「週休3日制」を選んで部署の「嫌われ者」になった30歳男性、最悪の事態はどうすれば防げたか?

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甲社で情報システム管理を担当するA藤さん(30歳、仮名=以下同)は、趣味のサーフィンにより時間を割けるようにと、会社が導入したばかりの「完全週休3日制」を選択。1日の労働時間は2時間増えたものの、新たに金曜日が休日になり、友人B川さんらと九十九里浜でのサーフィンライフを楽しんでいた。
しかし、1つ問題が。A藤さんの部署で週休3日制を選んだのは彼1人だった。金曜日の定例ミーティングには出席できず、システムトラブルが起きたときも1人休日のため、他のメンバーからは不満の声が上がり、総スカン状態。課長のC山さんも最近では冷たくて……。
近年、導入する企業が増えてきた「週休3日制」だが、従業員のワークライフバランスを充実させ、優秀な人材を採用するのにも役立つと注目の制度である一方で、デメリットも存在する。同制度をめぐる状況から導入の注意点など、社会保険労務士の木村政美氏が順を追って解説する。
A藤さんの事例をよく理解するためにも、会社の休日制度から順を追って見ていこう。
労働基準法によると、使用者(企業)は、労働者に対して最低でも「毎週1日」もしくは「4週間で4日」以上の休日を与える義務があり(労働基準法35条)更に労働時間は原則1日8時間かつ週40時間以内(労働基準法32条)と決まっている。企業が労働者の休日を設定する場合、この2つの条件を満たさなければならない。企業が設定している休日制度は次のように分類される。
(1)週休制 1週に1日の休日がある制度(2)週休2日制 2日休める週が月に1回以上ある制度(3)完全週休2日制 1年を通じて毎週2日の休日がある制度(4)週休3日制 3日休める週が月に1回以上ある制度(5)完全週休3日制 1年を通じて毎週3日の休日がある制度
特に(2)と(3)、(4)と(5)はそれぞれ別の定義にもかかわらず、同一の意味に捉えている場合が多いので、混同しないように注意したい。
現状は週休2日制もしくは完全週休2日制を採用している企業が多いが、昨今は週休3日制の導入を実施又は検討する企業が徐々に増えてきた。
週休3日制の導入状況では、現状でどのくらいの企業が週休3日制を採用しているか。厚生労働省の「令和3年就業条件総合調査」によると、主な週休制の形態別企業割合で「完全週休2日制より休日の日数が実質的に多い制度」を設けている企業は全体の8.5%で、年々増加、企業規模別にみると、特に従業員数100名以上の企業で採用される割合が高くなっている。この内訳には「月1回以上週休3日制」「3勤3休」「3勤4休」などの運用形態も含まれており、統計上の企業全体が完全週休3日制を採用しているわけではない。モデルケースで掲載されているのは完全週休3日制を例としたものが多いが、実際に導入している企業はまだ少ないと思われる。参考:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査 労働時間制度週休3日制の設定方法週休3日制の設定には3つの方法がある。ここでは完全週休3日制を例にして説明しよう。(1)週の所定労働時間を変えずに1日の労働時間を増やし、給与水準は変更しない例えばA藤さんのように毎週金曜日を休日にする場合、月曜日から木曜日までの4日間の所定労働時間を1日8時間から10時間に変更し、週の所定労働時間を40時間にする。このケースの場合、労働基準法で定める労働時間は原則1日8時間のため、1日の労働時間を10時間にした場合2時間分の残業代(時間外手当)が発生する。この2時間分の残業代の支払いをなくすには、1か月単位の変形労働制を採用する必要がある。参考:厚生労働省 1か月単位の変形労働時間制(2)週の所定労働時間を減らすかわりに給与水準を下げる例えば所定労働時間が1日8時間、週40時間の社員が毎週金曜日を休日とし、月曜日から木曜日までの所定労働時間を8時間×4日=32時間にした場合、8時間分の給与を減額する。(3)週の所定労働時間を減らすが給与水準を変更しない上記(2)と同じ勤務形態でも、給与水準は減額せずに従来通り支給するので、時間あたりの賃金単価が上昇する。この方法は、労働者個人の能力や業績で給与を評価する成果主義の企業や部署で導入することが多い。労働者から見た場合、労働時間が減っても業務量や企業が設定する目標が同じならば、それらを達成するために相応のパフォーマンスが求められることに留意する必要がある。 