「A子さんに頼まれた」“自殺ほのめかしノートに花マル” 奈良女児いじめ・担任教師が明かした「You can do it!」と記したワケ《調査報告書入手》

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〈わたしは死ねばいいのに〉
【画像】「わたしは死ねばいいのに」と書かれたノートにつけられた花丸と「You can do it!!」の言葉〈いっつもつらい、死ねばいいな、自分なんて、いなければよかった〉 奈良市の小学校の女子児童がノートに書いた自殺をほのめかす文章。担任教師はこの文章に花マルをつけ、「You can do it!!(あなたならできる)」と書き込み返却をしていた――。今月6日、会見を開いた奈良市教育委員会(NHK NEWS WEBより) 今月6日、奈良市教育委員会は、市立小学校に通う女子児童が同級生から複数のいじめを受けていたことを公表し、「十分な調査を早期に行うべきだった」と不備を認めた。

小誌は、教育委員会等がまとめた「いじめ重大事態等に関する調査報告書」を独自に入手。そこには、いじめ被害を受けた女子児童が、花マルをつけた担任教師とどのような関係にあり、なぜ関係が悪化していったのか等が詳細に記されていた。 調査報告書は70ページに及び、女子児童が受けた様々ないじめの実態や経緯も明らかにしている。蹴る、足を踏む、ぶつかる、鉛筆で背中を突く、手を捻り突き飛ばす……報告書では計11件のいじめを認知し、その上で〈学校及び教育委員会事務局の対応の不十分さにも原因があった〉ことも指摘している。他の児童をかばったA子さんを「あんたらには関係ない!」と叱責 もっとも注目すべきは自殺をほのめかす文章に花マルをつけた担任教師(以下、X先生)と、女子児童(以下、A子さん)との間で何があったのかという点だ。以下、報告書に書かれている内容を、文意を損なわない程度に加筆し、紹介していく。 X先生がA子さんの担任となったのは、2022年4月のこと。二人の間に最初に“亀裂”が入ったのは約2カ月後、6月の校外学習での帰りのバスの中での出来事だった。 帰りのバスではおやつを食べてはいけないというルールを事前に伝えていたにも関わらず、ある児童がX先生に繰り返し「おやつ食べていい?」と尋ねたのだ。X先生はこの児童に対し、「あかんに決まってるやろ!」と厳しく叱責。このときA子さんは、叱責された児童をかばう発言した。それを聞いたX先生は、「あんたらには関係ない!」とこれまた厳しく叱りつけた。この一件以降、A子さんはX先生の指導に疑問を抱くようになったという。 件の“花マル事件”が起きたのは2022年6月29日だ。既に前年からいじめを受けていたA子さんが、ノートに〈わたしは死ねばいいのに〉、〈死ねばいいな、自分なんて〉等と自殺をほのめかすような文章を記載。X先生はこうした記述があったことを管理職や保護者に連絡することなく、花マルをつけ〈You can do it!〉と書き込んだのだ。 X先生は、なぜこうした書き込みをしたのか。聴取ではこう述べている。「時間をとってA子さんとじっくり話をしようと思いながらノートを返却したが、その後、A子さんに花マルをつけてほしいと頼まれた。花マルをつけにくい内容であることから一度は断ったが、A子さんに頼まれたので、心配していることを伝えて花マルをつけ、励ましの意味を込めて〈You can do it!〉と記載した」 しかし、A子さんは一貫してこのようなやり取りを否定。報告書にも〈児童Aが自ら進んでそのような申出をするとも考え難い〉と記されている。 X先生は聴取に対してこうも述べている。「A子さんがママに伝えないでなどと言っていた」 だが、報告書ではこれについても〈不自然さが残る〉として、こう記されている。〈児童Aが母のことを教員に伝えるときは「ママ」ではなく「お母さん」と表現していた〉「A子ちゃんが、『Cがウザいから無視しよう』と言ってきました」 その後も、A子さんとA子さんの両親がX先生に不信感を持つ出来事が頻出していく。 X先生の証言によれば、2022年7月4日、X先生のもとにBさんという児童が相談にやってきたという。「A子ちゃんが、『Cがウザいから(一緒に)無視しよう』と言ってきました」 これを聞いたX先生は、すぐさまA子さんを図書室に呼び出し、こう尋ねた。「クラスの友達関係のことで、何か思い当たることはない?」 しかし、A子さんには思い当たる節がなかった。なぜならこれも、後のBさんへの聴取によって否定されているからだ。そのため、A子さんは頭を悩ませながらこう答えた。「Cちゃんにノートを覗き見されて、『見んといてよ』と強く言ってしまったことかな……」 それを聞いたX先生はこう言った。「そのことと違う。もう一回考えておいで」 X先生は、具体的な児童の名前、行為の日時や態様等を説明することなく抽象的な問いかけを続けた。不安になったA子さんは二日後の7月6日の夜、母親にこう気持ちを吐露している。「X先生に呼び出されたんだけど、思い当たることがなくて、ずっと考えていて苦しい」実際はBさんのアンケートに、A子さんに関する記載はなかった 翌日の7月7日午前、A子さんの父親がX先生に電話をすると、こんなことを言われた。「6月28日に実施した『こころといじめのアンケート調査』で、Bが『A子ちゃんからCさんを無視しようと誘われた』と書いているんですよ」 だが、これも後に否定されている。