【洋吾】交通違反「取り締まり」驚愕のウラ側…元白バイ隊員が明かす「違反者は大事なお客さま」というワケ

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交通違反により国庫に納付される反則金は、例年500億円を超えるという。低成長の時代にあっても安定収入である。
国の収入予算書である「一般会計歳入予算概算見積書(現金収入)」には、その取り締まり件数と目標額までが記されているが、2020年は反則告知件数616万1291件、交通反則者納金543億6163万9000円と、目標が明確に見積もられていた(令和2年度)。
そんな交通取り締まりノルマの実態を、白バイ隊員の視点から明かした人物がいる。元警視庁交通機動隊員として22年間、白バイに乗ってきた洋吾氏だ。
近著には『白バイ隊員 交通取り締まり とほほ日記』もある洋吾氏が、「白バイ反則切符ノルマ」の実態に迫る。
私は退職までの33年間、警視庁の警察官として勤めてきた。しかもそのうちの大半、約22年間は白バイ乗りだった。白バイが好きだから続けられたと思っている。
実際、白バイは迫力があってカッコいい。赤色回転灯やスピーカー、無線機に大型のサイドボックスなど、警察装備を身にまとった姿は存在感たっぷりで、バイク好き、乗り物好きの心をくすぐる存在ではある。その任務は「交通の治安」を守ることにあるのだが、実際の白バイ乗りの勤務はカッコよさとはほど遠い。
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警らに出れば、顔や白いマフラーは排気ガスで真っ黒になる。おまけに夏場は汗ダラダラ、冬場は鼻水タラタラ……。近くで見るととても汚いのだ。その上、業務で求められる最優先事項は、「違反切符の売上げ」なのである。実際、白バイ乗りの成績や評価は、取り締まり件数がすべてである。そういう厳しい世界にあって、私は3年連続で警視庁トップを経験したこともある。警視庁のトップクラスの取り締まり切符件数は、個人で年間1000件ほどだ。月間換算なら80件以上となる。トップになると警視庁本部の警視総監室内で総監自らが表彰してくれるが、現役時代の私は3年連続で総監室入りした。反則切符は月間ノルマで、違反者は大事なお客さま反則金や罰金は、国の大事な収入となるため、偉い人たちは徹底的にお巡りさんたちのケツを叩いてくる。とにかく警察にとって「違反者は大事なお客さま」。いまや、違反者へかける言葉も、丁寧で優しい言葉遣いが大事な流儀となっている。私が現職時、交通機動隊内では、反則切符の「月間ノルマ」が割り当てられていた。「努力目標」という言い方ではあるが、事実上のノルマであり、その割り当てられた数字は、さらに小隊内の各隊員一人ずつに割り当てられる。これが個人ノルマだ。私がかつて所属していた隊では、小隊部屋である事務室のホワイトボードには、月間ノルマ件数が露骨に記載されていた。警視庁の各交通機動隊は1隊4中隊で編成され、各中隊はさらに2つの小隊に分かれている。つまり一つの部隊には8つの小隊があり、この8つの小隊をこうして競わせて年間順位まで決めてくるのだった。違反切符のノルマは違反別に設定されるところで、白バイはいつでも運用できるというわけではない。安全のため雨天時は四輪(交通パトカー)での活動となる。これは夜間帯の活動も同じである。そしてパトカーでの活動は、基本的に二人一組となる。そう、取り締まりを1件あげても、二人で1件となってしまう。つまり、個人成績は0.5件としかならないのだ。しかもこれが上司と部下、先輩と後輩とのペアでの取り締まりとなると、上司や先輩は、部下や後輩に花を持たせるため、自分の売上げがゼロとなってしまう時も多々ある。そんな勤務状況があったため、個人ノルマは、けっして楽な数字というわけではなかった。 また各隊員の個人ノルマの達成状況が悪ければ、月間の小隊ノルマ達成も危うくなってきてしまう。隊員の中には練度の浅い若い隊員もいるし、取り締まりの技量が低い残念な隊員もいるからだ。月末近くになるとこの小隊ノルマ達成の危機感が大きくなり、小隊みんなで焦り出す。この危機感に拍車をかけてくれたのが、種目別違反ノルマの登場だった。 偉い人たちってのは、ただ単に反則切符を切ってくれば満足するというわけではなかったのだ。違反の種類を分けて、それぞれの違反ごとにノルマ達成を求め始めたのだ。これには本当に苦労させられた。こうなると、各隊員のプレッシャーは一層大きくなる。ドライバーのうっかりミスも売上げにするこうした日々の中で磨かれるのが、交通違反の取り締まり能力である。当然だが、白バイ隊員のそれは、特殊能力と呼べるほどに、他のお巡りさんたちに比べてずば抜けている。そもそも交通違反は、知らないうちに犯してしまっている場合が多い。標識の見落とし、勘違いなどは、いわゆるうっかりミスだ。速度違反だって、悪質性の高いものは、それほど多いわけではなない。けれども、そういった一般ドライバーが犯しがちなうっかりミスを、ミスとして注意するのではなく、取り締まって売上げにしてしまうのが、白バイ隊員なのだ。