京アニ証人尋問詳報 消防職員「らせん階段は適法」、弁護側は建物構造の影響訴え

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《36人が死亡し32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第11回公判は2日午後も続き、京アニの八田(はった)英明社長に続いて消防職員の証人尋問が行われた》
《弁護側は冒頭陳述で刑事責任能力を争う方針を示しつつ、「これだけ多くの人が亡くなったのは建物の構造が影響した可能性もある」と訴えていた。
現場の第1スタジオの構造が尋問の焦点となる》
《京都市消防局で建物への立ち入りや火災予防の指導などを担う「査察」担当の職員が証言台に立つ》
検察官「第1スタジオの査察結果は法令に従っていたか」
消防職員「はい」
検察官「非常警報設備は」
消防職員「1~3階に設置されていました」
検察官「京アニから報告は受けていたか」
消防職員「はい。不備はなかったです」
検察官「建物は法に触れていたか」
消防職員「違います」
検察官「らせん階段は法令に違反しない」
消防職員「はい」
検察官「らせん階段は炎や煙の広がりには関係ある」
消防職員「影響がないとはいえない」
検察官「第1スタジオでの最後の消防訓練は」
消防職員「平成30年11月。初期消火や避難誘導など。約70人、ほとんどの社員が参加したと聞いている」
検察官「消防署の職員が立ち会った」
消防職員「はい。内容の濃い訓練を実施するためです」
検察官「訓練の内容は」
消防職員「通常、建物で一番危険のある所を選びます。第1スタジオの場合、3階に炊事場があったので、そこを出火場所として訓練しました」
検察官「どこに逃げる想定」
消防職員「1階から屋外に出る訓練でした。西側の階段を使って避難するようにしています」
《弁護側は、消防が作成した資料を基に質問する。資料によると、事件当時、出火60秒後には2~3階に煙が充満し、避難が困難になっていた》
弁護人「3階のらせん階段周辺は、上昇気流で煙が一気に昇っていった」
消防職員「はい」
弁護人「仮にらせん階段が閉鎖されていたら、直ちにこのような状況にはならなかった」
消防職員「確かに、らせん階段が区切られていたらそうだが、ガソリンが使われていても必ずしもそうかは分からない」
弁護人「3階から屋上にあがる階段に段ボールが置かれ、人が歩く幅が狭くなっていた」
消防職員「避難上、支障がないとなれば法令違反ではない。物が置いてあるだけで違反とはならない」
弁護人「望ましいかどうかは」
消防職員「物を置いていない方がいいが、個人の判断で避難上の支障があるかどうか見ている」
裁判員「訓練について聞く。3階の出火を想定し、1~2階におりるという内容だったが、例えば近隣で火災が発生し、1階の玄関から避難できないような想定の訓練はあったのか」
消防職員「1階の屋外へ安全に避難することを想定していた」
裁判員「もし屋上に逃げる想定の訓練をしていたら、すぐに屋上に出れた可能性はあるのか。鍵の開け方など」
消防職員「それは分からない」
裁判員「屋上につながる鍵に問題があると分かっていたら、(消防として)交換を指摘していた可能性はあるか」
消防職員「確定的な話はできない」
裁判長「仮定の話だが、1~2階の階段で人一人しか通れない状態であれば指導の対象」
消防職員「違反の対象になる。3階までは居室があり、多くの人が避難できない。その場で指示する」
裁判長「一般論だが、違法、違反ではないことについても指導することはある」
消防職員「口頭で指導する」
裁判長「京アニについては」
消防職員「なかった」
裁判長「本件火災を受けて、法律上で変わったことは」
消防職員「ガソリンの販売について変更があったが、それ以外では直接かかわる変更はなかった」
裁判長「指導面では」
消防職員「今まで以上に厳しく、違法でなくとも危ないと感じた部分について厳しく指導するようになっている。特に火災に関わった職員は」
裁判長「想定の範囲が変わった」
消防職員「1階の地上に安全に避難することを想定していたが、ぶら下がりなどの避難の想定は変わったと思う」
裁判長「定期点検について。半年に1回の点検、3年に1回の報告書提出を求めていたと思うが、京アニも出していた」
消防職員「半年ごとに出されていた」
裁判長「法律よりも丁寧な対応をしていた」
消防職員「はい」
《次回期日は11日。再び被告人質問が行われる》

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