《観光バス横転》「豪腕で事業急拡大。数年前に渋谷の豪邸へ」やり手社長の“本当の評判”と逮捕運転手(26)が置かれていた“ブラックな環境”

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《渋滞の中、無理矢理割り込む》
【画像】美杉観光バス社長「豪腕で事業を急拡大。殿様のような振る舞いも」《赤信号を無視していた》《東北道で3台が130km/H以上でウインカーを立てずに車線変更、車間距離は全く取らず前方車両にぴったりくっついていた》 これらはバス運行会社「美杉観光バス」(埼玉県飯能市)のグーグルマップ上の口コミだ。同社の運転手がつい先日、バスの横転事故を起こし、同社の吉田典弘社長が会見を開く事態となった。 まずは事故を振り返ろう。

富士山ツアーでバス横転で死亡1人、重傷6人 10月13日午前11時50分ごろ、静岡県小山町の県道で観光バスが横転した。埼玉県西部を出発し富士山五合目まで行く日帰りツアーで、参加者34人と運転手と添乗員の計36人が乗っていた。制御不能となった大型バス横転の衝撃は凄まじかったのだろう、埼玉県入間市の枝川恵美子さん(74)が搬送先の病院で死亡が確認され、他にも6人の重傷者がでるという悲惨な事故となった。横転したバス 共同通信 静岡県警担当記者が解説する。「県警は運転手の野口祐太容疑者(26)を自動車運転処罰法違反(過失致傷)で現行犯逮捕しました。事故後に会見したツアーを企画した『クラブツーリズム』の酒井博社長によると、事故の前に野口容疑者は添乗員に『ブレーキが効かない』と話していたといいます。 美杉観光によると、当日朝バスに異常はなく、野口容疑者にアルコール反応などもないことから『フェード現象』が事故の原因だった可能性が高いと言います。国交省や県警が家宅捜索するなどして、事故原因を詳しく調べています」フェード現象防止は「バス運転手の基本のキ」 交通事故鑑定人の熊谷宗徳氏が解説する。「フェード現象とは、フットブレーキを多用することでブレーキパッドが加熱して摩擦力が減り、ブレーキの効きが悪くなることです。事故現場の手前に薄いタイヤ痕がありますが、横転したバスの状況などから総合的に考えると、運転手が話しているように、フェード現象が起こっていてブレーキが効かなかった可能性が高いです。 乗客も多く、重量がある大型バスですから、ベタ踏みしても減速しきれずに勾配のある下りカーブで横転してしまったのでしょう。これまで同じ場所で同様の事故がなかったことからも、運転手の操作に問題があったと言わざるを得ません」 あるバス運転手の男性(40代)はこう語る。「下りの坂道でフェード現象を避けるために、フットブレーキはなるべく使わずにエンジンブレーキと排気ブレーキで進むのはバス運転手の基本のキです。ただ経験が浅いと、道路が混雑しているときに前方との車両間隔が開いて迷惑になるのを恐れたり、急いでいる時に少しでも早く進もうとしたりしてしまうんですよ。そういうときにアクセルと交互にフットブレーキを踏んでしまう。新人がやりがちなミスです」 尊い命を奪った事故の原因は逮捕された運転手による人為的ミスなのか。それとも美杉観光バスという会社に問題があったのだろうか――。 美杉観光バスの本社は東京都心から私鉄の急行に乗って約1時間、埼玉県飯能市にある。現地で取材したところ、美杉観光バスは地元でよく知られた企業のようだ。美杉観光“やり手社長” 数年前に渋谷の豪邸へ「美杉観光バスは、親の代まで細々とやっていた会社を、会見した現社長の吉田典弘氏が大きくしたんです。近隣市も含めて競合するバス会社が少ないので、地元の小学生はみんな遠足なんかで美杉観光に乗っているんじゃないですかね。クラブツーリズムのような大手のツアー会社の仕事もとり、いかにもやり手の社長という感じだね」(地元経済界関係者) 同社の支店は東京、京都、沖縄などにもあり、レンタカー事業なども幅広く行っているようだ。2022年3月期はコロナ禍ながら「東京五輪特需や新たな契約で大幅な増収を達成している」(同前)という健闘ぶりだ。 ただ、急拡大したという事情もあるのだろう。こうした“批評”も聞こえてくるのだ。「地元でちょっとしたトラブルになった際に、非常に横柄な物言いをしていましたね。