電子部品メーカー「トーキン」(宮城県白石市)の工場で2020年7月、焼結炉内で作業していた男性社員2人を酸欠で窒息死させたとして、業務上過失致死罪に問われた当時の現場指揮者の男性(59)(仙台市)の公判が16日、仙台地裁であり、宮田祥次裁判長は無罪(求刑・罰金60万円)判決を言い渡した。
事故は20年7月29日に発生し、仙台市太白区の工場にあった炉内で修繕作業をしていた古山哲也さん(当時50歳)と細矢駿行さん(当時26歳)が死亡した。仙台地検は現場の指揮監督を任されていた男性が、作業手順を策定するなどの注意義務を怠ったなどとして22年9月に起訴した。
判決で宮田裁判長は、男性は事故当時病気で欠勤しており、2人に炉内で作業するよう指示していなかったと指摘。「(2人が炉内に入る)予見可能性があったと認定するには合理的な疑いが残る。被告人に過失があったとは認められない」と述べた。
判決後、報道陣の取材に応じた男性は「2人が亡くなられて申し訳ないという気持ちしかない」と語った。仙台地検は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。