Bさんのアンケートの回答には、A子さんに関する記載がなかったのだ。なお、A子さんの両親は、この日になって初めて我が子がノートに自殺をほのめかすようなことを書いている旨も知らされた。 同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。A子「(無視しようと)言ったならごめん」B「聞き間違っていたらごめん」 X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。 その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。 学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。 同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。「7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 A子さんの帰宅後、X先生はA子さんの両親に席を外させ、玄関の外で「お父さんに話すと約束していたけど、今からお母さんに話していい?」と聞き、両親にトラブルの内容を報告。その席でX先生は、A子さんがBさんとCさんに対し謝ったことを受け、「A子さんが認めはりました」と発言した。 一方、A子さんの母親は、X先生に「もう一回考えて」と言われたことにより、A子さんが悩み苦しんでいたことを伝えた。だが、X先生はこう反論した。「Cさんの件は7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 だが、A子さんがそこで「図書室に呼び出されたのは、7月4日」だということを説明すると、X先生は再び反論。「図書室に呼び出したのは、死にたいとノートに書いていた件で話を聞くためだった」 こうしたX先生のちぐはぐな説明を聞き、A子さんとA子さんの両親はさらに不信感を募らせていく。2022年7月19日には、クラスで配られた問題集の解答がA子さんの手元に渡っていなかったこと等が判明し、A子さんの母親は不信感をさらに増大させていったのである。 以上が、A子さんと花マルをつけたX先生の間に起きた事案の概要だ。 報告書には〈X教諭が児童Aの保護者に対し、いじめのアンケート調査の回答の記載に関して真実と異なる説明をしたことや、指導を行った日付についての説明内容が変わることが多々あったことについては、児童A及びその保護者から、X教諭だけなく学校に対する不信感を招来させることとなった〉とも記されている。 最後に、A子さんの代理人である三橋和史弁護士が言う。「被害児童(A子さん)は、適応障害、心的外傷後ストレス障害を順次発症し、現在も学校生活において配慮が必要な状態が続いています」 奈良市は、近く調査結果を公表することにしているという。(「週刊文春」編集部/週刊文春)
〈いっつもつらい、死ねばいいな、自分なんて、いなければよかった〉
奈良市の小学校の女子児童がノートに書いた自殺をほのめかす文章。担任教師はこの文章に花マルをつけ、「You can do it!!(あなたならできる)」と書き込み返却をしていた――。
今月6日、会見を開いた奈良市教育委員会(NHK NEWS WEBより)
今月6日、奈良市教育委員会は、市立小学校に通う女子児童が同級生から複数のいじめを受けていたことを公表し、「十分な調査を早期に行うべきだった」と不備を認めた。

小誌は、教育委員会等がまとめた「いじめ重大事態等に関する調査報告書」を独自に入手。そこには、いじめ被害を受けた女子児童が、花マルをつけた担任教師とどのような関係にあり、なぜ関係が悪化していったのか等が詳細に記されていた。 調査報告書は70ページに及び、女子児童が受けた様々ないじめの実態や経緯も明らかにしている。蹴る、足を踏む、ぶつかる、鉛筆で背中を突く、手を捻り突き飛ばす……報告書では計11件のいじめを認知し、その上で〈学校及び教育委員会事務局の対応の不十分さにも原因があった〉ことも指摘している。他の児童をかばったA子さんを「あんたらには関係ない!」と叱責 もっとも注目すべきは自殺をほのめかす文章に花マルをつけた担任教師(以下、X先生)と、女子児童(以下、A子さん)との間で何があったのかという点だ。以下、報告書に書かれている内容を、文意を損なわない程度に加筆し、紹介していく。 X先生がA子さんの担任となったのは、2022年4月のこと。二人の間に最初に“亀裂”が入ったのは約2カ月後、6月の校外学習での帰りのバスの中での出来事だった。 帰りのバスではおやつを食べてはいけないというルールを事前に伝えていたにも関わらず、ある児童がX先生に繰り返し「おやつ食べていい?」と尋ねたのだ。X先生はこの児童に対し、「あかんに決まってるやろ!」と厳しく叱責。このときA子さんは、叱責された児童をかばう発言した。それを聞いたX先生は、「あんたらには関係ない!」とこれまた厳しく叱りつけた。この一件以降、A子さんはX先生の指導に疑問を抱くようになったという。 件の“花マル事件”が起きたのは2022年6月29日だ。