地元では『俺がいくつも支店を出した』と殿様のように振る舞っている。ひたすら利益を追求してきたというイメージですね。なので、本人を知っている私らからすると、会見でしおらしくしている様子は違和感がありました(苦笑)」(同前) やり手のワンマン社長が豪腕で事業を拡大してきた。美杉観光バスにはそういうイメージがあるようだ。同社の登記簿を見ると、吉田社長の住居は飯能市から、2018年に目黒区の高級賃貸マンションに移り、現在は渋谷区の戸建て。近年、急速に“ステップアップ”している。 一方でその恩恵は現場にはもたらされていないようだ。同業他社でバス運転手をする男性が明かす。「観光バス業界はブラック。特に美杉観光は…」「観光バス業界は全体としてグレーというかブラックな職場ですが、美杉観光は特に金銭面で厳しい印象ですね。よく、SA(サービスエリア)で休憩中の運転手同士で雑談するので、美杉観光には仲良い運転手さんもいるんですよ。でもみんな大変そうでね……。バス業界では多いですが、1日に2時間もかかる点検の時間を勤務時間に入れないとか、残業が固定額だとかね」 この他社バス運転手によると「ただでさえ旅行会社が企画するツアーはキツイ」。会社には定期収入が入るが、現場はその厳しいスケジュールに苦しめられるのだという。「道路が混んでいて遅れようものなら、お客さんからは自由時間が減るとクレームを受けてしまいます。対応をするのはその場にいる私ら運転手です。なので、混雑が予想される日にはどうしても急いでしまいますね」 今回事故があったのは富士山の五合目からの下り道。場所により、急な下りもあるが関東のバス運転手としてはよく利用する道路だという。「フットブレーキの多用による『フェード現象』が原因なら、坂によっては横転どころか転落してしまう危険もあります。なぜ逮捕された運転手はそのような基本的なことができなかったのでしょうか。 会見では、別の会社にも勤務して研修を経て春から観光バスを運転しているということでしたが、ちゃんとした坂道で研修をしていたのでしょうか。遠方での研修は金もかかるので、現場で慣れろという会社も少なくありません。 美杉観光の運転手さんは『うちは二種の免許があれば誰でも採用される』なんて嘯いてたことがありましたが、あながち大げさな話でもないのかな。バス台数をたくさん所有している会社なので、慢性的に運転手が足りないということはあったみたいですし」 厳しい労働環境に人材不足、“違反走行”の口コミの数々――。事故を繰り返さないために、真相を解明しなければならない。◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
《赤信号を無視していた》
《東北道で3台が130km/H以上でウインカーを立てずに車線変更、車間距離は全く取らず前方車両にぴったりくっついていた》
これらはバス運行会社「美杉観光バス」(埼玉県飯能市)のグーグルマップ上の口コミだ。同社の運転手がつい先日、バスの横転事故を起こし、同社の吉田典弘社長が会見を開く事態となった。
まずは事故を振り返ろう。
10月13日午前11時50分ごろ、静岡県小山町の県道で観光バスが横転した。埼玉県西部を出発し富士山五合目まで行く日帰りツアーで、参加者34人と運転手と添乗員の計36人が乗っていた。制御不能となった大型バス横転の衝撃は凄まじかったのだろう、埼玉県入間市の枝川恵美子さん(74)が搬送先の病院で死亡が確認され、他にも6人の重傷者がでるという悲惨な事故となった。
横転したバス 共同通信
静岡県警担当記者が解説する。
「県警は運転手の野口祐太容疑者(26)を自動車運転処罰法違反(過失致傷)で現行犯逮捕しました。事故後に会見したツアーを企画した『クラブツーリズム』の酒井博社長によると、事故の前に野口容疑者は添乗員に『ブレーキが効かない』と話していたといいます。
美杉観光によると、当日朝バスに異常はなく、野口容疑者にアルコール反応などもないことから『フェード現象』が事故の原因だった可能性が高いと言います。国交省や県警が家宅捜索するなどして、事故原因を詳しく調べています」
交通事故鑑定人の熊谷宗徳氏が解説する。