しかもノルマ達成のため、ミスを犯しやすい場所や違反をあえて狙う能力が磨かれていく。こうして、白バイ乗りたちは、一般ドライバーから警戒され、嫌われる存在になってしまうのだ。違反の頻発スポット「漁場」では白バイが待ち伏せ白バイ乗りたちが行う取り締まり方法の多くが待ち伏せだ。街中において違反をしやすい場所というのは、けっこう決まっている。あなたの身近にも、白バイをよく見かける交差点、高架下……などがあると思うが、そういった場所は、違反の頻発スポットであり「漁場」とも呼ばれ、白バイ乗りたちの仕事場となっている。ノルマをクリアするためには、いかに良質な漁場を確保しているかということが重要であった。こうした場所は、先輩から後輩へと白バイ乗りに引き継がれていく。ある時は見えない所に隠れ、ある時は同じ場所を何度も流しながら、獲物を待つ。経験を積むと、車両の動きで「こいつは違反をするぞ!」と直感的にわかるようになる。例えば、スピード違反。これは停止して待伏せている時、目の前を通過する車両の加速状況から判断できるようになる。また、先輩隊員に、エンジン音で推定速度がわかるなんていう達人もいた。 スピード違反狙いは信号の少ない直線道路ずばりスピード違反狙いのスポットで、誰もがかっ飛ばしたくなるような信号の少ない直線道路だ。こういう場所は、昼は白バイ、夜は覆面パトカーが精力的に活動する。取り締まり方法は、一定区間を行ったり来たり走りながらのターゲットロックオンか、または裏路地や側道にて待ち伏せし、かっ飛んでくるターゲットをロックオンするかになる。多いのは後者で、通称「アパッチ」と言った。流しでの取り締まりでは、走行している車両群のなかから、違和感のあるクルマに注意を払う。他の車両に比べて明らかに急いでいるように見える時は、臨戦態勢だ。いつでもロックオン、緊急走行ができるように身構えるのだ。すべては売上げ実績をあげるため白バイ乗りたちの特殊能力は、違反車を捕捉する能力だけにとどまらない。その後の切符処理能力も格段に磨かれていく。ベテラン白バイ隊員などは、長年の経験で培った観察力で、停止させた違反車両のドライバーの性質を即座に見極める。もう窓越しの一瞬で判別し、違反切符を最速で処理できるように、声掛けをしていくのだ。 全ては売上げ実績向上のため……。白バイ隊員は、日々、一般ドライバーからはまったく歓迎されない特殊能力を存分に発揮し、交通違反取り締まりに励んでいるのだ。上からの試練はいつものこと。そんな上からの命令に絶対服従なのが警察官という生き物なのだ。文句を言いながらも、若い隊員たちは与えられたノルマ達成のため、黙々と切符切りに専念していった。さて、毎月毎月の月間ノルマ、苦しい時は月末最終日の夜間でようやく達成という時も幾度かあった。ホワイトボードの種目別違反の数字がそれぞれゼロになった時がその月のノルマ達成の瞬間であり、小隊全員が笑顔で安堵するのだった。だが、それから数時間後……、ホワイトボードには小隊長によって新たなる翌月のノルマ数字が示される。あっという間のリセットで、小隊全員がガックリするのだった。違反者からのサインが絶対必要なワケ取り締まりで一番大事なのは、違反者からサインをもらうことだ。「お待たせしました、こちらにサインをお願いします」 違反者に切符を渡す直前の緊張の瞬間だ。この時、心の中で願うのは、「頼むからサインしてくれよ……」である。実は、交通違反の取り締まりにおいて、違反者からのサインは、絶対に必要な条件なのである。というのも、このサインがもらえなければ、違反を認めたことにならないからだ。切符を渡す時、違反者の反応は実にさまざまだ。普通にすらすらってサインする人、黙って考えた後に渋々とサインする人、激高しながらなぐり書きで判読困難なサインをする人、明るく温厚な人、陰険な人、なかには涙を浮かべる人もいる。ただし、こちらとしては、サインさえしてくれれば、どんな人でもよいのである。ノルマ達成のための貴重な1件として、切符処理ができるからだ。 そもそも、あの交通切符は、ただただ切りまくって「はい終わり」ではない。後刻、切符整理といって、現場で切ってきた切符に必要事項を記載して、後処理の作業をし、最終的には担当の方の審査を受けなければならないのだ。ここで困るのが、否認切符。サインしてもらえなかった場合は、後々の切符整理の時間が、数倍になってしまう。普通だと数分で完成するのに、否認事件となると、詳細な実況検分地図の作成のほか、これでもかってぐらい諸々の書類を作成しなければならない。同じ実績1件でも、途方もなく面倒くさくなるのだ。これらの手続きは、後日の裁判に備えての決められた作業なので絶対に逃れられない。この否認書類作成、慣れた白バイ隊員でさえ、2~3時間、あるいは半日かかる。「お客さま」に気持ちよくサインしていただく逆にいえば、サインさえもらえれば、どんな態度だってかまわない。渋々であろうが、素直であろうが、違反の1件に変わりないからだ。もちろん、素直にサインしてくれたほうがありがたいが。 