妻が突然「別居したい」新住所すら教えてもらえず… 夫が彼女の会社に乗り込んで判明した、“ただの不倫”ではなかった衝撃の事実

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前編【学生結婚してから10年、妻の不審な行動の数々に「不倫しているのでは」 その時、44歳夫はどう対処したか】からのつづき
萩原卓浩さん(44歳・仮名=以下同)は、大学4年生のときに結婚した。相手は同級生の美智香さんで、その時すでに妊娠中。内定先の中小企業は、そんな彼女を拒まずに新入社員として受けいれてくれたという。「会社に恩返ししたい」という美智香さんの思いを受け入れ、息子が生まれてからの忙しい日々を共働きで過ごした卓浩さん。だが、連絡もなく深夜に帰宅するなど、少しずつ美智香さんの不審な言動が目につくように……。「妻に限ってそんなことがあるわけない」と、卓浩さんは男性の影を疑う心を封じ込めた。
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3年前、息子が大学に入学した。どうしても、ある地方の大学に入りたいと言い出し、目標に向かってがんばっていた。だからその大学に合格したときは一家で大喜びをしたものだった。息子がひとり旅立っていってから2年後の昨年春、美智香さんが「別居したい」と言いだした。
「美智香はずっと常識的な範囲の時間に帰宅していたし、特に浮気疑惑が濃厚になるようなことはありませんでした。だけど、そのあまりに自然な日常生活に、僕はかえって不穏なものを感じていた。僕との肉体的接触は相変わらずなかったし。でも会話は普通にしていたし、家をあけることもなかったから、もしかしたら一時の情熱だったんじゃないかと自分で自分を納得させようとしていました」
だからこそ、別居の申し出に卓浩さんは驚いた。妻は「私、今、会社で重要な立場にいるの。この先、今の会社がいい方向で存続できるのか潰れるのかの正念場にある。思い切り仕事をしたいのよ、誰にも気兼ねなく」と彼女は言った。
「家から通うと仕事ができないのか、そんなのはおかしいと僕は言いました。家事は僕がやる。食事の支度もしなくてもいい。だけど生活のベースは家に置いてほしいと。すると妻は『じゃあ、週末だけ帰ってくるというのはどう?』と。それほどまでに僕と離れたいのかと言ったら、そうじゃないけど生活を変えたいと。妻の表情は真剣で、目が異様なほどキラキラしていた。彼女が本気で思い込むとこういう顔になると僕は知っていたから、止めようがないこともわかった」
好きにすればいいと突っぱねた。彼女は了解を得られたと思ったのだろう。「ありがとう、やっぱりあなたは私が選んだだけのことはある」と抱きついてきた。
その後、美智香さんは会社の近くに部屋を借りたと連絡してきたが、住所は明かそうとしなかった。20数年にわたる関係を、こんなに簡単に打ち切ることができるのか。それが卓浩さんにはショックだった。
「かといって息子に相談できる話でもない。半ばヤケになりました。ひとりで飲みに行き、生まれて初めて風俗に行きました。なんだか人肌が恋しくてたまらなかった。その数日後、意を決して代休をとり、妻の会社に乗り込みました。そしてそこでびっくりするような事実を知ったんです」
卓浩さんが妻の勤務先を訪ねると、「萩原さんは外出していて、戻りはわかりません」と言われた。何か様子がおかしいと思った卓浩さんだが、それ以上聞こうとしても、答えてくれた人は「知らない」と言い張った。
がっくりしながら会社を出たところで、「美智香さんの身内の方ですか」と女性の声がした。振り向くと30歳前後とおぼしき女性が立っていた。
「そのまま会社近くの喫茶店でことの顛末を聞かされました。『美智香さんは今、私の父の看病をしてくださっています』と彼女は言うんです。この10数年、彼女の父である社長と、美智香は関係をもっていた。それは彼女の母親、つまり社長の妻にも知られるところとなったが、3人で話し合いをしているとき、母が急死した。そして今、父が病気になり、美智香さんが看病を買って出てくれていると。そんなことあり得ます? あなたはどう思っているんですかと僕は思わず、社長の娘を問い詰めてしまいました」
社長の娘である澄美子さんは、「母には気の毒ですが、私は母を恨んでいました。いわゆる毒母でしたから。そんな私を支えてくれたのは美智香さんだった」と複雑な環境を話し始めた。母にわけもなく殴られたりごはんを与えてもらえなかったりしたとき、ひとりっ子の澄美子さんは父の会社にこっそり出向いていった。そんな澄美子さんを見つけて、美智香さんは食事に連れていってくれた。父の出張中に家から閉め出されたとき、連絡をするとホテルへ連れていって泊まらせてくれたこともある。10代半ばになって父と美智香さんが男女の関係だとわかったが、美智香さんに悪い感情を抱くことはできなかった。
