飲食店を悩ます“迷惑な老人客”の実態。泥酔して客席で「まさか」の行動に…

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回転寿司などの飲食店で猛威を振るった“テロ行為”だが、最近はリテラシーが向上したのか、悪目立ちをしようとする馬鹿者の報道は減った。しかし、飲食店には今なお迷惑な客がやってきては、店主たちを悩ませている。 今回はそんな迷惑客の中でも、特に面倒くさいと店主たちが頭を抱える高齢者の迷惑客について、話を聞いた。
◆立ち飲み屋のカウンターで我が物顔をする老人
「ウチの店は立ち飲み屋だから“席”はないの。お客さんも来た順番で入店してもらって、空いてる場所で飲んでもらうわけ。いっつもカウンターの角で飲みたがるじいさんがいて、そいつをこの前、出禁にしたんだよ」
そう語るのは、都内で立ち飲み屋を経営するFさん。Fさんによると、その客は7年ほど通ういわゆる常連だったという。
「週に2回くらい通ってたかな、早い時間に来て、いっつも角に陣取ってたの。ビール一杯飲んで、チビチビ日本酒飲んで軽くつまんで長居するから、店からすりゃ“イイ客”じゃなかった。もちろん、席の予約なんて立ち飲み屋はできないから、角が空いてない日もあるわけ。そういう時はいっつもムッとした顔して酒飲んでたな。そうなると、雰囲気も悪くなるし、たまにオレとか他の店員のコを捕まえて『角が空いたら呼んで』とか言ってきたりして、そのたびに『ウチは予約とかやってないから』って流してたんだ」
そんなある日、事件は起こった。
◆「ここはオレの場所だから」と女性客をどかす
ある日、開店して間もなく、Fさんの店に若い女性客が2人でやってきて、カウンターの角で飲み始めたという。すると間もなくして、件の老人が現れた。
「露骨にイヤな顔してさ、他にも空いてるのに女のコたちの横にピタッと陣取ったの。そしたら『ここの角になってるとこはオレの場所なんだよ。ちょっと向こうにどいてくれ』って言いやがったの。オレの目の前でそんなこと言うもんだから頭に来てさ、『どかなくていいよ、コイツに帰ってもらうから』って。そのまま店の外まで行って『もう二度と来るな』と出禁を言い渡してやったんだよ」
◆出禁宣言に逆ギレ
だが、老人はFさんの出禁宣言に逆ギレすると、大声でわめき散らし始めた。
「口角泡を飛ばすって言うけど、本当にツバを飛ばしながらギャーギャー言い始めて、『ずっと通ってんのに、この扱いか!』とか、『売上に貢献してる常連を追い出しやがって』なんて言いやがるもんだから、『他の客の場所取ろうとするなんて貢献どころか迷惑してるから来るな』って」
◆飲食店で大きな態度をとる客は珍しくなく…
こうしてFさんは迷惑じいさんを追い出したのだが、こうした大きな顔をする客は珍しくないとも。
「年取ったヤツに多いんだよ、ちょっと通ったくらいでデカい顔して、他のお客にあれこれ言ったりするのは。ウチはそういう人は問答無用で出禁にしてるね」
高齢者でなくとも、飲食店で大きな顔をすることは店主や他の客にも迷惑な存在である。
◆寝てしまう客に頭を悩ませる店主
都内で居酒屋を営むKさんは老人客特有のトラブルについて話してくれた。
「おじいちゃんのお客さんって、酔うと寝ちゃうんですよ。ウチの店は寝たら退店というルールがあるんで、船をこぎ始めたら『寝たら帰ってもらいますよ!』って大声で言ってます」
寝てしまうだけならまだしも、寝てしまった老人客がとんでもないことをもよおしてしまったという。

◆酔って寝込んで放尿して出禁
電話で呼ばれてやってきた奥さんは、目に涙を浮かべて何度も謝罪したという。
「そりゃ、自分の旦那が酔っておしっこ漏らして呼び出されたら、泣きたくもなりますよ。こういうこともあったので、ウチは寝たら退店。とくにおじいちゃんのお客さんには注意しています」
Kさんはお漏らしした客の帰り際、「酔いが覚めたら、もう来ないでくださいって言ってたと伝えてください」と出禁を通告した。その後、3万円を持ってその客は謝罪に来たが、許さなかったという。
◆あわよくば食い逃げをはかろうとする
居酒屋チェーンで店長を勤めるAさんは「老人客の食い逃げは多い」という。
「老人の1人客が入ってくると、注意して見るようにしてますね。トイレ行くフリとか、電話するフリして帰っちゃうんです。それで捕まえると、『あ、お金、う~ん、払ってなかったっけ?』とか酔ったふりしてとぼけるんです。それでお金払ってもらおうとすると、財布のお金がなくて、『あれ~、オレ、お金忘れちゃったから、明日持ってくるよ』とか言うんです。その場で払ってもらえない場合は、即警察に通報するのがルールなので、問答無用で110番しました」
Aさんによると「カバンを持っていない、店の中でも上着を脱がない老人のお客さんは要注意です」と話す。また、前出のKさんのように奥さんや親族が来るケースもあるという。その場合、現場が修羅場になることもあるとか。
◆誰も聞いていない自慢話
都内で鮨店を営むYさんは常連の老人客の自慢話にウンザリ顔だ。
「月に2~3回くらい来る地元のじいさんなんだけど、とにかく自慢話がひどい。出すネタ、料理、お酒ととにかくいちいちうるせえの。『昔、出張で富山に行って地元の社長に連れてってもらった、なんてことのない居酒屋で食べたブリの刺身が本当においしくてね。あれを越える寒ブリには会ったことがない』とかね。
それって、ウチで出してるブリはそのブリ以下かよって。大手の商社で働いていたらしく、出張でいろんなところに行ってたみたいで、いろんなもの食って飲んでるし、経験もあるからどんなことにでも食いついてくるんだよ。ホント、迷惑極まりない(苦笑)」
他の客に迷惑がかかることもしばしばあるから、さらに面倒だとYさんは頭を抱える。
「他のお客さんの会話に割って入るんだよ。それで自慢話。困った顔しちゃうお客さんもいるから、ヤバいなって思ったら会話に入って引き離すようにしてる。でも、忙しい時はできないから、面倒くさいったりゃありゃしない。とはいえ、しっかりお金は落としてくれるし、何かあると出前もしてくれるから、強く言えないんだよね……」
客の話を聞くのも店主の仕事、それも太客となればなおさらだろう。我慢を重ねるYさんのような店主は、意外と多いのかもしれない。
取材・文/谷本ススム

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