週休3日制のメリットとデメリット週休3日制を導入する場合のメリットとデメリットについて考えてみよう。〇メリット・休日を増やすことにより、従業員がワークライフバランスを充実させる働き方をすることが可能になるため、育児や介護などを原因とした離職者が減少したり、従業員の生産性や集中力など、仕事に対するパフォーマンスが上がることが期待できる。・企業で求人をする際、週休3日制を導入することにより優秀な人材の確保に繋がりやすい。〇デメリット・取引先が週休3日制を導入していない場合、取引先とのコミュニケーション不足により仕事が円滑に回らず苦情の対象になったり、新たなビジネスの機会を喪失する可能性がある。・社内においては、週休3日制を取っていない部署や従業員が混在していると、情報共有の不足により業務が停滞したり、業務分担の偏りが原因で部署間や従業員間でのトラブルになる可能性がある。・業種・業態によっては従業員の増員が必要になり、人件費が増加する可能性がある。週休3日制を導入する場合の注意点企業が週休3日制を導入する場合、次の点を事前に確認したい。(1)制度を導入する目的を明確にする「新たな人材の確保に繋げるため」「従業員の育児・介護等仕事と生活の両立支援を促すため」「職場の長時間労働を抑制するため」など。(2)対象従業員の範囲を決める全従業員もしくは部署内の従業員全員を対象にするのか、希望する従業員のみにするかなど。 (3)企業や部署に合った運用方法を決める週休3日制の形態(完全週休3日制にするか部分的に週休3日にするか)、週の所定労働時間、給与水準をどうするかなどを決める。そのためには制度を導入する前に、対象候補になる部署の業務状況を把握する、従業員の意見を聴くなどして内情に合った制度設計を行うことが大切である。(4)副業・兼業を認めるか認めないかの対応を決めておく週休3日制になることで、従業員が副業や兼業を申請するケースが増える可能性がある。Photo by iStock(5)有休の付与日数について完全週休3日制の導入により週の所定労働時間が減少したことで、有休の付与日数が比例付与に変わる場合がある。例えば週4日勤務で週の所定労働時間が30時間未満の場合などが該当する。参考:厚生労働省 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています (6)休日出勤について週の所定労働時間が減少しても業務量や成果目標が従来と同じ場合、業務を遂行するために休日出勤をするケースがある。度重なると週休3日制を導入した意味がなくなってしまうので注意したい。甲社の問題点とその後のA藤さん新部署のメンバーを募集するために完全週休3日制を導入し、優秀な人材の採用に成功した甲社。この勢いで制度の適用を全社員の希望者にまで拡げたが、A藤さんが所属する部署でトラブルになってしまった。運用に失敗した原因は、会社が部署の業務内容を把握せず、またC山課長や他のメンバーの意見を聴かないで一方的に導入を決めたことである。もし上記に配慮した上で完全週休3日制を導入するならば、明確な役割分担を決めずに部署全体で1社のサポートを担当する業務の性格上、希望制ではなくメンバー全員を対象にするか、もしくは対象からはずすことを選択する可能性が高いだろう。A藤さんは、C山課長と一緒にD谷人事課長と面談するのか嫌だったので、結局そのまま仕事を続けた。そして10月下旬。1か月ぶりに友人B川さんのサーフショップを訪れたA藤さんは、B川さんの顔をみるなり、会社に行くのがつらいと悩みをぶちまけた。B川さんは笑いながら言った。「そんなに会社が嫌なら、いっそ辞めてこっちに引っ越してこいよ」「でも、新しい仕事あるの?」「1年前に都内から移住してきたIT企業の社長が俺のサーフィン仲間なのよ。社員が足りなくて忙しいっていつも嘆いてるから、A藤が本気で転職したいんだったら紹介してあげるよ」「本当?ぜひよろしくお願いします」A藤さんは弾んだ声でB川さんに頭を下げた。
