デイリー新潮はペットショップ最大手「Coo & RIKU(クーアンドリク)」の内部で管理されている「D犬リスト」(DはDEADの頭文字)を同社関係者から入手した。リストによると、昨年8月から今年7月までに同社が仕入れた後、店舗などの流通経路で亡くなった犬・猫の総数は751頭に上る。また、営業手法に批判が強まっている最中にもかかわらず、同社が先月、店員の販売頭数を競う「報酬付きイベント」を開催していたこともわかった。その不謹慎極まりないイベントの内容とは……。
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【写真】「やるか? やらないか?」。おちゃらけた文言が散りばめられた、8月にクーリクが開催した店員の販売頭数を競う「報酬付きイベント・小林杯」のポスタークーリク社員が簡単に辞められないワケ「お客様とのトラブルが多発している原因は、ひとえに人員と教育の不足です。次々と社員が辞めていく中、本部は『去る者は追わず、求人をかけて補充すればいい』という考えのもと、ひたすら拡大路線を突き進んできました。結果として、生体の知識がないほぼ新人の従業員が、2人だけで回しているような店舗が複数あります」クーアンドリク足立本店(東京都・足立区) こう語るのは、クーアンドリク(以下、クーリク)の某店舗で現在も勤務している女性社員である。 デイリー新潮は8月5日から9月9日までの間、クーリクに関する6本の記事(週刊新潮の転載記事1本を含む)を配信した。一連の記事で伝えてきたのは、引き渡し直後に子犬がパルボウイルス感染症で死亡したケースなど同社が抱える複数の顧客トラブルや、同社が運営するゴキブリだらけの繁殖場などで犬・猫が杜撰に管理されている実態だった。 この間、東京・秋葉原のクーリク本部や全国の店舗で勤務する社員やアルバイトが、肩身の狭い思いをしてきたことは想像に難くない。女性社員が続ける。「親からは『もう辞めたら』と言われます。もちろん私たちもみんな、この会社がメチャクチャだということは分かっている。けれど、そんなに簡単に辞めるわけにはいかないんです。なぜなら、私たちの多くは動物が好きでこの会社に入ったから。自分たちが辞めたら犬や猫たちがどうなってしまうんだろうと考えると、二の足を踏んでしまうのです」渾身のインセンティブ そして彼女は、社内の業務連絡で使われているLINEを見せてくれた。 画面にあったのは1枚のポスターだ。中央に写るのは、同グループでナンバー2の地位にある「Coo & RIKU東日本」社長の小林大史氏。その下に幹部らしき7人の男女が並び、大きく《渾身のインセンティブ 小林杯》と書かれている。 これは同社が8月に開催した、全国の店舗の社員に販売頭数を競わせる催しの告知ポスターである。1頭を売ると《最大1万円》の報酬が出て、成績上位に入れば、1位が10万円、2位が7万5000円、3位が5万円といった特別ボーナスがもらえる。《ルーキー部門》などの特別枠もあった。 ポスターの中には《やるか? やらないか?》《本気の夏&自己更新の夏》などいった挑発的な文言も躍っている。クーリク経営陣は、これを同社とトラブルを抱える顧客が見たらどう思うか想像したことがあるのだろうか。このキャンペーンが行われていた8月は、上記した通り、引き渡しからたった数日で愛犬を失った顧客の告発などを、デイリー新潮が立て続けに報じていたタイミングなのである。 女性社員は「情けない気持ちでいっぱいです」と続ける。「まず本部がやるべきことは、お客様のお叱りを真摯に受け止め、二度とこのような事故が起きないよう動物の管理を全般的に見直すことです。けれど、彼らにとって大事なのは“命”ではなく目先の売上。だからこそ私たちに、このような餌をぶら下げ続けるのです」モノのように扱われ、命を落としていく犬・猫たち 8月末に行われた店員が参加するZoom会議でも、本部長は一連の報道に対する“言い訳”ばかりを述べていたという。「挙句、このイベントに触れて、『会社の知名度がアップしたことをチャンスと捉えて頑張りましょう』です。ほとほと呆れました」(同・女性社員) 8月31日発売の週刊新潮では、クーリクが運営する全国11の大規模繁殖場における2021年10月から1年間の繁殖状況をまとめた内部資料を紹介した。