岸田政権 旧統一教会と絶縁して“禊ぎ解散”なら、自公過半数割れで政権維持は困難に

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安倍晋三・元首相の国葬への批判は増すばかりで、旧統一教会との関係が新たに明らかになる議員も後を絶たない。支持率が急落するなか、ついに「岸田おろし」の動きも出てきた。官邸内には、「総理のリーダーシップで裁判所に旧統一教会の解散命令請求を出し、“膿は全部出した。国民に信を問う”と起死回生の解散・総選挙を打つしか生き残る道はない」という“禊ぎ解散”論が浮上している。
【表】全国の選挙区別、自民党「旧統一教会と接点」議員の得票力一覧表/落選危機の旧統一教会「隠れ接点」議員も汚染票の喪失 では、禊ぎ選挙で自民党は国民の信頼を取り戻せるのか。選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。「岸田文雄・首相が本当に旧統一教会と縁を切って国民の信頼を取り戻したいのであれば、次の選挙で教団と関係が深い議員は公認しないといったケジメが必要でしょう。かつての郵政選挙の際、時の小泉純一郎首相は郵政民営化に反対した自民党議員を公認せず、新人の刺客候補を立てて大勝した前例がある。 しかし、岸田氏にそれほどの覚悟があるとは思えない。いくら関係を断ったと言おうと、現職の自民党議員の顔触れのまま選挙となれば、有権者の旧統一教会批判をまともに受けることになります」 もともと自民党で旧統一教会と関係を持った議員には、「選挙に弱い議員」が多い。同教団は信者の票そのものは多くないが、信者を無償の選挙ボランティアとして支援する議員の陣営に送り込み、戸別訪問などを熱心に展開して票を掘り起こす“集票マシーン”としての力で自民党に浸透してきた一面があるからだ。 データからもそれが裏付けられる。リストは、自民党調査で公表された旧統一教会と関係があった議員121人のうちの衆院議員について、前回総選挙での次点との得票数差を野上氏の協力でまとめたものだ。 内訳は、小選挙区で敗北して比例代表で復活当選した議員が27人、小選挙区で勝ったものの、次点との得票数差が「1万票未満」の大接戦だった議員が17人、次点との差が「1万~2万票未満」の接戦が7人、選挙区で戦っていない比例単独議員が5人いる。「次の総選挙では、旧統一教会に関係した議員は有権者の厳しい批判を受け、落選運動も起きるでしょう。そのうえ、絶縁宣言で教団からの支援はない。岸田政権発足直後の昨年の総選挙でさえ小選挙区で敗北したり、次点との得票数差が2万票未満の接戦だった議員51人は、次の選挙では当選が相当厳しいと予想されます。比例単独議員5人は公認が得られない可能性さえある」(野上氏)自公過半数割れへ“落選危機”の議員は56人にはとどまらない。 週刊ポスト・前号(2022年9月30日号)では、旧統一教会と自民党との関係を追跡してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏の取材では教団関係団体と接点を持っていたが、自民党が公表した調査結果には名前がなかった議員が33人いることを報じた。 鈴木氏は、「自民党の調査は質問項目が教団や関連団体の会合出席や祝電、会費支払い、寄付、選挙支援などの項目に限定され、それ以外の方法で教団と接点があった議員は見逃されている」と指摘する。 その自民党調査で“お目こぼし”された教団関係議員33人のなかには、前回の総選挙ではわずか「654票」差で辛勝した衛藤征士郎・元衆院副議長など次点との得票数差「2万票未満」や比例組が11人いる(掲載のリスト参照)。 前述の56人と合わせれば、67人が落選危機となるわけだ。 大差で当選した議員も“次は安泰”とはいえない。教団との深いつながりが指摘されている萩生田光一・政調会長(東京24区)、下村博文・元文科相(東京11区)、山際大志郎・経済再生相(神奈川18区)などは前回選挙では大差で当選したが、都市部の選挙区は無党派票が多く、スキャンダルに敏感。前回大差でも、簡単にひっくり返るからだ。野上氏はこう分析する。「禊ぎ解散となれば、前回大量得票した萩生田氏、下村氏、山際氏らであっても苦戦は免れない。 自民党は旧統一教会関係議員が軒並み落選し、現有261議席から60議席以上減らして200議席割れ。自公合わせても過半数(233)に届かず、政権を維持できないことが十分に考えられる」 たとえ岸田首相が旧統一教会に解散命令請求しようと、アリバイ調査だけで教団と関係を持った自民党議員の責任を見逃すなら、有権者は次の選挙で“汚染議員”たちに絶縁を突きつける。※週刊ポスト2022年10月7・14日号