週休3日制の導入状況では、現状でどのくらいの企業が週休3日制を採用しているか。厚生労働省の「令和3年就業条件総合調査」によると、主な週休制の形態別企業割合で「完全週休2日制より休日の日数が実質的に多い制度」を設けている企業は全体の8.5%で、年々増加、企業規模別にみると、特に従業員数100名以上の企業で採用される割合が高くなっている。この内訳には「月1回以上週休3日制」「3勤3休」「3勤4休」などの運用形態も含まれており、統計上の企業全体が完全週休3日制を採用しているわけではない。モデルケースで掲載されているのは完全週休3日制を例としたものが多いが、実際に導入している企業はまだ少ないと思われる。参考:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査 労働時間制度週休3日制の設定方法週休3日制の設定には3つの方法がある。ここでは完全週休3日制を例にして説明しよう。(1)週の所定労働時間を変えずに1日の労働時間を増やし、給与水準は変更しない例えばA藤さんのように毎週金曜日を休日にする場合、月曜日から木曜日までの4日間の所定労働時間を1日8時間から10時間に変更し、週の所定労働時間を40時間にする。このケースの場合、労働基準法で定める労働時間は原則1日8時間のため、1日の労働時間を10時間にした場合2時間分の残業代(時間外手当)が発生する。この2時間分の残業代の支払いをなくすには、1か月単位の変形労働制を採用する必要がある。参考:厚生労働省 1か月単位の変形労働時間制(2)週の所定労働時間を減らすかわりに給与水準を下げる例えば所定労働時間が1日8時間、週40時間の社員が毎週金曜日を休日とし、月曜日から木曜日までの所定労働時間を8時間×4日=32時間にした場合、8時間分の給与を減額する。(3)週の所定労働時間を減らすが給与水準を変更しない上記(2)と同じ勤務形態でも、給与水準は減額せずに従来通り支給するので、時間あたりの賃金単価が上昇する。この方法は、労働者個人の能力や業績で給与を評価する成果主義の企業や部署で導入することが多い。労働者から見た場合、労働時間が減っても業務量や企業が設定する目標が同じならば、それらを達成するために相応のパフォーマンスが求められることに留意する必要がある。 週休3日制のメリットとデメリット週休3日制を導入する場合のメリットとデメリットについて考えてみよう。〇メリット・休日を増やすことにより、従業員がワークライフバランスを充実させる働き方をすることが可能になるため、育児や介護などを原因とした離職者が減少したり、従業員の生産性や集中力など、仕事に対するパフォーマンスが上がることが期待できる。・企業で求人をする際、週休3日制を導入することにより優秀な人材の確保に繋がりやすい。〇デメリット・取引先が週休3日制を導入していない場合、取引先とのコミュニケーション不足により仕事が円滑に回らず苦情の対象になったり、新たなビジネスの機会を喪失する可能性がある。・社内においては、週休3日制を取っていない部署や従業員が混在していると、情報共有の不足により業務が停滞したり、業務分担の偏りが原因で部署間や従業員間でのトラブルになる可能性がある。・業種・業態によっては従業員の増員が必要になり、人件費が増加する可能性がある。週休3日制を導入する場合の注意点企業が週休3日制を導入する場合、次の点を事前に確認したい。(1)制度を導入する目的を明確にする「新たな人材の確保に繋げるため」「従業員の育児・介護等仕事と生活の両立支援を促すため」「職場の長時間労働を抑制するため」など。(2)対象従業員の範囲を決める全従業員もしくは部署内の従業員全員を対象にするのか、希望する従業員のみにするかなど。 (3)企業や部署に合った運用方法を決める週休3日制の形態(完全週休3日制にするか部分的に週休3日にするか)、週の所定労働時間、給与水準をどうするかなどを決める。そのためには制度を導入する前に、対象候補になる部署の業務状況を把握する、従業員の意見を聴くなどして内情に合った制度設計を行うことが大切である。(4)副業・兼業を認めるか認めないかの対応を決めておく週休3日制になることで、従業員が副業や兼業を申請するケースが増える可能性がある。Photo by iStock(5)有休の付与日数について完全週休3日制の導入により週の所定労働時間が減少したことで、有休の付与日数が比例付与に変わる場合がある。例えば週4日勤務で週の所定労働時間が30時間未満の場合などが該当する。参考:厚生労働省 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています (6)休日出勤について週の所定労働時間が減少しても業務量や成果目標が従来と同じ場合、業務を遂行するために休日出勤をするケースがある。度重なると週休3日制を導入した意味がなくなってしまうので注意したい。甲社の問題点とその後のA藤さん新部署のメンバーを募集するために完全週休3日制を導入し、優秀な人材の採用に成功した甲社。この勢いで制度の適用を全社員の希望者にまで拡げたが、A藤さんが所属する部署でトラブルになってしまった。運用に失敗した原因は、会社が部署の業務内容を把握せず、またC山課長や他のメンバーの意見を聴かないで一方的に導入を決めたことである。