【高須 美谷子】28歳「モテるけど結婚できない」女性が婚活で大復活…!理想の「サザエ婚」”マスオさん”をゲットできたワケ

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結婚相談所の年齢構成は男女別に特徴がある。
最大のボリュームゾーンは約5~ 6割を占める30代女性だ。次いで女性の場合は20代と40代前半で約1.5割~2割、40代後半以降は約1割という分布だ。 一方男性はというと、20代の男性は相談所にはほとんどおらず1割にも満たない。そこから30代を超えて4割、40代前半が3割、後半は2割と減少幅もゆるやかだ。
条件にはさまざまあるものの、相談所の男女に共通するのは「子どもが欲しい」という希望で、それゆえ男性からの人気は20代女性に集中し非常に高くなっている。
しかし、羽菜さん(仮名・28歳)もそんな人気の20代にもかかわらず婚活で苦戦していた。理由は“家族仲の良さ”。何よりも家族を優先する羽菜さんに、付き合った男性が次々と離れていったそうだ。
仲人は婚活相談者の生い立ちや恋愛遍歴をヒアリングし、お相手となるターゲットを設定。相談者がどういうタイプで、どんな方とマッチングするかを一発で見抜くプロだ。そのタイプを可視化したのが、12タイプのチャートだ。
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羽菜さんの場合、非常に家族仲が良く、子どもの頃からずっと同じような家族関係を保つ、いわゆる「育ちのいい人」。しかし、家族を非常に大事にするため、すべてが家族優先にするため、恋人から見れば自分がそっちのけにされる疎外感を与えてしまう可能性も高い。
この12タイプのチャートから、羽菜さんは典型的なファミコン女子タイプだと私は確信していた。
羽菜さんが相手に求める条件ははっきりしていた。
「年収500万円以上、年齢は28歳~34歳までで実家のそばにすんでくれる人。転勤のない会社員かパパと同じ士業の方が希望です」
一気に言い終わると「希望に叶う方を見つけてもらえますか」と尋ねてきた。
羽菜さんは若くて身だしなみも整っており、はっきりと自分の考えを話すだけあって結婚相談所でもかなりの人気はでることだろう。条件の良い相手も紹介できる可能性も高い。
しかし、ここまで家族との密度が高く、家族観にも度を越えたこだわりがあると、相手となる男性を見極めて絞らない限りマッチングもままならない。
私は条件に合わせて探して見ることを約束したが、内心羽菜さんの家族意識を共有してくれる方を探すのは至難の業だとふんでいた。
羽菜さんは初回から希望を上回る相手と巡り会えた。年収600万円の会社員である隆宏さん(32歳・仮名)とお見合いが成立。天真爛漫で物怖じしない羽菜さんはすぐに気に入られ、羽菜さんもスマートな物腰の隆宏さんを気に入り、ひとまずは交際に進んだのだ。
しかし、隆宏さんが「いずれは富山の実家に戻って両親と同居を考えたい」と結婚観を打ち明けたところとで交際は終了。羽菜さんにとっては、どんなに好きな相手との結婚であっても、両親のもとを離れることなんて考えられない。
そこで私は改めて「結婚するにあたって一番大切なものってなんですか?」と羽菜さんに問いかけてみた。
羽菜さんは「安定した収入も大事だし、趣味も一緒に楽しめる人がいいけど」と条件をあげ、プロフィールから高収入なイケメンを選び始めたが、彼らのほとんどが「親と同居前提」「親の事業を継ぐ」など、羽菜さんと同種類の譲れない条件をあげている。
「家族に対する価値観を共有できるなんて普通の事じゃないんですか?!」
羽菜さんに当たり前を押し通そうにも、お相手にも譲れない条件がある訳だからお互いに折り合わないのも当たり前だ。これまで続かなかった交際の繰り返しでは意味がない。
第一印象では気に入られるにもかかわらず、何度お見合いを繰り返しても満足できる結婚に辿り着くのは難しい羽菜さん。「私と両親を大切にしてくれる人」というのみを第一条件に婚活を進める“究極のターゲット選び”を決意した。
その後、2人とお見合いした羽菜さん。ひとりは自分から断り、もう一人はお相手から断られ、3人目でようやく兆しが見られた。
隆太郎さん(38歳、仮名)は、これまで結婚は眼中になく、30代後半に差し掛かってようやく我が結婚相談所へと駆け込んできた男性だ。
身長は165cmで痩せ型、優しそうな顔立ちだが服装もどこか野暮ったく、人目をひく羽菜さんとは少し違う人種に思えた。しかし、隆太郎さんにはきらりと光る個性があり、それが羽菜さんにピッタリだと仲人の勘がうずき背中を押したのだ。
