節約・年金暮らしでも〈体にいいこと出費〉は止められない。酵素風呂に整体、サプリメント…気づけば月3万円に

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内閣府が発表した「令和4年 高齢者の健康に関する調査結果」によると、65歳以上の男女において、現在の健康状態を「良い」と回答した割合が30.9%、「普通」が41.7%、「良くない」が24.6%だった。男女ともに年代が高くなるほど「良い」が低くなり、「良くない」が高くなっていた。「良い」状態を保つため、健康に気を遣う人も多いのでは。体のあちこちの衰えに抵抗すべく、いざ立ち上がってはみたものの…… 田中順子さん(仮名・熊本県・無職・73歳)は、サプリメントや整体院など、<体にいい>と聞いたことは手当たり次第に試してきたそうで――。(イラスト=サノマキコ)
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〈体にいい〉と聞くと、飛びつく人は多い。私もそのひとりで、テレビやラジオ、雑誌、口コミなどで情報を仕入れては、手あたり次第に試してきた。
効果が感じられず、「無駄遣いだった」と後悔することも多々あるけれど、「今元気なのは、いろいろなことを取り入れてきたからだ」「やらないよりはいいだろう」と信じて、相変わらず〈体にいいこと出費〉を続けている。お金に余裕などないのに……。
子どもがまだ小さな頃に離婚した私は、会社員として働きながら47歳で一軒家を購入。60歳の定年まで勤めあげ、ローン返済のために70歳まで2つのアルバイトを掛け持ちしていた。現在、完済まであと数年の家にひとりで暮らしている。
働いている間は、サプリメントやマッサージなどにお金をかけてもそれほど家計に影響はなかった。だが、定年後でもローンが残っているうえ、年金だけでは足りず、貯蓄を取り崩している今、健康のための出費が負担になってきているのは事実。
けれど、私が体調を崩したり病気になったりしたら子どもたちに迷惑をかけてしまう。それに趣味のお琴や茶道を続けるには元気でいなければならず、〈体にいいこと〉をやめるわけにはいかないのだ。
子どもの頃を思い返すと、もともとわが家は健康に気を使う家庭だった。体にいいからと、祖父母は毎日自家製の梅干し入り番茶を飲み、母は「病気になりたくなかったら食べなさい」と、毎食酢の物を出していた。
漬物も豆腐も手作りし、「朝食を抜くと、4キロの荷物を背負って歩くのと同じ。時間がないならお茶だけでも飲みなさい。魔除けになるくらい栄養があるんだよ」と、おむすびと濃い緑茶を出してくれた。
そうした記憶があるからか、73歳になった今も緑茶には絶大な信頼をおいている。抹茶は緑茶よりもカテキンが多く、ビタミンCもたっぷり。風邪予防、ひいては胃がん予防にも長寿にも効果があると、何十年か前に聞いてからは、抹茶を愛飲中だ。
しかし、抹茶は緑茶よりも値段が高い。そのうえ抹茶を飲むと和菓子を食べたくなるため、お茶請け代もバカにならなくなってきた。朝だけでなく日に何度も一服しているからなおさらだ。
私が健康のためにお金を惜しまなくなったのは、会社員だった50歳頃のこと。肩こりからくる眼精疲労に悩まされていた時、テレビで紹介されていた「目にいい」というサプリメントに飛びついたのがきっかけだった。
劇的な変化は感じられなかったが、「せめて半年は様子を見よう」と続けることに。凝り性のうえ、その時の私は〈体にいいこと〉をしている状況に満足感を覚え、ほかのサプリメントも次々と試すようになっていった。
同じ頃、肩こり改善のため通っていた整体院で「眠れない」と相談すると、ローズの香りのアロマオイルを焚くといいと教えてもらった。ホルモンバランスを整え、心身ともに健やかにする効能があるのだとか。
そもそもアロマオイルを焚くには、アロマポットに加え、火を点けるための芯(消耗品)が必要。さらに1ヵ月ちょっとで使い切ってしまうローズのアロマオイルは、1瓶5000円くらいとかなり値段が張る。けれど、病気になるよりましと思い、購入を決めた。
少し深く眠れるようになった気がしたため、アロマ生活も続けることに。しかし2年ほど経ったある日、買ったばかりのアロマオイルをすべてこぼしてしまい、あまりのショックで熱が一気に冷め、やめてしまった。
アロマ生活をやめたせいか、また眠れなくなったことを美容院で話すと、今度は酵素風呂を勧められた。体から毒素を出し、よく眠れるようになるうえ、基礎体温が1度上がれば免疫力もアップし、病気になりにくくなるというのだから、やらない手はない。
効果を感じるには、月に2回は通ったほうがいいという。1回1500円、交通費を含めると2000円。外食したと思えば高くない、と自分に言い聞かせて通うことに。
冷え性が改善した気がして10年ほど続けていたが、少し前に遊びに来た子どもたちに「糠くさい」と嫌がられたことと、年金生活を考えて、泣く泣く月1回に減らした。
現在私は、月1回の酵素風呂に加え、いつまでも背筋がピンとした女性でありたいと願い、肩こり解消もかねて整体院に通っている。30分3000円のところに月2回、2時間6000円のところと、足湯付き・リンパマッサージ付きで2時間7000円のところに月1回ずつ、合計4回。それぞれ違うよさがあるので、1ヵ所に絞れないのだ。
それと毎日の抹茶と和菓子、骨にいいというサプリメントを1種類飲んでいる。これら全部で、月に合計3万円弱の出費だ。
先日、友人から「毎日の食事を工夫して健康を維持したほうが、経済的にもいいのでは」と助言された。言われなくても、私は食にも気をつけている。値は張るけれど、添加物の少ないもの、無農薬のものを選び、「この野菜が**にいい」と聞けば、何日だって食べ続ける努力を惜しまない。
最近は、えのき茸とワカメがいいと聞いたので、毎日何かしらの料理に入れて食べているし、牛乳(温めたほうがいいらしい)と白湯も欠かさず飲んでいる。
とはいえ、最近の物価高。切り干し大根や高野豆腐など安くて体にいい食材探しに力を入れているが、食費は月3万円かかっている。そう考えると、健康にかける費用はもろもろ6万円といったところか。
病気になった時のためにお金を準備しておくことは大切だけど、病気にならないためにお金をかけることも必要なはず。それに、これまで使ってきた膨大な額を思うと、「その結果、今も元気なのだ」ということは疑いたくない。とはいえ、いったいいつまでお金が持つのやら――。
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田村さん(仮名)は、整体やサプリメントなどを取り入れつつ、日常から健康に気を遣っていることが伺えます。
「まだ大丈夫だろう」と、不健全な生活をつづけることは生活習慣病につながることも。
新しいことを始めるのではなく、適度な運動やバランスの取れた食生活など、普段の生活を見直すことでも、予防につながります。
厚生労働省が運営する「スマート・ライフ・プロジェクト」のHPでは、運動や食生活など、生活習慣病の予防につながる情報ページがまとめてあります。
●生活習慣by法を知ろう!https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/disease/
健康な体を維持するため、実践できることから少しずつ試してみるのもいいかもしれません。
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