もし上記に配慮した上で完全週休3日制を導入するならば、明確な役割分担を決めずに部署全体で1社のサポートを担当する業務の性格上、希望制ではなくメンバー全員を対象にするか、もしくは対象からはずすことを選択する可能性が高いだろう。A藤さんは、C山課長と一緒にD谷人事課長と面談するのか嫌だったので、結局そのまま仕事を続けた。そして10月下旬。1か月ぶりに友人B川さんのサーフショップを訪れたA藤さんは、B川さんの顔をみるなり、会社に行くのがつらいと悩みをぶちまけた。B川さんは笑いながら言った。「そんなに会社が嫌なら、いっそ辞めてこっちに引っ越してこいよ」「でも、新しい仕事あるの?」「1年前に都内から移住してきたIT企業の社長が俺のサーフィン仲間なのよ。社員が足りなくて忙しいっていつも嘆いてるから、A藤が本気で転職したいんだったら紹介してあげるよ」「本当?ぜひよろしくお願いします」A藤さんは弾んだ声でB川さんに頭を下げた。
では、現状でどのくらいの企業が週休3日制を採用しているか。
厚生労働省の「令和3年就業条件総合調査」によると、主な週休制の形態別企業割合で「完全週休2日制より休日の日数が実質的に多い制度」を設けている企業は全体の8.5%で、年々増加、企業規模別にみると、特に従業員数100名以上の企業で採用される割合が高くなっている。
この内訳には「月1回以上週休3日制」「3勤3休」「3勤4休」などの運用形態も含まれており、統計上の企業全体が完全週休3日制を採用しているわけではない。モデルケースで掲載されているのは完全週休3日制を例としたものが多いが、実際に導入している企業はまだ少ないと思われる。
参考:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査 労働時間制度
週休3日制の設定には3つの方法がある。ここでは完全週休3日制を例にして説明しよう。
(1)週の所定労働時間を変えずに1日の労働時間を増やし、給与水準は変更しない
例えばA藤さんのように毎週金曜日を休日にする場合、月曜日から木曜日までの4日間の所定労働時間を1日8時間から10時間に変更し、週の所定労働時間を40時間にする。
このケースの場合、労働基準法で定める労働時間は原則1日8時間のため、1日の労働時間を10時間にした場合2時間分の残業代(時間外手当)が発生する。この2時間分の残業代の支払いをなくすには、1か月単位の変形労働制を採用する必要がある。
参考:厚生労働省 1か月単位の変形労働時間制
(2)週の所定労働時間を減らすかわりに給与水準を下げる
例えば所定労働時間が1日8時間、週40時間の社員が毎週金曜日を休日とし、月曜日から木曜日までの所定労働時間を8時間×4日=32時間にした場合、8時間分の給与を減額する。
(3)週の所定労働時間を減らすが給与水準を変更しない
上記(2)と同じ勤務形態でも、給与水準は減額せずに従来通り支給するので、時間あたりの賃金単価が上昇する。
この方法は、労働者個人の能力や業績で給与を評価する成果主義の企業や部署で導入することが多い。労働者から見た場合、労働時間が減っても業務量や企業が設定する目標が同じならば、それらを達成するために相応のパフォーマンスが求められることに留意する必要がある。
週休3日制のメリットとデメリット週休3日制を導入する場合のメリットとデメリットについて考えてみよう。〇メリット・休日を増やすことにより、従業員がワークライフバランスを充実させる働き方をすることが可能になるため、育児や介護などを原因とした離職者が減少したり、従業員の生産性や集中力など、仕事に対するパフォーマンスが上がることが期待できる。・企業で求人をする際、週休3日制を導入することにより優秀な人材の確保に繋がりやすい。〇デメリット・取引先が週休3日制を導入していない場合、取引先とのコミュニケーション不足により仕事が円滑に回らず苦情の対象になったり、新たなビジネスの機会を喪失する可能性がある。・社内においては、週休3日制を取っていない部署や従業員が混在していると、情報共有の不足により業務が停滞したり、業務分担の偏りが原因で部署間や従業員間でのトラブルになる可能性がある。・業種・業態によっては従業員の増員が必要になり、人件費が増加する可能性がある。週休3日制を導入する場合の注意点企業が週休3日制を導入する場合、次の点を事前に確認したい。(1)制度を導入する目的を明確にする「新たな人材の確保に繋げるため」「従業員の育児・介護等仕事と生活の両立支援を促すため」「職場の長時間労働を抑制するため」など。