【佐藤 信顕】「友人の遺体はドロドロに溶けて、畳も真っ黒に腐っていました」…葬儀社三代目が明かす、誰にでも起こり得る「孤独死」の真相

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すべての人に平等に訪れる死――。中には自宅でひっそりと人知れず命を落とす人もいる。いわゆる「孤独死」だ。葬儀社代表でYouTuberの佐藤信顕さんはそうしたご遺体とも向き合い、弔う。
東京都台東区に住む大窪和義さん(仮名・55歳)の飲み友達の男性、Aさんは3年前の12月、自宅アパートで孤独死した状態で発見された。享年74だった。
photo by istock(写真はイメージ)
「行きつけの飲み屋に行っても、Aさんはいなかった。電話をかけても出るようなやつじゃなかった。どっか出稼ぎにでも行っているんじゃないか、年の瀬になればふらっと顔をだすんじゃないか、ってみんなで話していたんです」(大窪さん、以下「」も)
とはいえ、姿が見えなくなって2ヵ月が過ぎた。どこか悪い予感がした大窪さんは、Aさんに何度か電話をしたのだが、いつも呼び出し音がなるだけ。
自宅に様子を見に行きたくても、具体的な場所は知らなかった。
共通の飲み友達に相談し、あれこれ手を尽くすも、みんな同じ反応だったという。
「携帯を忘れて出稼ぎに行っているんだろう、とか、深夜働いているんだよ、とか、みんなで話していました。元気だったらそれでいい、そう思っていたんですけどね」
Aさんの姿が見えなくなって3ヵ月ほどたった12月。大窪さんのスマホに警察から電話がかかってきた。
「自宅で死亡していたのが発見されたんです。実は姿が見えなくなる数日前、Aさんは酔って転んで頭を打っていたようです。Aさんの携帯の受信履歴に私の番号があったため、警察が事情を聞きに電話をしてきて、死亡したことを教えられました」
6畳間に敷かれた布団の上で、変わり果てた姿のAさんは発見された。
photo by istock(写真はイメージ)
室内には強烈な死臭が漂い、遺体は形がわからないほど、ドロドロに腐敗していた。染み出した体液で布団はおろか、畳も腐り、真っ黒に色を変えていたという。
頭を強く打ったことが原因かと推測されたが、詳細な死因は分からなかった。
「室内はキチンと整頓されていたため、事件性はないと警察は判断しました。飲むと手が付けられないほど暴れることもあるのに、普段の生活は清貧できっちりしていていたそうです」
第一発見者はAさんの住むアパートの大家だった。
「寒くなってきたこともあり、3ヵ月たってようやく部屋の外に『におい』が漏れ始めたらしいんです。それで不信に思った大家さんが部屋を開けたら……」
Aさんのようなケースは決して珍しくない。
内閣府の令和5(2023)年高齢社会白書によると、「東京都23区内における65歳以上の一人暮らし者の死亡」のうち、令和3(2021)年は4010人だった。いまから10年前の平成23(2011)年の2618人より大幅に増えている。
結果として、葬儀社の職員たちは孤独死したご遺体とも日々向き合うことになる。
東京都内で90年、3代にわたり葬儀社を営む、佐藤葬祭の代表でYouTuberの佐藤信顕氏の著書『遺体と火葬のほんとうの話』(二見書房刊)から以下、その一部を紹介しよう。
〈よくご質問をいただくテーマのひとつに「孤独死」があります。特にひとり暮らしの方などは非常に心配なさっているようです。一般の方よりは孤独死というものを間近で目にする私たちから言わせていただくと、実はそれほど恐れることではありません。〉突然かかってくる「警察からの電話」〈人は必ず亡くなります。そのときにひとりなのか、近くに人がいるのか。その程度の違いでしかありません。たいていの方はひとり暮らしであっても、病院で亡くなることがほとんどで、突然死を迎えるケースというのはさほど多くはないのです。レアなケースで「わからないことが多い」からこそ恐れを感じてしまうというわけです。孤独死について仮のシチュエーションで考えてみましょう。たとえば、ひとり暮らしのお兄さんが亡くなり、妹であるあなたに電話がかかってきたとします。電話は警察から。photo by istock(写真はイメージ)「お兄さんがご自宅で亡くなっていたようで、ご遺体をこちらで収容しております。こちらに来てくださいませんか」この時点でパニックになるかもしれません。「え!? 本当に? 本当に死んじゃったの?」と混乱しながらもまずは警察へ飛んでいくことになります。そして警察でひととおり説明を受け、腐敗してしまったご遺体がご本人で間違いないかどうかの確認をします。それが終わると「葬儀屋さんにお願いしてください」という運びになり、私たちのようなところへ電話がかかってきます。 さて、そこからが私たちの仕事になります。〉葬儀社のスタッフたちは腐敗したご遺体をどのように弔うのか。後半記事『臭気が出ないよう棺をテープでぐるぐると巻き…葬儀社三代目が語る「腐敗した遺体」との「向き合い方」』では、佐藤さんがその方法について解説する。
〈よくご質問をいただくテーマのひとつに「孤独死」があります。特にひとり暮らしの方などは非常に心配なさっているようです。
一般の方よりは孤独死というものを間近で目にする私たちから言わせていただくと、実はそれほど恐れることではありません。〉
〈人は必ず亡くなります。そのときにひとりなのか、近くに人がいるのか。その程度の違いでしかありません。たいていの方はひとり暮らしであっても、病院で亡くなることがほとんどで、突然死を迎えるケースというのはさほど多くはないのです。
レアなケースで「わからないことが多い」からこそ恐れを感じてしまうというわけです。
孤独死について仮のシチュエーションで考えてみましょう。
たとえば、ひとり暮らしのお兄さんが亡くなり、妹であるあなたに電話がかかってきたとします。
電話は警察から。
photo by istock(写真はイメージ)
「お兄さんがご自宅で亡くなっていたようで、ご遺体をこちらで収容しております。こちらに来てくださいませんか」
この時点でパニックになるかもしれません。
「え!? 本当に? 本当に死んじゃったの?」と混乱しながらもまずは警察へ飛んでいくことになります。そして警察でひととおり説明を受け、腐敗してしまったご遺体がご本人で間違いないかどうかの確認をします。
それが終わると「葬儀屋さんにお願いしてください」という運びになり、私たちのようなところへ電話がかかってきます。 さて、そこからが私たちの仕事になります。〉
葬儀社のスタッフたちは腐敗したご遺体をどのように弔うのか。
後半記事『臭気が出ないよう棺をテープでぐるぐると巻き…葬儀社三代目が語る「腐敗した遺体」との「向き合い方」』では、佐藤さんがその方法について解説する。

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