「フェード現象とは、フットブレーキを多用することでブレーキパッドが加熱して摩擦力が減り、ブレーキの効きが悪くなることです。事故現場の手前に薄いタイヤ痕がありますが、横転したバスの状況などから総合的に考えると、運転手が話しているように、フェード現象が起こっていてブレーキが効かなかった可能性が高いです。
乗客も多く、重量がある大型バスですから、ベタ踏みしても減速しきれずに勾配のある下りカーブで横転してしまったのでしょう。これまで同じ場所で同様の事故がなかったことからも、運転手の操作に問題があったと言わざるを得ません」
あるバス運転手の男性(40代)はこう語る。「下りの坂道でフェード現象を避けるために、フットブレーキはなるべく使わずにエンジンブレーキと排気ブレーキで進むのはバス運転手の基本のキです。ただ経験が浅いと、道路が混雑しているときに前方との車両間隔が開いて迷惑になるのを恐れたり、急いでいる時に少しでも早く進もうとしたりしてしまうんですよ。そういうときにアクセルと交互にフットブレーキを踏んでしまう。新人がやりがちなミスです」 尊い命を奪った事故の原因は逮捕された運転手による人為的ミスなのか。それとも美杉観光バスという会社に問題があったのだろうか――。 美杉観光バスの本社は東京都心から私鉄の急行に乗って約1時間、埼玉県飯能市にある。現地で取材したところ、美杉観光バスは地元でよく知られた企業のようだ。美杉観光“やり手社長” 数年前に渋谷の豪邸へ「美杉観光バスは、親の代まで細々とやっていた会社を、会見した現社長の吉田典弘氏が大きくしたんです。近隣市も含めて競合するバス会社が少ないので、地元の小学生はみんな遠足なんかで美杉観光に乗っているんじゃないですかね。クラブツーリズムのような大手のツアー会社の仕事もとり、いかにもやり手の社長という感じだね」(地元経済界関係者) 同社の支店は東京、京都、沖縄などにもあり、レンタカー事業なども幅広く行っているようだ。2022年3月期はコロナ禍ながら「東京五輪特需や新たな契約で大幅な増収を達成している」(同前)という健闘ぶりだ。 ただ、急拡大したという事情もあるのだろう。こうした“批評”も聞こえてくるのだ。「地元でちょっとしたトラブルになった際に、非常に横柄な物言いをしていましたね。地元では『俺がいくつも支店を出した』と殿様のように振る舞っている。ひたすら利益を追求してきたというイメージですね。なので、本人を知っている私らからすると、会見でしおらしくしている様子は違和感がありました(苦笑)」(同前) やり手のワンマン社長が豪腕で事業を拡大してきた。美杉観光バスにはそういうイメージがあるようだ。同社の登記簿を見ると、吉田社長の住居は飯能市から、2018年に目黒区の高級賃貸マンションに移り、現在は渋谷区の戸建て。近年、急速に“ステップアップ”している。 一方でその恩恵は現場にはもたらされていないようだ。同業他社でバス運転手をする男性が明かす。「観光バス業界はブラック。特に美杉観光は…」「観光バス業界は全体としてグレーというかブラックな職場ですが、美杉観光は特に金銭面で厳しい印象ですね。よく、SA(サービスエリア)で休憩中の運転手同士で雑談するので、美杉観光には仲良い運転手さんもいるんですよ。でもみんな大変そうでね……。バス業界では多いですが、1日に2時間もかかる点検の時間を勤務時間に入れないとか、残業が固定額だとかね」 この他社バス運転手によると「ただでさえ旅行会社が企画するツアーはキツイ」。会社には定期収入が入るが、現場はその厳しいスケジュールに苦しめられるのだという。「道路が混んでいて遅れようものなら、お客さんからは自由時間が減るとクレームを受けてしまいます。対応をするのはその場にいる私ら運転手です。なので、混雑が予想される日にはどうしても急いでしまいますね」 今回事故があったのは富士山の五合目からの下り道。場所により、急な下りもあるが関東のバス運転手としてはよく利用する道路だという。「フットブレーキの多用による『フェード現象』が原因なら、坂によっては横転どころか転落してしまう危険もあります。なぜ逮捕された運転手はそのような基本的なことができなかったのでしょうか。 会見では、別の会社にも勤務して研修を経て春から観光バスを運転しているということでしたが、ちゃんとした坂道で研修をしていたのでしょうか。遠方での研修は金もかかるので、現場で慣れろという会社も少なくありません。 美杉観光の運転手さんは『うちは二種の免許があれば誰でも採用される』なんて嘯いてたことがありましたが、あながち大げさな話でもないのかな。バス台数をたくさん所有している会社なので、慢性的に運転手が足りないということはあったみたいですし」 厳しい労働環境に人材不足、“違反走行”の口コミの数々――。事故を繰り返さないために、真相を解明しなければならない。◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
