息子や娘を「毒きょうだい化」させない夫婦関係とは?崩壊した家庭には共通点があった

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成人後、きょうだいとのトラブルに悩まされる事例が後を絶たない。きょうだいが巻き起こす、終わりの見えない骨肉の争いに家族は疲弊し、蝕まれる。そうした、「毒」としか言いようがないきょうだいの実態と対応策を追った。◆「毒きょうだい」とのトラブル、典型的なパターンとは
家庭内問題のカウンセリングに約50年間携わってきた公認心理師・臨床心理士の信田さよ子氏は、問題を起こすきょうだいについて一定の理解を呼びかける。
「彼らは以前からコンプレックスを抱え、家庭内で不平等な扱いを受けていた可能性も高い。社会的弱者である場合も多いです。よって『毒』と呼ぶのは救いにならず、逆に刺激してしまうため本来は控えたほうがいいでしょう」
そして、トラブルには典型的なパターンがある。
「実家を出て自立した方と実家に住み続けている方との確執がほとんどです。実家にいる方はたいてい、母親に溺愛され人生を台無しにされた人。その後も母親と組んでしまい、ドロドロのトラブルに発展していくのです。例えば、家を出た方が実家に住む方に自立を促すと、母親も一緒に攻撃してくるパターンがあります。そこに共通するのは父親の介入がないことです」
◆きょうだい間の確執は親子関係の延長!?
こうした確執は親子関係の延長であると信田氏は言う。
「きょうだい関係は夫婦関係の変形。いわば家族のカルチャーがそのまま他の人間関係にも投影されていくのです」
では、自らの子供たちを毒きょうだい化させないための夫婦関係とは?
「夫婦が互いにリスペクトフルな関係を見せる。また、子供を比較しない。親も時には子供が可愛くないと思うこともありますが、感情と行動を分けるようにして、平等に扱う。親が感情をむき出しにすると、家族は壊れます」
肝に銘じておきたい。
◆「見捨てたら無差別殺人を起こす」と親を脅し…
「社会復帰しようと努力している人なら問題はありませんが、家族にたかることに長け、それを既得権と考えている者も少なくありません。
『見捨てたら無差別殺人を起こす』と親を脅し、姉妹には『俺のために風俗で働け』などと迫るケースは枚挙にいとまがない。まさに“毒”であり、傷害事件として扱われるべきです」
’02年の開設以来、独自の手法を用いて引きこもり当人とその家族を救済してきた「日本駆け込み寺」の天野将典役員理事はこのように話す。
◆専門家による「引きこもり」更生プロセスとは?
天野氏はまず、当人ではなく親を団体所有のシェルターにかくまい、住民票や郵便物の届け先も団体の事務所に移すよう手配する。
その後、縁もゆかりもない他者にその自宅の土地・家屋を売却する。当然、事前に親の本気度を確認するという。
「親がどれだけ真剣かによって、成否が決まります。途中で下手な親心を出して自宅に戻ってしまっては、元も子もありませんから」
食事を作ってくれる親もおらず、インフラも止まり、家を出ざるを得なくなった引きこもりは「親をどこにやった」と事務所に乗り込んでくるが、説得するとひとまず殊勝な態度をとる。
だが、更生のプロセスはそこから始まる。
「本当に病気かもしれない場合は精神科医や社会福祉士を紹介、役所に同行し生活保護の手続きを自分でさせます」
“荒療治”が奏功し、社会復帰まで持ち込めるのは「30%程度」だというが、やはりこうした専門家の介入と親からの自立は不可欠なのだろう。
【信田さよ子氏】臨床心理士、日本公認心理師協会会長。1970年代より現職。『共依存――苦しいけれど、離れられない』(朝日文庫)など著書多数。
【天野将典氏】’22年6月、公益社団法人日本駆け込み寺役員理事に就任。DV、借金、家出、いじめ、貧困、ストーカー被害などさまざまな悩み相談に応えている。
取材・文/週刊SPA!編集部

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