既に前年からいじめを受けていたA子さんが、ノートに〈わたしは死ねばいいのに〉、〈死ねばいいな、自分なんて〉等と自殺をほのめかすような文章を記載。X先生はこうした記述があったことを管理職や保護者に連絡することなく、花マルをつけ〈You can do it!〉と書き込んだのだ。 X先生は、なぜこうした書き込みをしたのか。聴取ではこう述べている。「時間をとってA子さんとじっくり話をしようと思いながらノートを返却したが、その後、A子さんに花マルをつけてほしいと頼まれた。花マルをつけにくい内容であることから一度は断ったが、A子さんに頼まれたので、心配していることを伝えて花マルをつけ、励ましの意味を込めて〈You can do it!〉と記載した」 しかし、A子さんは一貫してこのようなやり取りを否定。報告書にも〈児童Aが自ら進んでそのような申出をするとも考え難い〉と記されている。 X先生は聴取に対してこうも述べている。「A子さんがママに伝えないでなどと言っていた」 だが、報告書ではこれについても〈不自然さが残る〉として、こう記されている。〈児童Aが母のことを教員に伝えるときは「ママ」ではなく「お母さん」と表現していた〉「A子ちゃんが、『Cがウザいから無視しよう』と言ってきました」 その後も、A子さんとA子さんの両親がX先生に不信感を持つ出来事が頻出していく。 X先生の証言によれば、2022年7月4日、X先生のもとにBさんという児童が相談にやってきたという。「A子ちゃんが、『Cがウザいから(一緒に)無視しよう』と言ってきました」 これを聞いたX先生は、すぐさまA子さんを図書室に呼び出し、こう尋ねた。「クラスの友達関係のことで、何か思い当たることはない?」 しかし、A子さんには思い当たる節がなかった。なぜならこれも、後のBさんへの聴取によって否定されているからだ。そのため、A子さんは頭を悩ませながらこう答えた。「Cちゃんにノートを覗き見されて、『見んといてよ』と強く言ってしまったことかな……」 それを聞いたX先生はこう言った。「そのことと違う。もう一回考えておいで」 X先生は、具体的な児童の名前、行為の日時や態様等を説明することなく抽象的な問いかけを続けた。不安になったA子さんは二日後の7月6日の夜、母親にこう気持ちを吐露している。「X先生に呼び出されたんだけど、思い当たることがなくて、ずっと考えていて苦しい」実際はBさんのアンケートに、A子さんに関する記載はなかった 翌日の7月7日午前、A子さんの父親がX先生に電話をすると、こんなことを言われた。「6月28日に実施した『こころといじめのアンケート調査』で、Bが『A子ちゃんからCさんを無視しようと誘われた』と書いているんですよ」 だが、これも後に否定されている。Bさんのアンケートの回答には、A子さんに関する記載がなかったのだ。なお、A子さんの両親は、この日になって初めて我が子がノートに自殺をほのめかすようなことを書いている旨も知らされた。 同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。A子「(無視しようと)言ったならごめん」B「聞き間違っていたらごめん」 X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。 その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。 学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。 同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。「7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 A子さんの帰宅後、X先生はA子さんの両親に席を外させ、玄関の外で「お父さんに話すと約束していたけど、今からお母さんに話していい?」と聞き、両親にトラブルの内容を報告。その席でX先生は、A子さんがBさんとCさんに対し謝ったことを受け、「A子さんが認めはりました」と発言した。 一方、A子さんの母親は、X先生に「もう一回考えて」と言われたことにより、A子さんが悩み苦しんでいたことを伝えた。だが、X先生はこう反論した。「Cさんの件は7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 だが、A子さんがそこで「図書室に呼び出されたのは、7月4日」だということを説明すると、X先生は再び反論。「図書室に呼び出したのは、死にたいとノートに書いていた件で話を聞くためだった」 こうしたX先生のちぐはぐな説明を聞き、A子さんとA子さんの両親はさらに不信感を募らせていく。2022年7月19日には、クラスで配られた問題集の解答がA子さんの手元に渡っていなかったこと等が判明し、A子さんの母親は不信感をさらに増大させていったのである。 以上が、A子さんと花マルをつけたX先生の間に起きた事案の概要だ。 報告書には〈X教諭が児童Aの保護者に対し、いじめのアンケート調査の回答の記載に関して真実と異なる説明をしたことや、指導を行った日付についての説明内容が変わることが多々あったことについては、児童A及びその保護者から、X教諭だけなく学校に対する不信感を招来させることとなった〉とも記されている。 最後に、A子さんの代理人である三橋和史弁護士が言う。「被害児童(A子さん)は、適応障害、心的外傷後ストレス障害を順次発症し、現在も学校生活において配慮が必要な状態が続いています」 奈良市は、近く調査結果を公表することにしているという。(「週刊文春」編集部/週刊文春)
