「自己承認欲求が満たされる」“借金総額5000万円”になってもホストクラブ通いをやめられない30歳・女性の心理

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「ホストクラブの魅力って、どういうところですか?」「自己承認欲求が満たされるところですね」
《黒髪セミロングの美人がなぜ…》ホストに5000万円の借金をした30歳・女性(写真多数)
自身が推すホストに5000万円以上の立て替えがあるという結衣(仮名・30歳)さん。一見、身を持ち崩した雰囲気がまるでない普通のOLにしか見えない彼女が、ここまでホストにのめり込んでしまった理由とは…? 作家の大泉りか氏による文庫『ホス狂い』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
なぜ彼女は5000万円もの借金を抱えてしまったのか…? 写真はイメージ getty
◆◆◆
都内の高級ソープに勤めながら、某有名グループ年間売り上げランキング上位ホストの“エース”である結衣(仮名・30歳)には、現在、担当に5千万以上の立て替えがあるという。あらかじめ担当編集者から、そんな事前情報を知らされていたわたしは、夕刻、新宿の駅からほど近い喫茶店に現れた結衣を見て、正直なところ少し驚きを覚えた。
タートルネックのニットに膝丈のスカート、アウターは黒いダウン。地味なOL風のファッションを身に纏った結衣は、黒髪のセミロングが似合う楚々とした雰囲気の美人だった。身を持ち崩した雰囲気がまるでない。
人は見かけで判断できないこと、誰もが外からは伺えない事情を抱えていることを、十分に理解しているつもりだった。けれども、結衣のルックスと借金の額とが、なかなか結びつかない。
「ホストクラブの魅力って、どういうところですか?」
この女性がホストに狂って、5千万円もの掛けを背負っているということを、道端ですれ違う、誰が想像できるだろう。少しうろたえながら尋ねたわたしに、結衣はしばし考え込んだあと、こう答えた。
「自己承認欲求が満たされるところですね」
「ホストたちが楽しませてくれるから」とか「好みのタイプのイケメンと飲めるから」といった返事を予想していたから、少し意外な言葉だった。
それに自己承認は自分で自分を認めること、他者承認は他人から認められることなのだから、ホストクラブで満たされるとすれば、むしろ他者承認欲求のほうではないか。疑問に思っていると、結衣は言葉を選ぶように、ゆっくりと話し始めた。

「ホス狂いって、評価制度の家庭で育った子が多いと思うんです。テストで100点が取れたら親が優しくしてくれるとか、学芸会で賞を取ったらようやく褒めてもらえたとかで、『頑張らない自分は、価値がない』って思ってる。だから、水商売なり風俗なりで稼いだお金を、ホスクラで使って“結果を出す”っていうことにハマっちゃうんだと思います」
迷惑系YouTuberやバイトテロ、SNS中毒、掲示板に降臨する女神、整形や買い物依存といった、現代の若者を取り巻く様々な問題を紐解く際、その原因が「強い承認欲求」にあると指摘されることは多いが、結衣にとっては、ホストクラブでエースになることが、最も承認欲求を満たすことのできる行為だという。
だから、結果を出す──いちばん金を使う女という立場を得るために結衣は、ソープランドとメンズエステとを掛け持ちしながら、ほとんど休日を作らずに働き、稼いだお金をひたすらにホスクラ通いに注ぎ込んでいる。
エースを取るためには毎月、莫大な金がかかるのは当然のことだが、軽く遊ぶにしてもホストクラブの飲食料金は、総じて高い。例えば、コンビニで買えば150円ほどの缶に入ったサワーが二本セットで3000~4000円、発泡酒でさえも二本で1000~2000円もする。シャンパンや高級ブランデーともなると、数十万から数百万となり、先日、結衣がおろしたリシャールは一本250万円以上、それを二本入れたことで、伝票に書かれた会計は1千万ほどだったという……というと計算が合わないように思えるが、ホストクラブの会計の仕組みは少しややこしい。
ビールや焼酎、ボトルやシャンパンなどにつけられた価格は『小計』と呼ばれていて、そこにセット料金や、店によってはT・C(テーブルチャージ)、指名料が加算される。さらに消費税とサービス料とを合わせたTAXが20%~40%ほどつけられたものが、支払う会計額となる。
業界最大手のひとつで、歌舞伎町を中心に30店舗以上の直営、フランチャイズ店を持つグループダンディの『TOP DANDY 本店』のHPには、親切なことに、“お会計例”が紹介されている。セットのみ(飲み物別途)2万800円、指名と缶物四缶(二セット)オーダーの場合は2万9700円、指名と鏡月フルボトルに割物ピッチャー二杯オーダーの場合は、3万8700円(初回入店は別)となる。
国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」によると、女性の給与所得者の年間平均給与は293万円なので、一般企業の給料ではホストクラブで遊ぶことはなかなかの贅沢だし、なりたいと願ったところで、OLの給料だけでエースとなるのはおおよそ不可能だ。
ゆえにホス狂いが高じてエースとなっている女性たちのほとんどは、水商売かAV、風俗業、もしくはパパ活などで稼いでいる。会社の経費で飲む男性も多いキャバクラとは違い、ホストクラブは、女性たちが身を削って訪れる場所なのだ。
〈「お金は俺が出すから、ちょっと店に来て」“借金総額5000万円の30歳・女性”がホストクラブの楽しさを知った「最初のきっかけ」〉へ続く
(大泉 りか/Webオリジナル(外部転載))

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