「笑い取るため」無罪主張続ける3被告 陸自性暴力、30日論告求刑

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陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県郡山市)に所属していた元自衛官、五ノ井里奈さん(24)が複数の男性隊員から性暴力を受けたとされる事件で、強制わいせつ罪に問われた元隊員の3被告への論告求刑公判が30日、福島地裁(三浦隆昭裁判長)で開かれる。
【写真】五ノ井さんへ 関与した元隊員からの謝罪手紙 被害者参加人として毎回出廷してきた五ノ井さんが「うそをつかずにしっかり罪を認めて償ってほしい」と訴える一方、3被告は「わいせつ行為はなかった」と無罪を主張している。どのような証言をしてきたのか。これまでの5回の公判を振り返ってみたい。

「下半身の接触はなかった」 強制わいせつ罪に問われているのは、いずれも当時3等陸曹だった渋谷修太郎(30)、関根亮斗(29)、木目沢佑輔(29)の3被告。 起訴状によると、3被告は2021年8月3日夜、北海道の演習場で、格闘技の技でベッドにあおむけに押し倒した五ノ井さんに覆いかぶさり、自分の下半身を五ノ井さんの下半身に接触させたなどとされる。 公判で、3被告は格闘技の技を五ノ井さんにかけたことを認めた上で「下半身の接触はなかった」などと無罪を主張。訓練後の飲み会の席で3被告の上官が技をかけるよう促した言葉が発端になったものの、強制わいせつ罪と認定される行為があったかどうかが争点になっている。 9月12日の第4回公判の被告人質問で、渋谷被告は「技をかけるよう指示されてやったが、誰も反応しなかったから腰を振って笑いを取ろうとした」と述べた上で、下半身の接触は否定。関根被告も「腰を振る動作はしていない」と否認した。 木目沢被告は9月25日の第5回公判の被告人質問で、技をかけた理由について「自衛隊という組織には『上官の命令は絶対』という環境があり、断り切れなかった」と振り返った。 3被告は22年10月に五ノ井さんに直接謝罪している。だが、いずれも自らの意思ではなく「自衛隊の指示だった」と公判で明らかにした。 3被告の証言によると、五ノ井さんへの謝罪の際、自衛隊による「指導」や想定問答を含む「謝罪要領」があったといい、自衛隊による謝罪文の添削も実施されたという。木目沢被告は「(五ノ井さんに)土下座してくれ」と、自衛隊の担当者から土下座して頼まれたと打ち明けた。 この点、自衛隊制服組トップの吉田圭秀・統合幕僚長は9月の定例記者会見で「公判中の話なので、その発言について具体的なコメントをするのは控えたい」としている。五ノ井さん 7月公判では搬送 五ノ井さんは6月29日の初公判から、被害者参加人として欠かさず出廷してきた。7月31日の第2回公判では、証人尋問の途中で体調を崩して法廷内で倒れ救急車で病院に搬送された。 「わいせつ行為はなかった」と繰り返し主張する3被告に対して、五ノ井さんは公判後の報道陣の取材に「うそをつかないでほしい」などと繰り返し訴えてきた。第4回公判の後には「直接の謝罪を受けた去年の今ごろは、被告たちの思いもくんで『許そう』と思った。だが、誠意がなく事実を認めない姿勢で、私自身許すことはなく徹底的に闘いたいと思う」と話していた。 10月30日の公判では、五ノ井さんが意見陳述した後、検察側の論告求刑、弁護側の最終弁論があり、結審する見通し。同23日、五ノ井さんはX(ツイッター)で「意見陳述で私の想いを悔いなく伝えたいと思います。初公判から第五回までの全ての公判にて、被告人3名と対面し闘ってきました。判決前最後の公判になります。全力で頑張ります」と投稿した。判決言い渡しは12月12日に予定されている。 五ノ井さんは22年6月に自衛隊を退職後、動画投稿サイトで実名告発した。福島地検は検察審査会の不起訴不当の議決を受けて、23年3月に強制わいせつ罪で3被告を在宅起訴。防衛省は22年12月に3被告を含む5人を懲戒免職処分にしており、五ノ井さんはこの5人と国に損害賠償を求めて横浜地裁に提訴している。【岩間理紀】