その中の「D犬率」という繁殖過程における死亡率は、一番高い月で34・8%、年平均22・5%だった。多い時で3匹に1匹の割合で死ぬ劣悪な環境で、クーリクの繁殖犬は出産しているのである。 今回、新たにデイリー新潮が入手したD犬リストは、クーリクが自社の繁殖場やブリーダーから仕入れた後、店舗などで亡くなった犬・猫の実態をまとめたものだ。期間は昨年8月から今年7月までで、販売される前に亡くなった犬・猫の総数は751頭に上る。 死亡場所で一番多いのは同社が運営している病院関連施設で、海動物病院・大宮本院(埼玉県)が131頭、アニマルケアセンター大宮(同前)が26頭、海動物病院・尼崎医院(兵庫県)が13頭、海動物病院・福岡東医院(福岡県)が11頭。店舗では、札幌東店(北海道)と東久留米店(東京都)が各11頭、釧路店(北海道)、松本店(長野県)、天王寺店(大阪府)が各10頭と続く。「グループで運営している海動物病院に獣医師は在籍していますが、人数が足らず、店舗には月に1、2回程度しか訪れません。動物愛護管理法の規定で、各店舗には必ず1名の動物取扱責任者の有資格者を常駐させなければいけないのですが、クーリクはこの点も適当。なぜなら、有資格者も次々と辞めていくから。だから、資格のない店員をこっそり動物取扱責任者に選任したり、エリアマネージャーが数件の店舗を兼任したりする手法が横行してきました。その結果、体調を崩す犬・猫の手当がままならず、このように店舗で命を落とす犬・猫が続出してしまうのです」(クーアンドリク関係者)クーアンドリクからの回答(追記) 前出の女性店員は、こうした体制を放置してきた本部にこう憤る。「店の中にはただでさえ30~40匹以上の犬・猫がいるというのに、本部からの指示で狭いケースに入れられた犬・猫がジャンジャン送られてきて、バックヤードに山積みにされていく。モノ扱いです。そんな彼らの食事や糞尿の始末を、私たちはたった3~4人の体制で、ペットホテルやトリマーの業務もこなしながらやっていかなければならないのです」 一方、デイリー新潮が国民生活センターに対して行った情報開示請求で、クーリクの杜撰な顧客対応も改めて浮き彫りになった。全国の消費者センターに寄せられたクーリクに関する相談件数は10年で約10倍に増加していた。 相談件数は年々増加し、13年度の23件から、19年度には136件と3桁台を突破。20年度には224件、21年度204件、22年度226件と高止まりしたままだ。 9月18日には有名インフルエンサーの滝沢ガレソ氏が、内部告発を元にしたレポートをX(旧Twitter)に投稿 。ネット上にはクーリクに対する批判が吹き荒れている。同社はこれまでデイリー新潮の報道に概ね否定してきたが、今回は期限までに回答はなかった。回答は届き次第、追記する。 いま社会でペットを飼うことのモラルが問われている。〈追記:9月22日20時〉クーアンドリクからの回答が22日午後に届いたので追記します。1、流通経路で751頭のD犬が出ている点について。 具体的な数値に関しては差し控えますが、生態系のひとつとはいえ、予防できること、治療できることに重点を置き、自助努力を続けております。全体の数値に対して1%前後の推移となります。2、消費者センターへの相談件数が10年で約10倍に増えている点について。 お客様のご相談に関しましては、店舗のみならず、コールセンターを設け、365日受付をしております。併せまして、消費者センター経由のご相談も1件1件、丁寧に対応させていただき、消費者センターからのアドバイスも頂戴しながら解決に努めております。また、事業の拡大に伴い相談件数が増加するのは不自然なことではありません。消費者センターへの相談の全てが当を得るものではないと考えます。事実、消費者センターから弊社に連絡がされた案件数は相談件数と比較しても少数です。3、小林杯について。 小林杯は、一時的な催しではなく、弊社において普段から行っている販促活動となります。4、店舗で人手が足りていないという現役社員からの指摘について。 労働集約産業のため、人材の流動性はあります。5、動物取扱責任者に有資格者でない人が選任されたり、エリアマネージャーが複数箇所の店舗の動物取扱責任者を兼任するようなケースが過去になかったか。 事実ではございません。法令の遵守はもちろん、動物取扱業に課せられる、又は適用される各種ガイドラインや規定を遵守の上、運営されております。 *** デイリー新潮では、ペット問題に関する読者からのご意見ならびにペットショップの従業員やペットショップとトラブルを抱えている購入者からの情報提供を受け付けています。詳しくはデイリー新潮のホームページをご参照くださいhttps://www.dailyshincho.jp/(ペットショップ問題取材班)デイリー新潮編集部