あるバス運転手の男性(40代)はこう語る。
「下りの坂道でフェード現象を避けるために、フットブレーキはなるべく使わずにエンジンブレーキと排気ブレーキで進むのはバス運転手の基本のキです。ただ経験が浅いと、道路が混雑しているときに前方との車両間隔が開いて迷惑になるのを恐れたり、急いでいる時に少しでも早く進もうとしたりしてしまうんですよ。そういうときにアクセルと交互にフットブレーキを踏んでしまう。新人がやりがちなミスです」
尊い命を奪った事故の原因は逮捕された運転手による人為的ミスなのか。それとも美杉観光バスという会社に問題があったのだろうか――。
美杉観光バスの本社は東京都心から私鉄の急行に乗って約1時間、埼玉県飯能市にある。現地で取材したところ、美杉観光バスは地元でよく知られた企業のようだ。
「美杉観光バスは、親の代まで細々とやっていた会社を、会見した現社長の吉田典弘氏が大きくしたんです。近隣市も含めて競合するバス会社が少ないので、地元の小学生はみんな遠足なんかで美杉観光に乗っているんじゃないですかね。クラブツーリズムのような大手のツアー会社の仕事もとり、いかにもやり手の社長という感じだね」(地元経済界関係者)
同社の支店は東京、京都、沖縄などにもあり、レンタカー事業なども幅広く行っているようだ。2022年3月期はコロナ禍ながら「東京五輪特需や新たな契約で大幅な増収を達成している」(同前)という健闘ぶりだ。 ただ、急拡大したという事情もあるのだろう。こうした“批評”も聞こえてくるのだ。「地元でちょっとしたトラブルになった際に、非常に横柄な物言いをしていましたね。地元では『俺がいくつも支店を出した』と殿様のように振る舞っている。ひたすら利益を追求してきたというイメージですね。なので、本人を知っている私らからすると、会見でしおらしくしている様子は違和感がありました(苦笑)」(同前) やり手のワンマン社長が豪腕で事業を拡大してきた。美杉観光バスにはそういうイメージがあるようだ。同社の登記簿を見ると、吉田社長の住居は飯能市から、2018年に目黒区の高級賃貸マンションに移り、現在は渋谷区の戸建て。近年、急速に“ステップアップ”している。 一方でその恩恵は現場にはもたらされていないようだ。同業他社でバス運転手をする男性が明かす。「観光バス業界はブラック。特に美杉観光は…」「観光バス業界は全体としてグレーというかブラックな職場ですが、美杉観光は特に金銭面で厳しい印象ですね。よく、SA(サービスエリア)で休憩中の運転手同士で雑談するので、美杉観光には仲良い運転手さんもいるんですよ。でもみんな大変そうでね……。バス業界では多いですが、1日に2時間もかかる点検の時間を勤務時間に入れないとか、残業が固定額だとかね」 この他社バス運転手によると「ただでさえ旅行会社が企画するツアーはキツイ」。会社には定期収入が入るが、現場はその厳しいスケジュールに苦しめられるのだという。「道路が混んでいて遅れようものなら、お客さんからは自由時間が減るとクレームを受けてしまいます。対応をするのはその場にいる私ら運転手です。なので、混雑が予想される日にはどうしても急いでしまいますね」 今回事故があったのは富士山の五合目からの下り道。場所により、急な下りもあるが関東のバス運転手としてはよく利用する道路だという。「フットブレーキの多用による『フェード現象』が原因なら、坂によっては横転どころか転落してしまう危険もあります。なぜ逮捕された運転手はそのような基本的なことができなかったのでしょうか。 会見では、別の会社にも勤務して研修を経て春から観光バスを運転しているということでしたが、ちゃんとした坂道で研修をしていたのでしょうか。遠方での研修は金もかかるので、現場で慣れろという会社も少なくありません。 美杉観光の運転手さんは『うちは二種の免許があれば誰でも採用される』なんて嘯いてたことがありましたが、あながち大げさな話でもないのかな。バス台数をたくさん所有している会社なので、慢性的に運転手が足りないということはあったみたいですし」 厳しい労働環境に人材不足、“違反走行”の口コミの数々――。事故を繰り返さないために、真相を解明しなければならない。◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