今月6日、奈良市教育委員会は、市立小学校に通う女子児童が同級生から複数のいじめを受けていたことを公表し、「十分な調査を早期に行うべきだった」と不備を認めた。
小誌は、教育委員会等がまとめた「いじめ重大事態等に関する調査報告書」を独自に入手。そこには、いじめ被害を受けた女子児童が、花マルをつけた担任教師とどのような関係にあり、なぜ関係が悪化していったのか等が詳細に記されていた。
調査報告書は70ページに及び、女子児童が受けた様々ないじめの実態や経緯も明らかにしている。蹴る、足を踏む、ぶつかる、鉛筆で背中を突く、手を捻り突き飛ばす……報告書では計11件のいじめを認知し、その上で〈学校及び教育委員会事務局の対応の不十分さにも原因があった〉ことも指摘している。
もっとも注目すべきは自殺をほのめかす文章に花マルをつけた担任教師(以下、X先生)と、女子児童(以下、A子さん)との間で何があったのかという点だ。以下、報告書に書かれている内容を、文意を損なわない程度に加筆し、紹介していく。
X先生がA子さんの担任となったのは、2022年4月のこと。二人の間に最初に“亀裂”が入ったのは約2カ月後、6月の校外学習での帰りのバスの中での出来事だった。 帰りのバスではおやつを食べてはいけないというルールを事前に伝えていたにも関わらず、ある児童がX先生に繰り返し「おやつ食べていい?」と尋ねたのだ。X先生はこの児童に対し、「あかんに決まってるやろ!」と厳しく叱責。このときA子さんは、叱責された児童をかばう発言した。それを聞いたX先生は、「あんたらには関係ない!」とこれまた厳しく叱りつけた。この一件以降、A子さんはX先生の指導に疑問を抱くようになったという。 件の“花マル事件”が起きたのは2022年6月29日だ。既に前年からいじめを受けていたA子さんが、ノートに〈わたしは死ねばいいのに〉、〈死ねばいいな、自分なんて〉等と自殺をほのめかすような文章を記載。X先生はこうした記述があったことを管理職や保護者に連絡することなく、花マルをつけ〈You can do it!〉と書き込んだのだ。 X先生は、なぜこうした書き込みをしたのか。聴取ではこう述べている。「時間をとってA子さんとじっくり話をしようと思いながらノートを返却したが、その後、A子さんに花マルをつけてほしいと頼まれた。花マルをつけにくい内容であることから一度は断ったが、A子さんに頼まれたので、心配していることを伝えて花マルをつけ、励ましの意味を込めて〈You can do it!〉と記載した」 しかし、A子さんは一貫してこのようなやり取りを否定。報告書にも〈児童Aが自ら進んでそのような申出をするとも考え難い〉と記されている。 X先生は聴取に対してこうも述べている。「A子さんがママに伝えないでなどと言っていた」 だが、報告書ではこれについても〈不自然さが残る〉として、こう記されている。〈児童Aが母のことを教員に伝えるときは「ママ」ではなく「お母さん」と表現していた〉「A子ちゃんが、『Cがウザいから無視しよう』と言ってきました」 その後も、A子さんとA子さんの両親がX先生に不信感を持つ出来事が頻出していく。 X先生の証言によれば、2022年7月4日、X先生のもとにBさんという児童が相談にやってきたという。「A子ちゃんが、『Cがウザいから(一緒に)無視しよう』と言ってきました」 これを聞いたX先生は、すぐさまA子さんを図書室に呼び出し、こう尋ねた。「クラスの友達関係のことで、何か思い当たることはない?」 しかし、A子さんには思い当たる節がなかった。なぜならこれも、後のBさんへの聴取によって否定されているからだ。そのため、A子さんは頭を悩ませながらこう答えた。「Cちゃんにノートを覗き見されて、『見んといてよ』と強く言ってしまったことかな……」 それを聞いたX先生はこう言った。「そのことと違う。もう一回考えておいで」 X先生は、具体的な児童の名前、行為の日時や態様等を説明することなく抽象的な問いかけを続けた。不安になったA子さんは二日後の7月6日の夜、母親にこう気持ちを吐露している。「X先生に呼び出されたんだけど、思い当たることがなくて、ずっと考えていて苦しい」実際はBさんのアンケートに、A子さんに関する記載はなかった 翌日の7月7日午前、A子さんの父親がX先生に電話をすると、こんなことを言われた。「6月28日に実施した『こころといじめのアンケート調査』で、Bが『A子ちゃんからCさんを無視しようと誘われた』と書いているんですよ」 だが、これも後に否定されている。Bさんのアンケートの回答には、A子さんに関する記載がなかったのだ。なお、A子さんの両親は、この日になって初めて我が子がノートに自殺をほのめかすようなことを書いている旨も知らされた。 同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。A子「(無視しようと)言ったならごめん」B「聞き間違っていたらごめん」 X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。 