「お客様とのトラブルが多発している原因は、ひとえに人員と教育の不足です。次々と社員が辞めていく中、本部は『去る者は追わず、求人をかけて補充すればいい』という考えのもと、ひたすら拡大路線を突き進んできました。結果として、生体の知識がないほぼ新人の従業員が、2人だけで回しているような店舗が複数あります」
こう語るのは、クーアンドリク(以下、クーリク)の某店舗で現在も勤務している女性社員である。
デイリー新潮は8月5日から9月9日までの間、クーリクに関する6本の記事(週刊新潮の転載記事1本を含む)を配信した。一連の記事で伝えてきたのは、引き渡し直後に子犬がパルボウイルス感染症で死亡したケースなど同社が抱える複数の顧客トラブルや、同社が運営するゴキブリだらけの繁殖場などで犬・猫が杜撰に管理されている実態だった。
この間、東京・秋葉原のクーリク本部や全国の店舗で勤務する社員やアルバイトが、肩身の狭い思いをしてきたことは想像に難くない。女性社員が続ける。
「親からは『もう辞めたら』と言われます。もちろん私たちもみんな、この会社がメチャクチャだということは分かっている。けれど、そんなに簡単に辞めるわけにはいかないんです。なぜなら、私たちの多くは動物が好きでこの会社に入ったから。自分たちが辞めたら犬や猫たちがどうなってしまうんだろうと考えると、二の足を踏んでしまうのです」
そして彼女は、社内の業務連絡で使われているLINEを見せてくれた。
画面にあったのは1枚のポスターだ。中央に写るのは、同グループでナンバー2の地位にある「Coo & RIKU東日本」社長の小林大史氏。その下に幹部らしき7人の男女が並び、大きく《渾身のインセンティブ 小林杯》と書かれている。
これは同社が8月に開催した、全国の店舗の社員に販売頭数を競わせる催しの告知ポスターである。1頭を売ると《最大1万円》の報酬が出て、成績上位に入れば、1位が10万円、2位が7万5000円、3位が5万円といった特別ボーナスがもらえる。《ルーキー部門》などの特別枠もあった。
ポスターの中には《やるか? やらないか?》《本気の夏&自己更新の夏》などいった挑発的な文言も躍っている。クーリク経営陣は、これを同社とトラブルを抱える顧客が見たらどう思うか想像したことがあるのだろうか。このキャンペーンが行われていた8月は、上記した通り、引き渡しからたった数日で愛犬を失った顧客の告発などを、デイリー新潮が立て続けに報じていたタイミングなのである。
女性社員は「情けない気持ちでいっぱいです」と続ける。
「まず本部がやるべきことは、お客様のお叱りを真摯に受け止め、二度とこのような事故が起きないよう動物の管理を全般的に見直すことです。けれど、彼らにとって大事なのは“命”ではなく目先の売上。だからこそ私たちに、このような餌をぶら下げ続けるのです」
8月末に行われた店員が参加するZoom会議でも、本部長は一連の報道に対する“言い訳”ばかりを述べていたという。
「挙句、このイベントに触れて、『会社の知名度がアップしたことをチャンスと捉えて頑張りましょう』です。ほとほと呆れました」(同・女性社員)
8月31日発売の週刊新潮では、クーリクが運営する全国11の大規模繁殖場における2021年10月から1年間の繁殖状況をまとめた内部資料を紹介した。その中の「D犬率」という繁殖過程における死亡率は、一番高い月で34・8%、年平均22・5%だった。多い時で3匹に1匹の割合で死ぬ劣悪な環境で、クーリクの繁殖犬は出産しているのである。