交通違反の取り締まりについては、大いに不満をお持ちの方も多いことだろう。「隠れて取り締まっていないで、もっと注意を促せばいいではないか」と。もちろん白バイ隊員だって、切符を切らずに厳重注意だけで済むなら、どんなに気が楽なことか。だが、実際には絶対必達のノルマが課せられている。ノルマをこなせない白バイ乗りは、遅かれ早かれ白バイを降りるしかないのだ。取り締まり時の切符作成は、本当に気苦労が絶えない。スムーズにサインをしてもらえなければ、時間や手間ばかりがかかって、ノルマ達成が遠のく。そのため、白バイ隊員たちの多くは、どんな違反者にも、優しく丁寧な言葉遣いで対応する。「お急ぎのときにすみません。免許証をお見せください」それがプロの白バイ隊員の流儀だからだ。著者:洋吾(ようご)元警視庁警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。3年連続で取り締まり件数警視庁トップの実績もある。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。
警らに出れば、顔や白いマフラーは排気ガスで真っ黒になる。おまけに夏場は汗ダラダラ、冬場は鼻水タラタラ……。近くで見るととても汚いのだ。その上、業務で求められる最優先事項は、「違反切符の売上げ」なのである。
実際、白バイ乗りの成績や評価は、取り締まり件数がすべてである。そういう厳しい世界にあって、私は3年連続で警視庁トップを経験したこともある。
警視庁のトップクラスの取り締まり切符件数は、個人で年間1000件ほどだ。月間換算なら80件以上となる。トップになると警視庁本部の警視総監室内で総監自らが表彰してくれるが、現役時代の私は3年連続で総監室入りした。
反則金や罰金は、国の大事な収入となるため、偉い人たちは徹底的にお巡りさんたちのケツを叩いてくる。とにかく警察にとって「違反者は大事なお客さま」。いまや、違反者へかける言葉も、丁寧で優しい言葉遣いが大事な流儀となっている。
私が現職時、交通機動隊内では、反則切符の「月間ノルマ」が割り当てられていた。「努力目標」という言い方ではあるが、事実上のノルマであり、その割り当てられた数字は、さらに小隊内の各隊員一人ずつに割り当てられる。これが個人ノルマだ。
私がかつて所属していた隊では、小隊部屋である事務室のホワイトボードには、月間ノルマ件数が露骨に記載されていた。警視庁の各交通機動隊は1隊4中隊で編成され、各中隊はさらに2つの小隊に分かれている。つまり一つの部隊には8つの小隊があり、この8つの小隊をこうして競わせて年間順位まで決めてくるのだった。
ところで、白バイはいつでも運用できるというわけではない。安全のため雨天時は四輪(交通パトカー)での活動となる。これは夜間帯の活動も同じである。そしてパトカーでの活動は、基本的に二人一組となる。そう、取り締まりを1件あげても、二人で1件となってしまう。つまり、個人成績は0.5件としかならないのだ。
しかもこれが上司と部下、先輩と後輩とのペアでの取り締まりとなると、上司や先輩は、部下や後輩に花を持たせるため、自分の売上げがゼロとなってしまう時も多々ある。そんな勤務状況があったため、個人ノルマは、けっして楽な数字というわけではなかった。
また各隊員の個人ノルマの達成状況が悪ければ、月間の小隊ノルマ達成も危うくなってきてしまう。隊員の中には練度の浅い若い隊員もいるし、取り締まりの技量が低い残念な隊員もいるからだ。月末近くになるとこの小隊ノルマ達成の危機感が大きくなり、小隊みんなで焦り出す。この危機感に拍車をかけてくれたのが、種目別違反ノルマの登場だった。 偉い人たちってのは、ただ単に反則切符を切ってくれば満足するというわけではなかったのだ。違反の種類を分けて、それぞれの違反ごとにノルマ達成を求め始めたのだ。これには本当に苦労させられた。こうなると、各隊員のプレッシャーは一層大きくなる。ドライバーのうっかりミスも売上げにするこうした日々の中で磨かれるのが、交通違反の取り締まり能力である。当然だが、白バイ隊員のそれは、特殊能力と呼べるほどに、他のお巡りさんたちに比べてずば抜けている。そもそも交通違反は、知らないうちに犯してしまっている場合が多い。標識の見落とし、勘違いなどは、いわゆるうっかりミスだ。速度違反だって、悪質性の高いものは、それほど多いわけではなない。けれども、そういった一般ドライバーが犯しがちなうっかりミスを、ミスとして注意するのではなく、取り締まって売上げにしてしまうのが、白バイ隊員なのだ。しかもノルマ達成のため、ミスを犯しやすい場所や違反をあえて狙う能力が磨かれていく。こうして、白バイ乗りたちは、一般ドライバーから警戒され、嫌われる存在になってしまうのだ。違反の頻発スポット「漁場」では白バイが待ち伏せ白バイ乗りたちが行う取り締まり方法の多くが待ち伏せだ。街中において違反をしやすい場所というのは、けっこう決まっている。あなたの身近にも、白バイをよく見かける交差点、高架下……などがあると思うが、そういった場所は、違反の頻発スポットであり「漁場」とも呼ばれ、白バイ乗りたちの仕事場となっている。