被害者参加人として毎回出廷してきた五ノ井さんが「うそをつかずにしっかり罪を認めて償ってほしい」と訴える一方、3被告は「わいせつ行為はなかった」と無罪を主張している。どのような証言をしてきたのか。これまでの5回の公判を振り返ってみたい。
「下半身の接触はなかった」
強制わいせつ罪に問われているのは、いずれも当時3等陸曹だった渋谷修太郎(30)、関根亮斗(29)、木目沢佑輔(29)の3被告。
起訴状によると、3被告は2021年8月3日夜、北海道の演習場で、格闘技の技でベッドにあおむけに押し倒した五ノ井さんに覆いかぶさり、自分の下半身を五ノ井さんの下半身に接触させたなどとされる。
公判で、3被告は格闘技の技を五ノ井さんにかけたことを認めた上で「下半身の接触はなかった」などと無罪を主張。訓練後の飲み会の席で3被告の上官が技をかけるよう促した言葉が発端になったものの、強制わいせつ罪と認定される行為があったかどうかが争点になっている。
9月12日の第4回公判の被告人質問で、渋谷被告は「技をかけるよう指示されてやったが、誰も反応しなかったから腰を振って笑いを取ろうとした」と述べた上で、下半身の接触は否定。関根被告も「腰を振る動作はしていない」と否認した。
木目沢被告は9月25日の第5回公判の被告人質問で、技をかけた理由について「自衛隊という組織には『上官の命令は絶対』という環境があり、断り切れなかった」と振り返った。
3被告は22年10月に五ノ井さんに直接謝罪している。だが、いずれも自らの意思ではなく「自衛隊の指示だった」と公判で明らかにした。
3被告の証言によると、五ノ井さんへの謝罪の際、自衛隊による「指導」や想定問答を含む「謝罪要領」があったといい、自衛隊による謝罪文の添削も実施されたという。木目沢被告は「(五ノ井さんに)土下座してくれ」と、自衛隊の担当者から土下座して頼まれたと打ち明けた。
この点、自衛隊制服組トップの吉田圭秀・統合幕僚長は9月の定例記者会見で「公判中の話なので、その発言について具体的なコメントをするのは控えたい」としている。
五ノ井さん 7月公判では搬送
五ノ井さんは6月29日の初公判から、被害者参加人として欠かさず出廷してきた。7月31日の第2回公判では、証人尋問の途中で体調を崩して法廷内で倒れ救急車で病院に搬送された。
「わいせつ行為はなかった」と繰り返し主張する3被告に対して、五ノ井さんは公判後の報道陣の取材に「うそをつかないでほしい」などと繰り返し訴えてきた。第4回公判の後には「直接の謝罪を受けた去年の今ごろは、被告たちの思いもくんで『許そう』と思った。だが、誠意がなく事実を認めない姿勢で、私自身許すことはなく徹底的に闘いたいと思う」と話していた。
10月30日の公判では、五ノ井さんが意見陳述した後、検察側の論告求刑、弁護側の最終弁論があり、結審する見通し。同23日、五ノ井さんはX(ツイッター)で「意見陳述で私の想いを悔いなく伝えたいと思います。初公判から第五回までの全ての公判にて、被告人3名と対面し闘ってきました。判決前最後の公判になります。全力で頑張ります」と投稿した。判決言い渡しは12月12日に予定されている。
五ノ井さんは22年6月に自衛隊を退職後、動画投稿サイトで実名告発した。福島地検は検察審査会の不起訴不当の議決を受けて、23年3月に強制わいせつ罪で3被告を在宅起訴。防衛省は22年12月に3被告を含む5人を懲戒免職処分にしており、五ノ井さんはこの5人と国に損害賠償を求めて横浜地裁に提訴している。【岩間理紀】

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