ、事件当日に強い恨みがあったことを暗に否定した。
起訴状によると、寺内被告は緊急禁止命令を受けた後の23年1月16日午後6時過ぎ、帰宅途中の川野さんを待ち伏せするなどした上、同6時15分ごろ、博多駅近くの路上で川野さんの頭や胸を包丁(刃渡り約24センチ)で多数回突き刺し、失血死させたとしている。
寺内被告は別の男性に対する傷害罪にも問われ、その部分を先行し審理した同地裁が24年3月、有罪の部分判決を言い渡していた。今回の裁判員裁判は殺人罪などについて審理し、傷害罪の有罪部分を含めて量刑を判断する。【志村一也、河慧琳】

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