ノルマをクリアするためには、いかに良質な漁場を確保しているかということが重要であった。こうした場所は、先輩から後輩へと白バイ乗りに引き継がれていく。ある時は見えない所に隠れ、ある時は同じ場所を何度も流しながら、獲物を待つ。経験を積むと、車両の動きで「こいつは違反をするぞ!」と直感的にわかるようになる。例えば、スピード違反。これは停止して待伏せている時、目の前を通過する車両の加速状況から判断できるようになる。また、先輩隊員に、エンジン音で推定速度がわかるなんていう達人もいた。 スピード違反狙いは信号の少ない直線道路ずばりスピード違反狙いのスポットで、誰もがかっ飛ばしたくなるような信号の少ない直線道路だ。こういう場所は、昼は白バイ、夜は覆面パトカーが精力的に活動する。取り締まり方法は、一定区間を行ったり来たり走りながらのターゲットロックオンか、または裏路地や側道にて待ち伏せし、かっ飛んでくるターゲットをロックオンするかになる。多いのは後者で、通称「アパッチ」と言った。流しでの取り締まりでは、走行している車両群のなかから、違和感のあるクルマに注意を払う。他の車両に比べて明らかに急いでいるように見える時は、臨戦態勢だ。いつでもロックオン、緊急走行ができるように身構えるのだ。すべては売上げ実績をあげるため白バイ乗りたちの特殊能力は、違反車を捕捉する能力だけにとどまらない。その後の切符処理能力も格段に磨かれていく。ベテラン白バイ隊員などは、長年の経験で培った観察力で、停止させた違反車両のドライバーの性質を即座に見極める。もう窓越しの一瞬で判別し、違反切符を最速で処理できるように、声掛けをしていくのだ。 全ては売上げ実績向上のため……。白バイ隊員は、日々、一般ドライバーからはまったく歓迎されない特殊能力を存分に発揮し、交通違反取り締まりに励んでいるのだ。上からの試練はいつものこと。そんな上からの命令に絶対服従なのが警察官という生き物なのだ。文句を言いながらも、若い隊員たちは与えられたノルマ達成のため、黙々と切符切りに専念していった。さて、毎月毎月の月間ノルマ、苦しい時は月末最終日の夜間でようやく達成という時も幾度かあった。ホワイトボードの種目別違反の数字がそれぞれゼロになった時がその月のノルマ達成の瞬間であり、小隊全員が笑顔で安堵するのだった。だが、それから数時間後……、ホワイトボードには小隊長によって新たなる翌月のノルマ数字が示される。あっという間のリセットで、小隊全員がガックリするのだった。違反者からのサインが絶対必要なワケ取り締まりで一番大事なのは、違反者からサインをもらうことだ。「お待たせしました、こちらにサインをお願いします」 違反者に切符を渡す直前の緊張の瞬間だ。この時、心の中で願うのは、「頼むからサインしてくれよ……」である。実は、交通違反の取り締まりにおいて、違反者からのサインは、絶対に必要な条件なのである。というのも、このサインがもらえなければ、違反を認めたことにならないからだ。切符を渡す時、違反者の反応は実にさまざまだ。普通にすらすらってサインする人、黙って考えた後に渋々とサインする人、激高しながらなぐり書きで判読困難なサインをする人、明るく温厚な人、陰険な人、なかには涙を浮かべる人もいる。ただし、こちらとしては、サインさえしてくれれば、どんな人でもよいのである。ノルマ達成のための貴重な1件として、切符処理ができるからだ。 そもそも、あの交通切符は、ただただ切りまくって「はい終わり」ではない。後刻、切符整理といって、現場で切ってきた切符に必要事項を記載して、後処理の作業をし、最終的には担当の方の審査を受けなければならないのだ。ここで困るのが、否認切符。サインしてもらえなかった場合は、後々の切符整理の時間が、数倍になってしまう。普通だと数分で完成するのに、否認事件となると、詳細な実況検分地図の作成のほか、これでもかってぐらい諸々の書類を作成しなければならない。同じ実績1件でも、途方もなく面倒くさくなるのだ。これらの手続きは、後日の裁判に備えての決められた作業なので絶対に逃れられない。この否認書類作成、慣れた白バイ隊員でさえ、2~3時間、あるいは半日かかる。「お客さま」に気持ちよくサインしていただく逆にいえば、サインさえもらえれば、どんな態度だってかまわない。渋々であろうが、素直であろうが、違反の1件に変わりないからだ。もちろん、素直にサインしてくれたほうがありがたいが。 交通違反の取り締まりについては、大いに不満をお持ちの方も多いことだろう。「隠れて取り締まっていないで、もっと注意を促せばいいではないか」と。もちろん白バイ隊員だって、切符を切らずに厳重注意だけで済むなら、どんなに気が楽なことか。だが、実際には絶対必達のノルマが課せられている。ノルマをこなせない白バイ乗りは、遅かれ早かれ白バイを降りるしかないのだ。取り締まり時の切符作成は、本当に気苦労が絶えない。スムーズにサインをしてもらえなければ、時間や手間ばかりがかかって、ノルマ達成が遠のく。そのため、白バイ隊員たちの多くは、どんな違反者にも、優しく丁寧な言葉遣いで対応する。「お急ぎのときにすみません。免許証をお見せください」それがプロの白バイ隊員の流儀だからだ。著者:洋吾(ようご)元警視庁警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。3年連続で取り締まり件数警視庁トップの実績もある。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。