同社の支店は東京、京都、沖縄などにもあり、レンタカー事業なども幅広く行っているようだ。2022年3月期はコロナ禍ながら「東京五輪特需や新たな契約で大幅な増収を達成している」(同前)という健闘ぶりだ。
ただ、急拡大したという事情もあるのだろう。こうした“批評”も聞こえてくるのだ。
「地元でちょっとしたトラブルになった際に、非常に横柄な物言いをしていましたね。地元では『俺がいくつも支店を出した』と殿様のように振る舞っている。ひたすら利益を追求してきたというイメージですね。なので、本人を知っている私らからすると、会見でしおらしくしている様子は違和感がありました(苦笑)」(同前) やり手のワンマン社長が豪腕で事業を拡大してきた。美杉観光バスにはそういうイメージがあるようだ。同社の登記簿を見ると、吉田社長の住居は飯能市から、2018年に目黒区の高級賃貸マンションに移り、現在は渋谷区の戸建て。近年、急速に“ステップアップ”している。 一方でその恩恵は現場にはもたらされていないようだ。同業他社でバス運転手をする男性が明かす。「観光バス業界はブラック。特に美杉観光は…」「観光バス業界は全体としてグレーというかブラックな職場ですが、美杉観光は特に金銭面で厳しい印象ですね。よく、SA(サービスエリア)で休憩中の運転手同士で雑談するので、美杉観光には仲良い運転手さんもいるんですよ。でもみんな大変そうでね……。バス業界では多いですが、1日に2時間もかかる点検の時間を勤務時間に入れないとか、残業が固定額だとかね」 この他社バス運転手によると「ただでさえ旅行会社が企画するツアーはキツイ」。会社には定期収入が入るが、現場はその厳しいスケジュールに苦しめられるのだという。「道路が混んでいて遅れようものなら、お客さんからは自由時間が減るとクレームを受けてしまいます。対応をするのはその場にいる私ら運転手です。なので、混雑が予想される日にはどうしても急いでしまいますね」 今回事故があったのは富士山の五合目からの下り道。場所により、急な下りもあるが関東のバス運転手としてはよく利用する道路だという。「フットブレーキの多用による『フェード現象』が原因なら、坂によっては横転どころか転落してしまう危険もあります。なぜ逮捕された運転手はそのような基本的なことができなかったのでしょうか。 会見では、別の会社にも勤務して研修を経て春から観光バスを運転しているということでしたが、ちゃんとした坂道で研修をしていたのでしょうか。遠方での研修は金もかかるので、現場で慣れろという会社も少なくありません。 美杉観光の運転手さんは『うちは二種の免許があれば誰でも採用される』なんて嘯いてたことがありましたが、あながち大げさな話でもないのかな。バス台数をたくさん所有している会社なので、慢性的に運転手が足りないということはあったみたいですし」 厳しい労働環境に人材不足、“違反走行”の口コミの数々――。事故を繰り返さないために、真相を解明しなければならない。◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「地元でちょっとしたトラブルになった際に、非常に横柄な物言いをしていましたね。地元では『俺がいくつも支店を出した』と殿様のように振る舞っている。ひたすら利益を追求してきたというイメージですね。なので、本人を知っている私らからすると、会見でしおらしくしている様子は違和感がありました(苦笑)」(同前)
やり手のワンマン社長が豪腕で事業を拡大してきた。美杉観光バスにはそういうイメージがあるようだ。同社の登記簿を見ると、吉田社長の住居は飯能市から、2018年に目黒区の高級賃貸マンションに移り、現在は渋谷区の戸建て。近年、急速に“ステップアップ”している。
一方でその恩恵は現場にはもたらされていないようだ。同業他社でバス運転手をする男性が明かす。