今回、新たにデイリー新潮が入手したD犬リストは、クーリクが自社の繁殖場やブリーダーから仕入れた後、店舗などで亡くなった犬・猫の実態をまとめたものだ。期間は昨年8月から今年7月までで、販売される前に亡くなった犬・猫の総数は751頭に上る。
死亡場所で一番多いのは同社が運営している病院関連施設で、海動物病院・大宮本院(埼玉県)が131頭、アニマルケアセンター大宮(同前)が26頭、海動物病院・尼崎医院(兵庫県)が13頭、海動物病院・福岡東医院(福岡県)が11頭。店舗では、札幌東店(北海道)と東久留米店(東京都)が各11頭、釧路店(北海道)、松本店(長野県)、天王寺店(大阪府)が各10頭と続く。
「グループで運営している海動物病院に獣医師は在籍していますが、人数が足らず、店舗には月に1、2回程度しか訪れません。動物愛護管理法の規定で、各店舗には必ず1名の動物取扱責任者の有資格者を常駐させなければいけないのですが、クーリクはこの点も適当。なぜなら、有資格者も次々と辞めていくから。だから、資格のない店員をこっそり動物取扱責任者に選任したり、エリアマネージャーが数件の店舗を兼任したりする手法が横行してきました。その結果、体調を崩す犬・猫の手当がままならず、このように店舗で命を落とす犬・猫が続出してしまうのです」(クーアンドリク関係者)
前出の女性店員は、こうした体制を放置してきた本部にこう憤る。
「店の中にはただでさえ30~40匹以上の犬・猫がいるというのに、本部からの指示で狭いケースに入れられた犬・猫がジャンジャン送られてきて、バックヤードに山積みにされていく。モノ扱いです。そんな彼らの食事や糞尿の始末を、私たちはたった3~4人の体制で、ペットホテルやトリマーの業務もこなしながらやっていかなければならないのです」
一方、デイリー新潮が国民生活センターに対して行った情報開示請求で、クーリクの杜撰な顧客対応も改めて浮き彫りになった。全国の消費者センターに寄せられたクーリクに関する相談件数は10年で約10倍に増加していた。
相談件数は年々増加し、13年度の23件から、19年度には136件と3桁台を突破。20年度には224件、21年度204件、22年度226件と高止まりしたままだ。
9月18日には有名インフルエンサーの滝沢ガレソ氏が、内部告発を元にしたレポートをX(旧Twitter)に投稿 。ネット上にはクーリクに対する批判が吹き荒れている。同社はこれまでデイリー新潮の報道に概ね否定してきたが、今回は期限までに回答はなかった。回答は届き次第、追記する。
いま社会でペットを飼うことのモラルが問われている。
〈追記:9月22日20時〉クーアンドリクからの回答が22日午後に届いたので追記します。
1、流通経路で751頭のD犬が出ている点について。 具体的な数値に関しては差し控えますが、生態系のひとつとはいえ、予防できること、治療できることに重点を置き、自助努力を続けております。全体の数値に対して1%前後の推移となります。2、消費者センターへの相談件数が10年で約10倍に増えている点について。 お客様のご相談に関しましては、店舗のみならず、コールセンターを設け、365日受付をしております。併せまして、消費者センター経由のご相談も1件1件、丁寧に対応させていただき、消費者センターからのアドバイスも頂戴しながら解決に努めております。また、事業の拡大に伴い相談件数が増加するのは不自然なことではありません。消費者センターへの相談の全てが当を得るものではないと考えます。事実、消費者センターから弊社に連絡がされた案件数は相談件数と比較しても少数です。3、小林杯について。 小林杯は、一時的な催しではなく、弊社において普段から行っている販促活動となります。4、店舗で人手が足りていないという現役社員からの指摘について。 労働集約産業のため、人材の流動性はあります。5、動物取扱責任者に有資格者でない人が選任されたり、エリアマネージャーが複数箇所の店舗の動物取扱責任者を兼任するようなケースが過去になかったか。 事実ではございません。法令の遵守はもちろん、動物取扱業に課せられる、又は適用される各種ガイドラインや規定を遵守の上、運営されております。
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デイリー新潮編集部