また各隊員の個人ノルマの達成状況が悪ければ、月間の小隊ノルマ達成も危うくなってきてしまう。隊員の中には練度の浅い若い隊員もいるし、取り締まりの技量が低い残念な隊員もいるからだ。月末近くになるとこの小隊ノルマ達成の危機感が大きくなり、小隊みんなで焦り出す。この危機感に拍車をかけてくれたのが、種目別違反ノルマの登場だった。 偉い人たちってのは、ただ単に反則切符を切ってくれば満足するというわけではなかったのだ。違反の種類を分けて、それぞれの違反ごとにノルマ達成を求め始めたのだ。これには本当に苦労させられた。こうなると、各隊員のプレッシャーは一層大きくなる。
こうした日々の中で磨かれるのが、交通違反の取り締まり能力である。当然だが、白バイ隊員のそれは、特殊能力と呼べるほどに、他のお巡りさんたちに比べてずば抜けている。
そもそも交通違反は、知らないうちに犯してしまっている場合が多い。標識の見落とし、勘違いなどは、いわゆるうっかりミスだ。速度違反だって、悪質性の高いものは、それほど多いわけではなない。
けれども、そういった一般ドライバーが犯しがちなうっかりミスを、ミスとして注意するのではなく、取り締まって売上げにしてしまうのが、白バイ隊員なのだ。
しかもノルマ達成のため、ミスを犯しやすい場所や違反をあえて狙う能力が磨かれていく。こうして、白バイ乗りたちは、一般ドライバーから警戒され、嫌われる存在になってしまうのだ。
白バイ乗りたちが行う取り締まり方法の多くが待ち伏せだ。
街中において違反をしやすい場所というのは、けっこう決まっている。あなたの身近にも、白バイをよく見かける交差点、高架下……などがあると思うが、そういった場所は、違反の頻発スポットであり「漁場」とも呼ばれ、白バイ乗りたちの仕事場となっている。
ノルマをクリアするためには、いかに良質な漁場を確保しているかということが重要であった。こうした場所は、先輩から後輩へと白バイ乗りに引き継がれていく。
ある時は見えない所に隠れ、ある時は同じ場所を何度も流しながら、獲物を待つ。経験を積むと、車両の動きで「こいつは違反をするぞ!」と直感的にわかるようになる。
例えば、スピード違反。これは停止して待伏せている時、目の前を通過する車両の加速状況から判断できるようになる。また、先輩隊員に、エンジン音で推定速度がわかるなんていう達人もいた。
スピード違反狙いは信号の少ない直線道路ずばりスピード違反狙いのスポットで、誰もがかっ飛ばしたくなるような信号の少ない直線道路だ。こういう場所は、昼は白バイ、夜は覆面パトカーが精力的に活動する。取り締まり方法は、一定区間を行ったり来たり走りながらのターゲットロックオンか、または裏路地や側道にて待ち伏せし、かっ飛んでくるターゲットをロックオンするかになる。多いのは後者で、通称「アパッチ」と言った。流しでの取り締まりでは、走行している車両群のなかから、違和感のあるクルマに注意を払う。他の車両に比べて明らかに急いでいるように見える時は、臨戦態勢だ。いつでもロックオン、緊急走行ができるように身構えるのだ。すべては売上げ実績をあげるため白バイ乗りたちの特殊能力は、違反車を捕捉する能力だけにとどまらない。その後の切符処理能力も格段に磨かれていく。ベテラン白バイ隊員などは、長年の経験で培った観察力で、停止させた違反車両のドライバーの性質を即座に見極める。もう窓越しの一瞬で判別し、違反切符を最速で処理できるように、声掛けをしていくのだ。 全ては売上げ実績向上のため……。白バイ隊員は、日々、一般ドライバーからはまったく歓迎されない特殊能力を存分に発揮し、交通違反取り締まりに励んでいるのだ。上からの試練はいつものこと。そんな上からの命令に絶対服従なのが警察官という生き物なのだ。文句を言いながらも、若い隊員たちは与えられたノルマ達成のため、黙々と切符切りに専念していった。さて、毎月毎月の月間ノルマ、苦しい時は月末最終日の夜間でようやく達成という時も幾度かあった。ホワイトボードの種目別違反の数字がそれぞれゼロになった時がその月のノルマ達成の瞬間であり、小隊全員が笑顔で安堵するのだった。だが、それから数時間後……、ホワイトボードには小隊長によって新たなる翌月のノルマ数字が示される。あっという間のリセットで、小隊全員がガックリするのだった。違反者からのサインが絶対必要なワケ取り締まりで一番大事なのは、違反者からサインをもらうことだ。「お待たせしました、こちらにサインをお願いします」 違反者に切符を渡す直前の緊張の瞬間だ。この時、心の中で願うのは、「頼むからサインしてくれよ……」である。