その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。 学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。 同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。「7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 A子さんの帰宅後、X先生はA子さんの両親に席を外させ、玄関の外で「お父さんに話すと約束していたけど、今からお母さんに話していい?」と聞き、両親にトラブルの内容を報告。その席でX先生は、A子さんがBさんとCさんに対し謝ったことを受け、「A子さんが認めはりました」と発言した。 一方、A子さんの母親は、X先生に「もう一回考えて」と言われたことにより、A子さんが悩み苦しんでいたことを伝えた。だが、X先生はこう反論した。「Cさんの件は7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 だが、A子さんがそこで「図書室に呼び出されたのは、7月4日」だということを説明すると、X先生は再び反論。「図書室に呼び出したのは、死にたいとノートに書いていた件で話を聞くためだった」 こうしたX先生のちぐはぐな説明を聞き、A子さんとA子さんの両親はさらに不信感を募らせていく。2022年7月19日には、クラスで配られた問題集の解答がA子さんの手元に渡っていなかったこと等が判明し、A子さんの母親は不信感をさらに増大させていったのである。 以上が、A子さんと花マルをつけたX先生の間に起きた事案の概要だ。 報告書には〈X教諭が児童Aの保護者に対し、いじめのアンケート調査の回答の記載に関して真実と異なる説明をしたことや、指導を行った日付についての説明内容が変わることが多々あったことについては、児童A及びその保護者から、X教諭だけなく学校に対する不信感を招来させることとなった〉とも記されている。 最後に、A子さんの代理人である三橋和史弁護士が言う。「被害児童(A子さん)は、適応障害、心的外傷後ストレス障害を順次発症し、現在も学校生活において配慮が必要な状態が続いています」 奈良市は、近く調査結果を公表することにしているという。(「週刊文春」編集部/週刊文春)
X先生がA子さんの担任となったのは、2022年4月のこと。二人の間に最初に“亀裂”が入ったのは約2カ月後、6月の校外学習での帰りのバスの中での出来事だった。
帰りのバスではおやつを食べてはいけないというルールを事前に伝えていたにも関わらず、ある児童がX先生に繰り返し「おやつ食べていい?」と尋ねたのだ。X先生はこの児童に対し、「あかんに決まってるやろ!」と厳しく叱責。このときA子さんは、叱責された児童をかばう発言した。それを聞いたX先生は、「あんたらには関係ない!」とこれまた厳しく叱りつけた。この一件以降、A子さんはX先生の指導に疑問を抱くようになったという。
件の“花マル事件”が起きたのは2022年6月29日だ。既に前年からいじめを受けていたA子さんが、ノートに〈わたしは死ねばいいのに〉、〈死ねばいいな、自分なんて〉等と自殺をほのめかすような文章を記載。X先生はこうした記述があったことを管理職や保護者に連絡することなく、花マルをつけ〈You can do it!〉と書き込んだのだ。
X先生は、なぜこうした書き込みをしたのか。聴取ではこう述べている。
「時間をとってA子さんとじっくり話をしようと思いながらノートを返却したが、その後、A子さんに花マルをつけてほしいと頼まれた。花マルをつけにくい内容であることから一度は断ったが、A子さんに頼まれたので、心配していることを伝えて花マルをつけ、励ましの意味を込めて〈You can do it!〉と記載した」
しかし、A子さんは一貫してこのようなやり取りを否定。報告書にも〈児童Aが自ら進んでそのような申出をするとも考え難い〉と記されている。
X先生は聴取に対してこうも述べている。「A子さんがママに伝えないでなどと言っていた」 だが、報告書ではこれについても〈不自然さが残る〉として、こう記されている。〈児童Aが母のことを教員に伝えるときは「ママ」ではなく「お母さん」と表現していた〉「A子ちゃんが、『Cがウザいから無視しよう』と言ってきました」 その後も、A子さんとA子さんの両親がX先生に不信感を持つ出来事が頻出していく。 X先生の証言によれば、2022年7月4日、X先生のもとにBさんという児童が相談にやってきたという。「A子ちゃんが、『Cがウザいから(一緒に)無視しよう』と言ってきました」 これを聞いたX先生は、すぐさまA子さんを図書室に呼び出し、こう尋ねた。「クラスの友達関係のことで、何か思い当たることはない?」 しかし、A子さんには思い当たる節がなかった。なぜならこれも、後のBさんへの聴取によって否定されているからだ。そのため、A子さんは頭を悩ませながらこう答えた。「Cちゃんにノートを覗き見されて、『見んといてよ』と強く言ってしまったことかな……」 それを聞いたX先生はこう言った。「そのことと違う。もう一回考えておいで」 X先生は、具体的な児童の名前、行為の日時や態様等を説明することなく抽象的な問いかけを続けた。