【亀山 早苗】「年末年始、夫の実家に帰省するか問題」で苦しんできた45歳妻が「夫婦仲は今、最悪の状態です」と言うワケ

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毎年恒例のようにこの時期になると、「年末年始、帰省はどうする問題」が勃発する家庭は少なくない。どちらの実家に先に行くのか、何日くらい行くのか、自宅で家族だけで過ごす選択肢はないのか、家族旅行はできないのか……。さまざまな選択肢はあるはずなのに、なぜかいつも「年末年始は夫の実家」と決めつけているのではないのか。
〈「年末年始、夫の実家に帰省するか問題」で悩む45歳妻の告白「私はあなたの実家と結婚したわけじゃない」〉で紹介したように、結婚した年の暮れから義実家への帰省で疲労と心労を味わったマチコさん(45歳・仮名=以下同)。以降の帰省でも、次々と問題が生じたという。
そんな結婚初年だったからこそ、翌年は夫の実家に行くのがためらわれた。しかも彼女は妊娠初期だったので、行きたくないと言い張った。すると夫は「もうレンタカーを予約した。ゆっくり運転していくから大丈夫だよ」と平然としている。
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「そもそもあなたはどうして年末年始を実家で過ごしたいわけ?」
マチコさんはそう尋ねた。すると夫は「そういうものだから、かな」と答えた。私にも実家がある。あなたが実家に戻りたいなら私も戻りたい。同じ気持ちだということがわかるかと聞くと、「でもマチコは実家を出て、オレの家の人になったんでしょ」と言われた。
「そういう認識なのかとがっかりしましたね。私たちは対等の関係であって、私はあなたの家に嫁いだわけでもないんだよと言いましたが、理解してもらえなかった。
それどころか、『去年、あのあと、オレの嫁教育がなってないって親戚一同から責められたんだよ。きみのことを思って言わなかったけど』って。もう笑うしかありませんでした」
その年はつわりがひどいと言って、とうとうマチコさんは出かけなかった。夫はひとりで年末年始を実家で過ごすために出かけて行った。「マチコの分まで親や親戚を楽しませないといけない」とわけのわからないことを言いながら。
「お腹の子と一緒に過ごした年末年始は、本当にのんびりできた時間でした。あれ、もしかしたら私は夫にさえいてほしいと思ってないのかもしれないと、我ながらビックリしました」
次の年末も生まれたばかりの娘が小さいからという理由で行かなかったが、さすがにその翌年は「孫の顔を見せろコール」が義父母からわきおこり、しかたなく出かけた。義父母は年末年始の間、どちらかがずっと娘を抱いていた。
「女の子だけどしかたない。カズキの小さいころにそっくりでかわいいと義父母は夢中になっていました。やたらと顔を近づけたるのが気になって。義父が子どもの口にキスしたときには、やめてくださいと叫んで娘を奪い返しました」
昔の子育てとは違う、衛生面をしっかり考えてほしいとマチコさんはまくしたてた。義父母は口をあんぐり開けていたそうだ。「嫁」がそれほど怒るとは思っていなかったのだろう。
もちろん、あとから「親に盾突くとはなにごとだ」と夫が叱られたのは言うまでもない。夫にそう聞かされても、マチコさんは夫を睨みつけていた。夫だって子育ての勉強はしたはずなのだ。キスくらい、いいだろうと言えるはずがなかった。
その後、息子が生まれたが、数年間は子育てが忙しいという理由でマチコさんは夫の実家に近寄らなかった。
「うちの両親はときどき来てくれましたね。ちゃんとホテルをとって、私たちによけいな手間をかけさせないよう気を遣ってくれた。外食するときは父が奢ってくれましたし。でも夫の実家のほうが近いのに、義父母が来たことはありません。嫁が孫を連れてくるべきだと思っているようで……」
息子が4歳になったころの年末、断り切れずに家族で夫の実家に行ったが、相変わらず座る間もなく働かされている母親を見て、娘と息子が「ママと一緒にいたい」と騒ぎ出した。
すると祖母は「ほら、こっちにおいで、おばあちゃんといよう」と子どもたちを居間につれていった。マチコさんはキッチンでひとり食事の支度に追われた。