実は、交通違反の取り締まりにおいて、違反者からのサインは、絶対に必要な条件なのである。というのも、このサインがもらえなければ、違反を認めたことにならないからだ。切符を渡す時、違反者の反応は実にさまざまだ。普通にすらすらってサインする人、黙って考えた後に渋々とサインする人、激高しながらなぐり書きで判読困難なサインをする人、明るく温厚な人、陰険な人、なかには涙を浮かべる人もいる。ただし、こちらとしては、サインさえしてくれれば、どんな人でもよいのである。ノルマ達成のための貴重な1件として、切符処理ができるからだ。 そもそも、あの交通切符は、ただただ切りまくって「はい終わり」ではない。後刻、切符整理といって、現場で切ってきた切符に必要事項を記載して、後処理の作業をし、最終的には担当の方の審査を受けなければならないのだ。ここで困るのが、否認切符。サインしてもらえなかった場合は、後々の切符整理の時間が、数倍になってしまう。普通だと数分で完成するのに、否認事件となると、詳細な実況検分地図の作成のほか、これでもかってぐらい諸々の書類を作成しなければならない。同じ実績1件でも、途方もなく面倒くさくなるのだ。これらの手続きは、後日の裁判に備えての決められた作業なので絶対に逃れられない。この否認書類作成、慣れた白バイ隊員でさえ、2~3時間、あるいは半日かかる。「お客さま」に気持ちよくサインしていただく逆にいえば、サインさえもらえれば、どんな態度だってかまわない。渋々であろうが、素直であろうが、違反の1件に変わりないからだ。もちろん、素直にサインしてくれたほうがありがたいが。 交通違反の取り締まりについては、大いに不満をお持ちの方も多いことだろう。「隠れて取り締まっていないで、もっと注意を促せばいいではないか」と。もちろん白バイ隊員だって、切符を切らずに厳重注意だけで済むなら、どんなに気が楽なことか。だが、実際には絶対必達のノルマが課せられている。ノルマをこなせない白バイ乗りは、遅かれ早かれ白バイを降りるしかないのだ。取り締まり時の切符作成は、本当に気苦労が絶えない。スムーズにサインをしてもらえなければ、時間や手間ばかりがかかって、ノルマ達成が遠のく。そのため、白バイ隊員たちの多くは、どんな違反者にも、優しく丁寧な言葉遣いで対応する。「お急ぎのときにすみません。免許証をお見せください」それがプロの白バイ隊員の流儀だからだ。著者:洋吾(ようご)元警視庁警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。3年連続で取り締まり件数警視庁トップの実績もある。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。
ずばりスピード違反狙いのスポットで、誰もがかっ飛ばしたくなるような信号の少ない直線道路だ。こういう場所は、昼は白バイ、夜は覆面パトカーが精力的に活動する。
取り締まり方法は、一定区間を行ったり来たり走りながらのターゲットロックオンか、または裏路地や側道にて待ち伏せし、かっ飛んでくるターゲットをロックオンするかになる。多いのは後者で、通称「アパッチ」と言った。
流しでの取り締まりでは、走行している車両群のなかから、違和感のあるクルマに注意を払う。他の車両に比べて明らかに急いでいるように見える時は、臨戦態勢だ。いつでもロックオン、緊急走行ができるように身構えるのだ。
すべては売上げ実績をあげるため白バイ乗りたちの特殊能力は、違反車を捕捉する能力だけにとどまらない。その後の切符処理能力も格段に磨かれていく。ベテラン白バイ隊員などは、長年の経験で培った観察力で、停止させた違反車両のドライバーの性質を即座に見極める。もう窓越しの一瞬で判別し、違反切符を最速で処理できるように、声掛けをしていくのだ。 全ては売上げ実績向上のため……。白バイ隊員は、日々、一般ドライバーからはまったく歓迎されない特殊能力を存分に発揮し、交通違反取り締まりに励んでいるのだ。上からの試練はいつものこと。そんな上からの命令に絶対服従なのが警察官という生き物なのだ。文句を言いながらも、若い隊員たちは与えられたノルマ達成のため、黙々と切符切りに専念していった。さて、毎月毎月の月間ノルマ、苦しい時は月末最終日の夜間でようやく達成という時も幾度かあった。ホワイトボードの種目別違反の数字がそれぞれゼロになった時がその月のノルマ達成の瞬間であり、小隊全員が笑顔で安堵するのだった。だが、それから数時間後……、ホワイトボードには小隊長によって新たなる翌月のノルマ数字が示される。あっという間のリセットで、小隊全員がガックリするのだった。違反者からのサインが絶対必要なワケ取り締まりで一番大事なのは、違反者からサインをもらうことだ。「お待たせしました、こちらにサインをお願いします」 違反者に切符を渡す直前の緊張の瞬間だ。この時、心の中で願うのは、「頼むからサインしてくれよ……」である。実は、交通違反の取り締まりにおいて、違反者からのサインは、絶対に必要な条件なのである。