(2)対象従業員の範囲を決める全従業員もしくは部署内の従業員全員を対象にするのか、希望する従業員のみにするかなど。 (3)企業や部署に合った運用方法を決める週休3日制の形態(完全週休3日制にするか部分的に週休3日にするか)、週の所定労働時間、給与水準をどうするかなどを決める。そのためには制度を導入する前に、対象候補になる部署の業務状況を把握する、従業員の意見を聴くなどして内情に合った制度設計を行うことが大切である。(4)副業・兼業を認めるか認めないかの対応を決めておく週休3日制になることで、従業員が副業や兼業を申請するケースが増える可能性がある。Photo by iStock(5)有休の付与日数について完全週休3日制の導入により週の所定労働時間が減少したことで、有休の付与日数が比例付与に変わる場合がある。例えば週4日勤務で週の所定労働時間が30時間未満の場合などが該当する。参考:厚生労働省 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています (6)休日出勤について週の所定労働時間が減少しても業務量や成果目標が従来と同じ場合、業務を遂行するために休日出勤をするケースがある。度重なると週休3日制を導入した意味がなくなってしまうので注意したい。甲社の問題点とその後のA藤さん新部署のメンバーを募集するために完全週休3日制を導入し、優秀な人材の採用に成功した甲社。この勢いで制度の適用を全社員の希望者にまで拡げたが、A藤さんが所属する部署でトラブルになってしまった。運用に失敗した原因は、会社が部署の業務内容を把握せず、またC山課長や他のメンバーの意見を聴かないで一方的に導入を決めたことである。もし上記に配慮した上で完全週休3日制を導入するならば、明確な役割分担を決めずに部署全体で1社のサポートを担当する業務の性格上、希望制ではなくメンバー全員を対象にするか、もしくは対象からはずすことを選択する可能性が高いだろう。A藤さんは、C山課長と一緒にD谷人事課長と面談するのか嫌だったので、結局そのまま仕事を続けた。そして10月下旬。1か月ぶりに友人B川さんのサーフショップを訪れたA藤さんは、B川さんの顔をみるなり、会社に行くのがつらいと悩みをぶちまけた。B川さんは笑いながら言った。「そんなに会社が嫌なら、いっそ辞めてこっちに引っ越してこいよ」「でも、新しい仕事あるの?」「1年前に都内から移住してきたIT企業の社長が俺のサーフィン仲間なのよ。社員が足りなくて忙しいっていつも嘆いてるから、A藤が本気で転職したいんだったら紹介してあげるよ」「本当?ぜひよろしくお願いします」A藤さんは弾んだ声でB川さんに頭を下げた。
週休3日制を導入する場合のメリットとデメリットについて考えてみよう。
〇メリット・休日を増やすことにより、従業員がワークライフバランスを充実させる働き方をすることが可能になるため、育児や介護などを原因とした離職者が減少したり、従業員の生産性や集中力など、仕事に対するパフォーマンスが上がることが期待できる。・企業で求人をする際、週休3日制を導入することにより優秀な人材の確保に繋がりやすい。
〇デメリット・取引先が週休3日制を導入していない場合、取引先とのコミュニケーション不足により仕事が円滑に回らず苦情の対象になったり、新たなビジネスの機会を喪失する可能性がある。・社内においては、週休3日制を取っていない部署や従業員が混在していると、情報共有の不足により業務が停滞したり、業務分担の偏りが原因で部署間や従業員間でのトラブルになる可能性がある。・業種・業態によっては従業員の増員が必要になり、人件費が増加する可能性がある。
企業が週休3日制を導入する場合、次の点を事前に確認したい。
(1)制度を導入する目的を明確にする
「新たな人材の確保に繋げるため」「従業員の育児・介護等仕事と生活の両立支援を促すため」「職場の長時間労働を抑制するため」など。
(2)対象従業員の範囲を決める
全従業員もしくは部署内の従業員全員を対象にするのか、希望する従業員のみにするかなど。