「そこへ義妹がやってきました。当時、義妹は何をしているのかよくわからなくて、義母も困り果てていたようで。その義妹が『大変だね』と声をかけてくれたんです。『あんな母親の機嫌をとらなくていいんだよ』って。
彼女によると、義母は夫とそのすぐ下の弟ばかりかわいがり、初めて生まれた女の子である義妹には『役に立たない子』というレッテルを貼っていたそうです。ひどいですよね。だからグレてやったと義妹は言っていました。
そのころ義妹は30歳くらいでしたけど、どうやら水商売をしていたみたい。でもいい子なんです。結婚して初めてちゃんと話したけど、率直で物事の本質を見極めていると感じました」
それ以来、義妹がマチコさんの味方になってくれた。義妹がいなかったら、夫とはとっくに離婚していたかもしれないとマチコさんは薄く笑った。誰かひとりでも味方がいれば、嫌なことも耐えられるものなのかもしれない。
「ここ3年、コロナのこともあって夫の実家にはまったく行っていません。もともと夏休みには『うちを別荘代わりに使わないで』という義母の言い分もあって、出かけていないんです。
自然が豊かな場所ではあるので夏休みこそ、子どもたちを連れていってもいいなと思うけど、来るなと言われればしかたない。なのに年末年始には来いというのが不思議なんですけどね」
今年の年末年始を、夫は「久々に実家で」と思っていたようで、10月に入った時点でひとりではしゃいでさえいた。ところが娘は「受験だから行かない」といち早く意志を表明、息子も「行かない」と言った。すると夫は「勉強なら、おとうさんの実家ですればいい」と娘を説得にかかった。
「受験生なんだから、娘の気持ちを大事にしてやってよと夫には言いました。すると夫は、じゃあ娘を残して3人で行こうと。何を考えているんだと怒鳴ってしまいましたよ。じゃあ息子とふたりでと夫がいったら、息子が絶対に嫌だと。
おまえたちはおとうさんの子なんだ、言うことを聞けと暴言まで飛び出したので、いいかげんにしてと私が叫び、夫婦仲は今、最悪の状態です」
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義妹によれば、親戚や近所の人の手前、「よくできたお嫁さんね」と言われるのが、義母の何よりの生きがいらしい。くだらない見栄を張っているだけだから、来なくていいと義妹は言ってくれている。
「この義妹と夫とが関係がよくないんですよ。弟もずいぶん前に実家を出て、それきり寄りつかないというから、義母としては長男である夫だけが頼りなのかもしれない。
それでも行けば嫌な思いをするのに、結婚して17年の間におそらく7回くらいは年末年始を義実家で過ごしているんですよ。子どもたちも行きたくないと言っている以上、もういいんじゃないかと私は思っています」
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夫は最近、帰宅が遅い。週末もゴロゴロしていたり、あるいはひとりで行き先も告げずに出かけたりして、家族とコミュニケーションをとろうとしない。実家に帰省するしない以上に、実際は家族としての危機にあるとマチコさんは実感している。
「夫は子どもたちが意志をもつことを嫌がっているような気がします。いつまでも親の言うことを聞いていてもらいたいのかも。それは自分の親と同じ道をたどっているだけなんですよね。夫はいまだに親の支配下にあるんでしょうね。認めようとはしませんが」
最近は日常生活もなんとなくギクシャクしている。子どもたちが何もわかっていなかったときはマチコさんだけが我慢していればよかったのだろうが、子どもたちが成長した今はそういうわけにはいかない。
「そもそもどうして夫が、私や子どもたちに自分の実家へ行くことをあれほど執拗に要求するのかがわからない。義妹情報では、ふだんから夫は私たちに内緒でよく義父母と連絡をとっているみたいなんです。それもなんだか不可解でならない。夫とその実家への不信感から、今は夫本人への信頼が揺らいでいる」
帰省に端を発した夫婦間の亀裂は、子どもが意志をもったことでより大きく広がっていきそうだ。
「愛情」という衣をまとったモラハラを我慢すればするほど、「自分の人生」を謳歌することから遠ざかる。カホリさんも内心そのことに気づいているのかもしれない。

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