【清水 芽々】Z世代女子の就職先は故郷の「セクハラ町役場」。ボディタッチは当たり前、デュエットを強要されるのは序の口で…【専門家のアドバイス】

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企業や大学、自治体のトップが「ハラスメントを許さない」という決意を示す「ゼロハラ宣言」を公表する動きが日本でも広がっているが、どこか空々しい。先日も岐阜県岐南町の町長が、第三者委員会に99のセクハラやパワハラを認定されて辞職に追い込まれた。
令和2年度の<職場のハラスメントに関する実態調査報告書>(東京海上日動リスクコンサルティング株式会社)によると、過去3年間にパワハラの相談があった企業は48.2%と、半数近くに上る(全国の従業員30人以上の企業・団体。回答数6426)。過去3年間の相談件数の推移も、「件数は変わらない」と答えた企業が最も多かった。
セクハラの相談については「社会的に一発アウト」という認識が広がりつつあるせいか、「減少している」と答えた企業が最も多かったというが、それでも過去3年間にセクハラの相談があった企業は29.8%と、根強く残っている。
「近年、コンプライアンス意識は高まり、大企業ではセクハラやパワハラに対して厳しい目を向けるようになりました。しかし社会全体を見れば不十分な点が多い。
医療や介護など、ある種の閉鎖的な一面を持つ職場においては女性を軽んじる傾向が多いように見受けられますし、年功序列など、古い体質の残る公務員などにおいても若手職員や女性の意見や要望などが尊重されていない、といった声が届いています」と話すのは、NPO法人「労働相談カフェ東京」の理事長・横川高幸氏だ。
横川氏は「万が一、パワハラやセクハラが原因で有能な人材を失うことがあれば、それは企業としての損失になります」と警鐘を鳴らすが、特に地方社会においては未だに男尊女卑の名残りを垣間見ることができる。
首都圏の大学で地方創生について学んだ矢代桃香さん(仮名・26歳)は、「さびれて行く故郷を何とか活性化させたい」という思いが強くなり、卒業後、故郷に戻って西日本にある町役場に入職した。しかし彼女が勤めて知った町役場の実態は、彼女の高邁な志に水を差すのに十分なほど、時代錯誤な場所だった。
最初に配属されたのは観光課。地元の新たな魅力を発信しようと、休みのたびに地元の名所旧跡を歩き回り、名産品の製造元を訪ね、図書館で郷土史を研究するなどのフィールドワークを重ねた、ところが、
「レポートを作って上司に提出しましたが、興味なさそうに一瞥するだけで読んでもくれません。それどころか『まず自分の仕事をちゃんとやりなさいよ』と叱られ、『お茶入れてくれない?』とか『ついでにこの資料をコピーして来てよ。使いたいんだよね』と雑用ばかりを命じられます」
上司や同僚たちは口を揃えて「女には女の仕事がある」と言い出す始末で、この町役場には
・来客対応は男性職員
・会議は基本、男性職員のみで行う
・お茶くみ、コピー取り、買い出し、掃除は若い女性職員の仕事
などの暗黙のルールも存在しているという。
その中でも目下、「気持ち悪くて仕方がない」というのが、野放しになっているセクハラだ。
「業務の一環として、親睦会や会合に女性職員も呼ばれるのですが、仕事内容はホステスです。『ここにいる人は地元の名士ばかりだから丁重にもてなしてくれよ』と上司から厳命を受け、60代、70代のニヤけた男性たちのお酌をして回り、デュエットの相手役をさせられます。肩に手を回される程度は序の口で、胸やお尻を触られるのも当たり前。キスをされそうになったこともあります。助けを求めても『こういう場所は無礼講だから』と、野放しにされています。故郷の活気を取り戻したくて就職したのに、私は何のためにここにいるのかわからなくなります」
令和とは思えない時代錯誤ぶりだが、その一方で、この町役場のHPでは「パワハラ・セクハラを許す社会にしてはいけない」などという「ゼロハラ宣言」が大きく掲げられていた。市民のための相談窓口も設置してあったが、一体だれが担当するのだろうか。市民が気の毒になってくる。
他の職員にも話を聞いたが、「そういうものだと思っています」とにべもない返事が返って来た。
「桃香さんの気持ちもわかりますし、他にも同じように感じている女性職員がいるかもしれませんが、だからと言ってどうにもなりません。以前にも女性の地位向上を訴えた女性職員がいました。しかし男性職員や地元の男性議員の反感を買って、イジメのようなことをされて、心も病んで退職しています。ここで働きたいのであれば、そういうものなのだと思って割り切るしかないんです」と、状況を受け入れてしまっていた。
前出の横川氏は、「このようなハラスメントがまかり通る職場は、雇用者や管理する立場の人間がハラスメントに対して鈍感である場合が多いので、余計に被害者は八方塞がりになりやすい」と指摘するが、
実際、町役場には『桃香ちゃんみたいに若いコは余計好まれるから、これから覚悟した方がいいよ』と言う人までいるようで、孤立無援の状態に陥っている。
つづく「Z世代女子の就職先がヤバすぎた!故郷の「セクハラ町役場」でコスプレを強要され撮影まで…専門家が指南する「解決方法」」では、上司のパンツまで畳まされる異常な職場環境をリポートする。
Z世代女子の就職先がヤバすぎた!故郷の「セクハラ町役場」でコスプレを強要され撮影まで…専門家が指南する「解決方法」

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