というのも、このサインがもらえなければ、違反を認めたことにならないからだ。切符を渡す時、違反者の反応は実にさまざまだ。普通にすらすらってサインする人、黙って考えた後に渋々とサインする人、激高しながらなぐり書きで判読困難なサインをする人、明るく温厚な人、陰険な人、なかには涙を浮かべる人もいる。ただし、こちらとしては、サインさえしてくれれば、どんな人でもよいのである。ノルマ達成のための貴重な1件として、切符処理ができるからだ。 そもそも、あの交通切符は、ただただ切りまくって「はい終わり」ではない。後刻、切符整理といって、現場で切ってきた切符に必要事項を記載して、後処理の作業をし、最終的には担当の方の審査を受けなければならないのだ。ここで困るのが、否認切符。サインしてもらえなかった場合は、後々の切符整理の時間が、数倍になってしまう。普通だと数分で完成するのに、否認事件となると、詳細な実況検分地図の作成のほか、これでもかってぐらい諸々の書類を作成しなければならない。同じ実績1件でも、途方もなく面倒くさくなるのだ。これらの手続きは、後日の裁判に備えての決められた作業なので絶対に逃れられない。この否認書類作成、慣れた白バイ隊員でさえ、2~3時間、あるいは半日かかる。「お客さま」に気持ちよくサインしていただく逆にいえば、サインさえもらえれば、どんな態度だってかまわない。渋々であろうが、素直であろうが、違反の1件に変わりないからだ。もちろん、素直にサインしてくれたほうがありがたいが。 交通違反の取り締まりについては、大いに不満をお持ちの方も多いことだろう。「隠れて取り締まっていないで、もっと注意を促せばいいではないか」と。もちろん白バイ隊員だって、切符を切らずに厳重注意だけで済むなら、どんなに気が楽なことか。だが、実際には絶対必達のノルマが課せられている。ノルマをこなせない白バイ乗りは、遅かれ早かれ白バイを降りるしかないのだ。取り締まり時の切符作成は、本当に気苦労が絶えない。スムーズにサインをしてもらえなければ、時間や手間ばかりがかかって、ノルマ達成が遠のく。そのため、白バイ隊員たちの多くは、どんな違反者にも、優しく丁寧な言葉遣いで対応する。「お急ぎのときにすみません。免許証をお見せください」それがプロの白バイ隊員の流儀だからだ。著者:洋吾(ようご)元警視庁警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。3年連続で取り締まり件数警視庁トップの実績もある。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。
白バイ乗りたちの特殊能力は、違反車を捕捉する能力だけにとどまらない。その後の切符処理能力も格段に磨かれていく。ベテラン白バイ隊員などは、長年の経験で培った観察力で、停止させた違反車両のドライバーの性質を即座に見極める。もう窓越しの一瞬で判別し、違反切符を最速で処理できるように、声掛けをしていくのだ。 全ては売上げ実績向上のため……。白バイ隊員は、日々、一般ドライバーからはまったく歓迎されない特殊能力を存分に発揮し、交通違反取り締まりに励んでいるのだ。
上からの試練はいつものこと。そんな上からの命令に絶対服従なのが警察官という生き物なのだ。文句を言いながらも、若い隊員たちは与えられたノルマ達成のため、黙々と切符切りに専念していった。
さて、毎月毎月の月間ノルマ、苦しい時は月末最終日の夜間でようやく達成という時も幾度かあった。ホワイトボードの種目別違反の数字がそれぞれゼロになった時がその月のノルマ達成の瞬間であり、小隊全員が笑顔で安堵するのだった。
だが、それから数時間後……、ホワイトボードには小隊長によって新たなる翌月のノルマ数字が示される。あっという間のリセットで、小隊全員がガックリするのだった。
取り締まりで一番大事なのは、違反者からサインをもらうことだ。
「お待たせしました、こちらにサインをお願いします」
違反者に切符を渡す直前の緊張の瞬間だ。この時、心の中で願うのは、「頼むからサインしてくれよ……」である。実は、交通違反の取り締まりにおいて、違反者からのサインは、絶対に必要な条件なのである。というのも、このサインがもらえなければ、違反を認めたことにならないからだ。
切符を渡す時、違反者の反応は実にさまざまだ。普通にすらすらってサインする人、黙って考えた後に渋々とサインする人、激高しながらなぐり書きで判読困難なサインをする人、明るく温厚な人、陰険な人、なかには涙を浮かべる人もいる。
ただし、こちらとしては、サインさえしてくれれば、どんな人でもよいのである。ノルマ達成のための貴重な1件として、切符処理ができるからだ。