不安になったA子さんは二日後の7月6日の夜、母親にこう気持ちを吐露している。「X先生に呼び出されたんだけど、思い当たることがなくて、ずっと考えていて苦しい」実際はBさんのアンケートに、A子さんに関する記載はなかった 翌日の7月7日午前、A子さんの父親がX先生に電話をすると、こんなことを言われた。「6月28日に実施した『こころといじめのアンケート調査』で、Bが『A子ちゃんからCさんを無視しようと誘われた』と書いているんですよ」 だが、これも後に否定されている。Bさんのアンケートの回答には、A子さんに関する記載がなかったのだ。なお、A子さんの両親は、この日になって初めて我が子がノートに自殺をほのめかすようなことを書いている旨も知らされた。 同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。A子「(無視しようと)言ったならごめん」B「聞き間違っていたらごめん」 X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。 その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。 学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。 同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。「7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 A子さんの帰宅後、X先生はA子さんの両親に席を外させ、玄関の外で「お父さんに話すと約束していたけど、今からお母さんに話していい?」と聞き、両親にトラブルの内容を報告。その席でX先生は、A子さんがBさんとCさんに対し謝ったことを受け、「A子さんが認めはりました」と発言した。 一方、A子さんの母親は、X先生に「もう一回考えて」と言われたことにより、A子さんが悩み苦しんでいたことを伝えた。だが、X先生はこう反論した。「Cさんの件は7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 だが、A子さんがそこで「図書室に呼び出されたのは、7月4日」だということを説明すると、X先生は再び反論。「図書室に呼び出したのは、死にたいとノートに書いていた件で話を聞くためだった」 こうしたX先生のちぐはぐな説明を聞き、A子さんとA子さんの両親はさらに不信感を募らせていく。2022年7月19日には、クラスで配られた問題集の解答がA子さんの手元に渡っていなかったこと等が判明し、A子さんの母親は不信感をさらに増大させていったのである。 以上が、A子さんと花マルをつけたX先生の間に起きた事案の概要だ。 報告書には〈X教諭が児童Aの保護者に対し、いじめのアンケート調査の回答の記載に関して真実と異なる説明をしたことや、指導を行った日付についての説明内容が変わることが多々あったことについては、児童A及びその保護者から、X教諭だけなく学校に対する不信感を招来させることとなった〉とも記されている。 最後に、A子さんの代理人である三橋和史弁護士が言う。「被害児童(A子さん)は、適応障害、心的外傷後ストレス障害を順次発症し、現在も学校生活において配慮が必要な状態が続いています」 奈良市は、近く調査結果を公表することにしているという。(「週刊文春」編集部/週刊文春)
X先生は聴取に対してこうも述べている。
「A子さんがママに伝えないでなどと言っていた」
だが、報告書ではこれについても〈不自然さが残る〉として、こう記されている。
〈児童Aが母のことを教員に伝えるときは「ママ」ではなく「お母さん」と表現していた〉
「A子ちゃんが、『Cがウザいから無視しよう』と言ってきました」 その後も、A子さんとA子さんの両親がX先生に不信感を持つ出来事が頻出していく。 X先生の証言によれば、2022年7月4日、X先生のもとにBさんという児童が相談にやってきたという。「A子ちゃんが、『Cがウザいから(一緒に)無視しよう』と言ってきました」 これを聞いたX先生は、すぐさまA子さんを図書室に呼び出し、こう尋ねた。「クラスの友達関係のことで、何か思い当たることはない?」 しかし、A子さんには思い当たる節がなかった。なぜならこれも、後のBさんへの聴取によって否定されているからだ。そのため、A子さんは頭を悩ませながらこう答えた。「Cちゃんにノートを覗き見されて、『見んといてよ』と強く言ってしまったことかな……」 それを聞いたX先生はこう言った。「そのことと違う。もう一回考えておいで」 X先生は、具体的な児童の名前、行為の日時や態様等を説明することなく抽象的な問いかけを続けた。不安になったA子さんは二日後の7月6日の夜、母親にこう気持ちを吐露している。「X先生に呼び出されたんだけど、思い当たることがなくて、ずっと考えていて苦しい」実際はBさんのアンケートに、A子さんに関する記載はなかった 翌日の7月7日午前、A子さんの父親がX先生に電話をすると、こんなことを言われた。「6月28日に実施した『こころといじめのアンケート調査』で、Bが『A子ちゃんからCさんを無視しようと誘われた』と書いているんですよ」 だが、これも後に否定されている。