ジャニーズ事務所の創業者で元社長のジャニー喜多川氏(令和元年死去)による性加害問題で、ジャニー氏による性加害を認め、謝罪と補償を表明した7日の記者会見。
ジャニー氏のめいである藤島ジュリー景子氏が社長を引責辞任するとともに、所属タレントの東山紀之氏の社長就任が発表された。会見では「ジャニーズ」の社名を今後も維持する方針が示されたことに加え、長年事務所を支えてきた前副社長の白波瀬傑(しらはせ・すぐる)氏(5日付で辞任)は出席しなかった。性加害の事実説明よりも、事務所としての再出発を前面に押し出した会見の内容に、企業の危機管理に詳しい識者からは疑問視する声が上がっている。
性加害認めたことは「成果」
会見で東山氏は、ジャニー氏の性加害について「人類史上、最も愚かな事件」「鬼畜の所業」と指摘し、ジャニー氏の半世紀以上にわたる性加害について厳しく批判した。
社名については「これまでタレントが培ったエネルギーやプライド。その表現の一つでよいと思う」と話し、変更しない方針を示した。また、自身がセクシュアルハラスメントについて指摘を受けたことがあるのか問われると、東山氏は「直接指摘はないが、誤解を招くようなことはあったかもしれない」と釈明した。
今回の会見について、「謝罪の作法」などの著書がある人事・経営コンサルタントで東北大特任教授の増沢隆太さんは「60点」と評価を下した。増沢さんは「事務所の存亡の危機をまずは食い止めることが目的。ジャニー氏の性加害を犯罪行為として認めたことにも成果はあった」とする一方、「今回の会見で(事務所側が)触れてほしくなかったのは東山氏自身のセクハラで、会見ではうやむやにされた部分がある。経営者としての不安も残る」と指摘する。
社名を変更しない方針について増沢さんは「あくまでも想像だが、状況が落ち着いてから今後の経過を報告し、社名の変更を(対外的にアピールする上での)カードとして残しているのでは」と推察する。
時流にあった経営を
今回の会見では、副社長だった白波瀬氏の引責辞任も発表された。
白波瀬氏は昭和50年の入社以来、半世紀近くにわたってジャニーズ事務所を支えてきた一人だが、会見には「藤島さんが一身をもって責任を取るとのことだったので、出席していない」(同席した木目田裕弁護士)との理由から出席しなかったという。
白波瀬氏が出席しなかったことについて、増沢さんは「白波瀬氏はジャニー氏の『分身』といった指摘もある。(ジャニー氏の性加害を)クリアにすべてをさらけ出すのであれば、白波瀬氏は会見にいるべきだった」と指摘する。
増沢さんは「昭和の『ジャニーズ帝国』のような形では存続できないだろうが、今回を契機に時流にあった経営に変えられることはできる。ジャニーズ事務所にとっては昭和型の経営スタイルを維持する方が、今後はむしろデメリットの方が大きいだろう」と話している。(浅野英介)