「美智香さんがもうお父さんとは別れると言ったこともあるんです。だけど、私が別れないであげてと言いました。父もおそらく美智香さんと別れたら、自分を保てなくなるとわかっていたはず。離婚という選択肢もあったかもしれませんが、母は離婚などしない、この家が潰れるまで恨んでやると言っていましたし。母が急逝したのは、自分の恨みに自ら潰されたのではないかと私は思っています」
そう言って、澄美子さんは頭を下げた。いちばん被害をこうむったのは萩原さんだと思います、と。私は美智香さんの好意にすがってしまったと。
「美智香は仕事をしながら社長の看病をしていました。会社と病院は近かった。だから美智香は会社近くに住みたかったんでしょう。そのことは澄美子さんしか知らない。社員の中には何かありそうだと思っている人もいるが、誰も追求はしてこない。社長は生き延びられるかどうか五分五分というところだと、当時、澄美子さんは言っていました」
卓浩さんは衝撃のあまり、それから数日間、寝ることも食べることもできなくなり、自ら救急車を呼んで搬送された。死んでもいいと思ったし、妻には知らせるまいと考えていたが、いざとなると恐怖感が増し、病院から妻に連絡してもらった。
「美智香は駆けつけてきました。『ちゃんとごはん食べてって言ったのに。食べてなかったんでしょう』って。どこか悪いわけではなく、脱水症状を引き起こしていたみたいです。妻は僕の手を握って『ごめんね。やっぱり私が悪い』と。『聞いたよ、すべて』と言うと、『私も澄美子ちゃんから聞いた』って。離婚したいのかと言うと、私はしたくない、落ち着いたら帰りたい。あなたが許してくれるならと妻は言いました」
それから5ヶ月ほどたって社長は亡くなり、美智香さんは「家に帰ることをどう思うか」とメッセージしてきた。
「悩みました。僕に決定権を委ねるのか……。きみはどうしたいんだと聞いたら、帰りたいと言う。あとは僕が受け入れるかどうかだけですよね。でもそれを決めなければいけないのは残酷だねと伝えました。そうしたら彼女、その日のうちに戻ってきたんですよ。わかった、あなたに決定を委ねない。私が決める。私は帰ってきたと」
その日から自分の葛藤が始まった、いや、前からあった葛藤がより深くなったと卓浩さんは苦しそうにつぶやいた。妻と亡くなった社長との関係はどのくらい、どうやって続いていたのか、妻はどのくらい社長を愛していたのか。家族よりも? 自分よりも? そもそも彼女は僕を本当に必要としていたのか、妊娠したから結婚しただけだったのではないだろうか。彼の苦悩はとどまるところを知らなかった。
「ただ、心のどこかで美智香の姿を毎日見られることに安堵していました。だからといって諸手を挙げて彼女を受け入れられるわけではない。あれから半年ほどたって、日常生活は滞りなく進んでいるけど、これでいいのかどうかはわからないんです」
今年の正月、息子は帰ってこなかった。来年は息子も大学を卒業するが、彼はそのまま大学院進学を望んでおり、家族3人での生活はもう訪れないかもしれない。妻は彼の顔色をうかがうような言動はとらない。開き直っている様子でもない。
「つい先日、聞いたんです。きみは今、どういう感情で僕に接しているのかと。彼女は『いつか私たち、ちゃんと話し合わないといけないわよね。これだけ長くつきあってきたあなたに私はたぶん、ひどいことをしたんだと思う。言い訳はしたくない、でも言わないとわかってもらえないこともある』って。その後、ただ、今は生々しくて話せないのとうつむいたんです。あ、彼女は社長がいなくなったことを悲しんでいるんだと改めて実感しました。彼を愛したから夫である僕とは性的関係を結ばなくなった、だけど彼はかなり長い間、病と闘っていたとあの後、娘の澄美子さんから聞いたんです。ということは彼とも関係をもってない時間は案外長いのかもしれない。肉体の関係なんて、実は彼女にとってはどうでもよかったのかもしれないし……。彼女が今、自分があの件について言葉を発しても、気持ちが整理されていないから誤解を生むことのほうが多いと言いました。それはそうなんだろうと僕も思います」
だからあえて聞かないし言わない。ふたりは今、仕事をしながら日々の生活をごく普通に送ることしかできないのだろう。
「暖かくなったら、息子のいるところに旅行して案内してもらおうかという話をしています。僕ら、行ったことがないんですよ。こうやって一歩ずつ、またふたりで寄り添いながら歩いていくんでしょうか、あるいはいつか僕が許せなくなって夫婦は崩壊するんでしょうか」
結論を急ぐのはやめようと彼は決めたようだ。ふたりそれぞれの気持ちを落ち着かせるためには、ある程度の時間が必要なのかもしれない。
前編【学生結婚してから10年、妻の不審な行動の数々に「不倫しているのでは」 その時、44歳夫はどう対処したか】からのつづき
亀山早苗(かめやま・さなえ)フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。
デイリー新潮編集部

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