都内の中小企業勤務で年収は450万円、小さい会社だけに様々な仕事で任される範囲が広く、やりがいをもって取り組んでいる隆太郎さんには、ずば抜けた個性と素直さ、それに自立心もあった。
東京の郊外に生まれともに教師の両親は、我が子をそっちのけにしてでも生徒に全力で尽くす様子をはたで見ながら育った。
そんな環境に不満や卑屈な念を抱くこともなく、小中学生の頃は野球に励み、忙しい両親の手伝いを率先してこなして成長していった。好奇心、探究心の強さもあって料理に洗濯、掃除に妹の面倒まで一通り買って出たという。
隆太郎さんが大学を卒業すると両親は早期退職し、地方へと移住して古民家を改装した家で暮らしている。母親は今では地方の陶芸家として、小さく雑誌に掲載されたりもするようになり、教師だった頃とは一味違う顔を持っているという。
一方、父親も、陶芸にのめり込む母親に代わり、家事全般を引き受けていたが、特に料理に凝り出して本格的なイタリアンを作るようになっていた。母親の窯の側に、ピザを焼く石窯も作り、コミュニティにもなじんで、自宅に近所の人を招いて料理をふるまっているそうだ。
ゆくゆくは、母親の焼いた器に父親の作った料理を乗せた古民家イタリアンレストランを始めたいとも言っており、親子仲も非常に良好で、自立した隆太郎さんの好きなように生きることを促してくれているという。
2人とも私の相談所の会員だったこともあり、初対面では気楽なカフェランチを共にした。いわゆる「お見合い形式」をとらず、都内の公園に隣接したレストランでイタリアンのコースを食べたそうだ。
前菜、スープ、新しい料理が運ばれてくる度に会話も弾み、羽菜さんの笑顔も多くなったと後に隆太郎さんから教えてもらった。
運ばれてきたお互いの料理を羽菜さんが、半分に切りシェアしあったところに優しさ感じたそうだ。初回から女性から率先して料理を分け合うということは、気を許しているという気持ちの表れである。
「ドルチェはどうされたんですか?」と聞くと、隆太郎さんが頼んだ同じものを羽菜さんも真似してオーダーしたと聞いて、私はこのお見合いは成功だと確信した。というのもお父さん子の羽菜さんは、幼い頃から父親の真似ばかりしてきたと聞いていたからだ。
隆太郎さんの真似をしたことは、相性の良いしるしだ。自由恋愛に近い出会い方で2人は初回から距離感を縮められたようだ。
その後、真剣交際に移った2人は週に1度のペースでデートを重ねた。その1ヵ月後には、羽菜さんは隆太郎さんを自分の家族に紹介していた。
結婚も決まっていない男性を実家に呼ぶことには賛否両論の意見があるが羽菜さんの考えは決まっていた。好きになった人は家族にも受け入れて欲しいし、相性を伺う意味でも一緒に過ごしてみることが大切なのだという。
「彼は父とゲームで対戦して大負けしたんです」
嬉しそうに惚気る羽菜さんは無邪気な子供のように見えた。隆太郎さんは羽菜さんの気持ちを察して、結婚後は実家のそばに住んでも良いと言ってくれたそうだ。
精神的にも経済的にもしっかりと自立している隆太郎さんは1人でも暮らしていけるたくましさと人を大切にする優しさと併せ持つ男性だった。交際が3ヵ月に至る頃には羽菜さんには彼となら、ずっと仲良く暮らせるという自信を持てていた。
羽菜さんと隆太郎さんは、育った環境は異なるが家族に対しての価値観が似ていたことで意気投合した。羽菜さんはこれまでお付き合いした方とは違う誠実な隆太郎さんに安心感を得ており、一方隆太郎さんもこれまでお付き合いしたことのないイキイキと輝く羽菜さんにべた惚れでいる。
羽菜さんのように自分の家族を大切にするあまり、お見合い相手、結婚相手とうまくいかない方には、仲人として「新しく作る家庭を第一優先に考えてください」とアドバイスをする方が多いかもしれない。
しかし、実家が一番大切という価値観はそう簡単に変わるものでもないし、羽菜さんのように粘り強くお相手探しをして幸せに繋がる可能性もある。相手に合わせてうまくいくよりも、互いに自然体の価値観を共有しあえるほうが、より良き結婚、より良き人生への近道になり得るのだ。

高須美谷子さんの連載<じつは、やってはいけない…交際相手に「理想の結婚」を押し付ける、28歳「育ちのいい女性」の婚活の大失敗>もあわせてどうぞ
じつは、やってはいけない…交際相手に「理想の結婚」を押し付ける、28歳「育ちのいい女性」の婚活の大失敗

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