Bさんのアンケートの回答には、A子さんに関する記載がなかったのだ。なお、A子さんの両親は、この日になって初めて我が子がノートに自殺をほのめかすようなことを書いている旨も知らされた。 同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。A子「(無視しようと)言ったならごめん」B「聞き間違っていたらごめん」 X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。 その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。 学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。 同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。「7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 A子さんの帰宅後、X先生はA子さんの両親に席を外させ、玄関の外で「お父さんに話すと約束していたけど、今からお母さんに話していい?」と聞き、両親にトラブルの内容を報告。その席でX先生は、A子さんがBさんとCさんに対し謝ったことを受け、「A子さんが認めはりました」と発言した。 一方、A子さんの母親は、X先生に「もう一回考えて」と言われたことにより、A子さんが悩み苦しんでいたことを伝えた。だが、X先生はこう反論した。「Cさんの件は7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 だが、A子さんがそこで「図書室に呼び出されたのは、7月4日」だということを説明すると、X先生は再び反論。「図書室に呼び出したのは、死にたいとノートに書いていた件で話を聞くためだった」 こうしたX先生のちぐはぐな説明を聞き、A子さんとA子さんの両親はさらに不信感を募らせていく。2022年7月19日には、クラスで配られた問題集の解答がA子さんの手元に渡っていなかったこと等が判明し、A子さんの母親は不信感をさらに増大させていったのである。 以上が、A子さんと花マルをつけたX先生の間に起きた事案の概要だ。 報告書には〈X教諭が児童Aの保護者に対し、いじめのアンケート調査の回答の記載に関して真実と異なる説明をしたことや、指導を行った日付についての説明内容が変わることが多々あったことについては、児童A及びその保護者から、X教諭だけなく学校に対する不信感を招来させることとなった〉とも記されている。 最後に、A子さんの代理人である三橋和史弁護士が言う。「被害児童(A子さん)は、適応障害、心的外傷後ストレス障害を順次発症し、現在も学校生活において配慮が必要な状態が続いています」 奈良市は、近く調査結果を公表することにしているという。(「週刊文春」編集部/週刊文春)
その後も、A子さんとA子さんの両親がX先生に不信感を持つ出来事が頻出していく。
X先生の証言によれば、2022年7月4日、X先生のもとにBさんという児童が相談にやってきたという。
「A子ちゃんが、『Cがウザいから(一緒に)無視しよう』と言ってきました」
これを聞いたX先生は、すぐさまA子さんを図書室に呼び出し、こう尋ねた。
「クラスの友達関係のことで、何か思い当たることはない?」
しかし、A子さんには思い当たる節がなかった。なぜならこれも、後のBさんへの聴取によって否定されているからだ。そのため、A子さんは頭を悩ませながらこう答えた。
「Cちゃんにノートを覗き見されて、『見んといてよ』と強く言ってしまったことかな……」 それを聞いたX先生はこう言った。
「そのことと違う。もう一回考えておいで」
X先生は、具体的な児童の名前、行為の日時や態様等を説明することなく抽象的な問いかけを続けた。不安になったA子さんは二日後の7月6日の夜、母親にこう気持ちを吐露している。
「X先生に呼び出されたんだけど、思い当たることがなくて、ずっと考えていて苦しい」
翌日の7月7日午前、A子さんの父親がX先生に電話をすると、こんなことを言われた。
「6月28日に実施した『こころといじめのアンケート調査』で、Bが『A子ちゃんからCさんを無視しようと誘われた』と書いているんですよ」
だが、これも後に否定されている。Bさんのアンケートの回答には、A子さんに関する記載がなかったのだ。なお、A子さんの両親は、この日になって初めて我が子がノートに自殺をほのめかすようなことを書いている旨も知らされた。