では、禊ぎ選挙で自民党は国民の信頼を取り戻せるのか。選挙情勢分析に定評がある政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。
「岸田文雄・首相が本当に旧統一教会と縁を切って国民の信頼を取り戻したいのであれば、次の選挙で教団と関係が深い議員は公認しないといったケジメが必要でしょう。かつての郵政選挙の際、時の小泉純一郎首相は郵政民営化に反対した自民党議員を公認せず、新人の刺客候補を立てて大勝した前例がある。
しかし、岸田氏にそれほどの覚悟があるとは思えない。いくら関係を断ったと言おうと、現職の自民党議員の顔触れのまま選挙となれば、有権者の旧統一教会批判をまともに受けることになります」
もともと自民党で旧統一教会と関係を持った議員には、「選挙に弱い議員」が多い。同教団は信者の票そのものは多くないが、信者を無償の選挙ボランティアとして支援する議員の陣営に送り込み、戸別訪問などを熱心に展開して票を掘り起こす“集票マシーン”としての力で自民党に浸透してきた一面があるからだ。
データからもそれが裏付けられる。リストは、自民党調査で公表された旧統一教会と関係があった議員121人のうちの衆院議員について、前回総選挙での次点との得票数差を野上氏の協力でまとめたものだ。
内訳は、小選挙区で敗北して比例代表で復活当選した議員が27人、小選挙区で勝ったものの、次点との得票数差が「1万票未満」の大接戦だった議員が17人、次点との差が「1万~2万票未満」の接戦が7人、選挙区で戦っていない比例単独議員が5人いる。
「次の総選挙では、旧統一教会に関係した議員は有権者の厳しい批判を受け、落選運動も起きるでしょう。そのうえ、絶縁宣言で教団からの支援はない。岸田政権発足直後の昨年の総選挙でさえ小選挙区で敗北したり、次点との得票数差が2万票未満の接戦だった議員51人は、次の選挙では当選が相当厳しいと予想されます。比例単独議員5人は公認が得られない可能性さえある」(野上氏)
“落選危機”の議員は56人にはとどまらない。
週刊ポスト・前号(2022年9月30日号)では、旧統一教会と自民党との関係を追跡してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏の取材では教団関係団体と接点を持っていたが、自民党が公表した調査結果には名前がなかった議員が33人いることを報じた。
鈴木氏は、「自民党の調査は質問項目が教団や関連団体の会合出席や祝電、会費支払い、寄付、選挙支援などの項目に限定され、それ以外の方法で教団と接点があった議員は見逃されている」と指摘する。
その自民党調査で“お目こぼし”された教団関係議員33人のなかには、前回の総選挙ではわずか「654票」差で辛勝した衛藤征士郎・元衆院副議長など次点との得票数差「2万票未満」や比例組が11人いる(掲載のリスト参照)。
前述の56人と合わせれば、67人が落選危機となるわけだ。
大差で当選した議員も“次は安泰”とはいえない。教団との深いつながりが指摘されている萩生田光一・政調会長(東京24区)、下村博文・元文科相(東京11区)、山際大志郎・経済再生相(神奈川18区)などは前回選挙では大差で当選したが、都市部の選挙区は無党派票が多く、スキャンダルに敏感。前回大差でも、簡単にひっくり返るからだ。野上氏はこう分析する。
「禊ぎ解散となれば、前回大量得票した萩生田氏、下村氏、山際氏らであっても苦戦は免れない。
自民党は旧統一教会関係議員が軒並み落選し、現有261議席から60議席以上減らして200議席割れ。自公合わせても過半数(233)に届かず、政権を維持できないことが十分に考えられる」
たとえ岸田首相が旧統一教会に解散命令請求しようと、アリバイ調査だけで教団と関係を持った自民党議員の責任を見逃すなら、有権者は次の選挙で“汚染議員”たちに絶縁を突きつける。
※週刊ポスト2022年10月7・14日号

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