異例の完成目前マンション解体で国立市長、積水ハウスに丁寧な説明要望…地元は歓迎の一方驚きも

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東京都国立市で完成目前のマンションの解体が決まった問題で、同市の永見理夫市長は12日の市議会で、事業者の積水ハウス(大阪市)に対し、住民への丁寧な説明などを求めたことを明らかにした。
マンションを巡っては、地元から「富士山が見えなくなる」などと懸念する声が上がっていたが、異例の解体決定に驚きも広がっている。
解体が決まったのは、JR国立駅から徒歩10分ほどの富士見通り沿いに建設された「グランドメゾン国立富士見通り」(10階建て、総戸数18戸)。7月に完成し、契約者への引き渡しを始める予定だったが、積水ハウスは今月4日、国立市へ事業廃止を届け出た。
市によると、同社は2021年にマンション建設計画を公表。富士見通りからは富士山がよく見えるため、地元住民からは景観への影響を懸念する声が上がった。これに対し、同社側は、富士山の眺望は確保されるなどの旨を市の審議会で説明。市は、景観への配慮を求める指導書を同社に2度交付していた。
しかし、建設が進むと通りから望む富士山の一部が遮られることが判明。同社は解体決定後の11日に公表した文書で、「2回にわたる設計変更を行ったが、完成が近づき、富士山の眺望に与える影響を再認識した。現況は景観に著しい影響があると言わざるを得ず、眺望を優先する判断に至った」と説明。「法令上の不備はないが、遠景からの富士山の眺望に関する検討が不足していた」とし、契約者や住民らに謝罪した。
地元からは解体を歓迎する声が上がる一方、完成目前での決定に驚く人も少なくない。長年、富士山の眺望を楽しんできたという同市の男性(70)は「富士山は生活の風景に溶け込んでいた。マンションで見づらくなったのは寂しく感じていた」と話した。近くに住む男性(73)は「富士山がそれほど見えなくなるとは感じない。解体はやりすぎでは」と首をかしげた。
景観への配慮を巡っては、2005年に「景観法」が全面施行され、各自治体が独自の景観計画を作って、建物の高さや外観などに規制を加えられるようになった。だが、マンション建設によるトラブルは絶えない。
松江市では、国宝・松江城近くに天守閣とほぼ同じ高さの19階建てマンションの建設が進むが、住民団体が「城の価値や景観が著しく損なわれる」と反発。こうした動きを受け、同市は、城周辺にある建物の高さの基準などを見直す方針だ。
神奈川県海老名市では、国指定史跡「相模国分寺跡」の隣接地で14階建てマンションの建設が計画されていたが、事業者は昨年5月、景観悪化を懸念する地元住民の声を受け、市に計画変更を伝えた。現在は戸建て用の宅地造成に向け、手続きが進められている。

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