静岡5.5万戸断水、復旧めど立たず 「暮らしに全然足りない」

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静岡県内各地に記録的な大雨を降らせた台風15号。25日も静岡市内を中心に断水と停電など生活への影響が続くなか、住民たちは浸水した家屋から懸命に泥水をかき出して前を向こうとしていた。一方で約5万5000戸に上る静岡市清水区での大規模断水は復旧のめどが立っていない。このため市は、26日に清水区と葵区にある市立の小中学校計42校、こども園と待機児童園計22園を休校・休園にすると発表した。【丘絢太、深野麟之介、松浦吉剛】
【橋が崩落した現場】店が浸水「全てが終わった気が」 巴川の氾濫で浸水被害が広がった静岡市清水区江尻町。「全てが終わった気がする」。居酒屋を営む猪俣正俊さん(34)は、泥水が流れ込んだ店内を片付けながら嘆いた。店内のショーケースや製氷機、畳なども使用不能に。新型コロナの感染が落ち着き、客足が戻り始める矢先だっただけに、猪俣さんは「どうしたらいいのか」と頭を抱える。 江尻町で戦前から営業を続けている老舗ふぐ料理店では、浸水で冷蔵庫と冷凍庫が壊れてしまった。25日は2組の予約がキャンセルとなったといい、店主の田島彰さん(55)は「客単価の高い店には痛手だ」と打ち明ける。それでも「店内の片付けを手伝ってくれる地域の人たちには感謝しかない」と力を込めた。 自治体の調査が進んだことで住宅の被害も増えた。25日午後2時現在の県集計で、床上浸水が1376棟、床下浸水が1351棟に達した。全壊は掛川市と浜松市で各1棟、半壊は牧之原市と川根本町で各1棟あった。市長「最大でも1週間で復旧に」 清水区では25日、生涯学習交流館など計28カ所に給水所が設置された。市と、県内外の自治体から派遣された給水車に、タンクやペットボトルを手に近隣住民が列をつくった。 市立清水江尻小で給水を待っていた近くの無職男性(49)は断水後にスーパーで飲み水を買い込んだが、「トイレや暮らしに必要な水が全然足りない。いつまで断水が続くのか」と不安を口にした。また会社員の女性(50)は、24日は自宅から離れた給水所に行かざるを得なかったといい「近くの小学校で給水できるようになったのはよかった。でもまだ飲み水を十分確保できていない」と話した。 静岡市によると、清水区内での水道供給の根幹を担っている興津川の取水口が今回の大雨に伴う流木と土砂で塞がれた。このため水を取り込めない状態が続いている。25日は河川の流量が低下せず、復旧作業にも入れていないという。 市の担当者は「重機を使った流木の撤去作業を26日にも開始したい」と言う。26日の給水も、清水区内の生涯学習交流館や小学校など計約30カ所で実施する。給水所の増設や開設時間の延長も検討中としている。 25日午後に給水所を視察した田辺信宏市長は「最大でも1週間で復旧にこぎ着けたい。全力で被災者の生活支援にあたる」と強調した。復旧対応のため、27日の安倍晋三元首相の国葬出席は取りやめるという。 一方、一時最大で約11万9000戸に及んだ停電は、25日夕までに大部分が復旧した。中部電力によると25日午後4時現在、県内4市2町の計約1260戸が復旧を待つ。そのうち、送電塔が倒れた静岡市葵区内が約1090戸に上る。 県内の私鉄各線にも爪痕が残る。大井川鉄道は当面、大井川本線と井川線の運転を全線で見合わせる。島田市の神尾―福用間での大規模な土砂流入などが原因で、再開の見通しは立っていない。天竜浜名湖鉄道は26日まで終日運休して復旧を進め、27日から通常運行の再開を予定している。静岡鉄道は復旧工事のため、27日まで新静岡―狐ケ崎間、桜橋―新清水間で折り返し運転を行う予定。
店が浸水「全てが終わった気が」
巴川の氾濫で浸水被害が広がった静岡市清水区江尻町。「全てが終わった気がする」。居酒屋を営む猪俣正俊さん(34)は、泥水が流れ込んだ店内を片付けながら嘆いた。店内のショーケースや製氷機、畳なども使用不能に。新型コロナの感染が落ち着き、客足が戻り始める矢先だっただけに、猪俣さんは「どうしたらいいのか」と頭を抱える。
江尻町で戦前から営業を続けている老舗ふぐ料理店では、浸水で冷蔵庫と冷凍庫が壊れてしまった。25日は2組の予約がキャンセルとなったといい、店主の田島彰さん(55)は「客単価の高い店には痛手だ」と打ち明ける。それでも「店内の片付けを手伝ってくれる地域の人たちには感謝しかない」と力を込めた。
自治体の調査が進んだことで住宅の被害も増えた。25日午後2時現在の県集計で、床上浸水が1376棟、床下浸水が1351棟に達した。全壊は掛川市と浜松市で各1棟、半壊は牧之原市と川根本町で各1棟あった。
市長「最大でも1週間で復旧に」
清水区では25日、生涯学習交流館など計28カ所に給水所が設置された。市と、県内外の自治体から派遣された給水車に、タンクやペットボトルを手に近隣住民が列をつくった。
市立清水江尻小で給水を待っていた近くの無職男性(49)は断水後にスーパーで飲み水を買い込んだが、「トイレや暮らしに必要な水が全然足りない。いつまで断水が続くのか」と不安を口にした。また会社員の女性(50)は、24日は自宅から離れた給水所に行かざるを得なかったといい「近くの小学校で給水できるようになったのはよかった。でもまだ飲み水を十分確保できていない」と話した。
静岡市によると、清水区内での水道供給の根幹を担っている興津川の取水口が今回の大雨に伴う流木と土砂で塞がれた。このため水を取り込めない状態が続いている。25日は河川の流量が低下せず、復旧作業にも入れていないという。
市の担当者は「重機を使った流木の撤去作業を26日にも開始したい」と言う。26日の給水も、清水区内の生涯学習交流館や小学校など計約30カ所で実施する。給水所の増設や開設時間の延長も検討中としている。
25日午後に給水所を視察した田辺信宏市長は「最大でも1週間で復旧にこぎ着けたい。全力で被災者の生活支援にあたる」と強調した。復旧対応のため、27日の安倍晋三元首相の国葬出席は取りやめるという。
一方、一時最大で約11万9000戸に及んだ停電は、25日夕までに大部分が復旧した。中部電力によると25日午後4時現在、県内4市2町の計約1260戸が復旧を待つ。そのうち、送電塔が倒れた静岡市葵区内が約1090戸に上る。
県内の私鉄各線にも爪痕が残る。大井川鉄道は当面、大井川本線と井川線の運転を全線で見合わせる。島田市の神尾―福用間での大規模な土砂流入などが原因で、再開の見通しは立っていない。天竜浜名湖鉄道は26日まで終日運休して復旧を進め、27日から通常運行の再開を予定している。静岡鉄道は復旧工事のため、27日まで新静岡―狐ケ崎間、桜橋―新清水間で折り返し運転を行う予定。

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