「観光バス業界は全体としてグレーというかブラックな職場ですが、美杉観光は特に金銭面で厳しい印象ですね。よく、SA(サービスエリア)で休憩中の運転手同士で雑談するので、美杉観光には仲良い運転手さんもいるんですよ。でもみんな大変そうでね……。バス業界では多いですが、1日に2時間もかかる点検の時間を勤務時間に入れないとか、残業が固定額だとかね」
この他社バス運転手によると「ただでさえ旅行会社が企画するツアーはキツイ」。会社には定期収入が入るが、現場はその厳しいスケジュールに苦しめられるのだという。
「道路が混んでいて遅れようものなら、お客さんからは自由時間が減るとクレームを受けてしまいます。対応をするのはその場にいる私ら運転手です。なので、混雑が予想される日にはどうしても急いでしまいますね」 今回事故があったのは富士山の五合目からの下り道。場所により、急な下りもあるが関東のバス運転手としてはよく利用する道路だという。「フットブレーキの多用による『フェード現象』が原因なら、坂によっては横転どころか転落してしまう危険もあります。なぜ逮捕された運転手はそのような基本的なことができなかったのでしょうか。 会見では、別の会社にも勤務して研修を経て春から観光バスを運転しているということでしたが、ちゃんとした坂道で研修をしていたのでしょうか。遠方での研修は金もかかるので、現場で慣れろという会社も少なくありません。 美杉観光の運転手さんは『うちは二種の免許があれば誰でも採用される』なんて嘯いてたことがありましたが、あながち大げさな話でもないのかな。バス台数をたくさん所有している会社なので、慢性的に運転手が足りないということはあったみたいですし」 厳しい労働環境に人材不足、“違反走行”の口コミの数々――。事故を繰り返さないために、真相を解明しなければならない。◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「道路が混んでいて遅れようものなら、お客さんからは自由時間が減るとクレームを受けてしまいます。対応をするのはその場にいる私ら運転手です。なので、混雑が予想される日にはどうしても急いでしまいますね」
今回事故があったのは富士山の五合目からの下り道。場所により、急な下りもあるが関東のバス運転手としてはよく利用する道路だという。
「フットブレーキの多用による『フェード現象』が原因なら、坂によっては横転どころか転落してしまう危険もあります。なぜ逮捕された運転手はそのような基本的なことができなかったのでしょうか。 会見では、別の会社にも勤務して研修を経て春から観光バスを運転しているということでしたが、ちゃんとした坂道で研修をしていたのでしょうか。遠方での研修は金もかかるので、現場で慣れろという会社も少なくありません。 美杉観光の運転手さんは『うちは二種の免許があれば誰でも採用される』なんて嘯いてたことがありましたが、あながち大げさな話でもないのかな。バス台数をたくさん所有している会社なので、慢性的に運転手が足りないということはあったみたいですし」 厳しい労働環境に人材不足、“違反走行”の口コミの数々――。事故を繰り返さないために、真相を解明しなければならない。◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
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会見では、別の会社にも勤務して研修を経て春から観光バスを運転しているということでしたが、ちゃんとした坂道で研修をしていたのでしょうか。遠方での研修は金もかかるので、現場で慣れろという会社も少なくありません。
美杉観光の運転手さんは『うちは二種の免許があれば誰でも採用される』なんて嘯いてたことがありましたが、あながち大げさな話でもないのかな。バス台数をたくさん所有している会社なので、慢性的に運転手が足りないということはあったみたいですし」
厳しい労働環境に人材不足、“違反走行”の口コミの数々――。事故を繰り返さないために、真相を解明しなければならない。
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