(3)企業や部署に合った運用方法を決める週休3日制の形態(完全週休3日制にするか部分的に週休3日にするか)、週の所定労働時間、給与水準をどうするかなどを決める。そのためには制度を導入する前に、対象候補になる部署の業務状況を把握する、従業員の意見を聴くなどして内情に合った制度設計を行うことが大切である。(4)副業・兼業を認めるか認めないかの対応を決めておく週休3日制になることで、従業員が副業や兼業を申請するケースが増える可能性がある。Photo by iStock(5)有休の付与日数について完全週休3日制の導入により週の所定労働時間が減少したことで、有休の付与日数が比例付与に変わる場合がある。例えば週4日勤務で週の所定労働時間が30時間未満の場合などが該当する。参考:厚生労働省 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています (6)休日出勤について週の所定労働時間が減少しても業務量や成果目標が従来と同じ場合、業務を遂行するために休日出勤をするケースがある。度重なると週休3日制を導入した意味がなくなってしまうので注意したい。甲社の問題点とその後のA藤さん新部署のメンバーを募集するために完全週休3日制を導入し、優秀な人材の採用に成功した甲社。この勢いで制度の適用を全社員の希望者にまで拡げたが、A藤さんが所属する部署でトラブルになってしまった。運用に失敗した原因は、会社が部署の業務内容を把握せず、またC山課長や他のメンバーの意見を聴かないで一方的に導入を決めたことである。もし上記に配慮した上で完全週休3日制を導入するならば、明確な役割分担を決めずに部署全体で1社のサポートを担当する業務の性格上、希望制ではなくメンバー全員を対象にするか、もしくは対象からはずすことを選択する可能性が高いだろう。A藤さんは、C山課長と一緒にD谷人事課長と面談するのか嫌だったので、結局そのまま仕事を続けた。そして10月下旬。1か月ぶりに友人B川さんのサーフショップを訪れたA藤さんは、B川さんの顔をみるなり、会社に行くのがつらいと悩みをぶちまけた。B川さんは笑いながら言った。「そんなに会社が嫌なら、いっそ辞めてこっちに引っ越してこいよ」「でも、新しい仕事あるの?」「1年前に都内から移住してきたIT企業の社長が俺のサーフィン仲間なのよ。社員が足りなくて忙しいっていつも嘆いてるから、A藤が本気で転職したいんだったら紹介してあげるよ」「本当?ぜひよろしくお願いします」A藤さんは弾んだ声でB川さんに頭を下げた。
(3)企業や部署に合った運用方法を決める
週休3日制の形態(完全週休3日制にするか部分的に週休3日にするか)、週の所定労働時間、給与水準をどうするかなどを決める。そのためには制度を導入する前に、対象候補になる部署の業務状況を把握する、従業員の意見を聴くなどして内情に合った制度設計を行うことが大切である。
(4)副業・兼業を認めるか認めないかの対応を決めておく
週休3日制になることで、従業員が副業や兼業を申請するケースが増える可能性がある。
Photo by iStock
(5)有休の付与日数について
完全週休3日制の導入により週の所定労働時間が減少したことで、有休の付与日数が比例付与に変わる場合がある。例えば週4日勤務で週の所定労働時間が30時間未満の場合などが該当する。
参考:厚生労働省 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
(6)休日出勤について
週の所定労働時間が減少しても業務量や成果目標が従来と同じ場合、業務を遂行するために休日出勤をするケースがある。度重なると週休3日制を導入した意味がなくなってしまうので注意したい。
新部署のメンバーを募集するために完全週休3日制を導入し、優秀な人材の採用に成功した甲社。この勢いで制度の適用を全社員の希望者にまで拡げたが、A藤さんが所属する部署でトラブルになってしまった。
運用に失敗した原因は、会社が部署の業務内容を把握せず、またC山課長や他のメンバーの意見を聴かないで一方的に導入を決めたことである。もし上記に配慮した上で完全週休3日制を導入するならば、明確な役割分担を決めずに部署全体で1社のサポートを担当する業務の性格上、希望制ではなくメンバー全員を対象にするか、もしくは対象からはずすことを選択する可能性が高いだろう。
A藤さんは、C山課長と一緒にD谷人事課長と面談するのか嫌だったので、結局そのまま仕事を続けた。
そして10月下旬。1か月ぶりに友人B川さんのサーフショップを訪れたA藤さんは、B川さんの顔をみるなり、会社に行くのがつらいと悩みをぶちまけた。B川さんは笑いながら言った。
「そんなに会社が嫌なら、いっそ辞めてこっちに引っ越してこいよ」「でも、新しい仕事あるの?」「1年前に都内から移住してきたIT企業の社長が俺のサーフィン仲間なのよ。社員が足りなくて忙しいっていつも嘆いてるから、A藤が本気で転職したいんだったら紹介してあげるよ」「本当?ぜひよろしくお願いします」
A藤さんは弾んだ声でB川さんに頭を下げた。

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