【小林 一哉】川勝知事をなぜ辞めさせられない…自民党静岡県連がこれほどまで弱体化している「大きな理由」

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自民党静岡県支部連合会(会長・城内実衆院議員)は2024年3月23日、静岡市内で役員らによる会合を持った。来年6月に行われる県知事選に擁立する候補予定者を決めるのが最大のテーマだった。前回選(2021年6月)の選挙戦は一方的となり、開票と同時に川勝知事の当確が打たれた。結局、約33万票もの大差をつけられる惨敗となった。前回選の惨敗を踏まえ、自民党県連は勝てる候補者の擁立を急ぐこととなった。
しかし、現状では、それだけでは川勝知事に勝てる可能性は低い。川勝知事に対抗できる、自民党県連の最も考えられる方策は、県議会で知事不信任決議を突きつけることである。
そこで、知事不信任決議案を巡るこれまでの静岡県議会の動きを振り返る。
2021年10月、川勝知事の「御殿場にはコシヒカリしかない」発言で、知事不信任決議案は、一躍、注目を集めた。そして、
11月の臨時議会で、法的拘束力のない辞職勧告決議案を可決して、お茶を濁した。
その辞職勧告決議が昨年6月県議会で川勝知事の不信任決議案の提出にまで発展した。
川勝知事は、辞職勧告が決議された直後、「(自ら)ペナルティーを科すため、12月の給与と期末手当(ボーナス)を全額返上する」と記者団を前に言明した。
ところが、それから1年半以上が経過した昨年7月、給与、ボーナス約440万円が返納されていないことがNHK記者の調査で明らかになった。
これに対して、7月11日の定例会見で、川勝知事は「給与等返納のための条例案を提案しようと調整したが、(自民党の反対に遭い)提案されず、現在に至っている」などと説明、自民党県議団の対応に責任転嫁した。
翌日の12日の6月県議会最終日に、知事の給与等返上が問題となり、自民党県議団は「保身のための虚偽説明」などと反発した。翌日の13日未明に政治責任を問う不信任決議案の投票が行われた。
その結果、定数68のうち、賛成50、反対18で、可決の要件となる出席議員の4分の3以上に1票及ばず、知事の失職につながる不信任決議案の可決とはならなかった。
当然、県議会の現勢力では、川勝知事の不信任決議案を可決できないことを承知しての提案でしかなかった。
川勝知事を支える「ふじのくに県民クラブ」18人が盤石だったからである。
その後、無免許運転などが発覚した同会派の女性議員が辞職したため、現在は欠員1で、定数67で、ふじのくに県民クラブは17となった。
ただ定数67でも68でも、不信任決議案の可決には賛成51が必要となる。
3月18日の2月県議会終了後に、新たな動きが表面化した。
ふじのくに県民クラブの浜松市東区選出の大石哲司県議が、会派を離れることを決め、会派所属議員に伝えたのだ。
4月以降に退会届を提出したあと、会派代表が議会事務局へ届け出ることで、大石県議は無所属となる予定である。
ふじのくに県民クラブを離脱することを決めた大石県議は、浜松市の遠州灘海浜公園への新野球場整備に当たって、同会派が、浜松市、浜松商工会議所などの求める大型ドーム球場建設に賛成していることで、意見の対立があったようだ。
川勝知事の政治姿勢に対する批判ではないから、知事不信任決議案が提出されたとしても、同議員が賛成に回ることはなさそうだ。
しかし、もし、同議員が棄権した場合はどうなるのか?
同議員が棄権すれば、総数は66となり、賛成が50であれば、可決要件の4分の3に届くことになる。となれば、会派の拘束がないのだから、是々非々で、大石県議に棄権に回ることは十分にありうる。自民党県議団の強い働き掛けで活路が見出されるかもしれない。
自民党県連は、有力な知事候補予定者を決めた上で、知事不信任決議案を可決して、来年6月の知事任期を待たずに選挙戦にのぞむ準備を進めなければならない。
2019年12月、JR東静岡駅南口に整備を進めていた「文化力の拠点」施設に、自民党県議団が見直しを求めていることに不満を持った川勝知事が、自民党県議団を念頭に、「やくざの集団」「ごろつき」などと発言、大騒ぎを招いた。
さらに2020年10月の会見で、今度は当時の菅義偉首相を「教養レベルが露見した」「学問をした人ではない」「学問立国に泥を塗った」などとめった切りにして、こちらも大騒ぎを招いた。
いずれも自民党県議団はなす術もなく、事の収拾を図ったに過ぎない。
「やくざの集団」「ごろつき」発言で自民県議団がボコボコにされてから、2021年6月の県知事選までは1年半もあった。
それなのに、前回選は約33万票の大差をつけられる惨敗となった。
来年6月の知事選まですでに1年半を切っている。
自民党県連がこれほどまでに弱体化している大きな理由は、政治家が何もしなくてもほどほどに豊かな地域だからなのだろう。
静岡県民はおとなしく、人が良いのが特徴だと言われる。
川勝知事もリニア問題で、「おとなしい静岡県民」と形容している。
激しい物言いをする、京都出身の川勝知事に対して、リニア問題などで丁々発止、鋭い苦言を呈する実力派の国会議員も皆無だから、そんなふうに見えるのだろう。
来年6月の知事選で川勝県政の継続が決まれば、さらに4年間、リニア問題は膠着したまま解決への道は開けないだろう。
不適切発言を繰り返す川勝知事の暴走を止められない自民党…5期目を阻止する一つの秘策

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