そもそも、あの交通切符は、ただただ切りまくって「はい終わり」ではない。後刻、切符整理といって、現場で切ってきた切符に必要事項を記載して、後処理の作業をし、最終的には担当の方の審査を受けなければならないのだ。ここで困るのが、否認切符。サインしてもらえなかった場合は、後々の切符整理の時間が、数倍になってしまう。普通だと数分で完成するのに、否認事件となると、詳細な実況検分地図の作成のほか、これでもかってぐらい諸々の書類を作成しなければならない。同じ実績1件でも、途方もなく面倒くさくなるのだ。これらの手続きは、後日の裁判に備えての決められた作業なので絶対に逃れられない。この否認書類作成、慣れた白バイ隊員でさえ、2~3時間、あるいは半日かかる。「お客さま」に気持ちよくサインしていただく逆にいえば、サインさえもらえれば、どんな態度だってかまわない。渋々であろうが、素直であろうが、違反の1件に変わりないからだ。もちろん、素直にサインしてくれたほうがありがたいが。 交通違反の取り締まりについては、大いに不満をお持ちの方も多いことだろう。「隠れて取り締まっていないで、もっと注意を促せばいいではないか」と。もちろん白バイ隊員だって、切符を切らずに厳重注意だけで済むなら、どんなに気が楽なことか。だが、実際には絶対必達のノルマが課せられている。ノルマをこなせない白バイ乗りは、遅かれ早かれ白バイを降りるしかないのだ。取り締まり時の切符作成は、本当に気苦労が絶えない。スムーズにサインをしてもらえなければ、時間や手間ばかりがかかって、ノルマ達成が遠のく。そのため、白バイ隊員たちの多くは、どんな違反者にも、優しく丁寧な言葉遣いで対応する。「お急ぎのときにすみません。免許証をお見せください」それがプロの白バイ隊員の流儀だからだ。著者:洋吾(ようご)元警視庁警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。3年連続で取り締まり件数警視庁トップの実績もある。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。
そもそも、あの交通切符は、ただただ切りまくって「はい終わり」ではない。後刻、切符整理といって、現場で切ってきた切符に必要事項を記載して、後処理の作業をし、最終的には担当の方の審査を受けなければならないのだ。
ここで困るのが、否認切符。サインしてもらえなかった場合は、後々の切符整理の時間が、数倍になってしまう。普通だと数分で完成するのに、否認事件となると、詳細な実況検分地図の作成のほか、これでもかってぐらい諸々の書類を作成しなければならない。
同じ実績1件でも、途方もなく面倒くさくなるのだ。これらの手続きは、後日の裁判に備えての決められた作業なので絶対に逃れられない。この否認書類作成、慣れた白バイ隊員でさえ、2~3時間、あるいは半日かかる。
逆にいえば、サインさえもらえれば、どんな態度だってかまわない。渋々であろうが、素直であろうが、違反の1件に変わりないからだ。もちろん、素直にサインしてくれたほうがありがたいが。
交通違反の取り締まりについては、大いに不満をお持ちの方も多いことだろう。「隠れて取り締まっていないで、もっと注意を促せばいいではないか」と。もちろん白バイ隊員だって、切符を切らずに厳重注意だけで済むなら、どんなに気が楽なことか。だが、実際には絶対必達のノルマが課せられている。ノルマをこなせない白バイ乗りは、遅かれ早かれ白バイを降りるしかないのだ。取り締まり時の切符作成は、本当に気苦労が絶えない。スムーズにサインをしてもらえなければ、時間や手間ばかりがかかって、ノルマ達成が遠のく。そのため、白バイ隊員たちの多くは、どんな違反者にも、優しく丁寧な言葉遣いで対応する。「お急ぎのときにすみません。免許証をお見せください」それがプロの白バイ隊員の流儀だからだ。著者:洋吾(ようご)元警視庁警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。3年連続で取り締まり件数警視庁トップの実績もある。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。
交通違反の取り締まりについては、大いに不満をお持ちの方も多いことだろう。
「隠れて取り締まっていないで、もっと注意を促せばいいではないか」と。もちろん白バイ隊員だって、切符を切らずに厳重注意だけで済むなら、どんなに気が楽なことか。だが、実際には絶対必達のノルマが課せられている。ノルマをこなせない白バイ乗りは、遅かれ早かれ白バイを降りるしかないのだ。
取り締まり時の切符作成は、本当に気苦労が絶えない。スムーズにサインをしてもらえなければ、時間や手間ばかりがかかって、ノルマ達成が遠のく。そのため、白バイ隊員たちの多くは、どんな違反者にも、優しく丁寧な言葉遣いで対応する。
「お急ぎのときにすみません。免許証をお見せください」
それがプロの白バイ隊員の流儀だからだ。
著者:洋吾(ようご)元警視庁警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。3年連続で取り締まり件数警視庁トップの実績もある。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。

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