同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。A子「(無視しようと)言ったならごめん」B「聞き間違っていたらごめん」 X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。 その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。 学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。 同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。「7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 A子さんの帰宅後、X先生はA子さんの両親に席を外させ、玄関の外で「お父さんに話すと約束していたけど、今からお母さんに話していい?」と聞き、両親にトラブルの内容を報告。その席でX先生は、A子さんがBさんとCさんに対し謝ったことを受け、「A子さんが認めはりました」と発言した。 一方、A子さんの母親は、X先生に「もう一回考えて」と言われたことにより、A子さんが悩み苦しんでいたことを伝えた。だが、X先生はこう反論した。「Cさんの件は7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」 だが、A子さんがそこで「図書室に呼び出されたのは、7月4日」だということを説明すると、X先生は再び反論。「図書室に呼び出したのは、死にたいとノートに書いていた件で話を聞くためだった」 こうしたX先生のちぐはぐな説明を聞き、A子さんとA子さんの両親はさらに不信感を募らせていく。2022年7月19日には、クラスで配られた問題集の解答がA子さんの手元に渡っていなかったこと等が判明し、A子さんの母親は不信感をさらに増大させていったのである。 以上が、A子さんと花マルをつけたX先生の間に起きた事案の概要だ。 報告書には〈X教諭が児童Aの保護者に対し、いじめのアンケート調査の回答の記載に関して真実と異なる説明をしたことや、指導を行った日付についての説明内容が変わることが多々あったことについては、児童A及びその保護者から、X教諭だけなく学校に対する不信感を招来させることとなった〉とも記されている。 最後に、A子さんの代理人である三橋和史弁護士が言う。「被害児童(A子さん)は、適応障害、心的外傷後ストレス障害を順次発症し、現在も学校生活において配慮が必要な状態が続いています」 奈良市は、近く調査結果を公表することにしているという。(「週刊文春」編集部/週刊文春)
同日、X先生はA子さん、Bさん、Cさんの三人を集め、その場でA子さんに対して「Bさんに『Cがウザいから無視しよう』と言ったの?」と聞いた。するとBさんの方が「聞き間違いだったかもしれない」と答えたのだ。だが、結局X先生は双方に謝罪を促した。
A子「(無視しようと)言ったならごめん」
B「聞き間違っていたらごめん」
X先生は、Bさんを教室に戻した後、なおもA子さんに対して「どうして『Cさんがウザいから無視しよう』なんて言ったの?」と問いかけ、その場でCさんに対しても謝罪を促した。 その日の夕刻。A子さんの母親が、午前中のX先生と夫の電話のやりとりを受け、学校に連絡を入れた。そのとき、X先生は個人懇談中で電話に対応できなかったのだが、管理職に対し「(A子、B、Cの三人のトラブルについて)A子さんの保護者に連絡する際は、母親ではなく父親に説明する約束をA子さんとしている」と報告した(なお、A子さんはこうした約束についても一貫して否定している)。
学校側は、X先生の報告にもとづき、A子さんの母親に対し電話でそう説明。その後、X先生が家庭訪問する旨を伝えた。 同日、X先生が別の教員を伴いA子さん宅に訪問したが、A子さんは不在。そのため、その場で帰りを待つことになるのだが、A子さんの母親は「なぜ帰りを待たないといけないんですか? 今すぐ話をしてほしい」と求めたという。
A子さんの帰宅後、X先生はA子さんの両親に席を外させ、玄関の外で「お父さんに話すと約束していたけど、今からお母さんに話していい?」と聞き、両親にトラブルの内容を報告。その席でX先生は、A子さんがBさんとCさんに対し謝ったことを受け、「A子さんが認めはりました」と発言した。
一方、A子さんの母親は、X先生に「もう一回考えて」と言われたことにより、A子さんが悩み苦しんでいたことを伝えた。だが、X先生はこう反論した。
「Cさんの件は7月6日に初めて言ったので、1日しか悩ませていませんよ」
だが、A子さんがそこで「図書室に呼び出されたのは、7月4日」だということを説明すると、X先生は再び反論。
「図書室に呼び出したのは、死にたいとノートに書いていた件で話を聞くためだった」
こうしたX先生のちぐはぐな説明を聞き、A子さんとA子さんの両親はさらに不信感を募らせていく。2022年7月19日には、クラスで配られた問題集の解答がA子さんの手元に渡っていなかったこと等が判明し、A子さんの母親は不信感をさらに増大させていったのである。
以上が、A子さんと花マルをつけたX先生の間に起きた事案の概要だ。
報告書には〈X教諭が児童Aの保護者に対し、いじめのアンケート調査の回答の記載に関して真実と異なる説明をしたことや、指導を行った日付についての説明内容が変わることが多々あったことについては、児童A及びその保護者から、X教諭だけなく学校に対する不信感を招来させることとなった〉とも記されている。
最後に、A子さんの代理人である三橋和史弁護士が言う。
「被害児童(A子さん)は、適応障害、心的外傷後ストレス障害を順次発症し、現在も学校生活において配慮が必要な状態が続いています」
奈良市は、近く調査結果を公表することにしているという。
(「週刊文春」編集部/週刊文春)

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